OVER LORD外伝~ワニの大冒険~   作:豚煮込みうどん

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自分ルビ振ったりの多機能フォームが使えないのでそこんとこ~シクヨロ!!

ちょっと加筆修正しました


そういえばダイの大冒険には女騎士いないな・・・

「ゲギャギャッーーー!!」

 

薙ぎ払い。

両断されたゴブリンの上位種と思われるホブゴブリンの上半身が鮮血をまき散らしながら在らぬ方角へと吹き飛ぶ…

 

打ち下ろしの左裏拳。

左やや後方から飛びかかってきた二匹目、その頭部を粉砕されたゴブリンの身体が大地にめり込む…その骸は宛ら枝から落ちた熟れすぎた果実の成れの果ての様だった。

 

「ゴガァァッーーッフォ!!」

 

背後、破れかぶれに突撃を敢行したオークの巨体を横薙ぎの尾が吹き飛ばす。

『バンッ!』という破裂音と共に『ビシャリッ!』と森の中の岩肌と木々を破裂した肉袋から飛び出した水飛沫が赤く彩る…

 

 

 

「………」

 

黙したまま周囲を見渡しクロコダインはようやく警戒を解いた…

 

 

 

 

森の中をゆっくりと探索しながら彷徨い始めて既に3日が経過していた。その間に様々な事が判明したのだがそれは一旦置いておく。今のクロコダインにとって正直誤算だったのが自身とモンスター達の戦力差だった。

 

手の中に握られた愛武器『真空の斧』を見つめながら思わず喉の奥からうなり声が漏れる。

 

弱すぎる…

 

いや、この場合正確に言えばクロコダインが強すぎるのだがクロコダインが主観的に捉えればやはり弱すぎるというのが正しいのか。

 

 

 

 

 

ユグドラシルの最終日、クロコダインが保有していたアイテムは勿論インベントリに収納されており、クロコダインは当初無手であった。が、これは直ぐに解決した。

 

何せ念じながら手を差し出せばどういう理屈か、空間の捻れの様な物から自分の望んだ物を取り出すことが出来たのだから。検証の結果取り出せたのは残念ながら最終日に自分のインベントリに所持していたアイテムのみ、拠点などに置いていたアイテムは全部ロストしたと考えるべきだろう。

 

しかし幸いと言うべきか普段から戦闘とフィールドワークを基本プレイとしていたクロコダインのインベントリには消費系アイテムはカンストまで詰め込まれているし装備の類いも直ぐに武器屋が経営出来る程充実のラインナップだ。

またクロコダインは当然の判断としてまずは自分の拠点であった魔の森の洞窟を探したのだが…どういう訳か森の地形が大きく変化しており、もはや其処は魔の森とは呼べる物では無くなっていた。

つまりは拠点を完全に見失ったのである。

 

そして散策の道中、種族『獣王』のパッシブスキル“野生の力”が影響しているのか遭遇する動物、動物系モンスターは例外なく逃げ出すか腹を見せ従属の姿勢をみせるか…自殺志願と言わんばかりに襲いかかってくるのはゴブリンやオークなどの所謂亜人系のモンスターばかりだった。

実はクロコダインも当初はここが現実と変わらない世界であるという事からモンスターを殺すことに忌避感はあったのだがそれは直ぐに無くなった。

何せモンスターはクロコダインを殺気を滾らせて襲ってくるのだからクロコダインもその気になるという物、元々闘う事を生業としていたのだから闘争心は人一倍だ。

 

 

そしてこれは未だ確信を持っている訳では無いがクロコダインの中で一つの答えが見つかっていた。

 

即ち…

 

 

「やはり此処はユグドラシルの世界そのままという訳では無いのだな。」

 

手に入る様々な情報を擦り合わせた結果至った結論にクロコダインの止まることの無い足取りも僅かに鈍る。

 

そんな中、クロコダインの聴覚が何かと何かが激しくぶつかり合う音を捉えた。

耳を澄ませば悪鬼のような興奮したモンスターの雄叫びに混じって気合いを込める様な人間の掛け声が聞こえる。

 

クロコダインは音の聞こえた方へと進路を変えると気持ち足取りを速めて進み始めた。

戦闘中だろう其処へ上手く合流出来れば恐らくではあるがこの世界で初めて人間と出会うことが出来るだろうと考えて。

 

 

 

 

 

____________

 

 

 

 

リ・エステリーゼ王国冒険者ギルド、女性のみで構成されたアダマンタイト級チーム『蒼の薔薇』に所属する戦士ガガーランは同僚のマジックキャスターであるイビルアイと共にトブの大森林へと依頼を受けて足を踏み入れていた。

 

依頼の内容は至極単純、住み処を追いやられたと思われるゴブリン等が最近になって森の外に現れる様になった事に対する調査と可能ならばその解決。

既にこの依頼はゴールド級のチームが受注していたのだがそのチームは未帰還、依頼の失敗と見なされ、より腕の立つガガーラン達にお鉢が回ってきた訳である。

蒼の薔薇には他にも勿論腕自慢のメンバーが揃っているのだが…如何せん彼女達は冒険者の最高峰、全員が拠点としている王都を離れる事は冒険者組合としても遠慮して欲しく今回の依頼はガガーランと転移によるフットワークの軽さからイビルアイの二人での任務となったのである。

 

 

元々広大なトブの大森林には森の賢王を筆頭とした強力な魔獣達がそれぞれの縄張りを保持しているとされていて、今回調査を行うこととなったエリアはどちらかと言えば王都側に近い縄張り同士の空白地帯に位置する場所だった。

そこに他所から住み着いたのか、それとも急速に力を付けた魔獣が現れたのか…何にせよその空白地帯とも呼べる場所に新たな支配者が誕生したのでは無いだろうかというのが冒険者組合の調査の結果だった。

 

 

 

そしてガガーラン達が森の中で遭遇したのは大量の子分のオーガエイプを引き連れ、全身の体毛を白く変質させた一際大きな体躯を持つ猿の様なオーガ『シルバーバック』であった。

 

「イビルアイ、あのでかぶつは俺が押さえておくからよ、取り巻きをよろしく頼むぜ。」

 

「…ま、多数相手は私の領分か。いいだろう雑魚は引き受けた。先に依頼を受けていた奴らが不覚を取ったのもこいつ等かも知れん油断はするなよ。」

 

瞬時に互いの役割を確認し終えるとガガーランはウォーピックを振り上げるとシルバーバックとの距離を詰める。

 

「おらっ!!」

 

様子見を兼ねているとはいえガガーランが先制に放ったのは強烈な打ち下ろしの一撃!

それを受ければ唯では済まないとばかりにシルバーバックは大きく後方に飛び下がることで回避し、警戒のうなり声を漏らしながらいつでも飛びかかれる様に構えた屈んだ姿勢のままでじりじりと再び距離を開けていく。

 

それに対してガガーランはこのモンスターに対しての危険度を頭の中で引き上げた。(とはいえ確実に倒せるだろうという評価は覆らないが。)

モンスターも冒険者も少し臆病な位の方が長く生きるものだ。それを思えばこのシルバーバックはそれだけで強者たり得る。

恐らくは此方が踏み込めばその瞬間シルバーバックは飛びかかってくるだろう。今まで多くの修羅場を潜ってきた経験からそう読み取る。

 

だからこそガガーランが選んだのはウォーピックを構えたまま、再び着実に敵との距離を詰めるという選択肢だった。

対してじりじりと下がるシルバーバックも実のところ逃げるばかりでは無い、相手を強敵とみるや萎縮と疲労の効果を持つ魔眼でガガーランの力を削ごうと動いていたのだ。

しかしそれはガガーランの装備する鎧、魔眼殺しのゲイズ・ベインの前には無意味だった。

 

魔眼による弱体が効果を見せないことに遂に焦れたのか素早いジグザグの跳躍を繰り返し、死角から飛びかかってきたシルバーバックからの両手の叩き付けを鮮やかに捌くやはり一枚上手なガガーランの反撃がシルバーバックの胴を強かに打ち付ける…闘いはやはりガガーランが優勢なまま当初の遭遇地点からだいぶ離れながら継続していた。

 

「オ~ロロロロロッォォッ!!」

 

お互いの警戒態勢が続く中、興奮した様子のシルバーバックが突然雄叫びを上げ、ドラミングを行う。

 

そしてここに来てガガーランも気が付いた。このモンスターがやたらと消極的な戦い方をしていた理由を。

 

 

先程の雄叫びが合図だったのだろう、毛色こそ違うがガガーランの相対するシルバーバックと遜色ない…否、より立派な体躯を持ったオーガが背後の木上から強襲を仕掛けてきたのだ!

 

「ちっ!!このエテ公俺を誘い出したってのか!?」

 

一瞬早く、それを察したガガーランは咄嗟に身を捻り躱す。

新たなオーガは無理に追撃することも無くシルバーバック同様にバックステップで距離をとる。結果としてガガーランは完全に前後を挟まれる形で強敵二匹と相対することになった。

 

「上等だぜ、仲良く退治してやるからかかって来いや!!」

 

 

 

 

_______________

 

 

 

ガガーランと2匹の闘いの第二ラウンドは当然の如くガガーランに苦戦を強いていた。

 

地の利、数の利、おまけに二匹のコンビネーションは嫌らしく距離をとっての投石などを多用してくる。ガガーランがどちらかに攻勢を向けようとするともう片方が前に出る。

それを逆手にとってフェイントで迎撃しようとすれば最初は引っかかっていたが今度は逆にフェイントに引っかかった振りで一度ガガーランが痛い目を見る羽目になった。

思いの外この二匹の個体の知能の高さが遠距離武器を持たないガガーランにとって厄介だった。

 

しかし苦戦を強いられているとはいえ、ガガーランに焦りは無かった。

何故ならそう時間をおかずイビルアイが援護に駆けつけることは疑いようも無い上に自分はまだ武技を温存している。

 

 

そんな時、不意にガガーランは直感的に強大な存在感を放つ何かが急接近してくることを感じた。

 

(何だ?まさか森の賢王とか言う奴か?だとしたらちょっと不味いかも知れねぇな。)

 

 

それはオーガ達も同様だったらしく二匹揃って手を止めると同じ方向に顔と視線を向ける。

ガガーランはそれを反撃の好機だなどとは思わなかった。むしろより警戒を強くした。

 

二匹にでは無い。接近する正体不明の何者かに対してだ。

 

 

そうして草木を掻き分ける音が存在の接近を知らせると同時、二頭目の大型のオーガの巨体の腹に何者かの拳が突き刺さった。

 

その一撃にどれだけの破壊力が込められていたのか…吹き飛ばされ大木に打ち付けられ絶命したオーガの腹部は完全に”破壊”されていた。

 

その衝撃の一幕に一瞬息をのんだガガーランはようやくその闖入者の全容をその目で捉えた。

 

 

 

 

そこに居たのは拳を振り抜いたままの姿で漆黒のマントをたなびかせ、同じく重厚な漆黒の鎧を身に纏った巨躯のリザードマンだった。

 

 

 

______________

 

 

(とりあえずオーガを攻撃したが……このプレイヤーは女か?いやどちらだ?)

 

クロコダインの視線が失礼な事を考えているなどおくびにも出さず、ガガーランを真っ直ぐに捉える。

対してガガーランは突然現れたクロコダインを全力で警戒しているだろう事が直ぐに覗えた。

なのでそれを察してクロコダインはまず誤解を解く為に口を開いた。

それに戦闘に横やりを入れたのだから断りを入れるのがプレイヤーとして最低限のマナーであろうと。

 

 

「…戦闘の音が聞こえてな、余計な真似だったか?」

 

クロコダインの問いにガガーランは思わず目を丸くする。

 

「いや、丁度苦戦していた所だ。正直助かった。」

 

固い口調ながらもそう答えたガガーランに対してクロコダインは口元を緩める。

 

「フッ、ならばあのもう一匹も早々に片付けるとしよう。すまんが色々と尋ねたいこともあるのでな。」

 

そう言ったクロコダインは手にしていた片手斧をまるで天に翳す様に雄々しく振り上げる!

 

「唸れっ!真空の斧よっ!!」

 

クロコダインの叫びが響いた瞬間、真空の斧の宝玉が煌めきどこからともなく吹きすさぶ風が無数の刃となってシルバーバックへと襲いかかる。

 

魔獣の類いの強い魔法耐性を持つ毛皮を余りにも容易く切り裂き、風は吹き荒れる…

 

そうして風にざわめく森が静寂を取り戻した時にはクロコダインとガガーラン、二人の前にはシルバーバックの死体が倒れ伏していたのだった。

 

 




オーバーロード設定では魔法使える武器は無いはずですがこの真空の斧にはちゃんとそこの部分を補う設定作ってますのでいずれ作中で描写します。



次話 芋掘りが終わったら。

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