加筆修正しました。原作未読だとアインズ様達が何をしようとしているのか分からないっぽかったので。
クロコダインとザリュースが集落に着いて早速向かったのは一軒の家であり、そこは当代の族長の家、つまりはザリュースの兄であるシャースーリューの家であった。
本来リザードマンは排他的ではあるがそれと同時に強者への敬意を強く持つ種族でもある。それこそがザリュースがクロコダインを集落に招いた最大の理由である。
そしてリザードマンの部族は規律正しい階級社会であり、様々な役職が存在するがその頂点が族長に当たる。そして族長は血筋では無く部族の中で最も強い者が選ばれる。
つまりシャースーリューこそグリーンクロー最強のリザードマンなのだが…当のシャースーリューは弟であるザリュースこそが最強の戦士だと思っており族長もザリュースこそが相応しいと考える。
そんなシャースーリューは今、弟の口から語られた遙か遠くから訪れた旅人であるクロコダインとの出会いの一幕に堪えきれぬとばかりに声を上げて笑っていた。
「そう笑ってくれるな…これでも恥じ入っているのだ。」
「ハハハ、すまんすまん。しかし弟の養殖場は見事だっただろう?最初はアレに否定的だったこの集落の者達も今では羨望の眼差しでザリュースの持ち帰る魚を見ている。俺はそれが何よりの自慢なのだ。それなのにこいつときたら未だに嫁を取らん。」
「兄者!」
話が余計な方向へとずれていったことにザリュースが思わず声を上げる。その声色には若干の羞恥が覗えた。
「さて、本題に移るがやはり我々もそのぷれいやーとやらに心当たりは無い。」
「…やはりそうか…」
クロコダインはシャースーリューの言葉に落胆した様子も無く淡々と受け止めた。
「それと村へ暫くの滞在についてだが…クロコダイン、貴殿の旅人としての知見を我等にもたらしてくれるのであれば是非とも歓迎したい。とはいえ養殖も軌道に乗り始めたばかりの我等の食糧事情は未だそこまで明るくは無い。」
「成る程…つまりは自分の食い扶持は自分で何とかしろという訳だな?」
「噛み砕いて言えばそうなるな。難しい条件か?」
シャースーリューの言葉にクロコダインは自信ありげに口角をつり上げゆっくりと首を左右に振る。
それに対し「だろうな。」と小さく呟くとシャースーリューが笑う。
「寝床は俺の家を使えばいい、多少窮屈だろうがな。良いな兄者?」
そう提案したザリュースがクロコダインへと見上げる様に視線を動かし、再びシャースーリューを見やる。
「クロコダイン殿がそれで良いならな。」
「是非も無い。すまんがしばらく厄介になる。」
こうしてクロコダインはリザードマン最強の兄弟との友好を結び、数日の間グリーンクロー族の集落でガガーランからの連絡を待つことにした。
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「成る程。これがリザードマンの集落を調査した結果か。ご苦労だったなアウラ。」
「はい!!アインズ様が命じられた通り隠密スキルを持つ配下を使用しましたのであいつ等は気づいていませんし派遣していた者達も既に調査が完了した昨日の段階で全員撤収を完了させています。万事抜かりありません。」
偉大なる主の労いの言葉に溢れんばかりの忠誠心から言葉尻が跳ね上がりそうになるのを堪えつつ、耳をパタつかせるアウラの報告に淀みは無い。
「ふむ、リザードマンの予測されるレベルは13前後と言う事だが、強力な個体でも20程度か…これならばコキュートスに与える戦力も予定通りだな。あの冒険者を使ったアンデッドのテストにも丁度良い。」
ナザリック地下大墳墓、そのアインズの政務室でアウラからのリザードマンの集落についての報告書に目を通しながらアインズは十分な満足を得ていた。
そのアインズの隣にはアルベドが控える。
「それではいよいよと言う訳ですね、アインズ様。」
蠱惑的な程しかし静かに室内に響いたアルベドのその言葉はまるで銃の撃鉄を起こすかの様だった…
次にトリガーとなるアインズが肯定を口にするか…否、口を開くまでも無く僅かにでも首を縦に動かせば即座に必滅の弾丸が銃口から放たれるだろう。
悪意という弾丸が向かう先は言うまでも無くリザードマンの集落、その全て…
入念な準備を行ってアインズが行おうとしていることは至極単純、リザードマンの集落を使った"実験"である。
人間以外の種族を使ったアンデッドの作成の実験の為の材料集めの為に…
現地人の中ではそれなりの強さであった冒険者を素体にしたアンデッドの性能テストの為に…
敢えてコキュートスに指揮官という困難な課題を与える事でのNPCである彼に成長を促しそれは起こりえるのかを調べる為に…
そのアインズの身の毛もよだつ様なおぞましい"実験"全てがナザリックによるリザードマンの集落への侵攻という行為へと収束するのである!!
「うむアルベドよ、準備が完了し次第予定通り計画を進めるようにコキュートスとエントマに伝えよ。本当ならば私自身で直接推移を観察したいのだが…生憎私はエ・ランテルで冒険者としても活動せねばならん。後で確認が出来る様に映像はしっかり撮っておいてくれ。」
そう言って高揚に指示を出したアインズは精神抑制が掛からないギリギリで楽しげに静かな笑いを溢す。
その至高の主の喜悦の様相に従僕の鏡たる二人も釣られて三日月の様に口角をつり上げた。
それはリザードマン達の未来を暗示するにはあまりに不吉な一幕であった。
…だが
アウラは知らない、故にアルベドも知らない。
つまりは至高の存在アインズ・ウール・ゴウンですら知りはしない。
ナザリックより派遣されたモンスター達がリザードマンの集落を離れたその日、超弩級の『想定外』がその地に訪れていたと言う事を…
タイミングが悪かっただけとは言え、アウラがへこむことになりそうだ…
次話、原作11巻(ry