私はプロポーズしたら断られましたが元気です。
最近星のドラゴンクエストの影響かダイの大冒険の作品の更新があって嬉しい。
アインズ・ウール・ゴウンの国を建国する、遂にナザリック全体がその為に動き始めた。
王国はアルベドがラナー王女を通じ、八本指のコネクションを利用し。帝国にはアインズ、もといモモン自らが赴き帝国の最重鎮であるフールーダ・パラダインに忠誠を誓わせる事に成功していた。
「……それで、帝国のワーカーをナザリックに派遣させナザリックの防衛力のテストとその他侵入者に対する様々なテストを行うという計画だったか?」
自分の執務室の椅子にゆったりと腰掛けたアインズはデミウルゴスが提出し、事前に目を通していた次のナザリックの作戦行動の概要を纏めた書簡にちらりと視線を送る。
「はい。如何でしょう?尚、我がナザリックへの侵入等という大罪人を出した点を責め立て、バハルス帝国の皇帝には我々の存在と力を見せつける意味を込めアウラとマーレを帝国に使者として派遣するという事で。」
概要はこうだ。
アインズへの忠誠を誓ったフールーダを通じ、皇帝にナザリックへの調査団を派遣する様に誘導する。皇帝は人間の中では優秀らしいのでいきなり大規模派兵などという事はあるまい。
そうしてナザリックへと訪れた冒険者ないしワーカー等を転移以来稼働させていなかったトラップ等の実験に使用するのだ。
しかし正直に言えばアインズはこの作戦が気に入らなかった。
メリット自体は理解出来るし実験の必要性は改めて語るまでも無い、それでもアインズの首は縦に振られる事は無かった。
「様々なメリットは認めるが却下だな、我がナザリック大墳墓が侵入者の汚い足で踏み荒らされるのは少々不快だ。そして『仮にも』我々が裏で糸を引くというのが良くないな。同様の事を行なった前回の王都の件でクロコダインは無用な人間の犠牲で不満を募らせているからな。」
アインズが思い描いたのは友であるクロコダインの事であった。しかし、それにデミウルゴスは恐縮しながらもアインズの真意をどうしても聞かずにはいられなかった。
それはこの作戦の却下の理由では無い。
「恐れ多くもアインズ様、アインズ様は何故其処までクロコダインに配慮をなさるのですか? 彼は外部の者であり、時にはナザリックにとって不利益とさえ言える行動さえ行なっております。それが何故?」
デミウルゴスの額には珠のような汗が滲んでいた。主人の心を理解出来ないなどどれだけの無能なのかと恐ろしくて堪らないのだ。
そのデミウルゴスの質問にアインズはしばし顎に手を当てると言葉を選ぶ様に考え込む。その時間はデミウルゴスにとって凄まじく長い時間に感じられた。
「…まず始めに断っておくが私はお前達に不満等は無い。むしろ私にはもったい無い程の配下だとすら思っている。」
「…勿体無い御言葉で御座います。」
「その上で言おう。クロコダインは今の私にとって唯一同等の視点を持って『否定』を行える存在だ。ある意味で戒めとも言えるか?お前達はどうしても私の決定には是非もなく肯定をするだろう?」
「それは当然かと、アインズ様の御言葉こそがこの世の真理なのですから!」
デミウルゴスの言葉は行き過ぎに思えるが、このナザリック地下大墳墓の配下達にとっては何もおかしい事など無いありのままの事実だ。
故にこそクロコダインの事を理解できない。
そして同時にそれこそがアインズにとっての悩みの種でもあった。
「デミウルゴスよ、その考えはお前の視野を狭める。私がお前に期待し、望むのはその智謀を持って私を超える事だ。私の言葉を額面のままに受け止め思考を止めるな…話を纏めればそういった意味でクロコダインは私にとって得難い存在なのだ。この意味がわかるな?」
「!??なんと勿体無い御言葉を⁈」
クロコダインへの嫉妬はある。しかし、アインズのその言葉にデミウルゴスはカミナリに打たれた様な衝撃を受けた。それ程までにアインズが己を買ってくれているなど…宝石の瞳からは歓喜の涙が溢れて止まらない。そして悟った!
(アインズ様は先程『仮にも』と仰った。…という事は、あくまでも我々が誘導するという事が不味いという訳で…成る程!?)
つまりは牧場の時と同じだ。複雑な兼ね合いを上手く処理するにはアインズが無関係であるという建前が大切なのだ。そしてナザリックへの生贄には自発的に断頭台に登って貰わなければならないのだ。
「…それではアインズ様、ナザリック内部の防衛機能に関しては『自然』に侵入者が現れたらという事でよろしいでしょうか?」
「うむ、そうだなその時は歓迎してやれ、盛大にな。だが出来得る限りでは様々な調査を事前に慎重に行え。イビルアイ嬢の話では既に廃墟となったギルド拠点すらこの世界には存在するのだからな。ナザリックにもどの様な不具合があるかわかったものでは無い。」
「ははぁ!」
深く頭を垂れたデミウルゴスは主人の偉大さに感動しながらも悪魔の頭脳を持って思考を高速で回転させるのであった。
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「ほぅ、遂に孕んだか。」
「あぁ、結婚もするんだ。しかし俺が親になるというのはなんとも言えない感慨の様なものがある。遂この前までは全く想像していなかった事だからな。」
ザリュースは言いながら目の前の生け簀に虫の幼虫と木の実を乾燥させ、混ぜ合わせて粉にした餌を撒き入れながらクロコダインに近況を語る。その中で最たる報告は遂にクルシュが自分の子供を妊娠した事だろう。
自分の兄であるシャースーリューには「これでお前も既婚者の苦労を思い知るのだな。」と揶揄われながらも祝福された。
「子供が産まれたらクロコダイン、出来ればお前に名前をつけてもらいたい。」
通例部族の子に名前を与えるのは祭司長か族長だ。そしてザリュースの子供はこの統合部族にとっての最初の子供になる。
そうなればシャースーリューかクルシュが名付けるべきなのだろうがやはり其処は是非クロコダインに頼みたいというのがほぼ全員の願いであった。
「俺がか?」
驚いた様に唸るクロコダイン、パシャリと生け簀から撥ねた生きの良い以前の養殖所の物より立派な魚が再び水面を叩く迄の時間どうしたものかと悩む…
この新たに造られた生け簀はアインズが直々に池を作り、相談やアドバイスはするが基本的に管理工夫は全てリザードマンに一任されている。これはリザードマンの文化的な成長を願っての事でもある。
「お前にこそ…」
短いザリュースの言葉には言葉にできない様々な思いが乗っていた。憧れ、感謝、親しみ…そんな友人にこそ自分にとっての最大の宝の名付け親になって貰いたい。
ザリュースの言葉に答える様に、真剣な表情で悩み続けていたクロコダインであったがようやく納得出来たのか一つ頷くと重々しく口を開く。
「『ディーノ』という名はどうだろうか?俺の故郷で伝説の竜の騎士と太陽の王女の間に産まれた勇者の名だ。無論、名としておかしければ別の名にすれば良いだろう。」
照れ臭そうに語りながらクロコダインは太陽を見上げ目を細める。それはまるで太陽に許可を取っているかの様な姿であった。
「ディーノ…か、良い名だ!!感謝するぞクロコダイン。」
クロコダインの与えた名前に満足そうに笑うザリュース、自分たちにとって神とも英雄とも言える男に貰った名前は産まれてくる我が子の生涯の誉れとなる事だろう。
「それで、お前は結婚はしないのか?お前ならばどんなメスも選り取り見取りだろう?」
「フ、自分が結婚した途端他人の心配とは、やはり兄弟だな。」
ザリュースに結婚はまだか?まだか?と既婚者仲間を増やそうと画策していたシャースーリューとまるで同じだなとクロコダインはザリュースを笑う。
「自覚はあるさ。それでもお前に惚れ込んだメスが多くてな、お前が身を固めねば諦めきれず結婚しようとしないメスもいるだろう。」
ザリュースは苦笑いしながら撒き餌を撒く。群がる魚群がバシャバシャと水音を立てるがそれはクロコダインの内心の動揺に似ていた。
「リザードマンの総数、特に戦士のオスが減ったからな。強い子孫を増やすためにもお前の子を望む声は全体として大きいのだぞ。」
一際大きな水音が跳ねる。アインズからもクロコダインは実は言われているのだ…「クロコダインさんの子供ってどういう扱いになるんですかね?」っと…
「やめろ、やめろ…俺は結婚は考えていない。それよりもお前たちの祝いだ。久し振りに上流で大物を狩ってくるとしよう。クルシュにも栄養をとらせねばならんからな。」
「だろうな、今ならあの時の兄者の気持ちが良く分かる。それと上流に行くならゼンベルにも声をかけてやってくれないか?最近は強くなるために躍起だからな…湖王魚を狩るのは良い刺激だろう。」
笑いながら語り合うリザードマン二人、もし仮にこの話の流れのままクロコダインが結婚をした場合、きっとこれ見よがしにそれに便乗する様にアインズはアルベドの怒涛の攻めを受けることとなるだろう。
【結婚は人生の墓場】という言葉があるが、墳墓を愛するアインズにとって結婚と言う名の墓場、それは幸せなことなのではなかろうか…
ワニ「でろりんか…………へろへろだな…」
ザリ「でろりんは嫌だ…でろりんは嫌だ…」
ソリュシャン「へろへろ様の名を頂こうなど…不敬な!(マジギレ)」
次話、新しい靴が足に馴染んだら。