理力の導き   作:アウトウォーズ

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申し訳ありません、バランが全然本気出してくれなくて、
タイトル負けしています。
「ここまで大人しいバランが居るのか」という目で読んでくだされば、
幸いです。

どうぞよろしくお願いします。


竜の騎士 後編

膨れ上がった彼のフォースは闘気剣に異常なスパーク現象を起こし、ことここに至ってアナキンは我に帰った。

そうだ。これ程に許し難い存在を前にしてこそ。

おそらくジャンヌが救えと言い残した対象であるからこそ。

 

怒りに呑まれてはいけない。

 

――片腕斬り落とす!

 

アナキンの出した結論はそれだった。

もとい、人類全てを根絶やしにするようなことを言って憚らない大バカ野郎だ。

四肢欠損くらい覚悟して貰わねば、割に合わない。

 

そうと決めた彼の行動は速い。

 

アナキンは眼前の敵に対して、セイバースローを放った。

掌を離れた擬似ライトセーバーが嫌な音を立てながら楕円を描き、バランを背後から襲う。

これまでの間、僅かコンマ1秒にも満たない。

 

バランは明らかにその早業に隙をつかれた。

すでにアナキンに合わせて抜剣していたとはいえ、見たことも無い軌道で襲い来る擬似ライトセーバーに不意を襲われ、剣で弾く対応が常より数瞬遅れた。

 

その極僅かな隙の間に、アナキンはフォースを全開にしてバランの頭上に跳び上がり、弾かれた擬似ライトセーバーを手元に呼び寄せていた。

それを大上段に構え、全力でもって振り下ろす!

 

――獲った!

 

「アナキン‼︎」

 

勝利を確信した瞬間に響いたノヴァの声に、彼は逆に自身の命が危険にさらされていることを悟った。

 

上!

 

彼は瞬時に擬似ライトセーバーを掌の上で半回転させ、後方上部より襲い来る敵に向けて突き入れた。

次の瞬間には恐ろしく鋭利な敵の一撃が、彼の左頬を切り裂く。

 

そして続けざまに襲い来る必殺の第二撃目を、アナキンは擬似ライトセーバーで辛うじて受け止めることに成功した。

 

ズガンっっっ!

ズババババっっ!

 

凄まじい音を立てて衝突しあった両者は、そのまま叩きつけられるようにして地上に落下した。

舞い散る砂埃が、周囲を吹き曝す。

 

そうしてようやく対面することになった闖入者の顔を見て、アナキンは思わず驚きに目を見開いた。

――あの時の少女だ!

 

その名を魔剣イレーネと言うことは、彼の与り知らぬところである。

 

彼女はまさしく、この状況への無粋な横槍として相応しい存在だった。

今まで散々前世の因縁と向き合っていたのが馬鹿らしくなるくらいに異色な美しさを放っている。

 

アナキンは思わず次のようにこぼした。

 

「オマエは……随分とまた、ご立派になられたようで。ついでにそんな物騒なもの捨てて、どっか別な場所でモデルでもやっててくれよ。」

 

しかし、これはまたどうしたというのだ。

何らかの秘術で急激に成長を遂げた、ということはわかるのだが…。

 

それにしたってこの容貌は尋常じゃあない。アナキンは前世で妻の他にも結構な美女たちと面識があったが、それでも目の前の存在は群を抜いている。

この血みどろの戦場には何とも不釣り合いな…ひょっとして、戦乙女というやつか?

 

いや、とアナキンは唇を歪ませる。

そんな大層な存在じゃないことは、ダイに似せて化けた以前の姿を思い浮かべるだけでわかろうというものだ。

 

しかし精神的に春の過ぎた爺さんであるアナキンにとって驚きであったということは、他の人間にとっては抗いがたい魅力を放っているということでもある。

 

「や、やっべぇ……あんなやつ助けるんじゃなかった!今のは間違いです‼︎ あ、謝りますから、ぼ、僕と結婚して下さい!」

 

「…ノヴァ、落ち着きなさい。」

 

完全に目がハートになって正気を失ったノヴァを、アバンが窘めている。

――本当に使えない小僧だ。

アナキンは彼に対する評価をまた一段階下げた。本来なら敵に魂を売ったため処断の対象とすべきところだが、格下げに留めておいてやるとする。今回ばかりは特殊事情だろう。

こんな規格外が、二人も三人もいる筈がない。

 

そう、この前まで少女だった存在は、まるでたった一振りの業物の剣そのものの様に怪しい輝きを放つ存在と化していた。

 

「…チッ、しくじった。」

 

その、かつて人間の少女であった半人半妖…を超えた魔剣は、忌々しげに呟いた。

これ程までに容貌とは正反対な色気のない言動をとる者も、そうはいないだろう。

 

「助けられた、礼を言おう。」

 

イレーネは、そのバランの謝礼すら一顧だにしなかった。

この場に彼の腹心の部下がいなかったことは、ある意味幸いといえるだろう。主君に究めて高い忠誠を捧げる彼ならば、決して彼女のその態度を見過ごさなかったであろうから。

 

「貴殿を餌にして得た機会を逃したのだ、礼などとんでも無い。役割が逆なら、確実に仕留められたものが…反吐が出る。」

 

その言葉の内容に感心でもしたのだろうか。

バランは、真魔剛竜剣を鞘に納めた。

そして両腕を組むと、アナキンに一歩を踏み出したイレーネの背中を見つめた。

 

その視線に居心地の良さを感じたイレーネは、アナキンを睨みつけたまま振り返らずに、バランに話しかけた。

 

「”カールはもう堕ちた。この場は魔剣に任せて、貴殿は即座に獣王の下に向かって欲しい。”…我がボス妖魔司教ザムザと、魔軍司令ハドラー殿の連名での依頼だ。私はこれを伝えにここに来たのだ、無駄にしてくれるなよ。」

 

「あの男に救援など不要だろう。それ程の敵が現れたとも思えんしな…。それよりも、お前の実力を見てやる。私もそこな男と同意見でな、女が戦場に立つのは気に食わぬ。強さのない者ならば、二度とその剣を握れないようにしてやる。」

 

――おいおい、勝手に話を進めておいて随分な言い方をしてくれるじゃないか。

事態の推移を見守っていたアナキンは、そろそろ自分がこの場を支配すべき時だと感じた。

 

「言葉尻だけとって一括りにしてくれるなよ、大罪者。…まあいい。この女を倒したらお前の番だ。逃げ出さない度胸だけは褒めてやる。」

 

「残念ながらそれは無いな。」

 

イレーネはその言葉と共に一歩踏み出すと、慎重に何かを制御する様に一歩を踏み出した。

それと同時に周囲の地面に無数に亀裂が入る。

そしてその全てが、大剣で切り裂かれた様な鋭い痕を残している。

 

何が起こったか訝ったアナキンは、フォースの感覚を通して知った事実に愕然とする。

――この女、正気か!?

 

新手の魔法か何かと勘ぐった自分が呆れ返る程に、それは見知った力だった。

フォースの暗黒面。

眼前の美女はそれを、右腕にのみ集中させて完全に、それも意図的に暴走させていた。

 

これは無茶どころの騒ぎでは無い。

道理で肉眼では、何が起きているか分からない筈である。

彼女の右腕は人間の反応を超えた速度で荒れ狂い、周囲の空気そのもが敵だとばかりに全てを手当たり次第斬りつけている。完全に狂気の沙汰だった。

 

「ノヴァ、マヒャド!」

 

アナキンは立ってる者は親でも使えとばかりに、魔法を撃つよう命じた。

一時正気を失った彼も、流石にこの様を見ては正気に立ち返り、そしてアナキンの恐ろしさ思い出していた。

 

猛烈な吹雪が彼女の刃圏に入り…。

 

その全てが引き裂かれた。

 

最早確認するのも馬鹿馬鹿しい。

――こいつ、剣で魔法を斬りやがった!

 

アナキンは、ノヴァの氷雪魔法に露ほども期待していなかったが、その検証結果には素直に感心した。

こんなのと切り結ぶのはアホのやる事である。

 

「面白いじゃないか…。」

 

アナキンは、前世で戦った四刀流の機械将軍を思い出し、ニヤリと笑った。あれの数倍は手強い相手だろうが、フォースの成長を確かめるにはもってこいの相手である。

 

「調子に乗るなよ小娘!」

 

もはや外見的には完全に相手の方が年上なのだが、アナキンは怒声を上げて跳び掛かった!

 

そこからはもう、斬り合いと呼ぶにはおこがましい光景が展開された。

1秒間に4発、5発と斬り結んでいき。

10を超えた段階で、アナキンは数えるのを止めた。

彼は全神経とフォースを集中して、イレーネの繰り出す剣撃の全てを捌いていた。

 

――思った通りだ。

アナキンは極度に集中した中で、静かに確信に至った。

技術的にも狂気的にも遥か上に位置するが、戦法そのものはグリーヴァスのそれと変わらない。殆どが目くらましの斬撃で、本当に致命的な斬撃は、そう多く無い。

 

しかしそれを見定めて反撃を撃ち込むことは、全てを捌くのよりも困難である。

このままでは不利と判断したアナキンはその場を跳び退り、半身になって弓矢を引き絞る様に擬似ライトセーバーを構えた。

 

フォームIII、ソレス。

 

彼の前世での師が得意とした、防御に特化したライトセーバーの構えである。この構えをとる相手として、これ程相応しい存在もいまい。

 

今!

 

アナキンはそんな感傷とは別に、極度に研ぎ澄ませたフォースに導かれて擬似ライトセーバーを振るった。

はっきり言って、このレベルの斬り合いともなると肉眼は殆ど用を成さない。

高めたフォースを信じるのみである。

 

そしてそれは、アナキンの思い通りの結果をもたらした。

 

今迄は逸らすことが限界だった相手の剣撃を。

 

彼は見事に受け止め、連撃を止めて見せたのだ!

 

「まだまだ甘いよ。」

 

アナキンはそう呟くと、フォースの衝撃波を叩きつけた。音速の3倍で。

 

ズドン、と轟音が響き渡り、イレーネの華奢な肢体が弾け飛ぶ。

 

問答無用で斬り倒す程の邪悪さを感じなかったアナキンは、肋骨を二・三本叩き折るに留めようとしたのである。

 

しかし、イレーネはそれをものともせずに起き上がろうとしている。

 

再び左の掌を翳したアナキンは、追い打ちをかけようとしたその瞬間に懐かしい感覚に囚われた。

――それは、この世界に転生して初めて感じる死の予感だった。

 

彼は咄嗟に掌に集中させたフォースで、背後に迫った刀剣そのものを摑み込んだ!

 

それは正しく偶然の所業であり、バランが竜闘気をまとって斬撃を繰り出していたことが逆に幸いした。

膂力のみの一撃であれば、刃物の感触に慣れない彼の左手は、前世と同じ運命を辿ったかもしれないのだから。

 

結果的にフォースと竜闘気のぶつかり合いに終始した事で、アナキンは無傷でこの危機をやり過ごす事が出来た。

 

「借りは返したぞ。」

 

必殺の一撃が思いも寄らぬ方法で防がれたとは露ほどにも感じさせない口調で、バランは誰にともなく零した。

アナキンはしかめっ面で、イレーネは涼しげな顔でそれに応える。

 

前後を敵に挟まれたジェダイは、現状の厳しさを悟っていた。

バランはいまだ実力の底が知れず、ダークサイドを操るこの暴走女にはフォースの効き目が薄い。

 

現状を打破する直接手段は、確かに存在するも限られている…。

 

躊躇い、一歩を踏み出せないアナキンなのであった。

 

「バラン、剣を引きなさい。そこの貴女もです。」

 

その状況を打破する一声は、一番弟子の堕落にこれまで身動きを忘れていたアバンによってもたらされた。

 

――何を府抜けたことを!

と、その言葉に最も強く反発したのはあろうことかジェダイたろうとするアナキンその人である。

 

彼は先に情けをかけて暴走女を殺さなかったことを深く反省し、今こそ自身のフォースの全てを解き放って眼前の二名を倒し切るべきだと判断した。

アナキンは感情の迸りに任せて言い切る。

 

「その必要は無いですよ、アバン先生。こいつらは剣を手放すことになるのだから。」

 

こいつらは、間違いなく敵勢力の上位実力者だ。

この場で倒し切って大魔王とかいうフザケタ存在の選択肢に限定をかけてやることは、後々の財産になる筈である。

 

「アナキン君。キミこそ剣を納めなさい。」

 

凛と鳴る、とはまさにこのことだろうか。

アナキンはアバンのあまりにも澄んだその声に思わず、昂ぶったフォースを鎮めることになった。決して強制された訳ではなく、あくまで自然に、である。

 

アバンはその様子を見て満足そうにうなずくと、先ほどまでの動揺を感じさせない声で敵の男女に語り掛けた。

 

「バラン、その女性への配慮には、まだ捨て切れていない人間らしさが垣間見えますよ。彼女の言う通り、所定の成果は得た筈だ。ここにもう用は無いでしょう。」

 

「水を差さないでくれませんかね。この二人は、この事態を引き起こした罪を贖う必要がある。」

 

アナキンは不満も露に言葉を被せた。

この女は共犯として、そしてバランは主犯として裁く必要がある。

女の技を見切った以上は、精神的なショックから立ち直ったアバンが加わってくれれば、バランの未知数を考慮に入れても倒し切ることは可能だ。

なのにその機会を何故、容易く放棄しようとしているのか。

 

「アバンよ、愚にもつかない迷い言で場を取り繕うのは止したらどうだ。眼前の敵を放置することが貴様の正義なのか?」

 

――それ見たことか。

畳みかけてきたバランの言葉に表情を歪めながらも、アナキンは一体どっちの味方なのかとばかりにアバンを睨みつけた。

 

「その考えが貴方の選択を誤らせているのですよ、バラン。気に食わない者を倒すことでしか正しさを証せない、そんな哀しい道は外れてしまいなさい。そこの無口な女性が来た意味を考えたことは?」

 

呼びかけを挟んで、アバンは語を繋いだ。

 

「貴方はやり過ぎたのですよ、バラン。本来なら、この地に各国の救援が駆けつけるまで、時間をかけて攻めるべきだったのでは?それがこのザマはどうです。私やアナキン君といった、僅かな救援しか引き付けられずにカールは実質的に滅んでしまった。貴方は一級の働きを成しましたが、やり過ぎてその価値を下げてしまいましたね。これ以上の戦いは無意味ですよ。」

 

おいおい、とアナキンは度肝を抜かれた。

――この男、まさか言葉だけでこの場を収めるつもりなのか、と。

しかし続けて放たれた言葉に、アナキンは首を垂れることになった。

 

「私は、この場の同胞たちを救いたい。貴方たちの時間稼ぎに構っている暇は無いのです。」

 

アナキンは、今世で高めたフォースを運用することに囚われていた自分を恥じた。負傷に喘ぐこの国の民を忘れ、敵を打ち倒すことに腐心することはジェダイの道では無い。

その事を、ジェダイの教えすら受けたことの無い者に言われるまで気づかぬとは、何たる浅ましさか!

 

アバンのその言葉は、確かな変化をその場にもたらしていた。

それまでは眼前の戦闘のあまりの激しさに目を見開くばかりだったノヴァや騎士団の負傷兵達が、その身に鞭うって立ち上がって見せたのだから。

 

彼らを一蹴することは、あまりに容易いことだろう。

 

しかしアバンの言葉がもたらしたその事態は、竜の騎士に関心を抱かせた。

 

「よかろう。」

 

バランが頷きかけると、その女も大人しく首肯した。

 

「勇者アバン…なるほど面白い知恵を見せる。その功績に免じて、この場は引いてやるとしよう。」

 

――見逃してやっているのはこっちなんだけどな。

確かな勝算を抱くアナキンはそう言い返してやりたかったが、その浅はかさを噛みしめている以上は何も言えなかった。

だが…続けて放たれた言葉を聞いて、その確信が少しばかり揺らぐのであった。

 

「だが、この程度の事態に対応出来ないとは、貴様ら人類はやはり愚鈍だな。我が魔王軍ならば即座に対応してみせたものを…全くもって疎かな結束力だ。」

 

こいつは侮れないな、とアナキンは評価を改めた。

 

前世ではたった一人の敵を相手にさんざっぱら引っ搔き回された彼の陣営であったが、それでも最終的に勝利を収めることが出来たのは、彼らの陣営の結束あってのものだ。

単純に利益だけで結びついた個の群体を相手にした経験しか、アナキンは持たなかったのだが…。

もし敵陣が自分たちと同じように共通の繋がりをもって一塊になっていたと想像するのは、冷や汗ものである。

 

続けて放たれたバランの言葉に、アナキンの背筋を悪寒が走り抜けた。

 

「アナキンと言ったか、おまえとは妙な縁を感じるな。ひょっとしてディーノという者に心当たりは有るか。」

 

「さてね…。知ってたとしてそいつをどうする。」

 

「我が陣営に取り込む。」

 

とんでもない発言を残して、バランはイレーネを伴って瞬間移動呪文でその場を立ち去っていった。

 

間違いない。

アナキンは確信していた。

 

――あの男、フォースに目覚めつつある。

 

それも、竜闘気だとか新しい魔法だとかの即物的なものでは無く、より根源的な、アナキン達の世界での理解に近いものに開眼しつつある。

まるで聞いたことも無い名を出してくれたことは、せめてもの救いだったと言えよう。

あまりに拍子抜けしたものだから、動揺すら出来なかった。

 

――だが。

と、嫌な予感に包まれたアナキンは、弟子の側を離れた失敗を噛みしめるのであった。

 

 

 





今回はあくまで顔合わせがメインです。
バランとアナキンがお互いに「何だこいつ」と思ってくれれば良いのです。

死闘を演じるのは、竜魔人vsスターキラー級じゃないと盛り上がらないでしょう!

…まだまだ頑張ります。

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