〜千冬視点〜
「はぁ」
世界最強の人類、織斑千冬は深いため息をついた。
「ここに来てまさか二人目の男性IS操縦者とはな」
そう、このため息の原因は今年入学する二人の生徒の事だった。彼女も自分の弟、織斑一夏がISを動かすとは夢にも思わなかっただろう。だが問題はもう一つあった。
事の始まりは今日の朝、桜咲く四月の始まり、新学期スタート三日前となり自分を含めた教職員一同が準備に勤しんでいた頃一本の電話が舞い込んで来た。
「もう一人の男性IS操縦者が見つかった」
その一言の御陰で彼女は今、飛行機でエコノミークラスの座席の固さに内心文句を言う羽目に成っていたのである。
(まったく⋯⋯⋯男性の操縦者とは言っても、こういった仕事は山田先生が行けば良いだろう!)
どうやら自分にばかり面倒な仕事が舞い込んで御立腹の様だ。
(しかし、『金城啓吾』⋯⋯二人目の男子生徒か⋯⋯⋯一夏と仲良くしてくれたら嬉しいモノだがな)
と内心その生徒に対して期待もしていたその時、ピンポ〜ンと間の抜けた効果音が鳴った後アナウンスが入る。
『皆様、大変長らくお待たせいたしました。当機は間もなく沖縄、那覇空港に着陸致します。シートベルトをしっかりと着用し、電子機器の電源をお切り下さい』
「お、ようやく到着か」
そう、彼女が向かっていたのは、デイゴの花が咲く初夏の日差しが眩しい沖縄県であった。
(沖縄を訪れるのは初めてか⋯⋯⋯綺麗な海だな。昔はいつの日か一夏と一緒に行こうと思っていたが一人で来てしまったな⋯⋯⋯)
空港に到着して飛行機を降りた頃、時刻は午後4時を周って日も落ちかけていたので、急いでタクシーを拾って目的の住所まで向かった。
「此処、だろうか?」
千冬が到着した住所は家というより、むしろ道場と呼ぶに相応しかった。表札を見てみると目的の生徒の名前、「金城」と書かれている。間違いないだろうと千冬がインターホンを押してみると一人の厳つい顔の男性が出て来た。
「何か御用でしょうか?」
「すいません、『金城啓吾』さんの御宅は此方でしたか?」
「はぁ、啓吾は家の倅ですが⋯⋯⋯⋯失礼ですが何方様で?」
「これは失礼しました。私はI S学園で教師をしております織斑千冬と申す者です」
「I S学園の先生⋯⋯?それはそれは、遠方からようこそお越し下さいました。それで家の倅が何かしたので⋯⋯⋯?」
すこし不安になったのであろう、生徒の父親はおずおずと訊ねてきた。
「?⋯⋯⋯息子さんから何か御聞きになりませんでしたか?」
「いえ、特に何も聞いてないですね」
(頭が痛くなるな⋯⋯⋯)
「⋯⋯⋯⋯実は息子さんがI Sを動かしたといった報告を受けたので訪ねに参った次第ですが⋯⋯」
「息子が? I Sを? 話が見えてきませんが取り敢えずアイツは今外出中でして、立ち話もアレですから良かったら家の中でお茶でもどうでしょう?そのうち帰ってくると思うので」
「宜しいのですか?もし場所が分かっているなら私が直接本人と話しに伺いますが⋯⋯⋯」
「とんでもない!とてもスーツとハイヒールで行ける場所ではないので家でゆっくりしていってください」
「?」
これでは埒が明かないと思い、取り合えず生徒が帰ってくるまで家の中で待つ事にした。
〜15分後〜
「うちの子がそんな事にねぇ〜、人生何が起こるか分からないものねぇアナタ」
「そうだなぁ母さん!ハッハッハッハ!」
「先生もお疲れでしょう。どうぞ、冷えてるので美味しいですよ〜」
「あ、有り難うございます⋯⋯⋯」
ポケポケとした口調で、お茶を持って来た母親らしき人物が言った。どうやらあまり事を重大と思っていないようだ。
(随分と陽気な御夫婦だな⋯⋯⋯ん?)
千冬はふと飲んだお茶の味に疑問を抱く。
「⋯⋯⋯少し宜しいでしょうか?」
「む、 どうしましたか先生?」
「あの、容れて下さったお茶のことですが」
「なんと!お気に召しませんでしたか!?」
「い、いえそんな事ありません!とても美味しいです。ただ初めて飲んだお茶だったので、何と言う名前かお伺いしようとおもって」
「あらあら先生、
「さんぴん茶⋯⋯⋯ですか?」
「はい〜、沖縄ではジャスミン茶の事をさんぴん茶と呼びます。観光客の人でも知ってる方が多いんですよ〜?」
そんな御洒落な物は知らんと最初は思ったが、結構有名な名物らしく、千冬は恥ずかしいと自責の念に駆られてしまった。
「あの⋯⋯⋯⋯失礼な質問かもしれませんが宜しいですか?」
「はい〜、何でしょう?」
「お二人は御子息が遠くに行くかもしれないのに寂しくはないのですか?」
千冬も何故こんな質問をしたのかよく分からない。ただ、ISという欠陥兵器を扱う勝手な大人の都合で半ば強制的に未来ある子供の人生を奪っている様な気がした。それなのに、この夫婦が微塵も怒りを見せない事が不可思議でたまらなかった。
「ハッハッハ!なんだそんな事ですか!」
「へ⋯⋯⋯⋯?えぇ!?」
さすがのブリュンヒルデもこの一言に驚いたらしい。普段の自分らしくない可愛らしい素っ頓狂な声を上げてしまった。
「大丈夫ですよ先生、これが今生の分かれではないんですから」
「そうですよ〜、あの子が元気で頑張っているなら私たちは何の文句もありません♪」
「し、しかし⋯⋯⋯」
千冬が何か言いかけた時、玄関の戸が開いた音がして弟の一夏と同じ位の歳であろう、一人の若い男が居間までやって来た。
「ただいまー!親父、今日は良い型のカンパチが⋯⋯あれ、お客さん?」
「あぁちょうど良かった!先生に紹介します。倅の啓吾です」
「どうも今晩は、金城啓吾です!」
近い将来、この釣り竿を持った快活な男と自分の弟がI S学園始まって以来の伝説の名コンビになるとはこの時、千冬はまだ知らなかった。
「皆さん初めまして、ソーダガツオです!」
「同じく初めまして、金城啓吾です・・・ていうか俺の台詞少なくない?」
「文句を言わないの、初めての投稿で台詞なんか思いつかないんだから」
「えぇ・・・(困惑)」
「というわけでこの小説は魚釣り初心者の作者が釣りと魚の素晴らしさを知ってもらうために書きました!釣りをやった事が無い方は、この小説からハマってくれたら嬉しい!釣り上級者の諸兄方は暖かい目で見て下さい・・・という訳で『I S〜釣りバカ日誌〜』始まります!」
「そういえば一夏の出番は?」
「まだないよ」
「えぇ・・・(困惑)」