〜自室〜
「まさか山田先生も釣りバカとはなぁ、世の中何処で何が有るかなんて分からないな」
動乱のメバル釣りが終わった翌日、俺はいつもの様に仲間と別れ家路に付く。すると玄関前まで来た時、一人の物悲しそうな顔をした女子生徒をみた。そう、一夏の幼馴染み、鈴の姿だった。
「あ⋯⋯⋯⋯⋯⋯その」
「どうしたんだ鈴?今日、顔を会わせたのはこれが初めてだぞ。どこか体調でも悪かったのか?」
「いや、そうじゃないんだけど⋯⋯⋯⋯⋯⋯あの⋯⋯⋯その⋯⋯⋯」
俺の言った事を否定すると、そのまま声を縮めて黙りこくってしまった。ふむ、なるほどこれは⋯⋯⋯⋯⋯。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯一夏と揉めたか」
「!ど、どうして分かったの?」
「多分だけど他の相談事ならクラスメイトにするだろうからな。一夏の事と有れば、同じ男子生徒の俺に相談すると思ったんだ」
「ハハ⋯⋯⋯⋯まるで探偵みたいね」
どうやら図星らしい、観念した様に鈴が笑った。
「どうせまだ夕食も食べてないんだろ。上がっていけよ、何か作ってやるから」
「良いの?」
「おれもまだだからな。食事の人数は多いにこした事は無いさ」
「ありがとう⋯⋯⋯⋯⋯そういえば、昨日のメバルってまだ余ってる?」
「ん?まだ有るけど、どうして?」
「アタシも何か一品作るわ。ね、良いでしょ?」
どうやら鈴も料理が出来るらしい。俺は一言、楽しみだと言って二人で部屋に入った。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯なるほど、あの男は『タダ飯食べさせてくれる』くらいにしか思ってなかったと⋯⋯⋯⋯」
「ホント!やんなっちゃうわよ!⋯⋯⋯⋯せっかくアタシが勇気を振り絞って言ったのにさ」
事の発端は今朝、『私の料理が上手くなったら毎日私の酢豚を食べてくれる?』と言った鈴の一世一代のプロポーズを一夏が『タダ飯食べさせてくれる』くらいにしか思っていなかったらしい。そこで大喧嘩をしてしまい相談する相手も無く、俺の所まで来たんだとか。
「でも鈴も分かってたんじゃないのか?一夏が超鈍感だって事くらい」
「そりゃあ、分かってはいたけど⋯⋯⋯⋯⋯でもあんな言い方ないじゃない!おまけに人の事を⋯⋯⋯⋯⋯貧乳呼ばわりなんて!」
「いや⋯⋯⋯⋯そこは人の好みじゃ⋯⋯⋯」
「なによ!アンタは⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯お、大きい方がいいの!?」
鈴は顔を真っ赤にして声を荒げた。
「まぁ落ち着けって!とりあえず料理を作っていこうぜ」
「そ、そうね⋯⋯⋯⋯啓吾は何を作るの?」
「別にこった物は作らないよ、今回は刺身にしようと思う」
〜旨味たっぷり!メバルの刺身〜
今回は既に内蔵を取り除いているけど、皆の為に1から捌き方をおしえよう。まず水で流しながら、優しくウロコ落としでウロコを取ろう。次に、左右の胸ビレのすぐ後ろに包丁を入れ、頭を切り落とす。そして、腹に包丁を入れ、内臓をキレイに取り除くんだ。ただメバルのヒレはとても鋭いから、最初にハサミで全て切ってしまっても良いぞ!
次に背ビレに沿って尾から頭に向けて2~3ミリ切り込みを入れ、改めて尾から中骨に達するまで包丁をいれよう。上手くなると「カリカリ」と骨と包丁が当たる音がするぞ、後は 腹側も同じように包丁をいれ、尾のほうからブッツリ包丁を入れて頭に向けて一気に身と骨を切り離すべし!腹骨を削ぎ落とし、尾の方の身を少しだけ切り落として皮をつまんで身と皮の間に包丁を入れ皮を剥ぐんだ。最後に小振りな切り身にして完成!脂の乗った春のメバル、わさび醤油につけて堪能してくれ!
「スゴいのねぇ、包丁さばきだってプロ並みじゃないかしら」
「あなたがれば〜♪この包丁さばき~♪」
「それを言うなら東京砂漠じゃ⋯⋯⋯⋯⋯まぁいいわ、今度は私の番ね!」
〜香ばしき四千年の味!メバルの中華蒸し〜
まず5cmに切ったネギの白い部分を包丁でで縦に細く切って白髪ネギを作り、冷水に浸しておいてね。次にメバルの頭を左にして、火の通りがよくなるように切れ目を入れておくの。蒸し器にクッキングペーパーとキャベツを敷いて火をかけちゃって。メバルを並べ残ったネギもおいて沸騰したら中火で20~24分蒸してね!
次はソース作りよ!酢、醤油、スイートチリソース、はちみつを混ぜて。蒸しあがったメバルとキャベツをお皿にのせ、白髪ねぎを上に乗るの。そして大さじ3杯ほどの胡麻油を熱して、白髪ねぎの上あたりにジュっとかけて!最後に先程作ったソースを掛けたら出来上がり!プリプリのメバルと白髪ネギの絶妙なハーモニーが口の中で踊りだすわ!皆も作ってみてね♪
「ん!これは美味い!⋯⋯⋯鈴、中華料理店でバイトでもしてたか?」
「うちの両親が中華料理屋でね、パパがこの料理得意だったんだ」
「そうなんだ⋯⋯⋯でも突然の転校で両親も心配したろ」
俺が言うと鈴の顔が少し曇った。
「実は⋯⋯⋯⋯アタシの両親、離婚しちゃったんだ⋯⋯⋯今はママと暮らしてるの」
「⋯⋯⋯⋯⋯すまん、悪い事を聞いたな」
「ううん、そんな事じゃないの!今でもたまにパパと連絡取ってるし、寂しくなんかないわよ!⋯⋯⋯⋯⋯それにこの味は今でもアタシの中で生き続けている、そう考えたら悲しい事なんてないわ!」
「そっか、鈴は強いんだな!」
「エヘヘ!///それに、対抗戦で一夏の奴もギタンギタンにしないとね!」
そう言って鈴は俺に向かってハニカんでみせる。良かった、どうやら最初の落ち込みは無くなったみたいだな。
「あぁ、思いっきりぶつかって行け!その方がお互いスッキリするだろ」
「うん!⋯⋯⋯⋯⋯今日はアリガトね、なんだかアタシに兄貴ができたみたいで嬉しくなっちゃった」
「ハハハ、俺もお転婆な妹が一人できたみたいで嬉しいぞ!」
「ちょ、誰がお転婆なのよ!⋯⋯⋯プ、アハハハ!変なの!」
「ハハハハハ!」
兄貴ができたみたいと言った鈴の言葉、何故だか無性に嬉しくなった。⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯一夏、義妹を泣かせた罪は重たいぞ。
〜対抗戦当日〜
あっという間に日にちは経ちクラス対抗戦第一回戦の最初、まさかの一夏vs鈴の試合で幕を開けた。
「⋯⋯⋯⋯⋯一夏は苦戦している様だな」
「啓吾か⋯⋯⋯⋯あぁ、鈴のI S『甲龍』の放つ『衝撃砲』が中々攻略出来ない様子だな⋯⋯⋯」
俺と箒は千冬先生の計らいで控え室から試合を眺めている。
「⋯⋯⋯⋯⋯どっちが勝つと思う?」
「それは分からないさ。個人的な願望を言ってしまえば鈴に勝って欲しいのかな」
「何故?」
「一夏が乙女心を分かって無いからさ♪」
「?⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯あぁ、成る程な。一夏はもう少し乙女心を理解し⋯⋯⋯⋯」
ズドオオオオオンッ!!!
「「!?」」
箒が何か言おうとした瞬間、アリーナ全体が揺れ、シールドバリアーを破壊して数機の全身装甲(フル⋯スキン)I Sの乱入が確認出来た。
「なな、な、何だ!?いったい何が起こったんだ!?」
「分からない!?⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯でも、あれは⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯I S?」
俺がアリーナに顔を向けると一夏と鈴が謎のI Sと相対していた。
「おい啓吾!何なんだあのI Sは!?どうして一夏達を攻撃しているんだ!?」
「そんなこと俺にも⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯!?箒、観客席にまだ生徒が!」
「なっ!?」
どうやら出口にロックがかかっているらしい、観客席に居る生徒達は逃げ惑い今にも泣きそうだった。その時、俺の海神に連絡が入る
『金城!今何処に居る!?』
『先生、いまアリーナの控え室だ!それよりも観客席に生徒が!』
『それも此方で確認した。今オルコットが救助に向かって入る。金城もそっちに向かってくれ』
そう、一夏達が気を引いている物の何時最悪の事態に成っても可笑しくなかった。
『了解した!』
俺は回線を切って生徒の避難誘導にむかう。
「箒、人手は多い方が良い。お前も手伝ってくれ!」
「し、しかし一夏達が⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「そんなに柔な彼奴らじゃないさ、避難が終われば俺も援護に向かう。だから頼む!」
「啓吾⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯分かった、すぐに行こう!」
俺の言葉に箒は決心した様に答えた。
〜アリーナ観客席〜
「押さないで!落ち着いて避難して下さい!」
「セシリア、状況はどうだ?」
「啓吾さん!えぇ、救助の方は順調ですわ」
観客席に着くと既にセシリアが半分以上の生徒の避難を完了させていた。
「そうか⋯⋯⋯⋯後ろには箒も避難誘導を手伝ってくれてる。もう一踏ん張りだ⋯⋯⋯⋯!?ま、マズい!」
「どうしたんですの?」
「生徒が一人逃げ後れてる!このままじゃ流れ弾に当たりかねない⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯くっ、海神!!」
俺は海神を展開して逃げ後れた生徒の救助に向かった。
「君、大丈夫か!怪我は無いか!?」
「う⋯⋯⋯⋯⋯足を捻って⋯⋯⋯」
その生徒はおびえた様な表情をしている。転んだときに足を痛めたのだろう。俺はそのまま少女を抱えて出口まで運ぶ。
「セシリア、彼女を頼む!このまま箒と避難誘導を続行してくれ!」
「啓吾さんはどうするんですの!?」
「俺はこのまま一夏達の援護に向かう!」
「啓吾さん⋯⋯⋯⋯⋯御武運を」
「ありがとう⋯⋯⋯⋯⋯それじゃ「あ、あの!」⋯⋯ん?どうした」
先程、俺が助け出した娘の口が開いた。
「その⋯⋯⋯⋯⋯⋯気をつけて」
「あぁ、じゃあ行ってくる!」
〜アリーナスタジアム〜
「クッソ!何なんだよコイツら!鈴、大丈夫か?」
「まぁ⋯⋯⋯⋯⋯⋯なんとかね。でも流石にヘトヘトよ⋯⋯⋯」
(うぅ、俺もなんとか強がってみせては居るけど⋯⋯⋯⋯⋯正直言って怖い⋯⋯⋯でも)
俺が駆けつけた時には二人は疲労困憊といった顔をしていた。
「一夏! 鈴!二人とも大丈夫か?」
「啓吾!⋯⋯⋯⋯⋯⋯なんとか今の所はな」
「ほんとに腹立つわよ!何でったって無人機のI Sが学園に襲撃してくる訳!?」
「ん⋯⋯⋯⋯⋯⋯?あれは無人機なのか?」
「あ、あぁ。なんだか此方が仕掛けない限りは動いて来ないみたいなんだ」
「ふむ⋯⋯⋯⋯」
これならひょっとすると行けるかもしれない。一夏の言葉に俺は一つの提案が思いつく。
「相手は二機⋯⋯⋯⋯⋯一夏、片方をお前に任せたぞ。もう一機は俺と鈴でなんとかする」
「ちょ、ちょっと待て!?流石に一機でアレを相手にしろだなんて無茶苦茶だぞ!」
もちろん一夏の言う事は最もだ。そこで俺は一夏に一つのアドバイスを送る
「一夏、お前なら出来るさ。
「アクションは繊細に⋯⋯⋯⋯⋯⋯アワセは大胆に⋯⋯⋯⋯⋯⋯そうか!」
「ちょ、ちょっと!なんか納得してるけど大丈夫なの?」
状況が飲み込めない鈴が不安げに聞いてくる。
「あの表情ならやってくれるさ、俺たちも行くぞ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯行け、蛟!」
俺の合図と共に無人機に攻撃を仕掛けると一方が一夏へ、もう一方は俺と鈴の方へ向かって来た。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯金城くん達、一体何をするつもりでしょう?」
「分からん、しかし織斑の『白式』の動きが変だ⋯⋯⋯⋯⋯一体どうした⋯⋯?」
(あの動きは⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ルアーみたいな⋯⋯⋯?)
そう、俺が指定した言葉通りに一夏は自らのI Sを動かしていた。
『⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯』
(細かく繊細に⋯⋯⋯⋯⋯⋯逃げ惑う小魚の様に⋯⋯⋯⋯⋯)
『⋯⋯⋯⋯⋯⋯!!』
一夏の動きにまるで痺れを切らしたかの様に無人機が突貫してくる。
(⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯来た!)
「そしてアワセは大胆に⋯⋯⋯⋯⋯⋯今だ、『零落白夜』!!」
恐らく無人機は自信の身に何が起こったのか分からないであろう。気がつけば一夏の『雪片弐型』で真っ二つにされていた。
「や、やった⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯やったぞ!」
どうやら上手くいったらしい、一夏が勝利のガッツポーズを挙げた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯さてどうした?もうお手上げか?⋯⋯⋯と言っても機械が喋る訳も無いな」
俺は蛟で縛り上げた無人機に声を掛ける。縛り上げた当初は最初は元気良く動き回っていたが甲龍の『衝撃砲』を受けて大幅にダメージを負ったらしい。今は動く事も無くなってしまった。
「すごい⋯⋯⋯⋯アタシ達が苦戦してたのに啓吾が来てからスグに片付いちゃった」
「⋯⋯⋯⋯どうやら終わったみたいだな。
『〜〜〜〜〜〜〜〜!!!』
「「!?」」
俺がボソリと呟くと、怒ったのだろうか突然I Sが感情を持った様に動き始めた。
「コイツ、まだ動けるの!?」
「クソっ!鈴、気を抜くなよ!コイツまだ⋯⋯⋯⋯⋯って、アレ?」
動き出したと思われたI Sはエネルギー切れを起こしたか、とうとう機能を停止した。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯結局何だったのよ⋯⋯⋯」
波乱のクラス対抗戦は無人機I Sの乱入によって中止と成り、フリーパスの件も白紙に戻ってしまった。クラスメイト達は大いに文句を言ったが、俺からしたら、この一件で仲直りをしたのであろう。一夏と鈴が一緒に歩く姿を見て嬉しく思った。
「ちょっと戦闘シーンがお粗末ではなくて?」
「なんだかアタシ、良いとこ無しだったわよ!」
「スンマセン・・・・・これが処女作なもんですから、許してつかあさい!」
「まぁいいわ・・・・・後メバルは最近になって種類が分かれた魚でもあるわ!メバルによって味も違うから是非食べ比べてみてね!」
「「次回もお楽しみに!」」