OVER LORD外伝~ワニの大冒険~   作:豚煮込みうどん

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今回も一気に書いて投稿したのでまた後日編纂するかもです。
オリジナルモンスター出てますがあくまで雰囲気作りの為の存在なので出典とか無いです。


闘いの前だし死亡フラグ立てなきゃ(使命感

「なぁ、ザリュースよ~そのクロコダインって奴はマジでそんなに強いのかよ?」

 

「あぁ、強い。少なくとも俺はあれ程の強さを持つ者を知らん。」

 

「ま、俺が知ってる最強って言えば…フロストドラゴンだな。旅人時代にドワーフの所で話に聞いたし、古い戦場跡で爪痕を直接見たがありゃ正真正銘化け物だったぜ。」

 

レッドアイとドラゴンタスクの説得に向かったザリュースは無事二つの部族の同盟参加を勝ち取っていた。

レッドアイとは族長クルシュ・ルールーとの話し合いで、ドラゴンタスクとは族長であるゼンベル・ググーとの一対一の決闘によってである。

 

現在はザリュースのペットであるヒュドラのロロロの背に揺られながら、ナザリックのメッセンジャーが一番目の供物と伝えた『レイザーテイル』族の集落に三人で向かっている最中だ。

リザードマンの大同盟が決戦の地に選んだのは、自分達が有利に戦えるであろうその場所であり現在は急ピッチで戦争の準備が進められようとしている。

 

そんな移動の道中でクロコダインの話題になったのは、何よりも強さを信奉するゼンベルが自分を打ち負かしたザリュースにドラゴンタスクの族長に成って欲しいと頼み込んだことがきっかけだった。

 

「ドラゴンか…それでも俺にはあの漢が敗れる姿が想像出来ん。少なくとも俺達など足下にも及ばん、あれこそまさに本当の意味で万夫不当の豪傑だろう。それに心根も良い、文化こそ違えど戦士としてなら直ぐにわかり合えるだろうさ。」

 

そう返されたゼンベルは話に出たクロコダインにその興味を強く引かれた。漢としてザリュースが其処まで褒め称える相手なら一度闘ってみたいと胸が熱くなる。

 

「でもそんなに強いのなら、その力がこの戦において心強いわね。」

 

そうザリュースの背に声をかけたのは真っ白な体色を持つアルビノの雌リザードマン、クルシュだ。

ちなみにザリュースの初恋の相手であり、熱烈なアプローチを受けている彼女もこの道程で満更でも無くなっている。

 

「クルシュ、彼は旅人、異邦人だ。義憤に駆られて助力を申し出てくれるかもしれないが彼の力をあてにして話を進めるのは間違っている。」

 

「そうだな…俺達にはこの地のリザードマンとしてのプライドってものがある。余所者だよりとあっちゃあ祖霊に笑われるぜ。」

 

「…嫌ね、雄って…プライドよりも生きてこそじゃない…」

 

雄二人の意見はクルシュのものと違い、どちらかというとこの苦難にクロコダインを巻き込まない様にという意見だった。

 

 

「勿論クルシュの意見も判るさ、誰だって死にたくは無い。それに今は君を失う事が何よりも怖い。それでもそれならば最初から偉大なる御方とやらに恭順を示した方が良かっただろう。だがそれはとても受け入れられる話じゃあ無い。万が一の最悪の場合は彼に雌や子供を護衛して貰える様に頼むつもりだ。」

 

「ザリュース…」

 

ザリュースの逞しい腕に抱き寄せられて、アルビノの弱い肌を守る為の雑草のケープに隠れたクルシュの瞳が潤むと二人の尾がいじらしく互いをつつき合う。

 

 

 

「言うねぇ…頼むから俺も居るって事忘れんなよ。」

 

一人、何とも言えぬ疎外感を味わいながらゼンベルは深く溜息を漏らすとそのやるせなさを燃料にまだ見ぬライバルを思い闘志を燃やす。

 

 

 

まぁ、その闘志が闘うまでも無く鎮火するのにそう時間は掛からないのだが…

 

 

 

______________

 

 

 

 

 

ズルリ…

 

 

ズルリ…

 

 

 

 

一人のリザードマンに引きずられて大湖の湖畔から一匹の魚が陸に引き上げられる…

全長は15メートルを優に超えるその魚はその湖の生態系の中でも頂点に位置している。そう…位置していた筈であった。

『湖王魚』、鋭い牙が生え揃った顎は巨大な甲殻類の鎧の様な殻を砕き、全身を覆う鱗はまるでドラゴンの様ですらある。

流線型の肉体は鋼の様な外殻と骨格に柔軟でしなやかな筋肉で支えられ、冒険者基準の難度で言えば100はくだらないだろうモンスターである。

そして少なくともこれを仕留めたリザードマンは歴史を顧みたとしても存在しないだろう。

 

それがたったの一撃…

 

不自由であろう水中でありながら放たれた拳は寸分違わず湖王魚の脳天に突き刺さり、オリハルコンの様な外殻を破壊しその衝撃はそれに留まらず脳をいとも容易く破壊した。

 

インベントリへの収納の都合上ビクリ、ビクリと痙攣しながら、その持ち前の生命力故に未だ絶命していない湖王魚にトドメを刺しながらクロコダインは満足げな笑いを浮かべた。

 

「フフフ…こいつは今まで仕留めた中でも一番の大物だな。」

 

はっきり言ってもはや一番もクソも無い、ザリュースがこの光景を見れば馴れぬ突っ込みに息を切らせているだろう所だ。

きっかり3日間、当初の予定を超え、ザリュースがリザードマンの未来をかけてクルシュ達を連れて戻ってきている間、クロコダインは上流にて狩りを満喫していた。

 

予定していたよりも長い時間狩りに熱中してしまったクロコダインは咆哮を上げるとガルーダを呼び出す。

 

 

 

 

クロコダインがグリーンクローの集落に戻った時、集落は状況の説明とレイザーテイルの集落への案内役を引き受けたリザードマンが一人待機しているだけのもぬけの殻であった…

 

 

 

 

 

___________________

 

 

クロコダインがレイザーテイルの集落へと辿り着くとそこはある意味で既に戦場だった。

レッドアイ族が中心となり泥の壁が急ピッチで築かれ、戦えるであろう戦士達は闘いの準備に余念が無い。

 

クロコダインが戻ってきた事を聞き、駆けつけたのはザリュースとクルシュ、そしてゼンベルだ。シャースーリューは忙しいので来ていない。

 

「すまん、遅くなった。おおよその事情は案内してくれたリザードマンに聞いたが詳しい状況を教えてもらえるか?」

 

緊迫した集落の様子に残念ながら数日ぶりの二人の再会に笑顔は無い。

 

「いや良いんだ、気にしないでくれ。お前は客人だからな、我々の事情に巻き込みたくは無い。だから」

 

「だからお前達を見捨てて逃げろというのかザリュース?言った筈だ、冗談は相手を選ぶものだとな。お前は俺を恩知らずにするつもりか?」

 

ザリュースの言葉を遮ってクロコダインはこのリザードマン達の苦難に手を貸す意思がある事をザリュースに伝える…

 

そしてザリュースの口から感謝の言葉の後に伝えられたのは現在の切迫した状況だった。

 

敵は凡そ5000のアンデッドの大軍勢、森の一部をいつの間にか切り開いて布陣している。今はメッセンジャーが伝えた刻限が守られているがそれこそ向こうがその気になればいつでも戦端が開ける状況にある。

 

対するリザードマンの軍勢は全ての部族を統合しても戦える者は総計1300程、森に討って出るのは無謀であるし又、籠城戦も泥の防壁に援軍が無いと言う状況を考えればそれは愚策中の愚策。

結局現在はアンデッド軍が進撃してきた所を自分達にとって有利になる湿原で総力を挙げて迎え撃つ、という方針が全ての部族長達の会議で決定しているのだった。

そして族長達5人にザリュースを加えた6名2チームの最精鋭が敵の首領を討ち取る為の鏃(やじり)となる。

 

 

 

「そこでだクロコダイン、虫のいい話は重々承知だがお前にはこの集落に残って万が一の時に逃げる雌と子供達を守って一緒にこの地を離れてもらいたい。」

 

そう頼み込んだザリュースの瞳には覚悟があった…万が一とはつまりリザードマンの連合軍の壊滅だ。

その頼みにクロコダインは表情を苦々しいものにした…

 

「…クロコダイン、わかってくれ。」

 

だが万感の思いの籠もったそのたったの一言にクロコダインは仕方が無く首を縦に振る。

仮にここでクロコダインが最前線で闘い、勝利を得た所でそれには意味が無い…とまでは言わないが限りなくそれに近いものでしか無い。

 

「それでザリュース、そろそろそちらの二人を紹介してくれないか。」

 

場の雰囲気を変える様に努めて明るく問い掛けたクロコダインにクルシュとゼンベルはそれぞれ戸惑うような反応を見せた。

今の今までクロコダインの圧倒的存在感に当てられていたのだ。

 

「あぁ、彼女はクルシュ。レッドアイの代表で…俺の惚れたメスだ。」

ザリュースに手を取られ、当然の如くそう紹介されたクルシュは思わず一瞬凍った様に硬直すると『なんて紹介の仕方よ!』と訴えるかの様にザリュースの手を抓り上げた。

 

それを聞き、見ていたクロコダインは思わず驚嘆の溜息をもらす。あの生真面目なザリュースが…と意外に思ったのもあるが、突拍子も無い事を突然口にして恋人に仕置きを受ける。その姿がかの大魔道師と武道家のカップルの姿と一瞬ダブって見えたというのもあるだろう。

どちらにせよ、クロコダインの心の中には穏やかな感情があった。例え本人が独り身であってもだ。

 

「ククク、そうか、その様子だとシャースーリューには随分からかわれたのではないか?…ザリュースよ、この戦負けられんな…」

 

「あぁ…当然だ。」

 

「お恥ずかしい所をお見せしました…」

 

羞恥に顔を伏せたクルシュの謝罪で取り敢えずクルシュの紹介は締められたが彼女は理解していなかった。その姿こそまさにまるで不甲斐ない旦那の為に頭を下げる貞淑な妻の様であると…

 

 

さて次は…と思いクロコダインがゼンベルに視線をやればゼンベルはクロコダインを上から下へ、そしてまた下から上へとしげしげと困惑を僅かに含んだ視線を何度も行き来させていた。

 

「おい、ゼンベル!」

 

「おっふ!」

 

ザリュースの呼びかけにゼンベルがビクリと反応する。クロコダインはそれに不思議そうな表情を浮かべたがザリュースはゼンベルの気持ちがわからないでも無かった。

 

初対面、強い強いと聞いていた相手だ。それでも同じリザードマン、負けず嫌いのゼンベルは会えば早速力比べでもと考えていたに違いない。それが実際会えば理解出来るクロコダインの強さ…さぞゼンベルには刺激が強かった筈だ。

 

「ドラゴンタスク、ゼンベル・ググーだ…です…よろしくお願いします。」

 

((誰だよっお前!!))

 

ザリュースとクルシュの心の中の叫び。それをすんでの所で口に出さなかったのは戦士の醜態をスルーしてやれたのは優しさだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、クロコダインの仕留めてきた大量の魚、カニ、亀等によって決戦前の全てのリザードマンの腹を大いに満たす全ての部族を一つにする為の大宴会が催された。

その湖王魚を中心とした見た事も無い上質な骨肉、甲殻は鱗の一枚とて無駄にされぬ様リザードマン達の武具の素材として有効に活用される。

 

闘いの始まりがまた少し近づいた…

 




ゼン「        」

ザリ「ワニ氏、こいつ闘いたいんだって。」

鰐「良いよ!来いよ!」

クル「…バカばっか…」




次話、土曜日(土曜日とは言ってない)

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