I S-釣りバカ日誌-   作:ソーダガツオ

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本当はISx昆虫採集とか書きたいんだ(`・ω・´)


第4話 仲直りは磯の香り〜クロダイ編〜

   〜I S学園前埠頭〜

 

 

 

「さてと⋯⋯⋯⋯この辺りにカケアガリのポイントあるな」

 

 模擬戦を前日に控えた俺は学園前の防波堤でとある魚の姿を追っていた。I Sの訓練はしなくて良いのかって?実のところ練習用のI Sは全機貸し出し中だからな。それなら試合までに身体を目一杯休める事にしたのさ。

 

「よし、この辺りで始めるかn「あれ?啓吾か?」ん?⋯⋯⋯一夏じゃないか、箒にI Sの訓練を付けて貰うって聞いたけど⋯⋯⋯どうして此処へ?」

 

「実は訓練用のI Sが借りれなくってさ⋯⋯⋯ やらないよりマシだと思って今まで剣道の特訓をしてたんだ。啓吾はなんの特訓もしてないみたいだけど、明日は大丈夫なのか?」

 

「まぁ、I Sが借りれたら何かしてたんだろうけどさ、なんとも出来ない以上明日の模擬戦に向けて少しでもリラックスするのが良いかなって思ったんだ」

 

 ま、仮にI Sの訓練が出来ても、そんなに変わるもんじゃないけどな。

 

「啓吾はすごいな⋯⋯⋯⋯そこまで余裕が有るなんて。俺なんか全部が精一杯で参っちゃうよ⋯⋯⋯」

 

 察するにどうやら一夏は落ち込んでいる様子だった。なるほど⋯⋯⋯迷える若者か、良いじゃないか。なら年長者としてアドバイスをしてやらないとな!

 

「ハハハ、別に全てに関して余裕が有る訳じゃないさ。ただ大切な事は一つ、心に余裕をもつ事だ」

 

「心に⋯⋯⋯余裕⋯⋯⋯?」

 

「うん、確かに俺たちを取り巻く環境は全てが良いもんじゃない。沢山ストレスを抱え込む事だってあると思う。でもな、そのストレスを少しでも少なくする為に必要な物が心の余裕なんだ」

 

「そんな事言われたって⋯⋯⋯⋯簡単に変われたりしないよ⋯⋯⋯⋯」

 

「何だって良いんだ。例えばそうだな⋯⋯⋯⋯変に思うかもしれないけど、俺だったらこれさえ有ればどんな時でも元気がでるかな」

 

 そう言って俺は釣り竿を一夏に見せる。

 

「啓吾にとって釣りの存在が心の余裕なのか?」

 

「まぁ極端な言い方をするとそうなるかな。四季折々の釣り、そして釣りを通して出会える様々な魚達、それを考えただけで心が躍るってもんだよ♪」

 

「そうなのか⋯⋯⋯⋯⋯!そう言えば今日は何を釣りに来たんだ?」

 

「よくぞ聞いてくれました!今回は海釣りの代表格、クロダイを釣るぞ!」

 

 

 

 

 

 

    〜乗っ込みクロダイ(チヌ)のフカセ釣り〜

 

 波止でチヌのフカセ釣りは、棒ウキをなんか使ったウキ釣りのポジションよりはある程度潮の流れる波止先や沖一文字なんかの方が釣りやすいな。特に流れが変化する場所、崩れテトラ付近となどが絶好のポイントだ。

2〜3号の道糸にウキ止め糸を結び、円錐ウキB~3Bを付ける。ウキとサルカン(スイベル)の当たりを防ぐのに潮受けクッションゴムを付ける事を忘れるなよ。ハリスの真ん中より少し上にガン玉を付けて、今回はチヌ針にオキアミをつけて仕掛けは完成だ!

 

「一夏、この時期は大型のチヌが卵を産むため、孵化した稚魚が隠れることができる藻が生えた場所( 藻場 )などに集まるんだ。そして、その藻場があそこにある」

 

 そういって俺はポイントの方向にを指をさした。

 

「あのポイントは浅場から深場に落ち込む『カケアガリ』って言う場所なんだよ。春のクロダイは、そのカケアガリに群生している藻に産卵するんだ。日が差し気温が上がり始めると深場から浅場に上がってくる」

 

「そうなのか⋯⋯⋯⋯⋯そう言えばさっきから『クロダイ』とか『チヌ』って呼んでるけど何の違いがあるんだ?」

 

「簡単に言えばクロダイは正式名称、チヌは関西方面での呼び名だな⋯⋯⋯⋯よし、そろそろやっていくぞ」

 

フカセ釣りの基本は、ウキよりもサシエを流れに対して先行させること。そうすることで投入後から常に[穂先]-[ライン]-[ウキ]-[サシエ]と流れに対して並ぶことで仕掛けを流すイメージも出来るしアタリも取りやすくなる。その状態を最後までキープ出来ていれば、全層を探ることが可能になるぞ!

 

「そうだな⋯⋯⋯⋯狙い方としては、カケアガリにしっかりマキエを溜めて、仕掛けをカケアガリに這わせるイメージで狙う感じだ。この時、カケアガリをダイレクトに狙うんじゃなくて、カケアガリの少し先に仕掛けを投入して底でしっかりエサを安定させる事が大事だな。後はジワジワと浅瀬に向かって⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯!!」

 

「啓吾!引いてる引いてる!!」

 

「そう慌てなさんなって⋯⋯⋯⋯⋯ッ!一夏、そこにある玉網とってくれ!」

 

「えっと⋯⋯⋯⋯た、玉網?」

 

「そこに網があるだろ、それを頼む!⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯よっしゃ!」

 

 取り込み完了!今回も俺の大勝利だな!

 

「す、すげぇ!何センチあるんだ!?」

 

「待ってろ⋯⋯⋯⋯⋯⋯42cm、中々良いサイズだ!」

 

 やはり黒鯛は良い⋯⋯⋯⋯⋯情けないが何時だってこの瞬間は、ウットリと惚けてしまうな。釣り人は全員コイツとの出会いに感謝するべきなんだろう。

 

「それで⋯⋯⋯⋯⋯⋯このクロダイ、どうするんだ?食べるのか?」

 

「一夏、この時期のクロダイは冬よりも味が落ちると言われてな。臭いも少し生臭いと言う意見も少なくないんだ」

 

「え⋯⋯⋯?じゃあ食べないのか?」

 

「それは明日までのお楽しみだ♪ほら、まだまだ釣るぞ!」

 

「??あ、あぁ」..........

 

 一般的にクロダイは臆病で警戒心の強い魚という事で釣るのは難しいって思われがちだけど、それと同時に何でも食べる貪欲な雑食性だ。だから釣りバカ同志諸君の皆も諦めずに挑戦してくれ!

 

 

 

 

    〜アリーナ控え室〜

 

 

「はぁ⋯⋯⋯⋯⋯憂鬱だ」

 

「シャキッとしろ一夏!日本男児たるものそんな事でどうするんだ!」

 

「まぁ落ち着けよ箒、相手は仮にも代表候補だ。緊張するのも無理無いぜ」

 

「し、しかし啓吾⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

 気付けば試合当日となってしまったな。順番は俺vsオルコットの試合がファーストマッチになった。先生曰く俺たちには専用機が届くとの事だけど⋯⋯⋯⋯⋯。

 

「織斑くんに金城くん!⋯⋯⋯や、やっと⋯⋯⋯専用機が届きました〜!⋯⋯⋯ふう⋯⋯⋯ハア⋯⋯」

 

「山田先生!?大丈夫ですか?」

 

「ほら、山田先生。深呼吸して」

 

「スゥー⋯⋯⋯⋯⋯⋯ハァー⋯⋯⋯⋯⋯すみません⋯⋯⋯ドタバタしてたもので⋯⋯⋯」

 

「金城、これがお前の専用機、『海神《ワタツミ》』だ。アリーナを使用出来る時間は限られてるすぐに準備をしろ」

 

 海神と呼ばれたI Sは、まるで操縦するべき主を待つかの様にその灰色のボディを鎮座させていた。

 

「海神⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯海を司る神の名前か。気に入ったぜ千冬先生!」

 

「織斑先生だ⋯⋯⋯⋯⋯金城、頑張ってこいよ」

 

「お互い気張っていこうぜ啓吾!」

 

「お前なら出来る、必ず勝ってこい!」

 

「金城くん、無理はしないでくださいね」

 

 そう言って千冬先生たちは俺を激励してくれた。これは負けられないな⋯⋯⋯⋯。

 

「みんな⋯⋯⋯⋯必ず勝利を収めてくるよ!」b

 

「「「「b」」」」

 

 

 

 

 

「ふん!よく逃げずに来ましたのね。てっきり、私に怖じ気づいて逃げ出したかと思いましたわよ?」

 

「なに、俺を応援してくれてる奴らがいるんだ。こんな所で逃げ出せないさ」

 

 見下すようなオルコットの言葉に俺は平然と言い返す。

 

「アナタに一つチャンスをあげますわ。この勝負の結果は私が勝つことは明白の理。今すぐ謝れば許してあげないこともありませんでしてよ。」

 

「言った筈だぜオルコット。先日お前が馬鹿にした日本の文化、その魂を侮辱するのであればこの金城啓吾、容赦はしないと!」

 

「そうですか⋯⋯⋯⋯では踊りなさい!私とブルー⋯ティアーズが奏でるワルツで!」

 

 そう言うとオルコットはレーザーライフル、「スターライトmkⅢ」を俺に向けて撃ってきた」

 

「っ!」

 

「よく避けられましたわね。ではこれはどうです!」

 

 一撃目を避けたと思ったら今度はブルー⋯ティアーズ4機を腰から分離させ、ビットによるオールレンジ攻撃が開始する。

 

(クソっ!俺も何か武器を⋯⋯⋯⋯⋯⋯て、えぇ!?)

 

 そう俺が驚いた理由は一つ、武器が蛟《ミズチ》という頼り気のない槍、一つだけだった。

 

「計ったな⋯⋯⋯⋯⋯⋯計ったな千冬先生!」

 

「何をごちゃごちゃと⋯⋯⋯⋯⋯くらいなさいな!」

 

 オルコットのスターライトmkⅢから発射されたビームが蛟に当たった瞬間

 

    パシュン!

 

「「!?」」

 

 ビームが撃った相手の方へ跳ね返った!

 

「な!?⋯⋯⋯⋯⋯⋯何をしたんですの!?」

 

(そうか⋯⋯⋯⋯⋯そういう事か!)

 

「セイッ!」

 

「キャッ!?⋯⋯⋯⋯⋯⋯や、やりましわね!」

 

 俺は何が起こったかまだ理解していないオルコットに槍を打ち込んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「織斑先生、今のは⋯⋯⋯⋯⋯?」

 

「あぁ、あのI Sの特徴だ。あの槍である程度の攻撃なら跳ね返せる」

 

「す、すげぇ⋯⋯⋯⋯」

 

「凄いですね金城くん。あの長い槍をあそこまで上手く使いこなすなんて!」

 

「私も剣道をやってきたが⋯⋯⋯⋯啓吾のヤツ、かなり出来るな⋯⋯⋯」

 

「アイツの実家は琉球古武術の道場でな⋯⋯⋯その中でも金城は槍術の使い手だ。私もあそこまで使いこなせる人間は初めて見たがな⋯⋯⋯⋯しかし」

 

 

 

 

「貰った!」

 

「お生憎ビットはまだありましてよ!」

 

「!?⋯⋯⋯グハァ!?」

 

 俺はブルー⋯ティアーズの後ろから出て来たビットによる攻撃で大幅にダメージを受けてしまった

 

(く⋯⋯⋯マズいな!確かにこの槍は良いもんだけど、まだ⋯⋯⋯⋯まだ何かが足りない⋯⋯⋯⋯!)

 

「良くここまで耐えたと褒めてあげましょう⋯⋯⋯⋯しかし、これでお仕舞いですわ!」

 

 オルコットの機体からビームが一斉発射される。これが当たれば⋯⋯⋯⋯⋯

 

(俺は⋯⋯⋯⋯俺は負けられない!応援してくれるダチの為にも⋯⋯⋯⋯俺自身がもつ日本の魂の為にも!!)

 

            「俺は⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯絶対に負けん!!!!!!」

 

 そう言うと呼応するかの様に海神のボディが光り始めて、灰色だった機体が雄大な大海原を思わせる深い藍色に染まった。

 

「⋯⋯⋯⋯⋯これ⋯⋯は?」

 

「一次移行(ファースト⋯シフト)!?まさか貴方、今まで初期状態で⋯⋯⋯⋯⋯!?」

 

(身体から力が溢れる⋯⋯⋯まるで海に包まれているかのようだ。⋯⋯⋯これならいける!)

 

 俺は力強く握っていた蛟を見た時、蛟の形も変わっているのに気がついた。そう、それは今まで魚との格闘でずっと苦楽を共にして来た物と同じ型になっていた。

 

「く⋯⋯⋯⋯⋯⋯!調子に乗らないでくださいまし!」

 

 そう言って慌てたオルコットが一旦距離を取った。

 

「そうか⋯⋯⋯⋯⋯⋯よし!一緒に行こう海神!」

 

  後は簡単だ、俺はいつもの様にポイント(オルコット)めがけてキャスティングする。すると槍先がブルー⋯ティアーズめがけて一直線に飛んで行った!

 

「きゃぁあああ!?⋯⋯⋯⋯く、まだ!」

 

「もう遅い!!」

 

 そう言うと俺は槍先を飛ばして飛び回るビットを全て破壊した。ブルー⋯ティアーズのボディが、がら空きになった!後は⋯⋯⋯⋯⋯⋯

 

「これで⋯⋯⋯⋯終わりだ!!」

 

「き、きゃあああああああああああ!!??」

 

               『シールドエネルギー0。勝者、金城啓吾!』

 

 アリーナに放送が鳴り響く。俺が勝利を物にした瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

「おっしゃあ!!啓吾が勝った!」

 

「啓吾の奴、やってくれたな!」

 

「す⋯⋯⋯⋯⋯⋯スゴいスゴい!大勝利ですよ!!」

 

(⋯⋯⋯⋯⋯⋯それにしても金城くん、なんて正確なキャスティングを⋯⋯⋯⋯)

 

「そんなにはしゃぐな⋯⋯⋯⋯⋯⋯ん?山田先生、具合でも悪いのか?」

 

「あ!、い、いや何でも無いですよ⋯⋯⋯アハハハハハ」

 

「?」

 

 ハハハ⋯⋯⋯⋯チラっと見えたけどどうやら準備室でも俺の勝利でお祭りムードらしいなぁ。さてと、後はアイツだけか。

 

「く⋯⋯⋯⋯⋯⋯何ですの?敗者を笑いに来たんですか!?」

 

「待てオルコット、俺は別に⋯⋯⋯⋯」

 

「同情はよしてください!イギリスの国家代表のわたくしが素人同然の人に負けるなん⋯⋯⋯て⋯⋯日本の⋯⋯ヒグッ⋯⋯⋯う、うぅぅ!」

 

 

「お、おい!」

 

 よほど悔しかったらしい⋯⋯⋯オルコットの目にはお大粒の涙が溢れている。

 

「なぁオルコット⋯⋯⋯もし良かったら話してくれないか。何がお前をそんなに追いつめてるんだ?」

 

「ヒグっ!⋯⋯⋯⋯⋯⋯わたくしは元来、名門の貴族の出です⋯⋯⋯⋯でも、数年前に両親を列車の事故で亡くし、金の亡者達が両親の遺産を狙ってくる様になりました。わたくしは勉強を重ねて今でもなんとか大切な遺産を守り通していました⋯⋯⋯⋯。ですが最近ではそれも上手く行かなくなって⋯⋯⋯⋯だから負ける訳には行かないのです!!⋯⋯⋯こんなん所⋯⋯⋯で⋯⋯⋯わた⋯しは⋯⋯う⋯⋯くぅぅ⋯!」

 

 

(⋯⋯⋯⋯⋯⋯なるほど⋯⋯⋯努力家なんだな。彼女の心の闇はこれが原因だったか)

 

「⋯⋯⋯ごめんなさい、本当は貴方やこの、国の人達にとても酷い事を言ったのは自覚しています。だけど私はこれ以上⋯⋯⋯」

 

「まぁ待てよ、たしかに今まで辛い想いをしてきたな。でもこれからは一人なんかじゃ無いんじゃないか?」

 

「⋯⋯⋯え?」

 

「だってさ、これからは俺や一夏、箒、クラスの皆がお前の支えになる。だからさ⋯⋯⋯もっと皆に甘えていいと俺は思うぜ?なぁ、()()()()

 

「啓吾⋯⋯⋯さん⋯⋯⋯⋯う⋯⋯⋯うわああぁぁぁぁぁぁん!!!!!」

 

「そうだ、それで良い。泣きたいときは泣けば良いんだ、そして明日笑えたら御の字じゃないか!」

 

「ヒグ⋯⋯⋯⋯グス!本当に⋯⋯⋯本当にありがとう⋯⋯⋯⋯!」

 

    

            これで俺たちとセシリアの蟠りは解けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「というわけで、織斑くん!クラス代表就任おめでとー!!」」」」

 

 

「ちょっとまったー!?」

 

「むぅ、どうしたんだよ一夏、大声上げちゃって」

 

「いや、だってさ!俺、啓吾にもセシリアにも負けてんだけど如何してクラス代表なんだよ!?」

 

 なんだか一夏は不満タラタラな様子だ。

 

「それはわたくし達が辞退したからですわ!」

 

「いや、セシリアと相談してな。一夏、お前はまだまだ伸びしろが有るからな。クラス代表になったら全体にも良い刺激になると思ったんだ」

 

「だからって勝手に決められても⋯⋯⋯⋯⋯」

 

「流石に全部背負い込めってことじゃないぜ?俺たちも全力でフォローしていくからさ」

 

「そうだぞ一夏、お前は大船に乗った気持ちでドンと構えていればいい」

 

 俺がそう言うと箒もフォローを加えてくれた。

 

「はぁ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯分かったよ!俺も男だ、やれるだけやってみるさ!」

 

「良く言ったぞ一夏!」

 

「それでこそ一夏さんですわ♪」

 

「まぁセシリアにも命令を一つ聞いてもらうというペナルティがあるんだけどね」

 

 俺がその言葉を発した瞬間、セシリアの顔がみるみる青ざめて行った。

 

「う⋯⋯⋯⋯⋯⋯すっかり忘れておりましたわ⋯⋯⋯それで、命令とは⋯⋯⋯⋯⋯」

 

「まぁまぁ、そんな顔するなよ。セシリアにはこれを食べてもらうぞ」

 

 俺はセシリアの前に皿を出した

 

「ひぃ⋯⋯⋯!な、生魚ですの⋯⋯⋯?」

 

「啓吾、この魚ってひょっとしてあの時釣ったクロダイか?」

 

「あぁ、これを食べる事、それが俺の命令だ♪もしよかったら一夏も食べてくれ!」

 

「う⋯⋯⋯⋯⋯うぅ⋯⋯⋯分かりましたわ⋯⋯⋯」

 

「でも啓吾⋯⋯⋯⋯⋯クロダイの味が良くないって」

 

「まぁ食ってみろって」

 

 命の覚悟をした様に食べるセシリアと味が良くないと聞いていた一夏の二人の違った不安の表情を見ながら俺は笑った。

 

「「⋯⋯⋯⋯パクッ」」

 

 暫く室内に沈黙が続いた。

 

「お、おい二人とも大丈夫なのか⋯⋯⋯?」

 

 そう不安そうに箒が訊ねた時⋯⋯⋯

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯しい」

 

「⋯⋯へ?」

 

「とっても⋯⋯⋯⋯⋯⋯とっても美味しいですわ!!どうして!?今までこんなに美味しい料理を食べた事が有りませんわ!!」

 

 セシリアは顔を輝かせながらそう言った。気に入ってくれたみたいだな。

 

「本当に美味い⋯⋯⋯⋯それにこのネットリとした感触⋯⋯⋯ひょっとしてこれは⋯⋯昆布〆?」

 

「コブ⋯⋯⋯⋯ジメ⋯⋯⋯⋯ですの?」

 

「あぁ、正解だ一夏。昨日の内に一晩寝かせておいてな⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

 

 

 

 

 

     〜至高の食感!クロダイの昆布〆〜

 

まず最初に3枚もしくは5枚に下ろしたチヌの切り身に塩をして30分ほど寝かておくんだ。その後、塩を水で綺麗に流し、キッチンペーパで水分をしっかり取ったら、料理酒で湿らせた適当な大きさ(チヌの切り身と同サイズ)の昆布の上に切り身を置いて、更にその上に昆布を置きラップで気持ちしっかり巻く。後は冷蔵庫で、漬け込む時間は5~7時間がベストだが、好みによって変えてみるのも良いぞ。最後に大葉の上に盛りつけて完成だ!。そのままでも美味しいけど、わさび醤油なんかを付けてもOKだ。最高の味と食感、是非皆も堪能してくれよな!

 

 

 

 

「とっても美味しいですわ〜♪」

 

「そうだな⋯⋯⋯じゃあ啓吾、簡単だけど俺もこれで一品作って良いか?」

 

「一夏さんも何か作ってくださるの?」

 

「昆布締めで?あぁ良いぞ、何を作るんだ?」

 

「俺が作るのはまさしく日本人の心⋯⋯⋯⋯⋯⋯ズバリお茶漬けだ!」

 

 

 

 

     〜これぞ日本の神髄!昆布締め茶漬け〜

 

 

 啓吾から許可を貰ったので早速作っていこう!ホカホカの白御飯の上に先ほどの黒鯛、そして刻み海苔、胡麻、三つ葉、わさびを上にトッピングするんだ。そこに熱いダシ汁をかけて完成だ。!これぞ日本が誇る究極のズボラ飯、皆も作ってみてくれ!

 

 

「わたくし⋯⋯⋯⋯もう死んでも構いませんわ⋯⋯⋯⋯⋯」

 

「あぁ⋯⋯⋯⋯⋯最高だぜ⋯⋯⋯。やはりお茶漬けはこうじゃなくっちゃ。やるじゃないか一夏」

 

「へへへ♪こないだのサヨリのお礼がまだだったしな!」

 

 そうやって俺たちが和気あいあいとしていると、我慢の限界なのか箒が大声をあげた。

 

「ぐぬぬ⋯⋯⋯⋯⋯⋯おい三人ともいい加減にしろ!私も空腹だと言うのに、こんな美味そうなものを見せつけて拷問のつもりか!?」

 

「そうだよ〜、ケイケイたちばっかりずる〜い」

 

「私にも食べさせて!」「私もー!」

 

「ご、ごめん、すっかり忘れていたぜ。大丈夫、皆の分もあるから存分に食べてくれ!」

 

「「「「「「「やったー!!」」」」」

 

 

  斯くしてこの大宴会は千冬先生を始め教師陣も乱入し大盛り上がりだったとさ。

 

 

 

 




「うむ、今日は中々豪華だったな作者」

「さすがに骨が折れました・・・・」

「ただ黒鯛は地域色の強い魚ですわ。だから皆様もお住まいの場所に適した仕掛けを作ってみてくださいませ♪」

「次回は一夏が一大決心!?そして家庭に愛されて食卓の人気者であるアイツが登場するぞ!」

「「「次回もお楽しみに!!」」」
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