OVER LORD外伝~ワニの大冒険~   作:豚煮込みうどん

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引っかかったな!タイトル詐欺だよ!!(ゲス顔

色々流れに不自然が生まれない様に会話とか考えましたが私にはこの辺が限界です。

それと1500名を超える方ににお気に入りいただけて私は嬉しく思います。ありがとうございます。これからも頑張ろうと思いました○




とある桃鰐の超大戦斧(グレイトアックス)

四時間、それはアインズの放った魔法で作られた氷が溶け、湿地帯が本来の姿を取り戻すのに掛かった時間でもある。

 

「クロコダイン、やはり、俺達も…」

 

リザードマンの集落の正面出口には、族長達を始めとした生き残りのリザードマン達が集まって1人の『漢』の出陣を見送っていた。

 

「不要だ…お前達では、はっきり言って付いて来られん闘いになるだろう。あれはそういう相手だ。」

 

代表たるシャースリューの言葉に、にべも無くそう返したクロコダインの背中に、リザードマンの戦士達全員の胸の内が悔しさで埋め尽くされた。

ザリュースも悔しさに表情を歪め、握りしめた拳は己自身を傷付ける程に握り込まれている。

 

そして、クロコダインの視線の先にはナザリック・オールドガーダーという上級のスケルトン達によって囲われ、誂えられた決戦のバトルフィールドがある。未だコキュートスも姿を現していないがクロコダインの双眼には既にその強敵のヴィジョンが浮かんでいる。

 

「…だが忘れてくれるな…俺はお前達リザードマンの心を背負って闘うのだ。祖霊などでは無く、唯、今を生きようとするお前達全てのな!」

 

バシャリ、バシャリと水を掻き分ける音を鳴らしながら、クロコダインが歩き出す。その後ろ姿は何処までも堂々とした物であり、まさに『王』の姿だった。

 

それを見送って、クルシュはそっと身を震わしながら俯くザリュースに身を寄せる。

 

「…信じましょう、ザリュース。クロコダインを!!」

 

「…あぁ、元より最早俺達にはそれしか出来ないんだからな…(祖霊達よ!!どうか我が友に力を貸してくれ!!)」

 

 

 

 

 

 

_________________

 

 

クロコダインが決戦の場に現れるとそれを待っていたのだろう。整然と並んでいたスケルトン達が一斉に手にした盾を叩き鳴らし、大地を踏みならす。それはアンデッド特有の無機質さ故、一切の乱れも無く、それはそれは見事であり、これから現れるであろうナザリック最強の武人の行進を声なき喝采、唱和で飾り立てた。

 

そんな中、クロコダインはアリーナ席とでも喩えれる様な大岩から此方を眺めているアインズ達を睨み付ける。

やはり宣言した通り彼等に動く様子は見られないが、先の闘いで姿を一切見せていなかった自分の様な存在が現れた事に対しては動揺の様な者が見て取れたが、だから何だという話でもある。

クロコダインがこれから成さねばならないのは今から現れるだろうコキュートスとの一対一の決戦を制する事その一点だけだ。

 

 

そして遂にリザードマンの集落とは対面に位置する森からコキュートスが現れた。

 

「来たか…」

 

森の大木を次々に一刀のもとに斬り倒し、自然と形成されたスケルトンの花道を堂々と歩き、現れたコキュートス

 

「オォ…コレホド…コレホドトハ…」

 

クロコダインを初めて直接その目にしたコキュートスが思わず口にしたのは戸惑いの混じった驚嘆と興奮の混じった歓喜の声だった。

 

「…………」

 

対してクロコダインは無言のままだ。黙したままコキュートスの姿をじっと見つめる。

この互いのリアクションの差には事前のお互いの認識が大きく表れた結果がある。

クロコダインは相手となるコキュートスの事を自分と同じくカンスト級の強さであると想定していた。だからこそ、コキュートスの姿をみても動揺は無かった。

だが、コキュートスが想定していたのは、生き残っているリザードマンの全ての戦士達だと考えていた。

それがどうだ?今コキュートスの眼前に立つ敵の偉容は…不敬だとは理解していても己の武人としての本能がヒシヒシと伝える、目の前の敵は自らの主たる至高の41人の御方達にすら匹敵しかねない強さを放っているではないか。

 

 

そんな向かい合う2人であったが先に明確に口を開いたのはクロコダインだ。

 

「お前が…コキュートスだな?」

 

「ソウダ、強キ者ヨ。闘イヲ始メル前ニ、是非貴様ノ名ヲ聞イテオキタイ。」

 

「クロコダイン、獣王クロコダインだ。」

 

「獣王クロコダイン…」

 

コキュートスは噛みしめる様にクロコダインの名を呟く。脳裏には至高の41人の1人、『獣王メコン川』の事が過ぎった。その獣王という肩書きを語るのは不敬だと、相手が相手ならば憤怒に燃えていただろうがクロコダインに対しては、酷く胸の内に納得が納まった。

逆にそれ程の相手なのだと、自分の感を信じるなら改めて素直に納得出来た。

 

(イイ加減ナ仕事ヲ…コレ程ノ漢、存在ヲ見ツケラレナカッタ失態ハ、大キイゾ、アウラ!!)

 

らしくも無く、同僚のダークエルフに内心で不満を募らせるコキュートス。しかしそれも仕方あるまい…目の前の相手はそれ程の敵だ。

そして、そのせいとは言い切れないが相手がクロコダインであると知っていればコキュートスはリザードマン相手に使うには些かに過ぎるとして、武器を最高の一振りであるとはいえ斬神刀皇しか持ち出さなかった現在の状況と違い、四本の腕、その全てに武器を持ってきていたはずだ。

 

「さて、先ずは確認しておきたい。先の対話でお前の主はお前が敗れれば素直にリザードマンが暮らすこの地より手を引くと誓ったそうだが…よもやお前の主は男同士の一対一の勝負の結果、交わした約束を反故にする様な恥知らずな輩ではあるまいな?」

 

クロコダインの問い掛けにコキュートスは憤慨する様に、一度冷気を口から吹き出すと力強く答えた。

 

「無論、ダガ既ニ我ニ勝ッタ後ノ心配トハ…侮ルカ、クロコダイン!」

 

「侮りなど有るものか…そうで無ければこちらも死力を尽くせぬというもの!!」

 

空気がビシリビシリと音を立てて張り詰めた…コキュートスが冷気を纏うならば、対するクロコダインは熱気と闘気を纏って断言する。

 

「ならば…」

 

そこでクロコダインの視線がコキュートスから離れ、此方を俯瞰しているアインズに向けるとスゥ~っと息を大きく吸い込んだ…

 

『聞こえているか!!!アインズ・ウール・ゴウン!!俺が勝った場合は約束通りここから去ってもらうぞ!!あれ程の大口を叩いておきながら、万が一にも約束を反故にすればこの獣王からの侮蔑と共に、その名を地に落とすと知れぃっ!!!』

 

 

 

 

 

爆発の様な咆哮を放って言い切ったクロコダインは腰元からオリジナルである真空の斧を抜き放つ…

 

「さぁ、始めようか!!」

 

「応ッ!」

 

 

次の瞬間、赤と白銀のぶつかり合った衝撃波が湿地帯に轟いた…

 

______________

 

 

 

『聞こえているか!!!アインズ・ウール・ゴウン!!俺が勝った場合は約束通りここから去ってもらうぞ!!あれ程の大口を叩いておきながら、万が一にも約束を反故にすればこの獣王からの侮蔑と共に、その名を地に落とすと知れぃっ!!!』

 

そのクロコダインからの宣言にアインズは骨の変わらぬ表情の下に目まぐるしく渦巻く感情を浮かべた…

 

(え、何だアレ!?あいつは確かさっき村の中にいた奴だったよな…まさかユグドラシルプレイヤーか!!?)

 

クロコダインの装備、その強さにその結論に至ったアインズの動揺が精神抑制を発動させる。ちらりと視線を傍に控えるアウラに向ければアウラの顔から血の気が引いて耳が垂れ下がっているのが確認出来た。

普段から、アインズが最も警戒しているのが他のプレイヤーだというのは守護者達にとってみれば常識以前の問題だ。それが解っているからこそアウラの心は今、後悔で一杯だった。

 

「アウラッ!!これはどういう事!!あの様な戦力がリザードマン共の元に居たなど、アインズ様が貴方に調査を御命じになったのは一体何の為だと思っているの!!!」

 

「申し訳ありません!!アインズ様っ!!!」

 

アルベドからの強烈な叱責にアウラは平身低頭で謝罪を行う。だが、そもそも調査の進歩にはアインズも口を出していたし先程、既に一度気にするなと口にしている。アルベドの叱責はアインズにも効いていた。

 

「良い、気にするなとは言わんがアウラ、言った筈だ、次に生かせ。それよりも獣王クロコダインか…正直、全く想定していなかった伏兵だ。これはコキュートスが遅れをとる事も有り得る…か…」

 

「それでしたらアインズ様、わたしも出陣いたしんすが。」

 

シャルティアからの申し出にアインズは一瞬迷うも首を横に振った。

 

「それはならん、この状況でそれをするという事はアインズ・ウール・ゴウンの名のもとに交わした約束を破る事になる。そして悔しいがクロコダインの言う通りそれはナザリックの栄光とコキュートスの尊厳を大きく傷付ける事になるだろう。」

 

「で、ですが…リザードマンも、あのクロコダインって奴も全部殺しちゃえば…」

 

おどおどとしながらも、かなり物騒な事を言うのはマーレだ。彼なりに姉の失態に関して思う所が有ればこそだろう。

そしてそれに答えたのはアインズでは無く、デミウルゴスだ。

 

「ノーバディノウズ…死人に口なし。確かにそれも一つの手でしょうが、それは悪手でもありますよマーレ。敵はアウラの調査をかいくぐった。と言う事は彼、獣王クロコダインの同類、仲間、それに比肩する者が他に隠れている可能性も十分に考えられます。万が一にでもそれ等を逃せば今回の件が醜聞として世に届く可能性もあります。」

 

「デミウルゴスの言う通りだ。それに、こちらは現在戦力の多くを晒している状況だが、此方はあちらの情報を殆ど持っていない。これは致命的だと言える…奴の戦力を計るという意味ではこの戦闘は決して無益では無い。だが、私が万が一コキュートスが追い詰められたと判断した場合は介入する。守護者各員は全員そのつもりで居ろ。」

 

『はっ!!』

 

「それと、シャルティアとパンドラズ・アクター。お前達は今すぐにゲートでナザリックに戻り、第六階層と宝物殿からコキュートスの21武器を幾つか持って来るのだ。最低限そうだな、『断頭牙』『轟キ破壊スルモノ』『大閻魔反命(オオエンマハンミョウ)』だ。」

 

『畏まりました!!』

 

直ぐにシャルティアとパンドラズ・アクターの姿がゲートに消える。主の様子と闘いの様子から迅速な行動が要求されている事が解っているからこそだ。

 

「そして各員、周囲に警戒し、いかなる状況の変化にでも即応できる様にしておくのだ!場合によってはヴィクティムのスキルの発動もやむを得ん事も視野に入れておけ!」

 

 

 

 

_______________

 

 

速度と技でコキュートス、力と守りではクロコダイン、ざっと言い表すならばそんな所だろう。

 

斬神刀皇を二本の腕の両手持ちに構え、放たれた何もかもを両断する様な鋭い斬撃がクロコダインの真空の斧に受け止められる…

 

「オオォォォッ!!」

 

「ぬぅぅんっ!!」

 

やはりクロコダインの力が上か、一瞬のつばぜり合いの後で斬神刀皇がはじき返される。

が、そこはコキュートス。本来ならば晒していたであろう隙を跳ね上げられた二本の腕から素早く、無手であった二本の腕へと斬神刀皇をスイッチさせる事で完全に無くす。

 

(何っ!?)

 

逆に今の隙に自慢の鉄拳を撃ち込もうとしていたクロコダインへとカウンターの一刀を振り下ろす。

 

(堅イ。)

 

獣王の鎧の隙間、並の武器なら難なく弾く堅さを誇る真紅の皮膚を切り裂いて、斬神刀皇の刃がクロコダインの血に濡れる…

今ので腕の一本でもと思っていたコキュートスであったが想定よりも遙かに浅い、与えた傷に自分の想定の甘さにギチリと口元を鳴らす。皮膚を裂いた所でクロコダインの超密度のゴムの様な筋肉が刃を受け止めたのだ。

 

同時、コキュートスの複眼の一つが、ずっと捉えていたクロコダインの拳がコキュートスのボディに突き刺さった。

コキュートスも寸前で二本の腕を交差させ十字受けでガードしたが『ミシリッ…』と嫌な音が外骨格伝導で耳に刺さる。コキュートスのカウンターの斬撃を受けて怯みもせず、尚この威力…

 

 

 

『……強い…』

 

 

準備体操を終えた互いの評価が重なった…

 

 




『変わる、変わる、変わる。

この世の舞台を回す巨獣が、凍てつく世界でまた動き始めた。

天地が軋み、人々は轟く。

宝玉が煌めけば、吹く風も変わる。

昨日も、今日も、明日も闘いに閉ざされて見えない。

だからこそ、切れぬ絆を求めて。

褪せぬ愛を信じて。

次回、『抜斧』。

変わらぬ愛などあるのか。』


尚、アインズ様が持って来いって言った武器『断頭牙』はアニメでいっつももってたハルバード。残り二つはうどんの勝手な妄想武器です。オオエンマハンミョウとはえげつ無い顎を持った他の虫絶対殺すマン的な昆虫の名前です。


次回、そろそろ夜寒いし、毛布を引っ張り出したら。

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