OVER LORD外伝~ワニの大冒険~   作:豚煮込みうどん

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携帯だと非常に執筆がし辛い。

連日連夜の忘年会で私の胃腸はボドボドだ。


アンデッドに生存フラグを立てるという矛盾

あれからシャドウデーモンからの拘束から解放されたイビルアイはザリュースの案内を受けながら集落に新しく建設された神殿へと案内を受けていた。

何を崇め、奉る為の神殿かと問われればそこは二人のプレイヤー、詰まる所アインズとクロコダインの為のものである。肝心の両名はそれを照れ臭いというかむず痒いというか…正直あまり気乗りはしていなかったが、リザードマンとナザリックのシモベ達の双方の強い願いが凄まじい速さで建設を推し進めたのであった。

 

湿地帯のど真ん中に建設されたなど到底思えぬ荘厳な白亜の神殿の内部は床一面がともすれば鏡のように磨かれ光り輝いている。

そこをザリュースに先導されながら大人しく進むイビルアイの目にふと気になる物が映り込んだ。

一枚物の黒曜石で作られた壁面に何やら独特の絵柄で何かが描かれている。視線を先の方に送れば何名ものリザードマンがノミと染料を手に何やら作業を行っている。彼らのその様子は鬼気迫ると言った程に真剣そのものだ。

 

「あれは…?」

 

「壁画ですな。クロコダインとアインズ様の伝説を我等の子孫、さらにその子孫、千年先へと伝える為に。」

 

何処か遠い目で語るザリュースの返答に、イビルアイは彼女の感性ではお世辞にも上手とは言えない独特の壁画をしげしげと眺める。

 

その絵物語の始まりはクロコダインらしき赤いリザードマンが一匹のリザードマンから魚を受け取っている絵から始まっている。

次の絵では大勢のリザードマンの輪の中にクロコダインの姿があった。

さらに次の絵では黒く邪悪な影が天から怯え惑う様子のリザードマンの集落を俯瞰している。そこにクロコダインらしき絵は存在していない。

次の絵では6名のリザードマンが輪になり会談を行っている。中でも目を引くのは白いリザードマンの姿だろう。良く見ればイビルアイの今目の前にいるザリュースらしき姿もある。

次の絵は大勢のリザードマン達が武器を手に、大量の死の軍勢に突撃している絵だった。その先頭には輝く斧を手にしたリザードマンが描かれている。

 

そして、次は…と視線を送ればそこで現在完成している壁画は終わっていた。

 

「なる程…伝説とはこうして作られるのだな。」

 

ザリュースもイビルアイがポツリとこぼした言葉に無言の頷きで同意を示す。

現在も法国で奉られるかつてのプレイヤーかと思われる6大神もこうして現在まで信仰が続いていることを思えば、今自分が目にしている物を1000年先のリザードマン達も眺める事になるのだろうと思うと人よりもはるかに長い時を生きる事になるであろうイビルアイにも感慨深いものがあった。

自分にも国墜としという伝説はあるが、この様に崇められるものではない。

 

そして、案内された神殿の最奥には精巧な作りのクロコダインとアインズの石像が飾られた祭壇があり、そここそがリザードマンの集落とナザリックを繋ぐゲートの出現位置でもあった。

 

ここへ来てイビルアイは話に出て来ていたアインズの威容をついにその目にする事となる。

 

(やはりか…エルダーリッチなのか…?)

 

正直予想は出来ていた。

ザリュースが評した死の神という言葉に、大量の強力なアンデッドを使役する能力、そしてこの様な神殿すら魔法の力で作り上げてしまう様な存在、そんなものが人間などとは想像できなかった。

今でも自分の影に潜んでいるシャドウデーモンも人の尺度で言えば間違いなく邪悪な存在だろう。

だが、そんな理不尽とも言える存在こそがプレイヤーなのだ。

 

そうしてしばらく像を見上げていたイビルアイの耳にふと、ズシリズシリと巨大な何者かの足音が聞こえて来た。イビルアイが半ばその足音の主に予測を抱きながら振り返るとそこにはやはりと言うべきか当然の様にクロコダインの姿があった。

 

「待たせたな、お前が俺を訪ねて来たというガガーランの仲間か?」

 

今は返してもらえている仮面で素顔を覆い、外套で体を隠しているイビルアイを見下ろすクロコダインが彼女に抱いた第一印象は子供ではないか?というものだった。

 

「その通りだ。本人が足を運ぶのは難しくてな…証拠とは言い難いが一応こうしてお前との友好の証も預かっている。」

 

そう言ってイビルアイが懐から取り出したのは、赤い液体で満たされたポーションの小瓶だ。それは紛れもなくクロコダインがガガーランへと送った物であった。

因みにガガーランを始めとした蒼の薔薇のメンバーは現在王都で対八本指の件での活動に従事している。

 

「成る程…イビルアイと言ったか。シャドウデーモンから報告は聞いているがお前が持って来てくれた情報というのはプレイヤーのことに関してという事で間違いないか?」

 

クロコダインの確認に無言で頷いたイビルアイは早速伝えるべき事を伝えようとするがクロコダインがそれを手で制した。

その視線がザリュースの方に向くと事情をなんとなく察したザリュースがその場を離れて行く。去り際に交わされた「悪いな。」「気にするな。」という軽いやり取りが本来ならば、圧倒的力の差が存在するであろう二人、しかしその関係が友として歪なものでない事を表していた。

同時にシャドウデーモンの気配もイビルアイの影から消える。

 

「イビルアイ、悪いがもう一人同席してもらいたい人物がいる。それからでも構わんか?」

 

「…それはもしや死の神アインズ・ウール・ゴウン様とやらか?」

 

イビルアイの脳裏に先ほど目にしたエルダーリッチの石像が過ぎる。

 

「知っているなら話は早い。アインズも俺と同じプレイヤーでな、お前の話を聞きたいらしい。じき、此処に来る手筈だ。」

 

言いながらクロコダインがイビルアイを先導していった先は神殿内の応接室だ。明るく豪奢な作りの上品な室内の様は、とてもここがリザードマンの集落の中とは思えない。その室内の調度品や明かり一つとってもマジックアイテムで構成されている事に内心イビルアイは自分の想定していた以上のプレイヤーの持つ力という物の強大さを改めて感じていた。

 

アインズを待つ間、イビルアイはクロコダインにこの地で何が起きたのかを訪ね、クロコダインはそれを語って聞かせた。同時にナザリックについてもクロコダインの主観で語っても問題がないであろう部分についてはイビルアイに教えておく。今回、運が悪ければイビルアイが殺されていてもおかしくは無い状況だったというのもあるからだ。

 

「…と、来るぞ。」

 

話を切り上げたクロコダインの視線が室内の端へと注がれる、そこには黒い靄の様な空間の歪みが生まれていた。イビルアイは悟る。これがプレイヤーの扱うゲートなのだと。

 

「済まない、お待たせしたかな。」

 

黒い靄を切り裂く様に抜けて姿を現したのは、やはりイビルアイの見た彫像の通り、まさに邪悪の化身と評するに相応しい存在であった。ただ一つ違うと言えばその顔は赤い憤怒の表情を浮かべる仮面に隠されている事だろう。

 

「…また業の深い物を…」

「…あ」

小さく漏らしたクロコダインの呟きにアインズのない筈の心臓が跳ねる。一応来客が吸血鬼とはいえ慎重派な彼にとっては念の為にカルネ村の時と同じ配慮のつもりだったが、そう言えばクロコダインはこの仮面を持つことの真の意味を知っている数少ない存在だ。それを思えば嫉妬のマスクを装備していることそのものが微妙な気分になる。

 

「あ、えっと…初めまして、アインズ・ウール・ゴウン様。王都冒険者ギルド蒼の薔薇のイビルアイと申します。」

 

そんな思考が逸れていたアインズに不慣れな敬語を使い自己紹介をしたイビルアイ。既にクロコダインからその組織としての強大さを聞かされている以上彼女でも流石に無礼な態度は取れなかった。

 

「…うむ、私がアインズ・ウール・ゴウンだ。話は聞いている。なんでもクロコダインにプレイヤーの情報を持って来てくれたそうだな。済まないが私も同席させてもらうが構わないかね?」

 

「はい。」

 

完全に事後承諾の形ではあるがアインズの問い掛けにイビルアイが答える。

 

「アインズ、いい加減その仮面は取れ。イビルアイには既にお前がオーバーロードだと伝えてある。それとイビルアイ、無理に口調を改めんでも良いだろう。ここに居るのは俺達だけだ。」

 

クロコダインのその発言にアインズはブツブツ言いながら仮面を取る。自分としては配慮のつもりだったのに、これでは結果としては自分の非リアっぷりを晒しただけではないかと文句の一つも言いたくなる。

そうしてアインズが骸骨の素顔を晒して見せれば、今度は雰囲気としてイビルアイも仮面を付けたままというのも非常に違和感があるもので…暫く迷った様子を見せながらもどうせ自分が吸血鬼だとは知られている以上、イビルアイはその仮面を外す事にした。

 

「ほぅ…」

 

現地の吸血鬼という稀有な存在に興味を引かれた様子のアインズだったが、冷静になって首を振るう。彼女はクロコダインの客だ …と

 

「それじゃあ、一応言っておくが私もプレイヤーに関してそこまで多くを知っている訳ではない。伝承であったり、人伝の話であったりが殆どだ。それを踏まえて聞いてくれ。」

 

普段の口調に戻ったイビルアイの言葉にアインズとクロコダインは無言で了承の意を示す。二人にとってこの世界のプレイヤーの足跡を知るという事には非常に大きな意味があるのだから。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

イビルアイの語った事の内、いくつかの情報はアインズも既に掴んでいるものも多くあった。

 

法国の祖となった六大神、竜王達と争いを繰り広げた八欲王、人々の伝説に新しい13英雄、これらの他にもゴブリンの王や口だけの賢者等イビルアイの口から語られた話は二人に大きな衝撃を齎した。

特に興味深かったのはプレイヤーの出現が100年毎という規則性をもっているという一つの仮説と現地住民とプレイヤーの子孫である『神人』という存在だろう。

アインズにとってはこの情報は非常に大きい。

何故なら現在この世界に自分の友人達が居なかったとしても、この先の時代現れるプレイヤーの中にアインズ・ウール・ゴウンのメンバーが居ないとは限らない。そして、神人と呼ばれる存在の中にもしかしたら友人の子孫がいるかもしれない…それは砂漠の中の砂の一粒以上の低い確率かもしれない。那由多の果ての奇跡かもしれない…それでもアインズはこの世界に来てから一つ、大きな何かが開けるのを確かに感じていた。

最早狂気にも似たそれはアンデッドの持つ性質、執着故だろう。

 

そして改めて決心する事となる。

 

この世界に、未来永劫『アインズ・ウール・ゴウン』の名を轟かせなければならないと‼︎

 

そんな思いがアインズの中で燃え上がっている中でイビルアイはふと、何かに気がついたかのように語り口を切り替えた。

 

「そういえば、1人…いや、2人か、もしかしたらプレイヤーかもしれない人物がいるな。」

 

その言葉への2人の食いつきは当然大きかった。

 

「何?」

 

「私も会った事はないんだが、エ・ランテルという街に『漆黒』というアダマンタイトの冒険者チームがある。そこの2人、モモンとナーベという男女なのだが異例のスピードで躍進を果たした新人冒険者らしいんだが過去の情報が一切無いそうだ。

冒険者の中にはそういう奴等もいない事も無いんだが、其奴らが活躍し始めた時期とクロコダイン、お前が森に現れた時期は殆ど一緒だ。凄まじい強さだとも噂されているとなればもしかしたらと思ってな…」

 

「成る程、それは気になるな。なぁアインズ。」

 

イビルアイの指摘に深い同意を示したクロコダインであったが、彼はまだモモン=アインズであるとは知らなかった。

 

「アー…ソーデスネー。」

 

 

 

この後、イビルアイは様々な話を二人に聞かせ大量の謝礼を受け取ると丁重に見送られ集落を後にした。

その際、アインズとクロコダインからは蒼の薔薇が困った事があれば見返りとして多少の力になるという約束を取り付ける事になる。

 

この事が後に誰も知る事は無いが大勢の人間の命を救う事となるのだった。




モモンガ「千年王国作らなきゃ(使命感」
クロコダイン「そんな事よりおうどん食べたい。」

イビルアイ「今回のプレイヤーは良いやつっぽくて良かったやで。^^」



次話、「クリスマス↑キャロルが〜↓流れる頃には〜↑(音痴」

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