OVER LORD外伝~ワニの大冒険~   作:豚煮込みうどん

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原作でいうと7巻突入。
6巻を丸々吹っ飛ばすという暴挙ですが、8本指編の辺りで変化少ないしクロコダインはリザードマンの集落でずっっと相撲とかして遊んでたから…しょうがないね。


逃げる骨だが面子は立つ。

「オオオオオォォッ!!!!!」

「でぇぇぇいっ!!!!!」

 

ナザリック第六階層の闘技場に二人の戦士が咆哮と共に己の持てる力と技をぶつけ合う。

それを観戦するのは物言わぬ魂なき土くれの人形のみである。しかし、それで良い。出なければ巻き起こる冷気と闘気の余波でいらぬ犠牲が生まれかねないのだから。

 

 

 

既にイビルアイがリザードマンの集落にクロコダインを訪ねて来たあの日からはそれなりの期間が経過した。

クロコダイン自身はリザードマンの集落の復興と管理に奔走していたが、その間にアインズ達は王都で一騒動を起こし、王都に少なく無い犠牲者と多くの救いをもたらしたらしい。

 

らしいと言うのも、クロコダインがそれを知ったのが全てが終わった後で疲れた様子のアインズから直接、王都での騒動の一部始終を聞かされたからであった。

アインズ曰く、始まりは王都に潜伏し、情報の収集などの活動を行なっていたセバスがツアレという不幸な女性を見過ごせず、救った事が発端だった。それは良い事だ。

そして調べれば彼女を苦しめ続けた原因、王都に確かに潜む悪、8本指という組織は王国の一部の貴族とも繋がりを持ち、多くの平民を食い物にし金と暴力と薬物の力で王国の裏の世界を牛耳る、有り体に言えば王都を腐らせる害悪の集団であった。

そんな彼等は愚かにもツアレの件をダシにセバスを強請り、その主人たるアインズにまで集ろうとしたのだが、それが結果としてアインズの耳に届きアインズの「目障りだ、潰せ。」という一言で彼等8本指は一部の利用価値を見出された者以外はいとも容易く、いっそ清々しい程に理不尽な暴力によって物理的に消滅するという憂き目にあったのだ。

 

 

それは良い、因果応報と言えるだろう。

しかし、今回の件にクロコダインの胸中には大きな不満があった。

 

アインズが、より正確に言えば実行計画を立て、指揮を執ったデミウルゴスはこれ幸いとナザリック地下大墳墓の存在を人々から隠す為、王都の物資を強奪する為、架空の魔王『ヤルダバオト』を演じて王都を混乱に陥れた。それも大量の悪魔を召喚するマジックアイテムを王都の中心で使用するという派手な舞台を整えてである…

そんな事をすれば勿論、町中に悪魔型モンスターが大量発生する事になる。そして街を守る為、大勢の兵士や冒険者が戦った。

そして、プレアデスの面々やセバスが騒動に乗じて8本指やそれに連なる貴族達を粛清して廻り、その財とついでに王都の物資等をごっそりナザリックが奪ったそうだ。

 

ちなみにナザリック地下大墳墓の存在とアインズ・ウール・ゴウンを知るイビルアイ。当然今回の件に関してアインズ達の介入を疑っていた彼女であったが、駄目元で先の約束通りアインズに助力を求めた結果、援軍として派遣され陰ながらひっそりと悪魔の排除に協力してくれたプレアデスの面々、アウラとマーレの存在がその疑念を晴らした。

途中、思考の大半が自分の危機を颯爽と救ってくれたモモンへの恋心で埋まってしまったという点も大いにあるが、結果として騒動の全てはかつての八欲王の遺産を偶然にも手に入れた8本指の計画した国家転覆作戦であったとされた。

 

が、クロコダインが気に入らないのはやはり無関係の筈の人間が大勢血を流したという事に尽きる。

 

「ドウシタ、クロコダイン?我ノ相手ヲシナガラ気ヲ逸ラストハラシクナイナ。」

 

グレイトアックスとぶつかり合った断頭牙の強烈な横薙ぎの一撃によって互いの距離が開いた事で、コキュートスはクロコダインに問い掛けた。その声色は不満そうである。

彼にとって闘う相手が自分との戦いに集中出来ていないなど面白い話であるはずが無い。

 

「…すまない。」

 

クロコダインとしても理解はしている。

事実、内密に伝手が構築されていた王国の王女ラナーからは全てを承知した上でアルベドを通じ、アインズには多大な感謝を送られているそうだ。今回の件で王国に巣食う病巣の多くを『極めて少ない犠牲』で排除できたと…蒼の薔薇とも親交が深い彼女の感謝はクロコダインの耳にも届いている。

それにアインズ自身、無辜の人間に極力被害が出ずナザリックにとって最良の選択をしたのだ…それに不満を持つのはクロコダインの個人的な感傷でしか無い。実際クロコダインは明確な悪人を処断する事に異論は無いのだ、この世には煮ても焼いても食えない者が居るというのはよく知っている。

 

「今日ハコレマデダナ。」

 

構えを解いたコキュートスがクロコダインに背中を向ける。

 

「オマエガ何ヲ考エテイルカ、我ニハ判ラヌガ…腑抜ケタオ前ニ勝ッテモ意味ハ無イ…」

 

クロコダインは頰を掻きながら去って行くライバルの背中を見送る。どちらにせよこの胸のモヤモヤは良くない物だ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

ナザリック地下大墳墓、その最奥にして心臓部たる玉座の間は現在静かな興奮に満たされていた。

 

玉座に腰掛けるアインズの視線の先には、悉く頭を垂れて己に忠誠を示すシモベ達。階層守護者を筆頭に仲間達の作ったNPC、そしてその直轄の配下達。一体一体が国すら滅ぼしかねない怪物、それが200を超える数この玉座の間に集って居るのは計らずも実行することとなった王都での大規模作戦の褒賞の席でもあり、又今後のナザリックの行動方針を大々的に配下に周知させるためのものであった。

 

無論、其処にはクロコダインの姿もある。が彼は一人列から外れた位置に直立不動で立って居る。その眼差しはアインズの真意を測る為に真っ直ぐとアインズに向けたまま。

 

「先ずはそれぞれ任務の完遂、ご苦労であった。お前達の働きによってこれまでアインズ・ウール・ゴウンとしても得られたものは決して少なくない。良くやってくれた。」

 

そのアインズの言葉によって配下の全てが歓喜と敬愛の念で震え上がり、それによってアインズ自身も支配者としてのプレッシャーに震え上がりそうになる。

信賞必罰は上司の務め。そうしながらも転移を行ってからこれまで、功を上げた者達に其々褒賞と直々の言葉を与えるとアインズにとっての今回の席で最も大事な話題を切り出した。

 

「それではこれより今後のナザリックの方針を決める。デミウルゴス!」

 

その名を呼ばれアインズの横に立ったのはデミウルゴス、今アインズの両脇にはアルベドとデミウルゴスのナザリック最高の智者が揃った。

 

「アルベド、デミウルゴス二人に命じる。今後のナザリックのとるべき方針を語れ。この場にいる全ての者に周知させる為に。それと他に案のある者は手を挙げることを許す。」

 

今現在、アインズの中の優先順位は『アインズ・ウール・ゴウン』の存続を第一に、続いてその名を世界に響かせる事が続く。

これは延いては他の至高の40人の帰還を信じての方針だ。イビルアイから得た情報の与えた影響は小さくはなく、それはアルベド達も周知している。

その次に他のプレイヤー、つまりはクロコダインの様な存在を自陣に引き入れる事。これは広義の意味ではナザリックの強化とも言えるし自分達にとって脅威となるかもしれない他プレイヤーとの友好的な接触は最大の防御足り得るだろう。

 

「ではデミウルゴスよ、先ずは我々が王都に対して行った作戦の詳細を説明せよ。この場には詳しい話を知らぬ者も居るからな。」

 

主に自分が。等とは思っても間違えても口には出来ない支配者の辛さよ…

 

「はっ!畏まりました。」

 

そして全能たる偉大な主人の前で配下達にデミウルゴスは朗々と語る。それは悪としてのナザリックの存在をどれだけ隠し、どれだけ多くの物資を奪い、どれだけ王国の裏社会を掌握できたかである。

 

「…というわけで、王国の裏社会をはゆっくりと時間をかければ完全に我々が掌握できるというわけだ。無論、強引に今すぐにというのも可能だがね。こうしてアインズ様の主なる目的である世界征服のための足掛かりが整った訳だが、此処までで理解出来ていない愚か者はよもや居ないだろうね。」

 

得意げに、しかし非常に様になる態度で語るデミウルゴス、彼の見下ろす配下、同僚全員の目には理解が宿っていた。

 

そうでないのは…

 

「世界征服…?」

 

主人と…

 

「…デミウルゴス、それは本当にアインズの目的か?」

 

クロコダインだけである。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『世界征服』その言葉にクロコダインはその場から一歩踏み出す様にデミウルゴスに問う。

彼の後ろ、玉座に腰掛けるアインズの表情の無い顔からはその真意は読み取れないが少なくともクロコダインが腹を割って話したアインズ、もとい鈴木悟は少なくともそれを望む様な人間では無いとクロコダインは確信があった。だからこそアンデッド化の影響か非道になろうともクロコダインはナザリックを信じられていたというのに…

世界征服等、まさに魔王の所業では無いか。

 

「勿論です。アインズ様の願いは我らの願い、貴方には分からないでしょうがあの夜アインズ様は確かにそう仰られました。」

 

クロコダインの反応にデミウルゴスはほくそ笑む様にそう切り返す。あの月夜の言葉がある以上、どこまで行ってもデミウルゴス、否、ナザリック全ての配下にとっての正義は其処にあるのだから。

玉座の間に剣呑な雰囲気が満たされる…

デミウルゴスにとってのクロコダインは主人の友人だが結局のところどこまで行ってもカルマ的に相容れぬ他所様でもある。此処でクロコダインがナザリックの方針に意を唱え、敵対の意思表示をしたならば排除に動くべきだと考えた。

幸いこの場には多くの戦力が勢ぞろいして居る。懸念といえば御方の御前である事とこの玉座の間を争いの場にはしたく無いという事だがクロコダインを確実に葬るならば今をおかねば逆に危険だろうとも考えた。

 

クロコダインが武器を抜くか、アインズが一声掛けるか、それだけで此処に集う全ての配下がいつでも飛び出せる…此処は今そんなこの世で最も危険な場所になっていた。

 

そして一方、そんなアインズも面にこそ出てはいないが混乱していた。

 

(世界征服だと?一体どこからそんな話になったんだ!?)

 

そう内心叫びながらも、ふと思い出した。確かにこの世界に転移した日に夜空を見上げた自分はテンションが上がったまま確かに「世界征服というのも面白いかもしれんな。」とキメ顔でそんなドヤった台詞をデミウルゴスに聞かせたかもしれないと…自分の中の厨二心の暴発が今のこの状況なら過去に戻れる魔法があったならば今すぐに使用してあの時の自分の頭を叩きに行きたかった。

 

しかし、今はそんなことを考えて居る場合では無い。アインズから見ても眼前の光景は一触即発である。

 

「ーーー騒々しい、静かにせよ。」

 

なのでアインズは覚悟を決めた。自分で蒔いた種なのだから自分で狩る他ないのだ。でなければ多分、間違いなくクロコダインが死ぬしナザリックの配下にも犠牲が出る。そうなったら最悪以外の何物でも無い。

 

「…デミウルゴスよ、私の何気無い一言をよく覚えていたな、流石だと褒めておこう。」

 

「はっ、恐悦至極に御座います。」

 

「…確かにあの時私は世界征服という言葉を使ったかもしれんが、しかし残念ながらそれは今の私の目指すところでは無い。」

 

アインズの言葉にデミウルゴスのみならず全ての配下に動揺が走る。主人の望みを理解せず曲解していたなど配下の者たちにとってどれ程の失態か。

 

「それではお前にどういう意図があるのか聞かせて貰いたいものだな、アインズ。」

 

そんな中、アインズの真意を真正面から伺えるのはクロコダインを置いて他にはいない。

 

「分かっている…そうだな、さしずめ『世界統治』と言い換えるべきか?私アインズ・ウール・ゴウンの名を世界に轟かせるという目的は変わっていない…が、私自身が最終的に望むのはカルネ村やリザードマンの集落の様に異形種と人間といったあらゆる種族が垣根を超えた世界だ。この先現れるプレイヤーの可能性も考える必要があるしな。私が先の作戦でなるべく人間を殺すなと言った真意も其処にある。」

 

その場凌ぎのこじ付けではあるがこれはアインズにとっての本音でもある。クロコダインとの接触によってアインズはカルマ値に対して、幸いというべきか等身大の自分の感性を未だに持ったままであった。

日本人の感性で言えば争いなど無く、みんな平和にというのは当然だ。無論、その分敵には容赦のかけらなど無いが…

それはクロコダインも同じであり、そういったアインズの考えに同調する様にクロコダインは納得をアインズに示した。

 

「さて、それではそれを踏まえた上で改めて問おう。アルベド、デミウルゴス今後のナザリックのとるべき方針は何だ?」

 

そしてアインズの言葉に二人は気が付いた。これは方便だと…言葉を変えはしたが本質は変わっていない。リザードマンの集落も庇護の名目だが実質支配下である以上、結局の所クロコダインを納得させただけでナザリックの取るべき行動に一切変化など無いのだ。

 

無論、深読みである。

 

「それでは、僭越ながら…世界を『統治』するに辺りそろそろナザリックの存在を表に出すべきかと。未だシャルティアを洗脳した輩の暗躍がある以上、こちらも裏に潜っていては厄介なことになるかと。」

 

「私も同意見で御座います。そして王国の裏社会という足掛かりを得た以上王国を裏から支配するという手もあるでしょうが、世界を統治するというアインズ様のお考えに沿うならば…」

 

デミウルゴスの意見とアルベドの意見が同調する。つまりはそうすればナザリックにとっての益となる。そのことにアインズは疑いは無い。実際アインズよりも二人は賢いのだから。先程の緊迫した一幕をなんとか乗り切って弛緩したアインズの思考は最早「二人に任せよう。」という投げやりなものだった。

 

 

「私はナザリック地下大墳墓を国として、この地に興す事を提案いたします。」

 

だからこそ厳かに告げられたその提案にアインズの精神安定が発動するのは当然なのであった。

 

 

アインズ・ウール・ゴウン魔導王国の建国計画が始まろうとしていた。




次回予告
「やめて!アルシェの特殊能力で、あの化け物が隠してたオーラを見たら、タレントの影響でアルシェがゲロ吐いて泣き叫んじゃう!
お願い、死なないでヘッケラン。あんたが今ここで倒れたら、私との約束はどうなっちゃうの? ロバーデイクがまだ残ってる。ここを耐えれば、アルシェを逃がせるんだから!

次回『全員、死す。』デュエルスタンバイ!」


次話、新年開けたら。
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