〜1年1組〜
「以上が夏休みついての注意点だ。皆、宿題を忘れないようにしろ」
今日は1学期最後の日、学期の節目である。早々に終業式を終えて、半ドンで千冬先生の言葉さえ終われば後は夏休みといった所である。
「では、I S学園1学期を終了とする!」
「起立!礼!」
「「「ありがとうございました!!!」」」
クラス代表の一夏の言葉で終礼が終わる。俺達は本格的に夏休みに入った。
「疲れた〜〜〜!!」
「お疲れさまだね、一夏」
「でもようやく夏休み、楽しみですわ!」
セシリアの言う通り、これからは学生達の天国、夏休みが始まるのである。
「・・・・・・それでお兄ちゃん、今日はどうするの?」
「もう決めてあるよ、前言った様に今日は慰安パーティーだからな」
『はい、違うクラスの鈴さん、簪さんを含めて1学期の集大成としてこの企画を2週間前から計画してましたね』
その通り、実は2週間前から何時ものメンバーでパーティーをしようと決めてあった。所謂『お疲れさま会』である。
「でも食材はどうするんだ?」
「もちろん決まってるだろ、今から穫りに行くんだよ」
箒の質問に一夏は当たり前だといった風に答えた。
「今日の為に船を出してくれる知人がいるからな。せっかくなんだし豪勢にやらなきゃ」
「でも流石に魚ばっかりじゃ飽きちゃうよ。それならボクとラウラで野菜とお肉を買ってくるね」
「ん・・・分かった。それじゃあ一夏、ヤっさんが待ってるから1時間後に埠頭前で集合な」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「・・・?どうしたんだ箒」
突然、箒が尋ねてくる。
「その・・・今回は私も連れて行ってくれないか?」
「箒・・・・また如何して?」
「私はまだ釣りに行った事が無いから・・・もし良ければ連れて行ってはくれないか?」
そう言って彼女は俺を見つめてくる。どうやらその言葉に嘘偽りは無い様子だ。
「その・・・・・どうだろうか・・・?」
「ううん・・・どうする啓吾?」
「良いんじゃないか?俺は反対じゃないぞ」
「い、良いのか!?」
「別に反対はしないさ。一夏も良いだろ?」
「箒がやりたいって言うなら構わないぜ」
一夏の一言に箒の顔が綻んだ。
「それじゃあボク達は買い出しに行ってくるよ」
「ありがとうシャル、じゃあ一時間後に埠頭前で集合な」
「オッケーだ!」
「わ、分かった・・・!」
〜第三あかつき丸船上〜
「なんだ啓吾、今日はガールフレンドまで連れてきたのか」
「いやさヤっさん、何方かというと一夏のガールフレンドなんだ・・・」
「・・・・・その割には随分と距離感があるな」
「まぁ一夏は鈍感だからな」
『ひどい唐変木ですからね』
「誰だ今の」
「・・・・・?何の話をしてるんだ二人とも?」
「あ・・・あぁ何でも無いよ!ほら、そろそろポイントに到着するぞ!」
斯くして俺達は今回の釣りのポイントに到着した。
*
「そういえば一体何を釣るんだ?」
「良く聞いてくれたな。今日はちょうど食べ頃をを迎える『チダイ』を釣ろう」
「チダイ・・・・?鯛なのか?」
「そう、鯛の仲間だ。釣り人の間では『ハナダイ』と呼んだ方が分かり易いな」
『たしか、ハナダイは関東での呼び方でもありますね』
因に『タイ』と名の付く魚は沢山いるけど、チダイを始め、キダイやクロダイ、ヘダイなタイ科に属する本当の意味でのマダイの仲間は数十種に限られてるぞ。
「でも・・・・初めての私に取っては少し敷居が高くないだろうか・・・?」
「そんなことないさ、今回は初心者でも比較的簡単に釣れる『タイラバ』を紹介しよう」
「タイラバ・・?」
〜チダイの船釣り(タイラバ編)〜
タイラバは、マダイ釣りの伝統漁法の漁具である鯛カブラを遊漁用に改良したものだ。エサを付けずに使うので、ルアーの一種ともいえるな。メインターゲットはマダイだが、チダイはもちろんのこと、マゴチやホウボウ、カサゴ、カンパチ、エソなど、さまざまな魚を釣ることができるぞ。
「でもこれはルアーだろう・・・やっぱり繊細な動かし方を要求されるんじゃないか?」
「そんなことはないよ、実際にやってみるから良く見とく様に。一夏、始めてくれ!」
「オッケーだ!別に難しくはないぞ。釣り方はタイラバを竿下に落とし、着底したら一定の速度でゆっくりと巻き上げ、そして再び着底させる。ただそれの繰り返しだ」
「そ・・・それだけ・・?」
「そう、それだけ。これを繰り返して・・・・・・・HIT!」
30cm弱だろうか、一夏は小振りではあるが、中々良い型のチダイをつりあげた。
「わ、凄い凄い!」
「ファーストヒットにしては悪くないんじゃないか?」
とにかく非常にシンプルで簡単。ルアーフィッシングに慣れ親しんでいない年配の方や女性でも、手軽に楽しめるのが魅力だ。
「それじゃあ俺達もやっていこうか」
「あぁ!凄く楽しみだ!」
*
「ほら、見てくれ啓吾!私にも釣れたぞ!」
「お!良いサイズじゃないか、その調子で頑張れ!」
箒は屈託のない笑顔を浮かべている。どうやら釣りに釣れてきたのは正解らしい。
『・・・・・随分と変わりましたね、彼女は』
「海神・・・?どうしたんだ突然」
『初めて御主人と会った時の箒さんはどこか怒りっぽくて・・・どこか近寄りがたい存在でした』
「・・・・・まぁ、確かにそういう時期はあったな」
『それが今では笑顔も増えて優しい顔つきになりましたね。そうは思いませんか?』
「あの娘は苦労の時期が長かった。だから少し厳しい性格にもなったんだろうな。でも今は違う。アレが元々の彼女なんだろう」
『おや、随分と評価なさるんですね。もしかして惚れたとか?』
「馬鹿を言うな・・・・・・俺にはセs・・・・・いや、なんでもない」
『あらあら・・・・何と言いたかったんでしょうね♪』
俺が海神にちゃかされていると・・・・
「その・・・二人とも」
『どうしました箒さん?』
「そういった会話は・・・・・本人の聞こえない所で頼む・・・・////」
「『しまった・・・・・』」
「おい二人とも、何の話をしてるんだよ?時間無くなっちゃうぞ!」
業を煮やした一夏が話し掛けてきた。
「あ、ああスマン!ほら箒、再開だ」
「あぁ・・・・・・・・ん?啓吾の仕掛けはその・・・タイラバとは違うみたいだが・・?針が沢山ついてるぞ」
「これか、これは胴付き仕掛けっていうんだ」
〜チダイの船釣り(胴付き仕掛け編)〜
胴付き仕掛けは沢山の魚を一気に釣る事が出来るお得な釣りだ。3、4本バリの胴付き仕掛けが基本だぞ。ハリは軸が長めで、エサを付けやすい丸カイズバリ系がよく使われる。ただし仕掛けの仕様は地域によって違いがあるので、事前に確認しておこう。
エサのエビは、尾羽を切り腹掛けにする。エビが真っ直ぐになるように刺すのがコツだ。
胴付き仕掛けを投入するときは、オモリから順に落としてゆくとハリス(針を結んだ糸)が絡みにくい。指示ダナでアタリを待つのが基本だが、底ダナ狙いになることが多いので、オモリを海底に着けた状態で竿先を下げ、仕掛けをたるませるように誘うのも効果的だ。
「あ・・・!啓吾、引いてる!引いてるぞ!」
「まだだ・・・まだまだ!」
「し、しかし・・・!」
「まぁ待てよ箒、すぐ上げちゃ針が沢山付いてる意味がないだろ?啓吾の竿をよく見とくんだ」
一夏の指示で箒は竿を凝視している。
「まだ・・・・」
「む、む〜〜〜・・・・///」
「もう少し・・・・・・・・今だ!」
俺は一気に竿を上げる。そこには3匹のチダイが引っ付いている。
「凄え・・・」
「ほ、本当に凄い・・」
「ハハ、見とれてないで二人も釣りを続けろよ」
「よ、よ〜し今度は私が沢山釣るぞ!」
「ああ、その意気だ!」
こうして俺達は時間一杯まで釣りを楽しんだ。
〜I S学園家庭科室〜
「へぇ〜、沢山穫れたじゃない!」
「まぁな。しっかし、よく家庭科室が借りれたな」
「何時も見たいに啓吾の部屋じゃ狭いだろって。山田先生の好意でね」
「まぁあんまり使い道のない部屋ですから今回位は良いと思いました」
「ありがとうございます!しかし、ここまで設備が整ってると何を作った物か・・・」
そう、そこは名門のI S学園だ。自分の部屋では賄えない設備が沢山有る。
「すまないお兄ちゃん、流石に私もお腹がすいた・・・」
「鈴達が手伝ってくれたからスムーズに買い出しはできたんだけどね・・・」
「お疲れさま、買い出しも良く行ってくれたな」
俺は二人の頭を撫でてやる。
「ふわぁ・・・・何時見てもお兄ちゃんの手は大きいな///」
「ぼ、ボクは少し恥ずかしいよ//」
二人の妹の顔が赤くなった。
「さてと、皆ももうひと頑張りしてくれ!」
「「「はーい!!」」」
*
「それで、どうしようかな・・?」
「この人数だから手間の掛からない物が良いな。でもあんまりツマラナイ料理もな・・」
「じゃあ湯引きにしてみるか、簡単だし中々豪勢にもみえる」
〜簡単美味!ハナダイの湯引き〜
まずは何時もの様に鱗と内蔵、頭を取り除く。次に腹側、背中側の先端に包丁で軽く切り込みをいれる。完了したら裏側も同じように。ここ、大事なポイントだ。沸騰したお湯をかけて、スグに氷水に浸けてくれ。最後に水気をふいて、三枚おろし、適当な大きさに捌いたら完成だ!本当に簡単に出来るから皆も試してみてくれ!
「箒は何を造ってるんだ?」
「私はシンプルに塩焼きだな。あまり凝った料理は出来ない」
「ん、分かった。じゃあ俺達ももう一品つくろう。山田先生も手伝ってくれますか?」
「分かりました!」
〜外はサクっと、中はフワっと!チダイの天ぷら〜
これも簡単に出来る料理。まずは小振りなチダイを三枚におろし、血合い骨を抜く。振り塩をして衣をつける。後は180度の油で揚げれば完成だ。皮に旨味が凝縮されていて、スダチを掛けて食べるとさらに美味しく頂けるぞ!
「これだけあれば良いな・・・・・・さぁ皆、席に着いてくれ!」
俺の声で皆が席に着いた。
「さてと、取り合えず皆、1学期はお疲れさまでした!」
「ホント、色んな事が有ったわね〜」
「そうだな、今となっては良い思い出だ」
『御主人がラウラさんにビンタされたこともありましたね』
「そ、それを言うな!!///」
「でも・・・・本当に楽しかった・・!」
皆が思い思い、記憶を掘り返して行く。
「さて、皆グラスを取ってくれ。それじゃあ1学期無事に過ごせた事を祝して、乾杯〜!」
「「「「「乾杯〜!」」」」
*
「はぁ〜、流石にお腹いっぱいね」
「もう食べきれませんわ〜」
開始から2時間半程経った今、皆が満腹を訴えている。大人2人組に関してはいい感じに赤ら顔だ。
「それじゃあおひらき・・・・・と言いたいけど一つ報告が有る」
「・・・・?どうしたんだよ啓吾」
「実はこの度、俺の両親が皆を実家に招待したいと言ってきたんだ」
この事で皆が少し驚いた表情をした。
「啓吾の・・・ご両親が・・・?」
「誘ってくれたの〜?」
「ああ、何でも親父がシャルを家族に迎える次いでと言ってはなんだけど、友達の顔を見せて欲しいとの事だ」
「まぁ、啓吾さんのお父様が・・・」
「だから8月の前半から3泊4日で予定している。強制じゃないから他に用事が有るなら断ってくれても構わない」
俺の提案に皆が少し考えた様に沈黙を作る。そしてーーー
「俺は行くぜ!」
「一夏・・・・!」
「どうせ家にいてもやる事ないしな。それに勿論釣りも出来るんだろ?」
一夏は笑顔で答えてくれた。
「私も・・・・・行って良いかな?」
「簪もか・・・?」
「うん、今まで誰かの家に行った事無かったし・・・・それに、折角友達になれたから・・・」
「カンちゃんが行くなら私も行くよ〜♪」
「のほほんさん!」
「私だって勿論行くわ!それに、皆の意見だってもう出てるでしょう?」
「ああ、勿論私も行くぞ。友人からの誘いだからな」
「そうですね、わたくしもご一緒して宜しいでしょうか?」
「セシリア・・・!」
本当に皆の意見は固まっているらしい。先生達も同じ意見の様だ。
「心配する事はないだろうが、一応保護者として私も付いて行こう」
「まだ沖縄で釣りをした事がありません。私も行きたいです!」
「皆・・・・ありがとう、早速親父に連絡してみるよ!」
「それも良いが早く片付けしようぜ。もういい時間だよ」
「そ、そうだった・・・・それじゃあみんな、片付けに取りかかろうか!」
「「「はーい!!」」」
一夏の言葉で皆が後片付けに入った。どうやら本当に素晴らしい友人に巡り会えたらしいな。俺は片付けをしながら心から思った。
そしてこれから夏休みが、新たな魚達が俺達を待っている。そう確信出来た。
「またアイゴしか釣れなかった・・・」
「そんなに・・・美味しくないの・・・?」
「いや、美味しいけど毒有るし時期見ないと磯臭いし・・」
「そうなんだ・・・」
「という訳で我々I S学園の釣りバカ一同はアイゴの美味しい食べ方を探しています」
「こんな風に料理したら美味しい!といった意見、お待ちしてますわ!」
「次回も・・・お楽しみに・・・」