引かれ会う   作:しめさば

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第7話

12月25日。

 

それは現代の日本人にとって、とても特別な日となっている。

 

街にはカップルが溢れ、どこの店に行っても、いつもとは違うムードに変わっている。

 

もちろん、僕が働いているところも例外ではない。

 

「クリスマスにまでバイトなんて、お前も寂しいやつだなぁ彼方!」

 

「仕方ないじゃないですか、あまり金銭に余裕があるわけじゃないんですから…」

 

そう、今日はクリスマスだ。

 

普段でも忙しいこのファミレスも、クリスマスの効果あってか、さらに忙しくなっている。

 

今日このファミレスの近くでクリスマスイベントがやっているらしい。

 

さまざまな色のイルミネーションが散りばめられた巨大なクリスマスツリーがメインらしく、きっとそれを見た帰りにこの店に来ている人が多いのだろう。

 

そんな綺麗なクリスマスツリーを紀美子ちゃんと見に行きたい。

 

と言えるほど僕は積極的ではない。

 

それどころか紀美子ちゃんに、「今日は忙しくて帰りが遅くなるかもしれないから、先に寝ててもらって構わないよ」と言って出てきてしまう始末。

 

我ながら情けないと思う。

 

「紀美子ちゃん気を悪くしてないといいけどなぁ…」

 

「紀美子…?おっ、お前彼女いるのか!?」

 

しまった。

 

独り言を橋本さんに聞かれてしまった。

 

「彼女を置いてバイトなんて、偉いんだか偉くないんだか…」

 

そう言いながら橋本さんは難しそうな顔をしながらも、注文が通っている料理を作る手は休めない。

 

ピークが過ぎ、閉店準備に差し掛かったところで橋本さんに声をかけられた。

 

「彼方、ちょっと渡したいものがあるんだ」

 

そう言って、僕に小さめの封筒を渡してきた。

 

中を開けてみると

 

「これは…」

 

展望台のペアチケットだった。

 

「クリスマスのイベントとはあまり関係ないんだけどよ…」

 

橋本さんが苦笑いしながらこう言ってきた。

 

「実は俺も今日そこに行く予定だったんだけど、急にここに呼ばれて行けなくなったんだ…だから俺の代わりに行ってきてくれねぇか。今からいけばまだ間に合うからさ」

 

「でもそんな、仕事を任せて僕だけいい思いをするなんて…」

 

「普段から働いてくれてるお礼みたいなもんだ。みんなには言っておくから、気にせず行ってこい」

 

橋本さんは僕の肩を叩いて、笑顔でそう言ってくれた。

 

僕は橋本さんに深くお辞儀をして、私服に着替えて店を飛び出した。

 

営業中店内しか見ていなかったので気づかなかったが、外に出ると雪が積もっていた。

 

今からだと急いで帰っても、展望台で一時間も居られるか怪しい。

 

それでも、少しでも紀美子ちゃんと特別な時間を過ごしたい、そんな思いで走った。

 

息を切らしながら駅の改札口に着いた。

 

しかし、改札口の電光掲示板を見て絶望する。

 

「運転、見合わせ…?」

 

今日の雪の影響で電車が止まってしまっていた。

 

改札口の向こうは、電車に乗れない人達でごった返している。

 

タクシーで帰ろうかとも思った。でもあいにく今日はタクシーに乗れる金額すら財布にない。

 

家に帰ればもちろんあるが、電車が止まってしまっては帰れない。

 

僕は為す術なく、電車の運転再開を待つしかなかった。

 

それから電車の運転が再開した頃には、もう日付が変わりつつあった。

 

結果的に僕は、橋本さんの期待にも答えられず、紀美子ちゃんとの特別な日をすごすことも、出来なかったのだ。

 

雪の日の冷たい風が、僕に突き刺さる。

 

みんなや橋本さんになんて言えばいいのだろうか、そんなことを考えながら家の鍵を開ける。

 

「おかえりなさい、彼方くん!」

 

玄関に紀美子ちゃんが、エプロンをして立っていた。

 

「外寒かったでしょ?ビーフシチュー作ってるから一緒に暖まろう!」

 

僕は紀美子ちゃんに手を引かれ、テーブルへ座る。

 

「さぁ食べよ!彼方くんみたいに上手く作れてるかわかんないけど…」

 

「一緒に食べるために…待っててくれたの?」

 

「うん!ビーフシチューの味に納得するまで今日1日使っちゃったけどね…」

 

紀美子ちゃんが照れくさそうに笑った。

 

「…いただきます」

 

僕は紀美子ちゃんを好きになった。

 

いや、もうなっていたのだろう。

 

こんなにも人と一緒にいて幸せだと思った瞬間はない。

 

僕はビーフシチューを食べながら思わず、涙を流してしまった。

 

「泣くほど美味しかったの?彼方くん」

 

紀美子ちゃんが笑いながらこちらを見つめている。

 

「うん、とっても美味しい…今まで食べたどのビーフシチューよりも美味しいよ」

 

「本当!?良かった!」

 

12月25日。

 

こうしてこの日は僕にとって、とても特別な日になった_____

 

 

 

 

次の日。

 

学校で使う道具を買いに行くため、街に繰り出した。

 

紀美子ちゃんは商店街に用があるらしく、僕と同じタイミングで家を出ていった。

 

僕は雑貨屋で目当てのものを探していた。

 

「すみません、ちょっといいですか?」

 

後ろから呼びかけられ、振り向く。

 

「はい?って、あ…」

 

「やっぱり、あなた彼方くんよね?」

 

僕はこの人を知っている。

 

でもどうしてここに…

 

「きみちゃんの…お母さん…?」

 

 




どうもしめさばです。

今回は次回に引っ張るような書き方にしました。

短いと思われてしまいそうですが、次回で最終回となります。

年内に投稿する予定ですので、もう少しお待ち下さい。
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