I S-釣りバカ日誌-   作:ソーダガツオ

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夢よ踊れ この星の下で(´・ω・`)


第12話 兄妹無数

   〜アリーナ控え室〜

 

 

 学年別トーナメント当日、俺とラウラ、箒はモニターで対戦相手の発表を待っていた。

 

「結局、お兄ちゃんは誰と組む事にしたんだ?」

 

「あぁ、のほほんさん⋯⋯⋯⋯⋯ほら、クラスメイトの『布仏 本音 』と組む事にした」

 

「おぉ!あの袖がやたらと長い女子か」

 

 そこで不思議に思ったのか、箒が尋ねてくる。

 

(おい啓吾!どうしてアイツと仲良くしている!?それにお兄ちゃんとはなんだ⋯⋯⋯!まさか、お前にそういった趣味がーー)

 

(待つんだ箒!本人にも深い事情が有る。根はとても良い子なんだ。誤解するな)

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯?どうしたんだ二人とも、そろそろ対戦表が発表されるぞ」

 

「あ、あぁ⋯⋯⋯⋯⋯⋯そうだな」

 

 そう言って間もなく、発表された対戦表に俺達は驚いた。

 

「な!?まさか⋯⋯」

 

「いきなりとはな⋯⋯⋯⋯」

 

 

 一回戦第一試合 織斑 一夏&シャルル⋯デュノア VS 篠ノ之 箒&ラウラ⋯ボーデヴィッヒ 

 

 そう、奇しくもファーストマッチは因縁のある二人の対決だった。

 

「まさか一回戦から⋯⋯⋯⋯⋯」

 

「一夏⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

 好都合か不都合か、この発表の結果にラウラは複雑な顔をしている。そこに千冬先生がやってきた。

 

「篠ノ之、ボーデヴィッヒ、第一試合はお前達だ。さっさと準備しろ」

 

「は、はい⋯⋯⋯」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ラウラ、不安か?」

 

「お兄ちゃん⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯不安じゃないと言ったら嘘になるな」

 

 彼女は不安そうに呟く。

 

「私はアイツに⋯⋯⋯⋯⋯一夏に許して貰えるだろうか」

 

「大丈夫、一夏は良い奴だ。ちゃんと話せば分かってくれるさ。ほら、行っておいで」

 

 そう言って背中を押そうとすると、ラウラが俺に抱きかかってきた。

 

「「!?」」

 

「ら、ラウラ!?一体どうした?」

 

「私は⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯怖い。もし皆が許してくれないと思うと⋯⋯⋯⋯⋯⋯とても、とても怖いのだ」

 

 俺が見てやるとラウラの声は震え、今にも泣きそうな顔をしている。

 

「ラウラ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯大丈夫、一夏は好漢だし、クラスメイトも気の良い連中ばかりだ。もしお前を咎める奴が居たら俺も一緒になって謝ろう。お兄ちゃんを信じろ」

 

 俺は優しくラウラを抱きしめ返してやった。

 

「お兄ちゃん⋯⋯⋯⋯」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯私も少しお前の事を勘違いしていたらしい」

 

「箒!」

 

「どうだろう、私とも友達になってはくれないか?」

 

 箒はそう言うとラウラに手を差し伸べる。どうやら箒も分かってくれたらしい。

 

「友達⋯⋯⋯に⋯⋯⋯?」

 

「あぁ、どうだろうか?」

 

「正直どう答えたら良いか分からない。こんな事を言われたのは初めてだから⋯⋯⋯///」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯とりあえず早く支度をしろ」

 

 もう時間がないのだろう、千冬先生は急かしてくら。

 

「わ、分かりました!ほら二人とも急げ!」

 

「うむ!⋯⋯⋯⋯⋯それとお兄ちゃん」

 

「どうしたんだ?」

 

「傲慢だった私を変えてくれたのはお兄ちゃんだ。だから⋯⋯⋯⋯その⋯⋯⋯ありがとう///」

 

 感謝の言葉を述べると再びラウラは俺を抱きしめてくる。

 

「あぁ、お前は自慢の妹だ。だから精一杯やってこい」

(何だろうこの可愛い生き物)

 

((少し羨ましい⋯⋯⋯))

 

「それと箒」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯?どうした啓吾」

 

「妹をよろしく頼む」

 

「啓吾⋯⋯⋯⋯⋯⋯分かった!」

 

 そう言うと箒は力強く頷いた。

 

「よし、行ってこい!」

 

 背中を押すと二人は勇ましくアリーナへ向かう。ラウラはもう一人ではない、これからは俺達がついてる。これなら大丈夫だろうと俺は思った。

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯随分とラウラに慕われてるんだな」

 

「あの子はまだ年端も行かない娘だ。それに見てきた世界があまりにも過酷すぎる」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯それは分かっているつもりだ」

 

 千冬先生はため息まじりにそう呟いた。

 

「俺にドイツの軍事事情や試験管ベビーなんて事はイマイチ分からない。だけど教官である貴女はあの子にとって親代りだろう。もう少し何か声を掛けてやれなかったのか?」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

 千冬先生は沈黙してしまう。

 

「非難するつもりはない。だけど一夏と言いラウラと言い⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯貴女は少し不器用すぎる」

 

「言うな!⋯⋯⋯⋯啓吾、もう言わんでくれ。私は口下手で不器用だ。それくらい自分が一番分かっているさ」

 

「先生⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

 先生がそう言うと俺はなにも言う事が出来なくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    〜アリーナ〜

 

 

「くっ⋯⋯⋯⋯⋯!」

 

 そのころラウラは一夏とシャルのコンビネーションに苦戦していた。

 

「観念しろラウラ!」

 

「悪いけど箒はもうボクが倒したよ!残るのは君だけだ!」

 

「私は負ける訳にはいかない!お兄ちゃんに勝利を捧げると決めたんだ!」

 

 絶対不利の状況でもラウラは瞳に決意の炎を宿し堂々と言い張った。

 

「ならこのまま俺達が勝たせてもらう!」

(お兄ちゃん⋯⋯⋯?)

 

「覚悟するんだ!」

(お兄ちゃん⋯⋯⋯⋯?)

 

(く⋯⋯⋯確かに劣勢だがここで負ける訳には⋯⋯⋯)

 

 ラウラが打開策を考えていると、突然どこからともなく声が響く。

 

(力が欲しいか⋯⋯⋯?)

 

「なんだ⋯⋯!?どこにいる!?」

 

「んな⋯⋯?どうしたんだ?」

 

(貴様に力をくれてやる⋯⋯⋯⋯)

 

「やめろ⋯⋯⋯!そんなモノ必要ない!く、やめろおぉぉぉ!!」

 

 ラウラが叫ぶと同時にシュヴァルツェア⋯レーゲンから紫電を放ち始め、本機は黒いどろどろとした泥のようになり、ラウラを包んで紫の鎧を纏った人型の何かに変わっていた。

 

「!!??一体何が!」

 

「これはまさか⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯千冬姉!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何が起こっているんだ!?」

 

「あれは暮桜⋯⋯⋯⋯だと?それに、VTシステム!?」

 

 そう、刀剣型近接武器「雪片」のみを備え、単一仕様能力「零落白夜」によって第1回モンド⋯グロッソを勝ち抜いた千冬先生の愛機、暮桜(くれざくら)の姿に瓜二つだった。

 そして暴走する様にラウラのI Sは暴れだしてしまう。

 

「千冬先生、あれは何だ!ラウラは無事なのか!?」

 

「分からん⋯⋯⋯⋯⋯⋯とりあえず教職員に通達をしなくては」

 

「何を悠長な⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯もういい!俺はラウラを助けに行く!」

 

「な⋯⋯!?まつんだ金城!早まってはーー」

 

 俺は先生の静止を振り切ってアリーナに向かう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏落ち着いて!」

 

「離してくれシャル!アイツ、セシリアや鈴を痛めつけるだけじゃ飽き足らず千冬姉の姿まで!」

 

「一夏、シャル、一体何が起こってる!?」

 

 俺が駆けつけてきた頃には一夏がI Sに対して食って掛かっていた。

 

「分からないよ!でもシュヴァルツェア⋯レーゲンの姿が変わったと思ったら突然一夏が⋯⋯⋯⋯」

 

「一夏、おい一夏!落ち着くんだ!」

 

「離してくれ、アイツは⋯⋯⋯⋯アイツは俺が!」

 

 頭に血が昇っているらしい、一夏の目は血走って獣の様な目になっていた。

 

「この⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯馬鹿野郎!!」

 

「グっ⋯⋯⋯⋯⋯⋯!?け、啓吾⋯⋯⋯俺は⋯⋯⋯」

 

 俺が力一杯ぶん殴ると一夏もようやく落ち着きを取り戻した。

 

「ふぅ、冷静になれ。あのI Sは何だ?お前にとってどんな因縁がある?」

 

「啓吾⋯⋯⋯⋯⋯分かった話そう。あれはーー」

 

 一夏が言うにはこうだ。昔から千冬先生は一夏の憧れだった。しかし間違った形の強さを体現した模造品がこの場に出てきた事にに腹を立ているらしい。

 

「気持ちは分かる。だけど一夏、今一番苦しんでいるのは俺でもシャルでも、ましてやお前でもない。ラウラなんだ。だから頼む、ラウラを⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯妹を助ける手伝いをしてくれ!頼む!」

 

 俺はそう言って一夏に頭を下げる。

 

「待て啓吾!頭を上げてくれ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯分かった一緒に行こう。妹がどうとかは置いといてまずはラウラを助けるんだ!」

 

 冷静さを取り戻した一夏が答えた。その瞳には不退転の決意が読み取れる。

 

「一夏⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯あぁ、それでこそ俺達の一夏だ!」

 

「待って二人とも!」

 

 俺達が行こうとしたのをシャルが静止する。

 

「そのままじゃ戦えないよ一夏、ボクの残りのエネルギーを使って!」

 

「そんな事が出来たのか⋯⋯⋯」

 

「でも⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯良いのか?」

 

「悔しいけどボクのラファールにアレを止める力は無いよ⋯⋯⋯⋯⋯だから二人とも、気をつけて!」

 

「サンキュー、なあ啓吾、作戦はどうする?」

 

「とりあえず俺の海神でなんとかシュヴァルツェア⋯レーゲンの動きを抑える。その隙に一夏は零落白夜を発動してくれ!」

 

「よっしゃ!それで行くぞ!」

 

「万全の策とは言えない。油断するなよ一夏!」

 

 俺達はラウラを救うべく飛び出した。

 

「く⋯⋯⋯⋯一夏、啓吾⋯⋯⋯」

 

「箒!大丈夫?」

 

「あぁ、なんのこれしき⋯⋯⋯⋯不覚だ、私に力があれば⋯⋯⋯」

 

「言っても仕様が無いよ。今は任せよう」

 

「うむ⋯⋯⋯⋯頼んだぞ二人とも、ラウラを助け出すんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯縛り上げろ、蛟!」

 

 一夏が零落白夜を発動出来る様に俺は蛟でI Sのボディを縛り上げる。

 

「今だ一夏!レーゲンに攻撃をーーー」

 

「分かっている!うおおおォォ!!」

 

 一夏が突貫しようとした矢先、突如白式の動きが止まる。そして雪片によって吹き飛ばされてしまう。

 

「がぁ⋯⋯⋯⋯!!」

 

「一夏!大丈夫か、何が起こった!?」

 

「クソ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯『停止結界』か。あのI S、レーゲンの能力まで使えるのか!」

 

「チ、よくも一夏を!」

 

 俺はI Sを縛り上げたまま振り回そうとするが、機体から突然ワイヤーブレードが伸び、海神のボディを深く傷つけていく。

 

「ぐうううう!頼む海神、まだ持ってくれ⋯⋯⋯⋯⋯⋯!?」

 

 その衝撃で思わず蛟を緩めてしまいレーゲンを取り逃がしてしまう。そして間髪入れず海神に蹴りを入れてくる。

 

「しまった⋯⋯⋯⋯⋯ぐおおぉおぉ!?」

 

 蹴りによって俺と海神はアリーナの端まで吹き飛び壁にぶつかってしまう。

 

「啓吾!?」

 

「啓吾、しっかりするんだ!?」

 

「む⋯⋯⋯⋯⋯⋯ぐぅ⋯⋯!」

 

 叩き付けられた痛みを堪えながら俺はなんとか立ち上がる。

 

(くそぅ、節々が痛む⋯⋯⋯!マズいな、打開策が見つからないぞ。このままではラウラが⋯⋯⋯)

 

 なんとか突破口を見つけようと考えていると微かにレーゲンから声が聞こえてくる。

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯ぃちゃん⋯⋯⋯⋯⋯⋯お兄ちゃん⋯⋯⋯⋯一夏⋯⋯⋯!た⋯⋯⋯助け⋯⋯⋯」

 

「ラウラ⋯⋯⋯⋯!?」

 

 弱々しい声だが確かにラウラの助けを求める声が聞こえた。しかしその直後レーゲンのプラズマ手刀が俺に襲いかかる。

 

「ぐぅ!⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ラウラ!」

 

 なんとか紙一重で避けていくがもうシールドエネルギーも後が無い状況だった。

 

(俺は⋯⋯⋯⋯⋯無力だ!妹一人助けられないなんて⋯⋯⋯!)

 

 そして再び壁際まで追いつめられてしまった俺に無慈悲にも最後の攻撃が迫り来る。

 

「避けるんだ啓吾!!」

 

「啓吾!」

 

「万事休すか⋯⋯⋯⋯!」

 

    俺が半ば諦めかけたその瞬間

 

『諦めないで!』

 

 突如声が鳴り響いたかと思った次の瞬間、俺はシュヴァルツェア⋯レーゲンから全く離れた場所に居た。

 

「な⋯⋯⋯⋯!?何が起こったんだ?」

 

 俺が気付いた頃には海神のデータが更新されとある文字が表示される。

 

『     単一仕様能力(神行太保)     』

 

「瞬時加速(イグニッション⋯ブースト)にしてはあまりにも速すぎる⋯⋯⋯まさか今のは、単一仕様能力(ワンオフ⋯アビリティー)!?」

 

 考えていると再びレーゲンが俺に向かって手刀を叩き込もうとする。

 

「チィ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯て、えぇ!?」

 

 避けようと思った次の瞬間、すでに俺はレーゲンの背後をとっていた。

 

「啓吾!一体何が起こっているんだ!だって、啓吾がメチャクチャ速く行ったり来たりって⋯⋯⋯」

 

 

「分かった事が一つ、コレが俺の単一仕様能力、『神行太保』だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このタイミングで単一仕様能力⋯⋯⋯!?それに⋯⋯⋯しんこう、たいほう?」

 

「神行太保⋯⋯⋯⋯⋯⋯そうか!」

 

 箒が納得した様に言った。

 

「箒、何か分かったの?」

 

「シャルル、水滸伝という話は知ってるか?」

 

「えっと確か中国の古い物語だったよね。それがどうしたの?」

 

「あぁ、水滸伝の中に『天速星 戴 宗(たい そう)』という人物が登場するんだが、一日に八百里⋯⋯⋯⋯⋯約400kmも走ることができる神行法という道術が仕えることから 神行太保(しんこうたいほう)という諢名で呼ばれているんだ」

 

「それじゃあ、あの単一仕様能力はーー」

 

「うむ!これなら勝てるやもしれない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏、零落白夜はまだ使えそうか?」

 

「大丈夫だ、でもおそらく最後のチャンスだろう」

 

「一回もあれば十分だ!俺がかく乱する、隙を見つけて一夏はラウラを救い出せ!」

 

「分かった!」

 

 俺達はこのチャンスにすべてをかけた。

 

「よし、『神行太保』!!」

 

 停止結界すらもさせない速度で攻撃を続け、そして遂にレーゲンが膝をつく。相手の牙城を崩すまで後一歩とせまった。

 

「今だ一夏!ラウラを救え!!」

 

「おぉ!『零落白夜』、うおおォォォォォ!!!」

 

 

 白式がレーゲンのボディを切り裂いた直後、機体が崩れ一夏の腕の中にラウラが収まった。

 

「ラウラ!しっかりしろ!」

 

「一夏、ラウラは無事か!!?」

 

「少し落ち着け、呼吸はある。気を失ってるだけだ」

 

「そ⋯⋯⋯⋯そうか。良かった〜〜〜〜⋯⋯⋯⋯⋯」

 

「ん⋯⋯⋯⋯うぅ⋯⋯⋯」

 

 気が付いたのだろう、ラウラの目が開いた。

 

「ラウラ!?大丈夫か?」

 

「お兄ちゃん⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯それに、一夏⋯⋯⋯⋯そうか、二人が助けてくれたんだな⋯⋯」

 

「まったく⋯⋯⋯心配かけさせやがって!死んだかとおもったぞ!」

 

「まあまあ、とりあえず休もう。もうクタクタだよ⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

「まぁ、それもそうか!」

 

(しかし俺を救ってくれたあの声⋯⋯⋯⋯一体なんなんだ?)

 

 それからの顛末はこうだ。第1試合の最中にラウラのISが暴走したことにより中止となり、残りの生徒はデータ測定目的とした一回戦のみ行った。

そして突然ラウラを襲った『ヴァルキリー⋯トレース⋯システム』。元々は過去のモンド⋯グロッソ優勝者の戦闘方法をデータ化し、そのまま再現⋯実行するシステムらしい。しかしパイロットに「能力以上のスペック」を要求するため、肉体に莫大な負荷が掛かり、場合によっては生命が危ぶまれるので、現在あらゆる企業⋯国家での開発が禁止されている。それが今回、一部のドイツ軍上層部の隠蔽が露見し責任を問われ、関係者は称号の剥奪及び賠償金、国外追放になったらしい。まぁ俺からしたら軽すぎるくらいの罰だ。なんてったって俺の妹を傷つけたんだから。

まったく⋯⋯⋯⋯⋯クラス対抗戦と言いトーナメントと言い俺達の周りは奇妙なイベントばかり起きるな。

 

 

そして数日後、俺にもう一つの嬉しいイベントが飛び込んでくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     〜1年1組〜

 

 事件の発端は今日の朝、ホームルーム前。

 

「お前は私の嫁にする!決定事項だ!異論は認めん!」

 

 ラウラが一夏のファーストキスを奪ってからの爆弾発言に皆が騒然となる。

 

「まぁ!とっても大胆ですわ!」

 

「わ〜お!」

 

「ま、待てラウラ!一体何故キスなんか!?今のがファーストキスなんだぞ!それに俺は嫁にはなれない!」

 

「そ、そうだ!離れろ!⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯それに私だっていつか一夏とキ、キスを⋯⋯⋯⋯///」

 

「日本では気に入った相手を『嫁にする』というのが一般的な習わしだと聞いた。故に、お前を私の嫁にする」

 

「ままままま待つんだ賢妹よ。それは時期尚早と言うモノだぞ!お兄ちゃんそんなの許さんけんね!」

 

「啓吾さんも落ち着いて下さいまし!キャラがブレブレですわ!」

 

「む⋯⋯⋯ラウラ、もう眼帯は付けないのか?」

 

「うむ、せめてこの学園に居る時くらい自分をさらけ出そうとおもってな」

 

「綺麗なオッドアイ⋯⋯⋯⋯⋯今まで眼帯をしていたのが勿体ない位ですわ」

 

「そ、そうか⋯⋯⋯?///」

 

 朝から一悶着が起きるが事件はこれだけでは終わらなかった。皆が言い争っていると少し窶れた様子で山田先生が教室に入ってくる。

 

「み、みなさん、おはようございま〜す⋯⋯⋯⋯⋯」

 

「どうしたんですの山田先生?そんなにおずおずと教室に入ってきて」

 

 不審に思ったセシリアが山田先生に尋ねる。

 

「今日は、ですね⋯⋯⋯転入生を紹介します。転校生と言いますか、すでに紹介は済んでいるといいますか⋯⋯⋯」

 

「このタイミングでまた転校生か⋯⋯⋯⋯⋯啓吾は誰か知ってるか?」

 

「そうだな箒、おそらく皆が知る人物だ♪」

 

「はて?私たちも知っている人物⋯⋯⋯?」

 

「ええと⋯⋯⋯じゃあ、入ってください」

   

「失礼します」

 

そして入って来たのは――――

 

「シャルル⋯デュノア改め、『金城シャルロット』です。皆さん、改めてよろしくお願いします」

 

 入ってきた一人の美少女に皆が絶句する。

 

 

 

「え?デュノア君って女の子⋯⋯⋯?」

 

「ていうか、『金城』ってひょっとして⋯⋯⋯ひょっとすると⋯⋯」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯さすがに俺も想像付かなかった展開だな」

 

「けけけけ啓吾さん、説明して下さいまし!そうじゃないとわたくし許さんたい!」

 

「まてセシリア、お前も相当キャラがブレてるぞ」

 

「とにかく説明させてくれ。実を言うと先日トーナメントが終わった後ーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     〜2日前〜

 

「よぉ啓吾!久しぶりじゃないか!」

 

「すまん親父、わざわざ本土まで来てもらって」

 

「いや良いんだ、倅の頼みなんだ。何処へでも駆けつけるさ」

 

 実はシャルが女だと分かった後、親父に連絡して『シャルが一人前になるまで、衣食住の援助をして欲しい』と願い出ていた。正直これから小遣いも貰えなくても良いと考えていたが、親父はコレを快く承諾してくれた。してくれたはずだった。

 

「ふむ⋯⋯⋯⋯⋯⋯君がシャルロット⋯デュノアさんだね」

 

「は、はい!シャルロット⋯デュノアです」

 

「そうか、息子から話は聞いている⋯⋯⋯⋯⋯⋯随分と苦労をしたみたいだな」

 

「はい⋯⋯⋯⋯」

 

 少し重苦しい空気が流れる。

 

「とにかく本題に入ろう、息子は君の衣食住を助けて欲しいとこの間言ってきた。電話越しではあったが、息子は誠心誠意君を助けたいと思っている気持ちは伝わった。だからこうやって会いにきたのだよ」

 

「ご迷惑をおかけして申し訳ありません⋯⋯⋯⋯」

 

「別に迷惑だなんて思ってないさ!こうやって会ってみたら、なんとまぁ器量の良い娘さんじゃないか!」

 

「そ、そんなことありませんよ!」

 

「ハハハ!まぁこの辺りにして、君の援助の件なんだが一つ提案があるんだが」

 

「⋯⋯⋯?なんなんだ親父」

 

「実は⋯⋯⋯⋯⋯家の養女にならないか?」

 

「え!?」

 

「よ、養女!?」

 

 親父の提案に俺達はビックリした。

 

「うむ、衣食住の援助などとは言わず家の家族になって欲しい。実を言うと家内がな⋯⋯⋯⋯以前から娘が欲しいと言ってきたんだ。それに我が家はほぼ男所帯だ。娘が出来れば花が咲くよ言うもんだ。それに」

 

「そ、それに?」

 

「こうして話してみるとなんとも真面目で優しい子じゃないか!気に入った!」

 

「で、でも勝手に養女にするなんて言ったら実家の者が黙ってません!それではご迷惑がかかってしまいます!

 

 親父の提案にシャルは慌てて返答する。

 

「その辺は大丈夫だ。なんせ学園長にもう話してあるからな」

 

(な⋯⋯⋯!?I S学園の学園長といったら会う事はおろか、中々話す機会も無い筈だぞ!一体どうやって⋯⋯⋯)

 

「この事を重く見た学園側がすでに会社に使いを送ったらしい。すぐに不正が明らかになるとの事らしい」

 

「で、でも!」

 

「なんだまだ何か不安があるのか?」

 

「本当に⋯⋯⋯⋯⋯⋯本当にお邪魔じゃないですか?こんな見ず知らずのボクにーー」

 

 親父はシャルの言葉を制した。

 

「見ず知らずなんて事は無い。息子が君の事を想い、そして今日君と言葉を交わしたんだ。もう我々は家族だ、遠慮する事は無い」

 

「本当に⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯グスッ⋯⋯⋯⋯⋯家族で良いん⋯⋯⋯ですか?」

 

 恐らくコレが最後の質問になるだろう。シャルの目から大粒の涙が溢れる。

 

「もう良いだろシャル、親父もこう言ってるんだ。これから俺達も兄妹だ!」

 

「本当に⋯⋯⋯⋯本当にありがとう⋯⋯⋯!」

 

「よし、じゃあ二人とも。夏休み帰ってくる時を楽しみにしてるぞ!」

 

「あぁ!」

 

「はい⋯⋯⋯⋯⋯⋯伯父さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが事の次第だ」

 

「そうなんですの⋯⋯⋯⋯⋯⋯シャルロットさん、苦労なさったのですね」

 

「セシリア⋯⋯⋯うん⋯⋯⋯そうなんだ」

 

「でも今後、このクラスに居る限りは隠し事はなしだぞ」

 

「そうそう、みんな友達なんだから!」

 

「こんなに面白いクラスメイトが居るともっと賑やかになるからね!」

 

「箒⋯⋯⋯皆⋯⋯⋯!」

 

 クラスメイトの励ましに思わずシャルはまた泣きだしそうになる。

 

「ほら、まったく泣き虫だな!もう一人じゃないんだ。だから心配するな、な?」

 

「うん⋯⋯⋯⋯⋯エヘヘ、これからもよろしくね、()()()()()!」

 

 この言葉に異を唱える者が一人居た。

 

「待て!私のお兄ちゃんだ、横取りは許さん!」

 

 ラウラはそう言うと俺の手を引っ張ってきた。

 

「む、啓吾はボクのお兄ちゃんなんだから離してよ!」

 

「おい二人とも落ち着け!」

 

「嫁よ、お前にとっても兄に当たる人間なんだ。私を助けろ!」

 

「へ!?えーと⋯⋯⋯⋯義兄さん?」

 

「そう言っちゃうと織斑先生は俺の義姉さんになるぞ」

 

「おい、勝手に巻き込むな!」

 

 

 雨降って地固まるとは良く言った物だな。啀み合っていた俺達だったけど結局丸く収まった。それに、せっかく可愛い妹が出来たんだ。これから夏本番、いろんな経験をさせてやらないとな!

 

 

 




「今回は文字数多いぞ!」

「まぁ釣りはしてないけどな」

「ぐ・・・・それを突かれると痛いが大丈夫、次回はちゃんと釣りをするからな」

「次回は天ぷらで美味しいあの魚ですわ!」

「お楽しみにな!」
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