side來月
長門秘書艦の作戦発表から一夜明け…。
わたしは間宮の復興のお手伝いをしていた。
「來月ちゃん、そこの板、取ってもらえるかしら?」
「はい、まみやさん」
言われた通りに指された板を間宮さんに渡す。
「ありがとう、來月ちゃんが手伝ってくれて本当に助かるわ。でも、もう大丈夫なの?」
心配そうに間宮さんが聞いてくる。
恐らく間宮さんが聞きたいのは楠男お兄ちゃんのこと…。
「うん、だっていつまでもないてられないから」
それは悲しいに決まってる…。大好きな兄である提督を失ってしまったんだから……。
だけど、いつまでもウジウジなんてしてられない、楠男お兄ちゃんだってそんなことを望まないと思うから!
「そっか、偉いわね~來月ちゃん」
ナデナテと優しく頭を撫でられる。
鎮守府の方達は優しい人たちだ……。
事情を知らない人達はわたしが唯一の肉親を亡くしたとおもっている。
確かにわたしは提督の妹だけど本当は違う……。
わたしは元艦娘、W島の攻略作戦の時に死んだはずの如月なのだから……。
そんなことをしていると、道の向こうからある人影が走ってきた。吹雪ちゃんだ。
「ふぶきおねえさん」
間宮さんも吹雪ちゃんに気付いて声をかける。
「おはようございます!今日も頑張ってますね」
「はい!っ!?ととととっ…!」
躓いて転びそうになるのをなんと踏み留まる。
「大丈夫!?」
「はい!もう一周いってきます!!」
そう言うと吹雪ちゃんは走り去ってしまった。
「いってらっしゃい!」
「ころばないでね!」
走り去る吹雪ちゃんの背中にそう声をかけるわたしと間宮さん。
その背中が見えなくなるまで見送ると間宮さんが伸びをしながら言った。
「ん~…!!後一息、私も頑張ろっかな」
「おてつだいします」
「ありがとう來月ちゃん。それじゃあもう少し頑張りましょうか」
そうしてわたしは間宮の復興の手伝いをするのだった。
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作業が終わり、わたしが司令室に戻るために演習場の横を通りかかると吹雪ちゃんが演習をやっていた。
「次、いくぞぉ!」
「はい!!」
吹雪ちゃんはあの日から異様な程トレーニングに励んでいる……。
あの夜の提督からの言葉を聞いてからだ……。
わたしから見ると無茶な訓練をしているようにしか見えないけど……。
それだけ必死なのね…。
夕立ちゃんの話では今までのトレーニングメニューに更に数を増やして訓練していると聞いている。
あまり無理をして体を壊さないといいんだけど……。
見ると、陸からその様子を伺う二人の姿があった。
睦月ちゃんと電ちゃんだ…。
電ちゃんは嬉しそうに吹雪ちゃんを見ているけれど、睦月ちゃんは心配そうにその演習を見つめている。
睦月ちゃんもわたしと同じ考えなのね…。
わたしはしばらくその様子を見守ってから司令室に戻っていった。
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時間は少し飛んで夕方のこと…。
わたしは一航戦のお二人と歩いていた。
「私達の演習が見たいなんて艦娘でもないのに変わった子ね…。」
加賀さんが不思議そうにそう話す。
「まえからきょうみがあったの、あかぎおねえさんとかがおねえさんの『えんしゅうふうけい』」
「まあ、ということは弓道に興味があるの?」
赤城さんが嬉しそうに聞いてくる。
別にそういうわけでもないけど、そういうことにしておく。
「ちょっとだけ、でもふたりのきゅうどうするすがたかっこよかったわ」
わたしの言葉に満足そうにする加賀さんと赤城さん。
「それは良かったわ…。」
「うん、上々ね♪」
すると、目の前を吹雪ちゃんが走り抜けていった。
走り抜ける間際、吹雪ちゃんがわたし達に気がついて…。
「あ、赤城先輩達に來月ちゃん!すみません、失礼します!」
「え、えぇ…」
走っていく吹雪ちゃんの背中を見送っていると加賀さんが一言呟いた。
「珍しい、あの子が赤城さんを見つけてそのまま行ってしまうなんて……」
「あはは……」
吹雪ちゃんって赤城さん大好きだものね……。
わたしはそう考えて少し苦笑するのだった。
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翌日……。
営業を再開した間宮さんの所で楠男お兄ちゃんが好きだったコーヒーゼリー餡蜜を堪能していた。
そんな時、吹雪ちゃんが大破したという知らせが入った。
わたしは急いで入渠ドックに向かった。
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入渠ドックに着くと入口で睦月ちゃんとぶつかってしまった。
睦月ちゃんの方が大きかったのもあってわたしは飛ばされて転んでしまう。
「いったたたぁ……」
「來月ちゃん、ごめんね、よく見えなくって…。大丈夫?」
心配そうにわたしを起こしてくれる睦月ちゃん。
「えぇ、だいじょうぶ…ありがとう、むつきおねえさん」
「そっか、良かった…。來月ちゃんに怪我なんかさせたら提督や鎮守府のみんなに怒られちゃうから……」
そう言う睦月ちゃんの顔は涙で濡れていた。
わたしはその顔を持っていたハンカチで拭い言った。
「むつきおねえさん、すこし…おさんぽしない?」
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やって来たのは海のよく見える高台に来ていた。
「ねえ、どうしてないていたの?」
わたしは座り込んで睦月ちゃんに問いかける。
睦月ちゃんはすこし考えると話しだした。
「私ね?少し前に大切な人を亡くしちゃったの……」
その言葉にドキリとしたけど、わたしは平静を保って話を聞いた。
「なるべく思い出さないようにしてたんだけど…。
今日吹雪ちゃんが出撃したときに大破したの…。
知ってるかな?」
わたしはコクリと頷く。
その為に入渠ドックまで行ったのだから……。
「その時、私も一緒にいたの…。でも吹雪ちゃん、一人で前に出ていって敵の軽順を倒そうとして大破したの…」
わたしは内心で驚く。
まさかそんなことがあったなんて……。
「それでボロボロになって轟沈するところだったのに吹雪ちゃんは自分は敵を倒せたか聞いてきたの…」
「私、それが許せなくて…もう、大切な人を失いたくないのに…あんな思いはしたくないのに……ぅぅ…。」
ポロポロと泣き出す睦月ちゃん……。
わたしはそんな睦月ちゃんを抱き締める。
そして優しく語りかけた。
「怖かったのね、辛かったわね…。
でも、きっと大丈夫よ、吹雪ちゃんは分かってるはずだから…。それに、あなたはまだ誰も失ってないもの……。」
「え…?(この声って…)」
わたしは睦月ちゃんから離れる。
そして振り返り言った。
「わたしはあなたをずっと見守ってるのを忘れないでね?
睦月ちゃん」
わたしはそれだけ言うと司令室に向かって歩きだした。
「あ、待って!!」
後ろから制止の声が聞こえてくるけど、わたしは足を止めない……。
「待って!如月ちゃん!!」
その必死の声に振り返りたくなったけどそうはせずにわたしは夜の闇へと姿を消すのだった。
「……っっ!ぎさらぎぢゃぁぁん!!」
残された睦月ちゃんの声は夜空によく響いていた。
今回の斉木くん!
鳥塚「斉木さーん超能力教えてくださいよ」
お前ロクな事に使わないだろ…。
國春「クスえもん!!クスえもん!!助けて!!」
やだ、自分でどうにかしろ…。
さて、コーヒーゼリーでも食べるとしよう。
だが何かを忘れているような……。