I S-釣りバカ日誌-   作:ソーダガツオ

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ダイアモンドだね(´・ω・`)


第17話 我は海の子

   

 

『我が名は海神!これからは貴方の盾となり矛となります!さぁ御主人、共に参りましょう!!』

 

 

 

 水しぶきを上げて躍り出たその姿に先程までの痛々しい傷はなかった。酷く爛れた装甲は以前より猛々しい姿で復活しており、深き海の如く輝くボディは正に海の神に相応しい出で立ちだ。

 

 

 

 

 

 

       そして何より⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯『彼女』は喋ったのである。

 

 

『さぁ、行きましょう御主人!』

 

「え⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯えぇ〜⋯⋯」

 

『ど、どうかしましたか?』

 

「いや、非常時にアレなんだけどさ⋯⋯⋯⋯お前喋れんの!?」

 

 勿論、面喰らったのも無理は無い!突然自分のI Sが喋ったのである。そりゃ誰だって驚きたくはなるだろう。

 

『はい、人工知能がこんな事を言うのも変ですけど、もともと意識はあったんです。ただ今まで意思を疎通することができなくて⋯⋯⋯⋯でも第二形態移行してくれたお陰でようやく言葉を交わす事が出来ました!これからは御主人を全力でバックアップしていくつもりなので大船に乗った気持ちでドンと構えてくださいね!』

 

 彼女が人工知能という事にも驚きだがここまで流暢に喋られるともっと驚きたくなる。そして男『金城啓吾』、ここまでのSF世界について行けない。

 

「ま⋯⋯⋯また自分のI Sに変な性能が着いた⋯⋯⋯」

 

『ちょ、変な性能ってなに!?せっかく死の淵から助けてあげたのに!』

 

「痛いのは痛いぞ⋯⋯⋯⋯本当はドッキリか何かじゃないのか?実は福音も千冬先生が操ってたり」

 

『何呑気な事言って⋯⋯⋯⋯⋯!ほら、来ますよ!』

 

「キアアアアアアア⋯⋯!!」

 

 殺した筈の害虫がまた動き出した時の様に怒り狂った声を上げながら、再び福音が突進してくる。

 

「クソ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯何か作戦とかないの!?」

 

『福音の最大の武器はエネルギー翼です!だからまずあの翼を無力化して!』

 

「無力化って言ったって一体どうすれば⋯⋯⋯」

 

『言ったでしょう!セカンドシフトしたのは此方もです!負けはしない筈!』

 

「そ、そうか!よし⋯⋯⋯⋯」

 

 早速データを確認する。一次形態だった頃、唯一の武器だった『蛟』は二次移行して『蛟竜』になっていた。

 

『使い方は前と変わらない、思いっきりやってください!』

 

「分かった⋯⋯⋯⋯⋯⋯行こう、海神!!」

 

『はい!』

 

 今再び海神vs福音の戦いが幕を開ける。

 

「行け、蛟竜!ヤツを縛り上げろ!」

 

 福音に向かって槍先を飛ばす。しかしそれは、福音の左足を少し掠めたに過ぎなかった⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯過ぎなかったのだが

 

「キアアアアアアア⋯⋯!!??」

 

「ちょ、アイツの左足が吹き飛んだぞ!?」 

 

 そう、ただ掠めただけだった攻撃が、福音の左足を粉砕したのだった。

 

『スゴい⋯⋯⋯⋯⋯⋯当人である私もビックリです。でも⋯⋯⋯⋯』

 

「キアアアアアアアアアアアァァァァァァ⋯⋯!!!!」

 

『致命傷ではないみたいですね、むしろ怒らせてしまったみたいです!』

 

 どうやらそうらしい。ますます声を荒げ、此方を睨みつけてくる!

 

「I Sにそんな感情があるのかよ!?」

 

『なら貴方とこうして会話してるのは誰なんですか!?』

 

「そうは言ってもだな⋯⋯⋯⋯⋯⋯て、うわ!?」

 

 本当に怒り狂ったのか、福音は所構わずエネルギー弾を乱射し始めた。

 

「なんだコイツ⋯⋯⋯今度はお構い無しか!」

 

『これじゃあ近づけない⋯⋯!』

 

 このまま振り出しに戻るのかと思われたその時⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でやああああああぁぁ!!!」「はあああぁぁぁぁ!!!」

 

 白と赤の、二筋の光が福音の翼を切り裂く。俺が光を見やるとそこに居たのは⋯⋯⋯⋯

 

 

「大丈夫か、啓吾!」

 

「すまない、遅くなってしまった!」

 

 戦場に舞い戻ってきた箒、そして新たな姿の白式に搭乗する一夏の姿があった。

 

「箒⋯⋯⋯⋯⋯!一夏⋯⋯⋯⋯⋯!!」

 

「大丈夫か啓吾、随分遅くなっちゃったけど⋯⋯⋯⋯」

 

「一夏⋯⋯⋯⋯余裕だよ、お釣りが帰ってくるぐらいだ」

 

『まったく、さっきまで死にかけてたでしょうに』

 

「⋯⋯⋯⋯?今だれが話したんだ?」

 

 一夏が首を傾げる。

 

「あ〜⋯⋯⋯⋯⋯その⋯⋯だな⋯⋯⋯」

 

『私、海神です。改めてよろしくおねがいします!一夏さん、箒さん!』

 

「「え⋯⋯⋯⋯えぇ!?!?」」

 

 そりゃびっくりするだろう。海神の突然の自己紹介に二人は素っ頓狂な声をあげる。

 

「I Sってしゃべるんだ⋯⋯⋯」

 

「そりゃあビックリするよな⋯⋯⋯⋯ところで一夏、身体は大丈夫なのか?」

 

 そう、一夏はさっきまで意識が無かったんだ。だから何処か不具合があっても可笑しくない筈である。

 

「まぁ多少痛むけど⋯⋯⋯⋯さっき箒に運ばれてる時、夢を見たんだ」

 

「夢を?」

 

「あぁ、何も無い所でな。そこで女性だったかな?誰かに『友人が危ない』って言われて目が覚めたら、白式まで変わってるんだからびっくりしたよ。ただその言葉を聞いて、いてもたってもいられなくなって、ここまで戻って来たんだ」

 

「そうだったのか⋯⋯⋯⋯サンキュー、一夏、ナイスタイミングだよ」

 

「その⋯⋯⋯⋯⋯啓吾」

 

 すると箒が会話の中に入ってくる。

 

「⋯⋯⋯⋯⋯?どうしたんだ箒」

 

「私は⋯⋯⋯⋯⋯⋯お前に謝らなければいけない」

 

「どうしてだ箒?」

 

「その⋯⋯⋯⋯嫉妬していたんだ。皆から兄の様に慕われて、私の持ってない物を持つお前に⋯⋯⋯」

 

「箒⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

「そして今回、紅椿を手に入れた事に酔いしれて浮かれていたんだ。そのせいで一夏も、そして啓吾も傷つける結果となってしまった」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯」

 

「だから⋯⋯⋯⋯⋯だからゴメンナサイ!!今すぐ許してくれなくたって良い!だからーー」

 

 俺は箒が言い切る前に頭に手を置いてやる。

 

「んな⋯⋯⋯⋯⋯け、啓吾!?////」

 

「良いんだよ箒、それで良い。若い内は沢山失敗してそこから学んでいくもんさ。そう深く考えるな」

 

「で、でも⋯⋯⋯⋯⋯」

 

「なあ箒、それなら俺の言う事を一つ聞いてくれ。かならず無事に皆の元に帰る事、俺が今望んでるのはそれだけだよ」

 

「啓吾⋯⋯⋯」

 

 今まで悲痛な顔をしていた箒の表情が変わる。

 

(私にも⋯⋯⋯⋯⋯啓吾みたいな兄がいたら⋯⋯⋯)

 

『⋯⋯⋯⋯!皆さん、そろそろ福音が活動再開します!気をつけて!』

 

「おっと⋯⋯⋯そろそろ来るか!」

 

 ダメージを受けて機能停止したかに思われた銀の福音が再起動する。もはや標的は関係なく、狂った様に弾を乱射し始めた。

 

「海神、ダメージが入ってる割には奴さん、随分げんきそうだぞ⋯⋯⋯⋯」

 

『クッ⋯⋯⋯⋯⋯!誰かが福音の動きを止めてくれたらあるいは⋯⋯⋯!」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯!それならわたしが囮になろう!」

 

『ですがそれでは箒さんが危険です!』

 

「これは私の罪滅ぼしでもあるんだ!だから頼む!」

 

 箒なりに責任を感じてるのであろう、少し無謀な賭けを持ち出してくる。

 

『しかし流石に一人ではーー!』

 

「ーーーでしたらその任、わたくし達も引き受けましょう!」

 

「な⋯⋯⋯⋯⋯セシリア!?」

 

「我々もいるぞ!」

 

 そこにはセシリアを筆頭とし、鈴、シャル、ラウラが各々のI Sを纏って登場した。

 

「まったく、アンタ達が全然帰って来ないから千冬さんに黙って来ちゃったわよ!」

 

「お兄ちゃん、セシリアから、突然お兄ちゃんが一夏達の所に行ったって聞いたからビックリしたんだよ?」

 

「鈴⋯⋯⋯⋯シャル⋯⋯⋯⋯」

 

「嫁も心配したぞ!どうしたんだその傷とI Sは!?」

 

「ら、ラウラ⋯⋯⋯⋯⋯⋯ちょっと色々あってな⋯⋯」

 

 皆顔を見合わせ無事な姿に安堵している様子だったがセシリアだけが違っていた。

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯啓吾さん」

 

「は、はい⋯⋯⋯⋯⋯」

 

「わたくし、とってもと〜っても怒っております」

 

「せ、セシリアさん?」

 

 構わずセシリアは続ける。

 

「突然何か言いだしたかと思えば勝手に飛び出して⋯⋯⋯」

 

「い、いやさセシリア⋯⋯⋯⋯本当に行かなかったら大変な事に⋯⋯」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯ゴメンナサイは?」

 

「え⋯⋯⋯いや⋯⋯⋯その⋯⋯」

 

「ゴ メ ン ナ サ イ は ?」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯ご、ご免なさい⋯⋯⋯」

 

 セシリアの迫力に俺も思わず謝ってしまう。

 

「まったく⋯⋯⋯⋯⋯本当に⋯⋯⋯⋯本当に心配したのですからね!」

 

「セシリア⋯⋯⋯⋯⋯」

 

 俺はセシリアの目に涙が溜まるのがわかる。どうやら相当心配を掛けてしまったらしいな。

 

「ゴメンよセシリア、もうあんな無茶な事はしないさ」

 

「啓吾さん⋯⋯⋯⋯」

 

『⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯オホン、そろそろ宜しいでしょうか?』

 

「!?あ、ああワリぃ!」

 

「そういえばさっきから如何して啓吾さんのI Sが喋ってるんですの!?」

 

『その事は後で!作戦をお伝えします。シャルロットさん、鈴音さん、ラウラさん、セシリアさんは福音に牽制しつつ動きを抑えてください』

 

「うむ、お前が誰か分からんがその作戦に乗ろうではないか!」

 

『次に御主人、箒さんがまだ断ち切れてない両翼を無力化してください。ここまで来たらほとんど脅威は無いと言っても良いでしょう』

 

「海神⋯⋯⋯分かったやってみよう!」

 

『最後に一夏さん、貴方は機能が低下した福音に対して零落白夜を使用、これで福音は完全に沈黙します』

 

「なんだか俺だけ良いとこ取りじゃないか?」

 

『この作戦の要なんですから文句を言わない!では皆さん、作戦開始です!』

 

 海神が作戦の始まりを宣言すると同時にセシリアを含めた4人が一斉に飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、行くよラウラ!」

 

「おお、任せておけ!」

 

 まずはラウラのレールカノン、シャルの連装ショットガンが炸裂する。福音に入ったダメージは大きくない物の、最初より動きが鈍って来たのは分かった。

 

「キアアアアアアアアアアアァァァァァァ⋯⋯!!!!」

 

「メチャクチャ五月蝿いヤツね⋯⋯⋯セシリア、前みたいに全くコンビネーションが合わないなんて事は無い様にね!」

 

「その台詞、そのままそっくり鈴さんにお返ししますわ!」

 

 憎まれ口は叩くモノの、以前の様にコンビネーションの合わなかった二人はもう居ない。スターライトmkIIIと龍咆の同時攻撃で福音は体制を大きく崩す。強敵の牙城が崩れた瞬間だった。

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯行こうか箒、海神!」

 

「うむ、任せておけ!」

 

『ええ、共に参りましょう!』

 

「「テヤアアアァァァァァァ!!!」」

 

「キ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ア⋯⋯⋯⋯⋯ァ⋯⋯!」

 

 最大の武器を失った福音など最早的敵ではない。

 

『さあ、一夏さん!最後のトドメを!』

 

「おお!これで⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯終わりだああぁぁぁ!!」

 

 閃光一線!発動された零落白夜によって、福音は完全に動かなくなる。俺達が勝利した瞬間だった。

 

 

 

 

「お、終わったの⋯⋯⋯⋯かな?」

 

「うむ⋯⋯⋯⋯福音からエネルギーが感じられない。どうやら勝負はついたらしい」

 

「はぁ〜⋯⋯⋯緊張した⋯⋯」

 

「でも、これ絶対に織斑先生に怒られるパターンですわ⋯⋯⋯⋯」

 

「まぁ良いじゃん!皆で怒られたら怖くないわよ!」

 

「全く鈴さんは⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

  戦いは終わった。再び平和が戻り仲間達の間に和やかな空気が流れる。そのときーーー

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯!見てみろ一夏!朝日だ!」

 

「おぉ、綺麗だな!」

 

「これが日本の朝日⋯⋯⋯⋯⋯Quelle belle⋯⋯」

 

「さあ帰ろう!皆が待ってるぞ!」

 

 また再び今日という日がやってくる。俺達は暫くこの絶景に酔いしれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    〜旅館前〜

 

「まったくアイツら私の許可無く勝手に出動して⋯⋯⋯⋯」

 

「でもちーちゃん、スゴい嬉しそうな顔してるよ〜」

 

 福音が沈黙したのと同時刻、千冬先生と篠ノ之博士は俺達の帰りを待っていた。

 

「ただ福音の脅威が去った事で安心しているだけだ。帰ってきたらアイツらを叱らねばならん」

 

「ふ〜ん⋯⋯⋯⋯ま、そういう事にしておくよ!」

 

「ところで束⋯⋯⋯一つ尋ねたい事が有る」

 

 千冬先生は博士に向き直ってこう述べた。

 

「今回の事件、そしてクラス対抗戦での襲撃、やはりお前が仕組んだ物か?」

 

「う〜ん⋯⋯⋯⋯⋯⋯分っかんないな〜♪」

 

 千冬先生の質問に博士は戯けた様に答えた。

 

「あくまで白を切るか⋯⋯⋯⋯まあいい」

 

「う〜ん、もう飽きちゃったかな〜⋯⋯⋯という訳で束さんはそろそろ帰ります!じゃあねちーちゃん!」

 

「待て!もう一つ質問が有る」

 

「も〜、何ちーちゃん?束さんも結構忙しいんだけどな〜」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯お前は啓吾の事を知っている様な素振りを見せたな」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯!」

 

「お前と啓吾はどういう関係だ。過去にアイツと何があった?」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯」

 

 今まで笑顔だった博士の表情がすこし変わる。それは悲しい様な懐かしい様な複雑な表情だった。そして博士は少し考えた後こう答える。

 

「今はあんまり詳しい事は言えないけど⋯⋯⋯⋯一つだけ教えてあげる!」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯?」

 

「啓くんはね〜⋯⋯⋯⋯⋯⋯束さんの恩人でした!それじゃあね、ちーちゃん!」

 

「恩人⋯⋯⋯?おい、それは一体どういうーーーー」

 

「千冬先生〜!」

 

「ーーー!お前達!」

 

「銀の福音沈黙作戦、完了しました〜!」

 

 意気揚々と帰ってきた俺達に対し千冬先生が微笑む。しかしその目は笑っていなかった。

 

「ほう、散々命令を無視しての作戦はさぞ大変だったろうな⋯⋯」

 

「え〜と⋯⋯⋯織斑教官、コレには深〜い事情が⋯⋯⋯」

 

「なるほどな⋯⋯⋯お前の言うふか〜い事情を聞いてやろうじゃないか。なぁラウラ?」

 

「ひ、ヒィ⋯⋯⋯!?」

 

「ま、待ってくれ千冬先生!責めは俺が受ける。コイツらはただ俺の命令違反をフォローしてくれただけなんだ!だから許してやってくれ!」

 

 そう言って俺は先生に頭を下げた。

 

「ちょ、お兄ちゃん!」

 

「待って下さいまし!結果としてわたくし達も命令違反したのは変わりませんわ!だから処罰は我々にも⋯⋯⋯」

 

「まったく⋯⋯⋯⋯⋯分かった、何も言うな。今回の事は予想だにもしてなかった事だ。特別に不問としてやる」

 

「教官⋯⋯⋯!」

 

「先生⋯⋯⋯⋯⋯ありがとうございます!」

 

「さっさと旅館に戻れ、スグに朝食が始まるぞ。⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯それから」

 

 千冬先生が続ける。

 

「よくぞこの作戦を遂行させた!私は教師としてお前達を誇りに想う」

 

 さっきまでとは違い、今度は心からの優しい笑みで俺達を迎えてくれた。

 

「織斑先生⋯⋯⋯⋯」

 

「さぁ行け⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯それと金城だけ残れ。少し話したい事が有る」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯?わ、分かりました。皆先に行っててくれ」

 

「あぁ、啓吾も早く来いよ!」

 

 皆が行ったのを確認したら先生の方へ振り返る。

 

「それで、何でしょう?」

 

「その、束⋯⋯⋯⋯⋯⋯篠ノ之博士とは一体どういった関係なんだ?」

 

「博士と?」

 

 そう、先生の質問は俺と博士の関係性によるものだった。

 

「アイツはお前を知っている様子のそぶりを見せていた。過去にアイツと何かあったのか?」

 

「確かにそうでしたね。でも⋯⋯⋯⋯⋯実は分からないんです」

 

 俺は正直に質問に答える。

 

「分からない?博士はお前に恩があると言ってたがそれはーーー」

 

『そこから先は私がこたえましょう』

 

「!?!?!?」

 

 突然、海神が会話に介入してくる。それを聞いた千冬先生が驚愕の表情に変わった。

 

「な な な!??と、突然I Sが⋯⋯⋯!?」

 

「あー、まぁそうなりますよねー」

 

『その、御主人と篠ノ之博士の関係は分かりませんが一つだけ分かっている事が』

 

「⋯⋯⋯?何なんだ海神?」

 

『実は博士が御主人への「恩返し」と称して造られたのがこの私なのです』

 

 海神の口?から衝撃の事実が判明した。自らのI Sは創設者、篠ノ之博士自らの手で造られたという事だった。この事実に俺も先生も驚きが隠せない。

 

「博士が⋯⋯⋯⋯どうして⋯⋯⋯!?」

 

『分かりません。ただ、まずコアを生み出され、そして博士は私に高性能な人工知能を授けてくれました。機械の私が言うのも可笑しいのですが、それは()()()()()となんら遜色はないと自負しております。最後に博士は私に言いました。金城啓吾、つまり御主人、貴方の力になって欲しいと』

 

「束が⋯⋯⋯?一体どうして?」

 

(やっぱり俺はあの人と何処かで会っている!でも、一体どこで⋯⋯⋯⋯⋯ダメだ!何も思いだせない!)

 

 深まる謎に俺は頭を抱えた。

 

「分からない事が多いが⋯⋯⋯一先ずこの話は置いておく。金城、引き止めて済まなかったな」

 

「いえ⋯⋯⋯⋯⋯それじゃあ、朝風呂に入ったらすぐに大広間に向かいます」

 

「分かった。それとーーー」

 

「何です⋯⋯⋯⋯⋯!?」

 

 旅館に戻ろうと想った矢先、突然千冬先生が抱きついて来た。

 

「ちょ、千冬先生!?」

 

「啓吾⋯⋯⋯⋯一夏を⋯⋯⋯⋯⋯弟を救ってくれて本当にありがとう⋯⋯⋯!」

 

「先生⋯⋯⋯」

 

「正直に言うと怖かったのだ⋯⋯⋯この作戦でたった一人の家族を失うかもしれないと想うと⋯⋯⋯⋯とても怖かったのだ⋯⋯」

 

 何時もの千冬先生らしからぬ弱気な発言。声は掠れ身体は震えている。世界最強と謳われた人間が、初めて家族以外の者に弱さを見せた瞬間だった。

 

「大丈夫だよ先生、皆ちゃんと帰ってこれたんだからさ。そんな顔しないでくれよ」

 

 俺は精一杯の優しさで千冬先生を慰めてみる。

 

「啓吾⋯⋯⋯⋯済まない、情けない所を見せてしまったな」

 

「別に構わないさ、ブリュンヒルデも人の子だと分かったからさ」

 

「む⋯⋯⋯⋯それでは私がまるで化物みたいじゃないか!」

 

「ハハハ!そこまでは言ってないよ」

 

「まったく⋯⋯⋯⋯ほら、さっさと支度してこい!」

 

「分かりました!それじゃあ先生、また後で!」

 

 世辞を終えると俺は朝風呂へと直行して行った。

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ありがとう、啓吾」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    〜旅館大広間〜

 

「え〜!ケンケンの海神、喋る様になったの〜!?」

 

「とても⋯⋯⋯興味深い⋯⋯」

 

 俺は大広間に入った瞬間、待ち構えていた簪とのほほんさんに質問攻めを受けてしまった。

 

『簪さんに本音さんですね。私は海神、以後どうぞよろしくお願いします!』

 

「お〜〜!!」

 

「特撮ヒーローみたいで⋯⋯⋯カッコいい⋯⋯⋯!」

 

「い、いやさ、ほら皆待ってるから席に着きたいな〜」

 

「むぅ⋯⋯⋯⋯後でもっと見せてくれる?」

 

「見せる、見せるからそこを退いて⋯⋯⋯」

 

「分かった⋯⋯⋯⋯⋯」

 

 約束すると素直に本音と簪は引いてくれる。これでようやく朝食に在り付けるな。

 

「ハハハ、人気者だな啓吾」

 

「笑い事じゃないぜ一夏⋯⋯⋯⋯⋯昨晩の疲れが残ってるっていうのにさ」

 

「それはお互い様だろ!俺の白式が二次移行した時も質問されたけど啓吾のはもっとだったな!やっぱり喋るI Sって珍しいのかな?」

 

『珍しい以前に私だけだと思いますよ?今の所喋るI S は』

 

 海神が喋るたびに周りから歓声が上がる。

 

「なんかさ〜、人工知能っていう割には俗っぽいよな、お前」

 

『な、俗っぽいとはなんですか俗っぽいとは!?』

 

「そういった所が確かに俗っぽいかな⋯⋯⋯」

 

「うむ、それはシャルと同意見だ」

 

「右に同じね♪」

 

『そんな〜、皆さんまで⋯⋯⋯』

 

 シャル達の『俗っぽい』と言う言葉に、完全に海神はしょげてしまった。

 

「ま、まあそんなに落ち込むなよ!別に悪い事じゃ無いんだからさーー!」

 

「ねえ、ちょっと良いかしら?」

 

 俺が海神のフォローに入った時、一人の女性から声がかかる。その女性はカジュアルなブルーのサマースーツに身を包み此方を興味深そうに見つめる。年齢は二十歳ほどだろうか?

 

「貴方達が金城啓吾くんに織斑一夏くん?」

 

「は、はぁ⋯⋯⋯俺が金城啓吾で隣にいるのが一夏ですけど⋯⋯⋯貴女は?」

 

「ふふっ、私はナターシャ・ファイルス。『銀の福音』の操縦者よ」

 

「⋯⋯⋯⋯!となると貴女が!」

 

 そう、目の前に現れた女性こそアメリカのテスト操縦者にして、銀の福音の搭乗者、ナターシャ⋯ファイルスその人だった。

 

「今回は『あの子』を止めてくれて本当にありがとう、キミ達が居なかったら今頃どうなっていたか⋯⋯⋯」

 

「いえ、むしろ謝らなければいけません。貴女の大切なI Sを壊す様なマネをしてしまって⋯⋯⋯⋯」

 

 一夏は申し訳なさそうに謝る。

 

「謝る必要なんか無いわ。ああでもしなければ⋯⋯⋯⋯⋯人の命がかかってたんですもの」

 

「ナターシャさん⋯⋯⋯⋯」

 

「それに⋯⋯⋯⋯二人にはお礼をしなきゃいけないわね」

 

 ナターシャさんは自分の懐に手を入れる。

 

「お礼⋯⋯⋯?一体ーーー」

 

「フフフ⋯⋯⋯⋯♪実はわたくし、こういう者でして」

 

 懐から出て来たのは一枚の名刺だった。

 

「カリフォルニア⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯バスフィッシング協会⋯⋯⋯名誉会長!?」

 

「そう!私はキミ達が相当な釣りバカだと聞いているわ。かくいう私もジャンルは違えど自他共に認める釣りバカ、そこで二人には頼みがあるの」

 

「「た、頼みとは⋯⋯⋯?」」

 

 俺と一夏は、ナターシャさんに恐る恐る尋ねてみる。

 

「私の頼みは今年10月に協会が開催する『カリフォルニアバスフィッシンググランプリ』に参加してほしいの!」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯!!」

 

「参加してくれるなら『I S学園組』の団体として参加してくれても良いわ。お友達を呼んでも構わない」

 

 

 *この小説に出てくる企業及び団体は実在する物とは関係ありません。

 

 

「で⋯⋯⋯でもどうして俺達を⋯⋯⋯⋯?」

 

「さっきも言った通り、これは君たちへのお礼。そして同じ釣りバカとしての本能かしら」

 

「釣りバカとしての⋯⋯⋯⋯本能⋯⋯⋯」

 

「キミにも分かる筈よ。それに⋯⋯⋯⋯⋯さっきから身体の震えが止まってないわ」

 

「!!!」

 

 指摘されて漸く気が付く。たしかに身体が震えていた。しかしそれは恐怖から来るモノではない、それは自分にとっての大きな興奮だった。この時俺は、心の奥底に眠る自分が『獲物を釣り上げろ』と囁いている様にも感じた。

 

「お、俺はーーー」

 

「俺は勿論参加するぜ!」

 

 先に宣言したのは一夏だった。

 

「まだバス釣りはやった事ないけど⋯⋯⋯それでも俺は一端の釣りバカだからな。こんなビッグゲームを聞かされて興奮せずにはいられないぜ!」

 

「一夏⋯⋯⋯⋯!」

 

「最終的な決断はお兄ちゃんに任せる。だが私も釣りを始め、それに興奮を覚えた身だ。だから嫁の『釣りたい』という気持ち、私とて同じだ」

 

「ラウラ⋯⋯⋯⋯⋯」

 

「大体ラウラと同じね、せっかく釣りを始めたんだもの。凰鈴音に釣れない物はないって事を証明してやるわ!」

 

「ボクは釣りについて良く知らないけど皆がここまで熱中してるその先、ボクも見てみたいな」

 

「鈴⋯⋯シャルまで⋯⋯⋯!」

 

「私も釣りの事は知らない。だが皆のこの熱気にあてられては私も興奮を隠せないな」

 

「箒⋯⋯⋯!」

 

「フフフ、これはもう決まりですわね」

 

「セシリア⋯⋯⋯⋯⋯」

 

「啓吾さん、人には感情が抑えきれない時があります。アナタにとってそれが今なのでは?」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

 俺は少しの沈黙で考えるそして⋯⋯⋯⋯⋯

 

「ナターシャさん⋯⋯⋯」

 

「返事は⋯⋯⋯⋯決まったかしら?」

 

 もう結果は分かりきっているといった表情で彼女は微笑んだ。

 

「俺⋯⋯⋯⋯⋯大会に参加します!『チームI S学園』として必ず出場しましょう!」

 

「その言葉、待ってたわ!」

 

 ナターシャさんは俺の手を取り喜ぶ。

 

「ちょ、ナターシャさん!?」

 

「固いわね〜、今から友達なんだからさん付けなんてやめて!ナターシャって呼んでちょうだい!」

 

「な、ナターシャ⋯⋯⋯分かった。分かったから⋯⋯⋯」

 

「あら、興奮しすぎたわね!それじゃあ詳細はまた後日話すわ!see you again!」

 

 そう言ってナターシャは旅館を飛びだして行った。

 

『なんだか⋯⋯⋯⋯嵐の様な人でしたね⋯⋯⋯』

 

「全くだな⋯⋯⋯⋯⋯⋯でも」

 

『御主人?』

 

「これから⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯面白くなるな!」

 

 ここに一人の釣りバカの闘志に火がついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      〜バス内〜

 

「何時も俺達〜傷だらけ〜♪ 汗に塗れて日が暮れる〜♪」

 

「だけどハートは〜ジミーのように♪とびきりイカしたロンリーエンジェル〜♪」

 

『ジミーのように〜♪』

 

 

 

「ケイケイかっこいい〜!」

 

「織斑くんも素敵〜!」

 

 結局帰りのバスの車内でもカラオケは大盛り上がりだった。

 

「ねぇラウラ、お兄ちゃん達なに歌ってるの?」

 

「うむ、良くは分からないがお兄ちゃん曰く『ジョ○ーと俺のタイマン勝負』なんだだそうだ」

 

「⋯⋯⋯⋯?なんだか分からないけどそうなんだ」

 

「でもバス釣りか⋯⋯⋯⋯⋯私にも出来るだろうか⋯⋯⋯?」

 

 全くの初心者である箒は不安な顔になる。

 

「まぁこの中で経験者といえばお兄ちゃんだけだろうからね」

 

「しかしさっき聞いたがバス釣りはお兄ちゃんも余り手を出さないジャンルだと言ってたぞ」

 

「啓吾が手を出さない釣りなんてあるのか!?」

 

「そりゃ、釣りと一言で言っても色んなジャンルがあるからな」

 

 歌を歌い終わって俺は席に着く。

 

「参加を決めたは良いけど⋯⋯⋯⋯勝算はあるのか⋯⋯?」

 

「別に俺は優勝賞金とかが目当てで参加する訳じゃないぜ?ただ釣りがやりたいから参加するんだ」

 

 そう、俺は優勝が目標じゃない。ただ一人の釣りバカとして目一杯楽しみたいから参加するだけである。

 

「まぁ、そこで惨めな目に遭うのも嫌だからな、特訓はするさ」

 

「特訓⋯⋯⋯?」

 

「その時になったら皆にも言うさ、さてと、帰ったら何釣ろうかな〜」

 

「お、良いな!前みたいにキスなんてどうだ」

 

「嫁よ、キスは釣ったばかりじゃないか。私はもっと他の魚を釣りたいぞ!」

 

「フフ、結局釣りバカが揃うと釣りの話にしかなりませんね♪」

 

「そういうセシリアもなんだか楽しそうじゃないか」

 

「箒さんこそ、さっきからずっと笑顔ですわよ?」

 

 二人は思わず吹き出す。

 

「それじゃあ帰ったらーーー」

 

 こうして俺達は学園まで戻って行った。そして再び俺達の『釣りバカ日誌』が始まるーーー。

 

 

 

 

 




「な、長かった・・・」

「今回は釣りをしなかったの?」

「あんまり行き詰まることも無かったしね」

「そして次回!再び釣りが始まるよ!ヒントは歯の鋭い獰猛な魚だよ!」

「「次回もお楽しみに!」」
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