因みに今作のクロコダインは完結時の性格を踏襲してます。
(こいつは…強ぇ…それも半端じゃねぇ!武器だって何だよあの斧、国宝級どころの騒ぎじゃねぇぞ。蒼の薔薇全員なら…いや無理だな…)
突然現れて自分が苦戦した二匹のモンスターをあっさりと片付けたクロコダインに未だ警戒を浮かべたままガガーランは意を決して声をかけた。
「すまねぇな助かったぜ、だがよちょっと聞いときたいんだがなんでお前さんは俺を助けたんだ?お前さんリザードマンだろ?」
軽い口調だったがガガーランの内心は軽くは無かった。目の前のリザードマンは明らかに自分の手に負える相手では無い事が嫌でも分かる。幸い敵対的雰囲気は今は無いが自分、否自分達ではどうにも成らないであろう驚異を前にして気楽ではやっていられない。
未だウォーピックの柄を掴んだままのガガーランの疑問に対してクロコダインはゆっくりと腰に真空の斧を引っかける様に収納し敵意が無い事をアピールしながら答える。
「モンスターと人間どちらがプレイヤーかは一目瞭然だ。まさかモンスターが今の状況に答えてくれる訳もあるまい。さて、情報交換と行こうか。正直この3日間分からん事ばかりで疲れた。」
クロコダインの苦笑いと予想以上にフランクな態度にガガーランもようやく警戒を解いた。何かは分からないが情報を得たいと言う事即ちクロコダインは対話を望んでいるのだから。
「俺の名前はクロコダイン。ギルド竜の紋章のギルド長だ。とは言っても俺一人に成ったせいで結果そうなっただけだしこの世界じゃもう多分関係の無い話だがな!!ガハハ!」
そう笑いながらクロコダインの姿からガガーランは何故か異様なまでに安堵感を感じていると言う事が感じられた。
それはまるでこの世界にたった一人で彷徨い続けてようやく同胞に巡り会えたとでも表現出来る様な様相だった。まぁ事実その通りなのだが…
「俺はガガーラン、冒険者ギルドの蒼の薔薇所属だ。」
「蒼の薔薇か…良い名だな。」
「ありがとよ。ところであんたは俺をぷれいやーだっみたいな事を言ってたがそのぷれいやーってのは一体なんだ?見た所あんたはリザードマンの旅人みたいだがもしかしてリザードマンは人間の女をそう呼ぶとかか?」
そのガガーランの言葉にクロコダインの明るかった表情が一瞬にして強張った物へと変化する。
「…プレイヤーじゃないだと?今は冗談を言っている場合じゃあ無いだろう?悪いが今は真剣に情報が欲しいんだ。」
ズイと顔を寄せたクロコダインにガガーランも困惑する。余談ではあるが人の中でも(男女関係無く)非情に大柄な部類に入るガガーランではあるがクロコダインと並べば流石にその差は大人と子供程になる…
「ちょっと待ってくれ、本当にそのぷれいやーって言うのが何かわからねぇんだ!そいつは一体なんなんだ?」
ガガーランの言葉にクロコダインは軽い目眩を起こすと小さく「なんと言うことだ…」と溢した後で一呼吸置いて精神を安定させる。見ればガガーランの表情は真剣そのもので嘘を吐いているとはとても思えない。
クロコダインはそうしてようやく目の前の彼女が自分と同じ状況に陥ったユグドラシルプレイヤーでは無いこの世界の住人なのだと理解し、また自分がそんな当たり前の可能性を失念していたことに肩を落とした。
「いや、済まないガガーラン少し取り乱した…俺は…そうだなプレイヤーを探して遠い…恐らくは本当に遠い所から此処に辿り着いた旅人だ。」
明らかに今作ったカバーストーリーなのが解りきったクロコダインの身の上話だが目に見えて落胆した様子のクロコダインにガガーランは追求することはしなかった。
「悪いな…そのぷれいやーって奴の情報を俺が持っていたら良かったんだがな。」
「いや、気にしないでくれ。それより教えて欲しい、ここから近い街や村ではどこが一番近く情報が集まるだろうか?厄介なことに俺にはこの辺り一帯の土地勘が全くなくてな。幸いこの身体だ、生きていく事には事欠かないだろうが今は何より情報が欲しい。」
互いに実直な性格故波長が合ったのだろう、互いの会話のやり取りに警戒の色は既に無くなっていた。しかしガガーランから返って来た返答にクロコダインはまたしても苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべることになる。
「俺としてはそいつをお前さんに教えるのは吝かじゃ無いんだがクロコダイン、お前さんは街や村には入れないと思うぜ?知っているだろ?人間とビーストマンの関係をさ。そりゃあ厳密に言えばビーストマンとリザードマンは違うだろうけど大半の人間はそう思っちゃくれない。堂々とお前さんが街に足を運べば大混乱になるだろうよ。」
ガガーランの言葉にクロコダインの表情は渋くなる。無論そのビーストマンと人間の関係なんぞ知っている訳が無いがある程度想像は出来る。例外はあれど人と亜人種、獣人種が敵対して生存争いをしているのだろう。
「…そうか…」
自然クロコダインの視線が足下へ下がりその凶悪な尻尾までするすると丸くなる。いわゆるガチションボリ沈殿丸状態だ。
「…だが、そうだな。」
続くガガーランの言葉にクロコダインは視線を上げる。それはまるで縋る様な視線だった。
「俺も正確な位置までは解らないがよ~今がこの辺りで…太陽の位置が…あーでこーで…」
ぶつぶつ言いながらガガーランの手によってウォーピックの先端が大雑把な図形を地面に描き出す。
それは拙いながらのこの一帯の地図であった。
「…俺も実際に行った事が無いからあくまで多分って話だがよく聞けよクロコダイン、位置的にあっちの方角だと思うがずっと進めば上下に分かれて逆瓢箪形になっている大湖があるって話だ。かなりでかいらしいから少々のずれは問題ないと思う。」
「それで?その湖がなにかあるのか?」
「下の湖の麓にはリザードマンの集落が点在しているって話だ。さっきも言ったが俺も実際に行った事が無いから正確な情報じゃあ無い。それでも旅人のお前さんの旅の目的地の一つにはならないか?」
ガガーランの言葉にクロコダインは暫く瞑目して考えを纏める。
正直を言えば多少の混乱を招いてでも人の住む街に行って情報を集めたい。
「勿論俺も拠点にしている街に戻ったらお前さんが探しているぷれいやーとやらの情報を集めてやるよ。その上で有力な情報があればそのリザードマンの集落に届けてやる。こう見えて顔は広いし情報収集には強いコネがある。大船に乗ったつもりで俺を頼ってくれりゃあいい。」
ガガーランのその頼もしい言葉にクロコダインは心底参ったとばかりに頭を掻く。
ガガーランは困っている人物を見ると手を差し延べずには居られないお人好しの熱血漢だった。そしてそれはクロコダインの最も好きだった『素晴らしい人間像』そのものであった。
「俺はついているな…初めて出会った人間がお前さんの様に素晴らしい人間で本当によかった。感謝しようガガーラン、俺の次の目的地は決まったぞ!!」
地図をよく見る為腰を落としていたクロコダインが再び立ち上がりとびきりの笑顔をガガーランへと向ける。
それにこんな世界へとやって来たのだ…せっかくだ人類未到の地への大冒険、未開の部族を訪ねて等という冒険譚のような真似も悪くない…いやそう改めて考えると楽しみですらあった。そう、それはまるで自分が期待したユグドラシル2の様では無いか。
「そりゃあ良かった。助けて貰った恩も返せないじゃアダマンタイトの名が泣くからな。」
「助けて貰ったのはこちらだガガーラン。俺の横やりが無くてもお前なら奴らを倒せていたはずだしあれは俺の都合での介入だ。文句こそ言われても筋違いの感謝などこそばゆいだけだ。」
ガハハと二人は互いに笑い合う。ほんの短い間のやり取りで二人は互いを友と認め合っていた。
そんな中クロコダインはゴソゴソと腰の無限のポシェットから幾つかのポーションと木の実らしき物を取り出した。これらは無論ユグドラシル製でこの世界では貴重品になる。
「さて、俺は早速リザードマンの集落を目指す。ガガーラン礼の代わりだ。お前にこれをやる。力の種と守りの種、食えば一時的だが効果が得られる、それと回復ポーションだ。」
「別にいいって、礼なんざ。」
ずいと差し出されたアイテムを握ったクロコダインの手をガガーランは気持ちの良い笑顔で遠慮しようとする。
「そう言ってくれるな。俺はこの出会いそのものにも感謝をしている、これで受け取って貰えねば恐らくこの出会いに痼りを残すだろう。だから黙って受け取れ。」
「しょうがねぇなぁ…」
そうして今度こそガガーランの手に幾つかのアイテムが納まると伸ばされたままのクロコダインの手とガガーランの手が硬く結ばれる。
「それではなガガーラン。」
「あぁ、お前の旅の無事を祈るぜ。」
短いやり取りではあったが『漢』同士の別れに多くの言葉は必要無いのだ。
互いに同時に背を向けて歩き出す。振り返ることなど無くただ真っ直ぐに…しかし互いの翳す様に振り上げられた手は奇しくも全く同じタイミングであった事を二人は知らない。
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「私の援護にも駆けつけず随分と楽しそうだったじゃ無いか。え、ガガーラン?」
クロコダインと別れたガガーランにふと声がかかる。
「お前があの程度に苦戦するタマかよイビルアイ。」
ガガーランの視線の先には太い木の幹に背を預け腕を組んでいるイビルアイの姿があった。
「所でお前から見てどうだったよ?」
何がとは言わない、言う必要も無い。
「とんでも無い怪物だ。上空から魔法で封殺しようにもあの様な魔法の武器をもっているのだからな…はっきり言えば勝ち目が無い程だ。正直お前の余計な一言が引き金でいつ闘いになるかと思うと心臓に悪かったぞ。」
「そりゃあ悪いだろうよ。止まっちまう程にな。」
ガガーランは先程のやり取りを影で息を殺して観察していたイビルアイの珍しいアンデッドジョークに乗ってやりながら問いかけを続ける。
「だけど良い奴だった。俺は気に入ったぜ!所でイビルアイ、お前はぷれいやーって何か知ってるか?」
「……知っている。」
イビルアイは一瞬言い淀んでから答えた。
「何だよ、チビ!知ってんなら先に言えよ!?俺はクロコダインに教えてやりてぇ、今から追いつけるか?」
「まぁ待て筋肉達磨、知っていると言ってもそれほど私も深くは知らん、だが同時に私よりも詳しい人物に心当たりもある。そいつに近い内に聞きに行ってやる。どうせ情報を届けてやるならそれからでも遅くはあるまい。それにしても奴の化け物じみた強さはぷれいやーだからというならば納得出来るという物だな…」
こうして二人は王都へと帰還したのだった。
そして王都の冒険者組合にはガガーランから一つの報告が成された、即ち人間に友好的な最強のリザードマンの存在を。
一気に書きました。細かい所はもしかしたら改訂するかもしれません。
導入編終わったから皆さんが大好きな俺っ娘ヒロインはここで一旦退場です。
次回からようやくリザードマン編に入るぞい。ゼンベルとクロコダインで相撲とらせる為に俺はこの話を書き始めました。
次話、ペルソナ5クリアしたら。