〜????〜
「んもー!何なのさ!束さんの自信作がいとも簡単に壊されるなんて!」
⋯⋯⋯⋯⋯某国の某所でラボの様な物を構えながら、ウサミミが装着されたカチューシャに、胸元が開いたデザインのエプロンドレスと独特のファッションセンスを持った女性が悔しそうに叫ぶ。
「それに何!メバル!?束さんのゴーレムがメバル以下ですか!?ホントに腹立つ〜〜〜〜〜!!」
そう、事の発端は自身のI S『ゴーレムI』がI S学園の男子生徒に破壊された事に有った。そして散々喚き散らした後、女性は黙りこくってしまった。その表情は懐かしさと、もどかしさを合わせた様な表情をしている。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯でもまぁ、元気にしてたんだ、あの子」
女性は懐から一枚の写真を取り出す。そこにはまだ幼い頃であろう、不機嫌な顔をした自分と
「そう⋯⋯⋯⋯⋯もうすぐ会えるね、啓くん♪」
釣り竿を持って笑顔で写真に写る少年の姿があった。
〜I S学園1−1〜
「今日はですね、二人の転校生を紹介します!」
最近驚く事が多くなったらしい。山田先生の口から爆弾発言が飛び出しクラスの皆が唖然となった。
(この時期に転校生が二人も⋯⋯⋯⋯⋯?)
「最近、転校生多くない?」
「先生、どんな子なんですか!?」
「可愛い子だったら良いな〜!」
「静かに!それでは入ってきてください!」
「はい」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
(⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯はい?)
今、クラスの生徒全員が驚きで無言になってしまった。それもそのはず、転校生の二人の内、一人が「男」だったからである。
「それでは自己紹介をお願いします」
「フランスから転入してきたシャルル⋯デュノアです。よろしくお願いします」
「「⋯⋯⋯⋯⋯( ゚д゚)」」
金髪の中性的な顔をした生徒が自己紹介をした。文字通り俺と一夏がポカーンと口を開いて驚いていると、直後に女子達の怒号の様な叫びが響く。
「「「「「きゃあああああ~~~~!!!」」」」」
「三人目の男子来た~!!!」
「釣りバカ系男子の織斑くんや金城くんと違って守ってあげたい系の男子~!」
「金髪の王子様みたい!」
「あ、あはは⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
(釣りバカ系男子??)
苦笑いを浮かべる。どうやらこの光景にシャルルは少し驚いているようだ。
「お前たち、いい加減に静かにしろ」
「そうですよ~!まだ一人残っているんですから」
騒ぎが鎮まると今度は銀髪で左目に眼帯を付けた少女が前に出る。
「次はお前の番だ」
「はい!教官!」
「⋯⋯⋯⋯⋯私はもうお前の教官ではない、担任だ。それとここでは織斑先生と呼べ。」
「わかりました!」
千冬先生に注意を受けた少女は、凛とした態度で自己紹介をする。
「ラウラ⋯ボーデヴィッヒだ」
「「「「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」」」」
「⋯⋯⋯⋯あの〜、以上ですか?」
「以上だ」
皆が呆気にとられていると、突然少女が歩み寄る。
「⋯⋯⋯⋯⋯貴様が織斑一夏か?」
「え⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯?」
バシンッ!
「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか!」
いきなりのビンタに、誰もが唖然とする。
「な!?何をなさってるんですの!?」
(え⋯⋯⋯⋯⋯?)
「コイツ、何をしてるんだ!?」
(そんな⋯⋯⋯⋯⋯どうして⋯⋯⋯⋯)
「いきなり何しやがるんだ!おい、大丈夫か啓吾!?」
(なんで⋯⋯⋯⋯⋯⋯彼女はいきなり)
「言ったろう。貴様が教官の弟などと⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ん?啓吾?」
(⋯⋯⋯⋯⋯⋯俺をぶったんだ!?)
「あ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯(´;ω;`)」
「な!?⋯⋯⋯ふ、ふん!//////」
そう、彼女がぶったのは織斑一夏ではなく俺の方だった。
「あー⋯⋯⋯⋯うん。すぐに着替えてグラウンドに集合しろ。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!それと織斑、金城。デュノアの面倒を見てやれ」
結局、俺のショックが拭えないまま、HRは終了してしまった。
「えっと、災難だったね。初めまして、僕は⋯⋯⋯」
「悪いなシャルル、急がないと女子どもが」
「五月蝿いからな」
「いたっ!こっちよ!」
「ええい者ども、出会え出会えい!」
俺たちが搔い摘んで説明している内に、噂を聞きつけて女子生徒達がやってくる。
「クソ、一夏、シャルル、急ぐぞ!」
「合点!」
「ちょ、えぇ!?待ってよー!」
なんとか女子達の包囲網を突破して、無事アリーナの更衣室にやって来た。
「さてと、二人とも急いで着替えろよ。千冬先生が五月蝿いからな。」
「分かってるって」
「わあっ!?」
俺たち二人が着替えようとすると、シャルルが素っ頓狂な声を上げた。
「どうしたんだ?」
「ほら、シャルルも早く着替えて⋯⋯⋯」
「き、着替えるよ? でも、その、あっち向いてて……ね?」
「⋯⋯⋯?まぁ、恥ずかしいなら見ないけど⋯⋯⋯⋯」
「変わった奴だな。まぁ、最初見たときは中性的な顔立ちだから、女じゃないかと思っちゃったぜ」
「!?」
また驚いてるな⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯これは怪しい。
〜グラウンド〜
「ねぇ啓吾、アンタ朝あの銀髪にビンタされたって本当なの?」
女子の噂話はなんと足が速いんだろう。HR終了して間もないのに鈴から質問攻めを受けた。
「ホント、酷い話ですわ!無抵抗の啓吾さんにむかって!」
「あ、あぁ。どうやら本人は一夏の事を狙ったらしいな」
「一夏、何か心当たりは無いのか?」
箒が尋ねると、一夏は少し考えた後に答える。
「アイツ、確か千冬姉がドイツに行ってた頃の教え子なんだと思う」
「でも如何してその教え子はアンタの事を恨んでる訳?」
「それは⋯⋯⋯⋯⋯おっと、もうすぐ千冬姉が来るぜ。この話はまた後でな」
そう言って俺たちはそそくさと定位置にもどる。ほどなくして千冬先生がやって来た。
「今日は戦闘を実演してもらおう。ちょうど活力が溢れんばかりの十代女子もいることだしな。――凰! オルコット!」
指名されるとは思わなかったのだろう。文句を言いながら二人は前に出る。
「まったく⋯⋯⋯⋯少しはやる気をだせ。⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯それにアイツらに良いとこ見せられるぞ?」
俺たちには聞こえない声で先生が話すと二人が突然、やる気をだした。スゴいな千冬先生、一体どうやったんだろう?
「あら、お相手はどちらに?別にわたくしは鈴さんでもよろしくて」
「こっちの台詞よ。返り討ちにしてあげる!」
「慌てるな馬鹿ども。お前らの相手は―」
「ああああーっ!ど、どいてください~っ!」
千冬先生が言いかけたその時、空から山田先生が猛スピードで落ちて来た。
「ちょっと山田先生!?⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯あぁもう、海神!」
俺は急いでI Sを展開し、すぐさまキャスティングする。
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!⋯⋯⋯⋯⋯⋯ふぅ、大丈夫ですか?」
「フ、フフ⋯⋯⋯⋯アンダーキャストもお手の物とは、流石ですね金城くん」
事なきを得たらしい山田先生が答える。
「まったく⋯⋯⋯今回、山田先生にはお前達の相手を務めてもらう」
その言葉にセシリアと鈴が驚いた。
「え?あの、二対一で……?」
「いや、さすがにそれは……」
「なに、今のお前たちならすぐ負けるさ」
〜3分後〜
先生の言葉通り、そこには惨敗したであろう、満身創痍の二人の姿があった。
「スゴいな山田先生、代表候補生二人を相手に勝っちゃうなんて⋯⋯⋯」
「あぁ、山田先生もスゴいけどあの二人、連携が全くとれてないな⋯⋯⋯⋯⋯⋯これならまだ一人でやった方がマシだ」
「ほほう、なら今度は金城がやってみるか?」
どうやら今の会話を聞かれてしまったらしい。千冬先生が会話の間に割って入る。
「あ、いや〜遠慮しときます。敵いっこ無いですよ」
「すいません私も連戦はちょっと⋯⋯⋯⋯」
そりゃそうでしょう、山田先生も同意見だと言った様に同調して来た。その言葉に千冬先生が一つの起爆剤を投下してくる。
「なんだ情けない⋯⋯⋯⋯⋯⋯勝った方には何か釣り具一つ進呈する事もやぶさかではでは無かったのだがな」
「「!!」」
勿論、その言葉に俺たちの目の色が変わる。恐らく今自分は、獲物を狙う猛禽の様な目をしているだろう。
(あーあ、千冬姉の奴地雷踏んだな)
(地雷、ですわね)
「「織斑先生」」
「なんだ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯!?」
「その言葉⋯⋯⋯⋯」
「二言はありませんね」
「う、うむ。何でも好きな物を買ってやろう」
コレで決まりだな。二人の気迫に若干押されながら千冬先生が答えた。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯たった一つの」
「純粋な願いの為に」
「山田先生」「金城くん」
「「アナタを倒します!!」」
〜アリーナ〜
「はぁ〜⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「ホラ、何時まで落ち込んでるのよ。シャキッとしなさい」
結局あの後、俺は山田先生に負けてしまった。まぁ今週末に欲しかった釣り竿が買えると喜んでいた山田先生の顔と、これから地獄へ向かうとも知らない千冬先生の恍けた顔の対比はおもしろかったけど。
「でも、啓吾もスゴいよ。元代表候補生にあそこまで食い下がるなんて」
「そんなもんかな⋯⋯⋯⋯⋯」
落ち込む俺に、シャルルがフォローをいれてくれた。
「とは言っても⋯⋯⋯⋯⋯⋯ん、あれは?」
俺が指で示すとそこには、黒いI Sを纏ったドイツ代表候補生ラウラ⋯ボーデヴィッヒの姿があった。
「ウソっ、ドイツの第三世代型だ」
「まだ本国でのトライアル段階だって聞いてたけど⋯⋯⋯」
そのまま彼女は一夏の前までやってくる。
「おい、織斑一夏」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯どうした」
「私と戦え、最も貴様に拒否権など無い」
まるで深海の様に暗く冷たい視線で見下ろすボーデヴィッヒに一夏が答えた。
「第2回モンド⋯グロッソ決勝戦」
「ッ!?」
「はぁ⋯⋯⋯⋯⋯やっぱりそうなんだな」
俺たちには訳が分からない会話が続けられている中、唯一、鈴だけが苦虫を噛み潰した様な顔になる。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯分かっているなら話が早い。貴様は教官の顔に泥を塗った。だから私は貴様の様な軟弱な奴を教官の弟などとは認めない!さぁ、私と戦え織斑一夏。そして惨めに敗北し醜態を晒すが良い!」
「クッ、アンタねぇ!」
ここまでコケにすれば流石に怒りに怒って向かってくると彼女も思ったのだろう。だが一夏からの返答は予想だにもしない物だった。
「あー⋯⋯⋯⋯⋯⋯えっと、その、ゴメンな」
「んな!?」
コレばかりは誰も予想出来なかったであろう、一夏の返答にラウラは素っ頓狂な声を挙げる。
「確かにあの時俺は弱かった。とても悔しかったよ、俺のせいで千冬姉は大会二連覇を果たせなかったんだから。今でもまだまだ弱いし、千冬姉に誇れる様な男じゃないと思う。だけど⋯⋯⋯⋯⋯こんな俺でも何時かあの人の背中に追いつける様に頑張ってるつもりなんだ。だから、もう少し待ってくれないか?」
「な⋯⋯⋯⋯⋯な、な!?」
ラウラが口をパクパクさせていると異変に気がついた教師がアリーナのスピーカーで叫ぶ。
『そこの生徒!何をやっている!』
「く⋯⋯⋯⋯ここは一旦引いてやる!」
そう言うと彼女はアリーナの出口まで去って行った。
「ちょっと一夏!何で反論しなかったのよ!?」
「鈴の言う通りだ!あそこまでコケにされてしかも謝罪するなんてどうかしているぞ!?」
今の結果に納得が行かない鈴と箒が一夏を避難する。
「そんなに言うなよ⋯⋯⋯⋯⋯正直、アイツの言ってる事だって一理あるんだ。俺が弱かったから千冬姉は連覇をのがしたんだ」
「一夏⋯⋯⋯」
「それに啀み合ってたら悲しいだろ。ならせめて、こっちが『心の余裕』を見せないと。そうだろ啓吾」
「あぁ、そうだな」
(いつの間にか少し立派になったな一夏)
結局その日は解散となった。シャルルは一夏と相部屋となり、前シェアメイトの箒が少し寂しそうにしていたかな。
「なんだか今日の話は魚臭くなかったな」
「いや、たかだか二次小説が魚臭かったら怪奇現象だよ」
「それよりも私が手玉に取られていた気がする・・・」
「まぁまぁ、それより次回はちゃんと釣りをするからね!」
「ヒントは『鶏魚』と呼ばれている魚だ!」
「「「お楽しみに!」」」