OVER LORD外伝~ワニの大冒険~   作:豚煮込みうどん

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気が付けばお気に入りが1000を超えていました。皆様感謝致します。
やっぱ現金なもので感想やらお気に入りやら増えるとやる気増しますね。


アインズ様の出番が此処まで台詞3つ位のオバロ

___約束の刻限が訪れた…

 

 

全ての生命に遍く恩恵を与える太陽の光を遮る様に、渦巻く黒雲が空に穴を穿つ様にぽつんと現れる。

穴は見る見る間に広がり、青かった空は今まさに奈落色に染まった…

リザードマン達の誰もが遂に来たのだなと悟る。

 

太陽が消え去り、湿地と森の境界が黒い空気に包まれたかと思うとザワリと鳴動する。

そこに現れたのは無数のアンデッド。

無限とも思える数のアンデッドは後から後から現れては整然と並ぶ。

ゾンビ2200体、スケルトン2200体、アンデッドビースト300体、スケルトンアーチャー150体、スケルトンライダー100体。

 

総勢4950体の死の軍勢…

 

 

 

既に闘いの前の儀式は終わっている、かつて例を見ない大連合の戦士達は各々の身体を5色の染料によって戦化粧を施され、既にその身に祖霊を宿しているのだ。

 

「聞きなさい!5つの祖霊に誘われし、この一つの部族の子等よ!!」

 

全てのリザードマンを代表して司祭であるクルシュが篝火のたかれた祭壇場から声を上げる、その直ぐ側にはザリュースが各族長達が共に並ぶ…

 

クルシュの戦意を向上させる為の儀式めいた演説と舞いを少し離れた場所から見守りながらクロコダインはこのままで良いのかと未だに悩んでいた…この闘いを見守る事を選んだのはリザードマン達の意思を尊重したからだ。

しかしそれは既に答えを決めた後でのくすぶる様な悩みだ。人はそれを後悔とも呼ぶだろう。獣王クロコダインに相応しくなく、しかし苦悩する彼の姿ははまさに獣王クロコダインであった。

 

「さぁ、全てのリザードマン達よ。祖霊は我等の上に降りた!敵は多い、おぞましき不死者共の軍勢だ!だが、我等に敗北はあるか!?」

 

『無いっ!!』

 

いつの間にか代表して声をあげているのはシャースーリューだった。彼の言葉に全ての戦士達の唱和が響き、空気がうねる…それはまるで祖霊とやらが実際に現れたと錯覚させる様な迫力があった。

 

「そうだ、祖霊の加護を受けた我等に敗北は無い!!敵を倒せ!勝利を我等リザードマンに!!」

 

『おぉぉぉぉ!!!!』

 

場が燃え上がる。そこに居るのは死を恐れない戦士だけであった。

 

「出陣!!」

 

総勢1380、三倍の戦力差を超える戦争の始まりだった。

 

 

 

 

 

__________________

 

 

「進軍ヲ開始セヨ。」

 

森の中に作られたナザリックの簡易拠点の中でコキュートスがアンデッドの軍勢に進撃を命じる。

そのコキュートスの隣にはプレアデスが一員エントマが随行していた。

 

アインズからコキュートスが賜ったナザリックの圧倒的力を考えれば収穫祭とでも呼べるこの任務。コキュートスは主人から3つの縛りを受けていた。

 

"決してコキュートスとその配下が戦場に出ない事"

"指揮官として預けた元冒険者のエルダーリッチとその護衛部隊は成るべく温存する事"

"この戦、全ての判断を己の意思で行う事"

 

つまりは、現在布陣しているナザリック基準で言えば雑兵中の雑兵のみでリザードマン達を殲滅させる事、それこそが最も理想的な結果である。

コキュートスは本来ナザリックの内部でナザリックを守る事を任務としている。その事に不満は無い、むしろ栄誉以外の何があろうか?それでもやはり他の守護者の活躍を聞けば羨ましいと感じる自分が居た。

華々しい戦果を欲するは武人の性であり忠誠を示す場を求めるはナザリックのNPCとして当然の事だった。

 

コキュートスの口元から極寒の冷気が漏れ出す…

 

全ては偉大なる至高の御方の為、視線の先、遠見の鏡には今にもぶつかり合おうとするリザードマンとアンデッド達の姿が映っていた。

 

 

 

___________

 

 

 

両軍の激突はリザードマン達が想定した通り、泥と水に覆われた湿地帯で行われた。

 

ここで地の利がリザードマン達に大きな恩恵をもたらした。それは当初想定されていた以上の恩恵だ。

進撃してきたアンデッド達は大きく分けてゾンビとスケルトン、ここで双方の特性が如実に表れた。体重が軽く機敏なスケルトンと、そうとはお世辞にも言えないが力の強いゾンビ、この両者が沼地を進めばゾンビは沼に足を取られることとなり、当然足並みが揃わないのだ。

 

そして…

 

「おおおおぉぉぉ!!!」

 

様々な所から上がる鬨の声と共に武器が振り上げられ、振り下ろされる。

元来リザードマンは製鉄技術を持たない、故に武具は石の斧であったり獲物の骨であったり例外はあれど無骨な殴打武器が殆どなのだ。

 

それがアンデッド達の最前線に立つスケルトン達には非常に相性が良かった。

リザードマンの屈強な肉体から放たれる一撃が次々にスケルトンの身体を砕き、地に沈める。無論被害を出しているのはスケルトンだけでは無い、リザードマンの戦士達も数に押される様にスケルトンが手に持つシミターに切りつけられる者も多く居る。

 

それでも固い鱗という天然の鎧を纏ったリザードマン達は一人の死者を出す事無くこの戦の第一波を凌いだのだった…

実に500以上のスケルトンを打倒するという快挙であった。

 

 

 

 

_________

 

 

「どう見る?」

 

戦場を見渡せる様、土壁の上に並ぶ族長達の中でザリュースが問い掛ける。

 

「舐めて遊び感覚で居るのか…あの動きではそもそも誰も指揮をとっていないと言う事もあり得るな。そうなった時一番不味いのは伏兵によるこの拠点への襲撃だが…」

 

シャースーリューは言外にそれは無いだろうと首を振る、そんな真似をするのならわざわざあんな事前通牒もこんな大軍勢を揃えるなどと言う真似も必要無いからだ。

 

「ぞんび達も…引きつけられてる。」

 

狩猟班達、遠距離攻撃組がゾンビに投石を行う事でゾンビを上手く足止めしている。その間に戦士達がスケルトンの数を減らす。

 

「シャースーリューの意見は俺も正しいと思える。あり得るとしたらあの未だ動きを見せない弓兵と騎馬兵以外をこちらの疲弊を誘う捨て駒としてしか見ていないと言う事だろうな。」

 

「ちっ…舐めやがって!」

 

苛立たしげに言ってゼンベルが尾を叩き付ける。

だがアンデッドの強みとは疲弊しない事にこそある。直に前線の戦士達には抗いようのない疲労が襲いかかるだろう、今でこそ順調だがアンデッド軍の第二陣を考えれば非常に厳しい状況である事は変わらなかった。

 

 

各族長達による戦況予測、その間に状況の変化が訪れた…

 

スケルトンライダーが動き出し、その圧倒的機動力でもってリザードマン達の背後に回ろうとしてきたのだ。それと同時にスケルトンアーチャー達も進軍を開始する。

 

「あれは不味いな…成る程、アンデッド共だからこそとれる作戦という訳だ。」

 

一番早くイエロースペクトルの族長が気が付いたアンデッドの作戦とはスケルトンとゾンビを捨て駒にして乱戦の状況を作り出し、スケルトンアーチャー達による矢の雨で此方に出血を強いる事。

 

ゾンビもスケルトンも刺突属性である矢では殆ど倒れる事は無く、そもそも幾らやられようとアンデッドには被害という概念すらないだろう。

そしてその間を様々な種類のアンデッドビーストが掻き回す…

 

逆にリザードマン達にとってはその頑強な鱗でも飛来する矢は防げるものでは無い、おまけに矢の雨を止める為にはスケルトンとゾンビの壁を突破する必要があり、それを行おうとすればする程、戦線は乱れ乱戦の様相は深くなる。

だめ押しにスケルトンライダーによって退路を塞がれ背後から強烈なプレッシャーが掛かる。未だ祖霊への信仰で持ちこたえてこそ居るが疲労と合わせて一度士気が下がってしまえば一気に危険な状態に陥る状況であった。

 

 

「俺達が出るか?」

 

問うたのはザリュース。彼等族長組が後方待機していたのには当然理由がある。

それは敵の首領が出て来た際、万全の状況で彼等がぶつかれる様にする為だ。

 

「いや…フロストペインを持つお前とクロコダインからそれを借り受けたゼンベルと二人を上手く支援できるクルシュは俺達の切り札だ。行くとしても俺達3人だろう。それに信じよう、五つの部族が一つになった俺達だ、まだ策も残っている。」

 

ザリュースの提案を却下したシャースーリューの視線はゼンベルの腰に装備された一振りの斧に向く…

 

『帰ってきた真空の斧マーク2』…それがゼンベルに貸し与えられた直接の参戦を見送ったクロコダインからの最大限の助力だった。

因みにこの斧の名を聞いた時、その場に居た全てのリザードマン達は全員(名前長いっ!!)と思ったのだがクロコダインは実にまじめな様子で名前を略す事を禁じた。

 

帰ってきた真空の斧マーク2がゼンベルに貸し与えられたのははっきり言えば消去法である。

 

ザリュースにはフロストペインがあり、わざわざ十全に使いこなせるその武器を手放す事は無いとして、シャースーリューも同じく魔法を帯びた大剣がある。

イエロースペクトルの族長はスリングでの投石を武器としているため斧は扱えず、シャ-プテイルの族長はホワイトドラゴンボーンという最強の鎧を持つ故、辞退。

残るクルシュはそもそも使わないと言う事で最終的に鉄のハルバードを置いて、帰ってきた真空の斧マーク2はゼンベルの手に納まった。

 

ちなみに帰ってきた真空の斧マーク2はクロコダインが普段装備する真空の斧と比べ、決して劣る物では無いれっきとしたレジェンドアイテムである。

一撃の威力こそ落ちる物のむしろ装備重量が低い為これはクロコダインと近い体格を持つゼンベルにとっては誂えた様な武器だった。(真空の斧は重すぎてゼンベルでも扱いが難しかった。)

 

 

 

そして戦況が再び動く…

 

 

多くの被害を出しながら、その高い機動性故に罠に掛かり一斉に落馬したスケルトンライダー。

リザードマンの全ての司祭によって呼び出され、使役されたスワンプエレメンタルの活躍。

死を恐れない戦士達の勇敢な猛攻が敵の包囲網に風穴を開けた。

 

 

 

 

 

ここに大勢は決した。

それはつまりリザードマンの軍勢の勝利であり、ナザリックのアンデッド軍団の敗北であった。

 

 

 

 

 

 

故に最後の試練の扉が開く…

 

 

 

 

「認メネバナルマイ、我ガ不徳ヲ…ーーー指揮官タル、エルダーリッチニ命令ヲ下ス。進メ。リザードマンニ力ヲミセツケロ。」

 

 




アインズ様どころかクロコダインすら殆ど出番無いなんてこれもうわかんねぇな…

鰐つ『ゴッズアイテムと化したどたまかなづち先輩』    
       +
鰐つ『帰ってきた真空の斧マーク2』

帰ってきた真空の斧マーク2を借りて完全勝利した、全鐘君UC



次話、銀杏食べたい


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