東方開扉録   作:メトル

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更新がすごく遅れてしまいました、すみません。


第二十八話 狂人

誠「一気に決めさせて貰う!!」

 

弾幕を螺旋状にばら撒く幽々子に牽制を仕掛ける、幽々子を遠目から見ると余裕ありげな顔でこちらを見ている。

その顔から余裕を消してやる。

俺の周囲に無数の魔法陣を創造、弾幕をレーザーのように飛ばして牽制し幽々子の弾幕を潰しにかかる。

俺の弾幕は見事命中、的確に幽々子の弾幕を相殺し黒煙を上げ消えていく。

ディ・モールト(非常に)良い! そしてこの黒煙の中から狙い打ってトドメだッ!!

暗視ゴーグルを頭にかけて黒煙を覗くと幽々子の輪郭がはっきりと見え、俺はニヤリと口元を釣り上げた。

両手を前に突き出して力を溜め、一気に放出。 幽々子の頭を狙い撃った。

 

幽「…単純な攻撃」

 

そう呟いた声が聞こえた瞬間に幽々子が僅かに首をずらして俺の弾丸を軽々と避けて見せた、弾丸は黒煙を突き抜け幽々子の背後にそびえ立つ西行妖に着弾する。

それと同時に幽々子の弾幕が勢いを増し始めた。

螺旋を描いていた弾幕は二重になり、それを装飾するかのように周囲を飛ぶ弾幕がまるで檻のように俺を捕らえ逃がさない。

…なんだこの弾幕は。 隙間らしい隙間が見当たらない。

落ち着け、冷静に対処して確実に倒さねばいけない。 …ならば。

 

誠「創符『いてつくはどう』!」

 

スペルカードの宣言と共に両手を突き出し、指先からほとばしった凍てつく波動によって幽々子の弾幕はかき消された。

それと同時に動きだした俺は幽々子に接近し弾幕を構える。

 

幽「まだまだ」

 

だがすぐさま体勢を立て直した幽々子が弾幕を放つ、弾幕を相殺しながら接近を試みるが右肩を弾幕が掠めたために一旦距離をとった。

深入りは禁物、下手に突っ込んで被弾して終了なんてシャレにもならん。

 

幽「ふふふ…」

 

距離をとった俺に弾幕が勢いを増して襲いかかってくる。 遠距離では分が悪すぎる、どうにか近づかねば。

体を回転させながら弾幕を弾幕で相殺し、空中を蹴って空高く飛び上がる。

弾幕のないここからなら…。

飛び上がった勢いをそのままに急降下、凄まじい速度で幽々子に突進し距離を詰める。

幽々子は少し驚いた顔をしたが扇子を閉じて口元に当てると弾幕で俺の迎撃を開始した。

だが遅い、俺の速さは例えるなら霊夢並の速さ、自分自身目が開けられるのも不思議なくらいのスピードだ。

……このスピードならいける。

 

誠「創符『ポイズンクッキング』」

 

弾幕を右手に集中し一発の弾を構えた、それは高密度のエネルギーをその内に秘めながら毒々しい紫色の光と異臭を放っている。

幽々子はもう目前のところまで来ている、右ストレートも簡単に入る距離だ。

 

誠「食らいやがれえええええッ!!」

 

右手の弾幕を幽々子の顔面にへと突き出した、毒々しく光る弾幕は異臭を放ち幽々子の白い肌を汚さんと迫る。

勝利への確信、この距離ならば咄嗟に身をよじることもできない。 勝ったと、これで終わりだとほくそ笑んだ。

勝ったぜ、この勝負は速くも終了ですねぇ!

最後に敵の敗北の顔をこの目に焼き付けるために幽々子を見た。

そして幽々子の顔を見た瞬間、脳が危険信号を発した。

 

―――幽々子の顔には焦りなど欠片もなかったからだ。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

正午を過ぎ、外を見ればそこかしこに雪、雪、雪。

うんざりするほどの大雪を見ている私――霧雨 魔理沙は頬杖をつきながら外を見て溜め息を吐いた。

霊夢のところに遊びに来たはいいが、春が来ない。

春が訪れないんだ。 もう5月なのに雪は止まず桜も咲かない。

博麗神社には桜の木があってここで毎年春にやる宴会を楽しみにしている妖怪も少なくないと言うのに肝心の桜がこれじゃ祝うものも祝えないぜ。

 

魔「なあ霊夢、このまま春が来なかったら宴会は…」

 

博「もちろんナシ、速くそこ閉じてよ寒いから」

 

魔「そうだよなぁ…」

 

深い溜め息と共に障子を閉じてコタツの中に体ごと入る、宴会ができないなんて酷い春だぜ今年は。

コタツの上に手を伸ばしてみかんを1つ取り、皮を向いて口に頬張った、みかんの甘酸っぱい味が口の中に広がってなんとも言えない幸福感に支配されそうになる。

…支配?

 

魔「そうだ! これは異変だぜ霊夢!」

 

コタツから勢い良く飛び出した私は右腕を振り上げて高らかに宣言した、だが霊夢は私になど目もくれずみかんを頬張っている。

 

魔「霊夢! みかん食べてる場合じゃないぜ! こんなに冬が長引くなんて異変に違いないぜ!」

 

霊夢は興奮気味に言う私を気だるそうな顔で見てから「ん~…」と顎に手をやって少し考えてから口を開いた。

 

博「あー大変、もう異変だって気づいた誰かが動いてるかもしれないわねー。

  速く行かないと先を越されちゃうかもしれないわー」

 

魔「そうだぜ! こんなところでみかん食べてる場合じゃない!

  誰かに解決される前に私は調査にでかけるぜ!」

 

颯爽と箒にまたがって冷え切った冬空の中を飛び出した。

異変のせいで宴会中止だなんて御免だからな、パパッと異変を解決して楽しい楽しい宴会にしてやるぜ!

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

やばいと俺の脳が信号を発する前に幽々子の体が視界から消え、それと同時に背中に強い衝撃と激痛が全身を駆け走った。

体勢は崩れ勢いをそのままに西行妖に激突しまたもや全身に衝撃が響き渡った、激痛で受身も取れず重力に誘われるままに地面へと叩きつけられる。

背中の痛みで息ができない、全身の痛みで涙が溢れそうになる、ミシミシと軋む四肢に鞭を打つようにしてなんとか起き上がると西行妖の根元に座り込んだ。

 

……あの瞬間、幽々子は体を背中から倒れるようにして回避し、背中に弾幕までやられたわけか。

………は? 弾幕?

一瞬自分で考えたことを疑った、弾幕はありえない。 弾幕決闘の弾幕は被弾と共に体を原子レベルくらいまで分解させてお終い、一定時間経ったら元通りになる弾のはずだ。

…まさかと思い右肩を見ると弾幕が掠めた箇所が焦げて無くなっている、よく見るとジャージの所々に焦げ跡が見える。

……おいおいマジかよ――。

 

幽「あら? 私との弾幕決闘が一発当てて終わりのお遊びだと思っていたのかしら?」

 

ゆっくりと降りてきた幽々子が俺の青ざめた顔でも見てまた俺を青ざめさせる言葉を口にする。

 

誠「し、試合じゃなく死合ですかそうですかってやかましいわ!」

 

幽「顔が引きつってるわよ?」

 

誠「そそそ、そんなばな、バカな、こんな、こんなのって……」

 

気持ちが抑えきれず呂律が回らない、これは夢か現実か?

 

幽「恐怖で戦闘する気もなくなったかしら?」

 

首をかしげてそう言う幽々子の声も耳に入ってこなかった。 涙が堪えきれず頬を伝った、水が湧き出るようにとめどなく流れる感情を抑えきれない。

 

幽「命は取らないわ、速く逃げ帰って博麗の巫女にでも知らせなさい」

 

幽々子は吐き捨てるように言うと踵を返した、まるで壊れたおもちゃでも見るような目で俺を一瞥し、ゆっくりと飛び始めた。

 

誠「………ふっふふ」

 

突然笑いがこみ上げてきた、幽々子が振り返ると笑い声はどんどん大きくなっていく。

 

誠「ふ、ふふ…フヒヒヒ…ヒィイヤッハハハハハハハハ!!」

 

上を向いて絶叫を空に響かせるように笑った。 当然だろう、俺が今抱いている感情は恐怖でも悲嘆でもでもないのだから。

 

誠「最高だねぇ! こんなに充実した毎日は外の世界では味わえない!!」

 

痛みをこらえてスッと立ち上がると涙を流しながら両腕を大きく広げた、感情の昂ぶりが抑えきれないのだ。

 

誠「勉強? 恋愛? 部活? そんなものいらない。 みんな楽しくガヤガヤと過ごす毎日は確かに

  楽しい、だがスリルがない世界なんてつまんねぇんだよッ!! 生きながら死んでいることと

  変わらないからなァ…。 だが死の恐怖が背中に張り付き、最高のスリルと隣り合わせで

  生きることで生きていることを実感できる!! こんなに充実した世界はない!!

  自殺志願者なんていなくなるほど充実している世界だよ幻想郷はなァ!!」

 

大きく広げた両腕を全身を抱きしめるように閉じて肩を掴むと笑いながら語り続ける。

 

誠「そして今ここに俺は死の恐怖に晒されている、ここで逃げる? 背を向け巫女に頼む?

  冗談はチラシの裏にでも書いていろってんだよ! 今から始まる最高のゲームに参加しない

  わけがないだろうが!! フッフフハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」

 

トチ狂ったかのように笑う俺に幽々子は恐怖を感じているだろう、だがこれはこれくらいで恐怖とは言えんよ。 死の恐怖より恐ろしい物なんてたくさんあるしな。

でなきゃ自殺で現実から逃げるって発想自体生まれないもんな。

 

誠「んで、あんたのとこの剣士様は弱かったが、あんたは強いんだよな?」

 

幽「…それはさっきの遊び(・ ・)でわかってることでしょう?」

 

ごもっとも、俺は一撃も攻撃を当てられずに負けたようなものだからな。

だがそれはハンデありの戦いでの話し、本気でなら俺に敗北はない。

 

誠「さっきのお遊び(・ ・ ・)で貴様の弾幕決闘での強さはわかったよ。

  ではここで問題だ、霊夢の強さを5000と数値化した場合の俺の数値は?」

 

足が地面を離れて徐々に浮かび始め、俺の背後には無数の武具が俺を追従して浮遊している。

刀、剣、槍、斧などの一般的な武具からメイス、七支刀、蛇腹剣、モーニングスターなどの一風変わった武器まで種類は様々だ。

 

誠「答えは1、普通の人間の中では強いが霊夢の足元にも及ばないね。

  もちろんそれは生身の状態でのお話、俺の能力を考慮しない場合ってわけだ。

  さてさて~では次の問題! 総合的に見て俺の数値はいくつでしょ~か!?」

 

おどけた顔で言うと幽々子の眉間に若干しわが寄った、だが幽々子は無言のままに俺を見つめて口を開かない。

 

誠「はい時間切れ! ヒトシ君人形はボッシュートとなります。

  ちなみに答えは俺自身分かってないんだよね、核兵器でも出せば幻想郷ブッ壊せるかな?

  強さの定義を戦闘に勝つための力とすれば俺は強い部類に入るんかもね」

 

幽「…私はあなたを最初『自由の道化』と言ったけど訂正するわ。

  あなたは道化のふりをした『狂人』、命を軽く見すぎているわ」

 

誠「それは違うね。 偉い人は言いました、『命はもっと粗末に扱うべきなのだ』と、だが俺は

  命を大切にしている。 命がなくちゃ楽しいことも悲しいことも感じられないからな。

  そして命はつまり人生だ、俺は人生を楽しむためにこんな性格になったんだよ」

 

幽霊になっちゃ人生も糞もないからな。

 

誠「人生ってのは、大切にしなくちゃいけないんだ。 平和に生きることが好きなやつは平和に生き

  ればいい。 俺みたいに死の恐怖を味わうのが好きな奴はスリル溢れる人生を楽しめばいい、

  俺は自分の好きなことをして死ぬなら人生を満喫したってことで本望だしな。

  …理解できないって顔してますね? 別にいいですよ。 価値観の違いなんて人間ですから

  ごく普通の事でしょう? あなたは命の危険に自ら飛び込む俺を理解できない、ただそれだけの

  ことです。

  それじゃあ痛みも引いてきたので始めましょうか、もたもたしてると西行妖が満開になって

  しまいますし」

 

西行妖を見ると先程から咲いていた桜は数を増やして美しさと妖しさが増している。

大体六分咲きってところか、満開になっては手遅れだがギリギリまで戦いを楽しみたい。

 

幽「…あなた、悪役の方が向いているわよ」

 

誠「褒め言葉をありがとう。 そうだな…、貴様は西行妖を守ろうとする正義の味方。

  俺様は西行妖を枯らさんと迫る宿敵…ってか? いいぜ、正義が勝つ法則をぶっ壊してやる」

 

幽「勝ち誇っているところ悪いけど、あなたは今、私が殺すわ」

 

…幽々子の言葉には気迫がこもっている。 口先だけではない、その言葉を裏付ける実力を伴っているからだ。

いいねぇ、恐怖を感じたわ。

 

誠「あぁぁ殺されるかもしれないわ俺、いいねぇ最高!

  なら死なないようにひと暴れしなくちゃなァ!!

  さあッ! 死ぬほど寒く冷たい冬で凍え切った体を温めるとしようか!!」




骨折は5度目ですが足は初めてです。
バイトにも出れません。



次回予告
紅魔館の門番である紅 美鈴は考えていた、なぜ誠が冬の日に外に出てこんな夜遅くになっても帰ってこないのか。 まさか幻想郷に春が来ないことと関係しているのか、異変解決のために動き出したはいいが寒さで凍えて倒れていると推測した美鈴はこうしてはいられないと紅魔館を飛び出した。 だがいくら良心から出た行動でも持ち場を離れた美鈴に許された道はメイド長のナイフを受けることだけだった。 次回『キングダムハーツがリメイク…!? 買うっきゃねぇ!!』夏休みは終わらせない。
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