OVER LORD外伝~ワニの大冒険~   作:豚煮込みうどん

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今回独自設定の解説が非常に多いです。
多くの方が疑問に思っていた様子の武器系統の話ですが正直、クロコダインの能力の再現ありきで今作は書いてたので星に願いをの効果をかなり拡大してます。
この話ではこういうものかと軽く流して下さい。

また、ワールドトレイサーの様な特殊な職業はレベルダウンしても一度条件を満たしているのである程度レベルが戻ったら再取得出来るという設定でお願いします。


この悪徳ギルドには問題がある。

アインズの宣言した通り、クロコダインとコキュートスの決戦の翌日、燦々と輝く太陽が直上へと昇ると同時、ゲートを介してアインズはリザードマンの集落へと姿を現した。

 

アインズが同行させたのは意外にもアルベドとアウラのたった2人。無論、隠密系モンスターを周囲に配し、自身の安全には気を配っている。

 

そこにコキュートスの姿は無い。

 

 

先日の闘いの余波にて家々が吹き飛び、土壁は崩れ、もはや集落の体を成していないその場所を一度見渡し、アルベドとアウラは不愉快そうな表情を隠そうともしなかった。

 

「全く…アインズ様がお越しになるのが解っていたのなら、この様な汚らしい塵の山は片付けておくべきでしょうに!」

 

微かに飛翔しているアインズ達が足下を泥で汚すようなことは無いだろうがアルベドが言う様に、少なくとも目の前の光景は集落とは言いがたかった。どちらかと言えばここは爆心地だ。

 

「そう言うな、アルベドよ。今回はこちらが礼を尽くさねば成らん立場だ。……その筈だったのだがな…」

 

アインズの視線の先には大勢のリザードマンが、既にこちらに向かって平伏している光景が移っていた。

これにアインズは疑問を抱かずには居られないが、アルベドとアウラにはごく当たり前の光景過ぎてアインズの戸惑いは察せられない。

平伏すリザードマン達の先頭にはあの日、アインズの前に代表として訪れたザリュースとシャースーリューを筆頭とした族長達が、その後ろにはそれぞれ位の高い者達が続いている。

 

 

「お待ちしておりました…偉大なる死の神、アインズ・ウール・ゴウン様。」

 

やはり代表してアインズに声を掛けたのはシャースーリューである。

 

「うむ…お前は確か、リザードマンの代表だったか…?所で、クロコダインはどこだ?」

 

「俺ならここだ。」

 

野太い声のした方へ視線を向ければ、クロコダインはリザードマン達から少し離れた場所に普通に立っていた。回復魔法の効果だろう、身体はすっかり回復しているが唯一点、左目だけは断頭牙によって刻まれた傷が深々と残り、痛々しい隻眼となっている。

 

それは、本来そう有るべき形に回復したと表現するのが正しいかも知れないが、それはクロコダインの胸の内に納められた事である。

 

 

「私は彼等に対して我が方の敗北を認め、謝罪と賠償に来たのだがね…クロコダイン、これはどういう事か説明して貰えるか?」

 

言いながらアインズの視線は、左右に動いた後、平伏すリザードマン達からクロコダインへと流れていく。

 

「説明も何も、見ての通りだ。昨日の俺達の闘いはこいつ等には少々刺激が強すぎたみたいでな。お前達ナザリックの傘下に加えて貰いたいらしい。とは言え…勝ったのはあくまでこいつ等だ、奴隷や家畜などの不当な扱いでは無く…まぁ、そうだな舎弟みたいな扱いにでもしてやってくれ。」

 

少々困惑気味だったアインズだがクロコダインの説明にさらに困惑は深まる。

クロコダイン曰く、アインズこそが己が探していたプレイヤー。つまり同郷の存在であり、見た目とは違い、話が通じるという事をリザードマン達に説明した所、クロコダインが口利きを引き受ける事でリザードマン達は穏便にアインズの傘下に加わる事を選択したのだと説明を加える。

 

元々、リザードマン達は強い者に対する強い信奉があり、尚且つ彼等にとっての救世主、英雄であるクロコダインがもしアインズ・ウール・ゴウンと再び敵対すれば確実に負けると言い聞かせていればこうもなるだろう。

 

「成る程…了解した、良いだろう。彼等にはアインズ・ウール・ゴウンの名においてナザリックの庇護を与える事を約束する。それをもって今回の一件の決着という形で構わないな?」

 

アインズの中では“元々、下請けの孫会社に契約社員を加える予定だったが、クロコダインという大物のコネと口利きで急遽、子会社への正社員登用に変わった。”みたいな物かと少しばかりずれた納得をする。

 

「はい、我等はクロコダインの助言を信じ、偉大なるアインズ・ウール・ゴウン様のの下に下ります。」

 

幸い、先の勝利のお陰で話の主導権は元々リザードマン側にあったのだ。シャースーリューの言葉に対して元々の予定の一部と合致するアインズが首を縦に振ったのは当然の帰結であった。

リザードマンの自発的な服従という結果には、当初不愉快さを感じていたアウラとアルベドもようやく納得を浮かべている。

 

「ならば…傾聴せよ!今、この時より諸君等リザードマンは繁栄と栄達が約束された!!諸君等が我等ナザリックに敬意と忠誠を捧げる限り、我等も又、諸君等を導こう!!」

 

『ははぁっ!!』

 

こうして、リザードマン達はアインズ・ウール・ゴウンの名の下に、ナザリックの庇護を受けて繁栄が約束される事となった。

 

余談ではあるが、集落の再建の為にナザリックからは大量の労働用スケルトンと重機代わりのマッドゴーレムが数体派遣されるのだが…これが後にちょっとした騒動の種になるとはアインズもクロコダインも全く予想していなかった。

 

 

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「…ここが、ナザリック地下大墳墓か…」

 

リザードマン達との話を終えて、アインズ直々のゲートを介して遂にクロコダインはナザリック地下大墳墓へと足を踏み入れる事となった。

仰ぎ見る程の天井の高さ、何処までも続く様な錯覚さえ起こす通路には超一級品の芸術と断言出来る白亜と黄金のレリーフが続き、シャンデリアの燦然たる輝きが何でも無いことのように視界を照らす。そこはまさに正しく神の神域であった。

 

「おぉ…これは…素晴らしいな。」

 

一体どれ程の労力を惜しまずここに注ぎ込んだのか…それは並大抵では無かっただろうと同じユグドラシルプレイヤーであったクロコダインには良く分かった。だからこそ口をついて出た感嘆の言葉に嘘は無く、また、だからこそアインズにも届いたのだった。

 

「歓迎しよう、クロコダイン。この世界においてお前はナザリックにとって初めての客人だ。」

 

どこか嬉しそうに声を弾ませて、アインズは両手を広げると歓迎の意をクロコダインへと示す。そのアインズの後ろにはいつの間にかソリュシャンとナーベラルを除いたプレアデスの面々を中心に一般メイド達が美しく整列し、一斉に頭を下げていた。

 

その華やかで荘厳な光景に圧倒されつつあったクロコダイン…

 

「さて、ゆっくりと歓迎の宴でも…と行きたい所だが、互いに気になることを先に片付けた方が良いと私は思う。どうだろう?」

 

「そうだな、それがいいだろう。…楽しみは後にとっておくに限る。」

 

アインズの言う通り、クロコダインとしても先ずはお互いの気になる事を片付けるべきだろうと思い、冗談交じりに素直に頷きを返す。

 

「ハハハ…では、私の部屋へ案内するとしよう。各員、聞いての通りだ。私はこれからクロコダインと大事な話をする故、誰も部屋へと入ってくるな。」

 

「しかしアインズ様、このような野蛮な者と二人きりなど、危険なのでは!?」

 

堂に入ったアインズの命令、それに異を唱えたのはアルベドだったが他のプレアデスの面々も同じく不安と不満を浮かべていた。

 

「…口を慎めアルベド。この男は正式な私にとっての客だ…すまないクロコダイン、部下が失礼な真似をした。だが、これも偏に私の事を強く案じる故でね、許して欲しい。」

 

「気にしないでいいんだがな。」

 

内心ではクロコダインに対し黒い感情を渦巻かせながらもアインズに諫められ、頭を下げるアルベド。そこにはやはり外部の者に対する守護者としてのどうしようも無い在り方が存在していた。

 

________________

 

 

アインズの自室に通されたクロコダインは、またしてもその部屋の豪華絢爛さに目を剥く。それをアインズは「豪華すぎて落ち着かないんです。」と冗談交じりに素の口調を初めて見せるのであった。

豪奢なソファーにテーブルを挟み、向かい合う様に腰掛け、改めてクロコダインとアインズは向かい合う。先ずはお互い何から話すべきか…お互いに同じ悩みを抱いては居たが、先に口火を切ったのはクロコダインであった。

 

「コキュートスは…どうなった?」

 

「…今は第五階層、大白球内で回復に努めています。この世界なら回復魔法やアイテムもありますからね。よかったらまた会ってやって下さい。」

 

「そうか。」

 

クロコダインの声色には強敵の無事を喜ぶ安堵が多分に含まれていた。その様子にアインズはクロコダインが本気でコキュートスの容態を気に掛けているのだと察して、それを喜ばしいと感じた。

 

「…所で、その口調が…お前の素なのか?アインズ。」

 

「え?あぁ、そうですね。実は部下の前だとどうしても偉大な支配者って感じで演じないといけないんですよ。その辺、結構苦労してます。」

 

「成る程な…」

 

そこからは互いに話しに花が咲いた…とは言っても双方其処まで饒舌では無かったが、互いの転移後のこれまでや今後のアインズ・ウール・ゴウンとしての目的、ユグドラシル時代の思い出話、少し踏み込んで現実でのプライベート等、互いの事情を擦り合わせるように語る事、語りあわねばならぬ事は尽きる事は無かった。

 

 

____________

 

「そう言えば、ずっと気になっていたんですがクロコダインさんの使ってた斧、アレどうなってるんですか?何で魔法発動体になってるんですか?」

 

「あぁ、アレは…こいつを使った。」

 

そう言ってクロコダインが空間から取り出したのはアインズにも見覚えのある3つの流星をあしらった小さな指輪であった。

 

「シューティングスター…成る程、願いで武器の強化合成を行ったと…でもそんな貴重品そう使えないんじゃ…」

 

「溜め込んだ経験値があるだろう?どうせ上限を超えれば無駄になるんだ、使わんと勿体無い。幸い材料になるワンドやクリスタルは引退した仲間が残した物が大量にあったからな。」

 

シューティングスターによる超位魔法『星に願いを』の習得。そしてその使用によるレベルリセットの繰り返し。不可能では無い…不可能では無いが、明らかに労力と成果の釣り合いがとれていない。

 

「一つの魔法効果にそれぞれ『星に願いを』を一回、それとグレイトアックスには友人のギルド武器を原料にさせてもらった。」

 

魔王バーンの率いたギルド『魔の六芒星』、『竜の紋章』とは同盟のような関係であったが閑散期に解散と引退となったギルドだ。そのギルド武器であった“光魔の杖”を譲り受けたクロコダインは、それを容赦無くグレイトアックスの強化素材へとつぎ込んだ。

そこにレベルカンストからの『星に願いを』…そこからの再レベリングと武器の再強化、繰り返されるその行程は積み上げては崩す石積みの如く、まさに修験者じみた苦行であった。

 

「マジか……ん?じゃあクロコダインさんの所のギルド武器は?」

 

「あぁ、どちらかと言えばあくまでシンボルとして作られたオリハルコン製の何の変哲も無い剣だな。無論、こだわりを持って作られたが、ユグドラシルの初期の時代に作られた物で、本来の持ち主もとうの昔に引退してな…最果ての岬の端に突き立てたままにしてある。」

 

「えぇ~…」

 

アインズドン引きである。ギルド武器を世界の果てに放置してきたなど、アインズからしたら正気では無いとしか言えない。

それでもダイの大冒険のファンの集まりであった仲間達は持ち主が消えた『ダイの剣』ならば、そうしてしかるべきだと納得を示していた。

 

 

「さて、アインズよ…お前はどうしてリザードマンの集落を襲った?勿論、事前に聞いた実験の目的もあったのだろう、彼等をゲームと同じ様なただのモンスターだと思って襲ったというのならわからんでも無い…が、どうもそこら辺、ここで話てみた本来のお前の性格と支配者としてのアインズ・ウール・ゴウンが噛み合わん印象がある。」

 

それはこうして二人で話をしてみても、クロコダインがアインズに強く感じた印象だった。

アインズもクロコダインの言いたい事は何となく理解出来た。改めて同郷の人物と話をすることで自覚したが自分の精神が強制的に沈静化する事を除いても、明らかに変容している。

 

「……はっきり言えば、ナザリックの配下と居るかも知れないギルメン以外のことがどうでも良いとしか感じないんですよ。残酷になったと言えば良いのか?以前にも一緒に旅をした冒険者の人達が殺された時にも、私はそれを少し不快に感じた程度でした…多分こっちに来る前だったらそんな事は無かったとは思うんですが…クロコダインさんにはそういう変化みたいなのはありませんか?」

 

「成る程、その感覚は俺にも心当たりが有るな…俺の場合は、クロコダインとして生きることに違和感を全く感じない事だろうな。お陰で命を掛けることを恐れなくなった。何より、原作の知識をまるで自分の経験してきた事のように錯覚するのだ…」

 

真剣みを帯びたアインズの独白に、クロコダインも少なからずショックを受けていた。

自分にも思い当たる節がある以上、それはつまり自分が自分で無くなることであり、それ以上に恐ろしいのは特にそれに違和感や嫌悪を感じること無く、当たり前の事だと無意識に受け入れていると言う事であった。これは自分1人では決して気づくことの無かった盲点とも言える事実だろう。

 

その事実に、室内を満たしたのは重い沈黙だった…

 

互いに口にこそ出さなかったが、現実の、本来の自分がどうなっているのかと改めて考えると薄ら寒い物を感じずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

後日、アインズとの話し合いをもってクロコダインはリザードマン達と同じく、ナザリック地下大墳墓に『客将』として身を寄せることが決定するのだった。

 




『再戦の為の停戦、破壊の為の建設。
ユグドラシル時代から、連綿と続くこの愚かな行為。
ある者は悩み、ある者は傷つき、ある者は自らに絶望する。
だが、営みは絶えること無く続き、また誰かが呟く。
「たまには、BARで飲むのも悪くない。」

次回、『新入り』。主は、酒が飲めない。』




モモンガ「……リア充が憎い…」

コキュ「悪ノ心ニテ、愛ノ空間ヲ断ツ!名付ケテ、断頭光牙剣ッ!!ヤァッテヤルゼェェッツ!!!!!」

ザリュース&クルシュ「ぎゃあああああっ!!!!」



次回、Gジェネジェネシス発売までには。

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