理力の導き   作:アウトウォーズ

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また少し、時間がたってしまいました。
よろしくお願いします。



緩やかな時間の終わり 前編

この世界に来て、アナキン・スカイウォーカーが決めたこと。

それは、この小さな聡い老婆の生涯を看取ることであった。

彼女と共に慎ましやかな共同生活を送っているのは何よりも、その智恵と人生観を学ぼうとするためであるのだが。。。

 

 

あの日、長雨の中で自分の過去を語り始めたとき、彼はこの老婆の先が長くないことをフォースにより知らされていた。

 

 

近しい者の死が、かつての自分を歪めたのであれば。

この静かな山間の村でそれを追体験することで乗り越えられるのでは、という浅慮が働いた。

しかしそんな愚考では到底到達できないほどに、これまでの時間は有意義なものとなった。

それくらい、ジャンヌとしか名乗らなかったこの老婆は、素晴らしい指導を授けてくれた。

 

そして今日この日、出会って初めてとなる出来事があった。

 

彼女がアナキンに頼みごとをしたのだ。

ーーとびっきりの夜空を見たい。お願いだ。

そっけない一言に、アナキンは黙って頷いた。

それ以降のどこかぎこちない沈黙の時間は、彼女を背負い、山中に至るまで続いていた。

 

「マスター、これまで本当にありがとうございました。」

 

「何を殊勝な。本当は、半年くらいでワシを看取ってサッサと出て行くつもりだったのじゃろう?」

 

14歳になり精神的に大きく成長したアナキンは、かつての様に精神的な動揺を繰り返すことは無くなった。

しかしながらいつになっても、この老婆には心根を見透かされてしまい、その度に可も無く不可も無く驚かされたものだ。

そうしたことの繰り返しが、彼に教えるものがあるのも事実であった。

 

その指摘は、本来ありえないものなのだと。

 

「マスター、やはり貴女は…。」

 

「ふん、冥土の土産に教えておいてやる。我々の用いる魔法とそなたの使うフォース、根っこは同じようじゃよ。ワシは姑息だけが取り柄の木っ端な魔法使いであったが…、最後の最後にそのことに気づけただけでも、良しとすべきじゃろうて。」

 

ーーそんなことはありません。貴女は素晴らしい魔法使いだ。

アナキンはその言葉を、飲み込んだ。ここ数年、ジャンヌ老は自分を卑下するようになり、色をなしてそれを否定する彼との間で空虚な時間を重ねることが多かった。

彼は無理に反論しない智恵を身につけていた。

 

「いま、私もはっきりと感じます。フォースに目覚めたのですね。」

 

「ふむ…。魔法よりも汎用性が高く、そして攻撃面にやたら強い誘惑があるの。これがお主を迷わせたのか。」

 

ーーいきなりダークサイドに接触されるとは…。

精神的に成長したはずのアナキンでも、感情の起伏を抑えることはできない。

彼はショックに流されるまま思わず、これ程の時間を共にしながらも自分のことを殆ど語らなかった、ジャンヌ老の過去に思いを馳せた。

しかしその心の揺れは細波程度に抑えられており、ここに至るまでの彼の成長を物語っている。

 

アナキンはショックから立ち返ると、ひょっとすると自分を超えるかもしれない才能の発芽を目の前にしたことに意識を向けた。

 

「気をつけて下さい。フォースは、知恵と防御のためにあります。」

 

「見事な教えを説くじゃないか。魔法使いの弟子としてはひどいもんじゃったが、さすがにこの”力”の指導には熟練を感じるよ。」

 

言葉を交わす中で、アナキンの唇には自嘲の半月が浮かぶ。

師たる老婆が終末を目前にして新たな力に目覚めたというのにもかかわらず、弟子たる自分はこの年月の中で、どれほどのものを身に着けたというのだろうか。

前世においては才能が実体化したような存在であった自分は、この世界においては”メラ”すら発動することが出来なかったのだ。

 

このジャンヌという老人にできたことが、自分には出来ない。

だがこの無様な事実がアナキンにはどこか嬉しく、彼女の傍に居続けた一番の理由ともなっていた。

彼はこの世界に来て初めて、一から学ぶということの楽しみを知ったのだった。

慣れ親しんだフォースとは全く異なる魔法という系統を学ぶことにより、彼はフォースをより深く客観的に見つめなおすことができ、魔法の系統から得た解釈を付け加えることができた。

 

そうしたことが、彼の精神的な成長を助け、間接的にフォースの訓練ともなっていたのだ。

しかし、魔法を学んでいたのにその成果はゼロなのだ。

 

そのことがアナキンにはひたすらに、残念だった。

 

「…不肖の弟子であることを重ねてお詫びします、マスター。できることならば…、今こうしてフォースについて貴女と語り合っているように、貴女の魔法についても語り合いたかった…。」

 

ジャンヌ老はふと、ため息をつくように息を吐いた。

それは決して居心地の悪いものでは無い。

 

「…なに、お主の研鑽ぶりは良くわかっておる。まさかこんな形で弟子をとり、導きを終えることになるとわ思わなんだが…。ワシに子供がいれば、こんな感じだったのだろうかのぅ。ま、今となっては詮無いことか。」

 

アナキンは、不意に元来た道を指差したジャンヌ老に視線を誘導された。

そこには、一筋の黒煙が立ち昇っている。

そして彼の目の前で今、新たな煙が上がっていつた。

 

「ワシが与えられる最後の課題じゃ。今まで世話になった村を救ってみせよ。」

 

 

 

アナキンは、すぐさま駆け出した。

その動きのキレ、速さ、そしてそのフォースの充実度。

直接的には訓練していなかったのにも関わらず、今のアナキンはかつてジェダイとして活躍していた頃に勝るとも劣らない程にフォースに成熟していた。

 

だが、その心には大きな揺れがあった。

何故、いまこのタイミングでこんなことがあるのか。

 

ジャンヌ老は最早、1人では動くことが困難なまでに衰弱し、その生に終わりを迎えようとしている。

その最後をせめて二人きりで静かに受け止める、そうした神聖な儀式の最中だった筈だ。

 

よりによってそんな時に、なぜ。

何故、この静かな村をこれ程の悪意が襲っているのか。

 

彼の心境をそのまま映し出すかのように、慣れ親しんだ村は今、放たれた火によって赤々と闇夜に照らし出されていた。

 

「やめろおぉお‼︎」

 

聞き覚えのある男の叫び声が響き、その者の近くでフォースの輝きが消え去る。

アナキンはその現場に引き寄せられるようにして突き進み、そして決定的瞬間に立ち会うことになった。

 

「ジェシカ‼ そんな、 そんな‼︎ 嘘だ‼︎」

 

目の前で泣き叫ぶ男とは、ある意味ジャンヌ老以上に長い付き合いがあった。

この村に来て初めて口をきいた、あの夜間歩哨をしていたオニールだったからだ。

 

知らない仲じゃない。

狭いコミュニティの中で彼の大らかな性格に助けられ、打ち解けあった程の仲だ。

乗せやすく、それを何故か自慢げに自ら語るお調子者。

そんな普段の面影は、全く伺い知れない程の悲しみに彼は包まれていた。

 

アナキンは、そんな彼を今まで見たことがなかった。

 

「お願いだ‼ ジェシカ、目を」

 

開けてくれ、という言葉は声にはならなかった。

彼からはもう、言葉を紡ぐ力すら消え去ろうとしていた。

 

そんな悲劇の只中に、複数の粗末な身なりをした男達が、手にした凶器を鈍く光らせて迫る。

 

 

アナキンは左手を掲げると、無粋なそいつらをフォースで吹き飛ばし、地面に叩き付けた。

ことここに至って、一切の容赦は無用だった。

だが敢えてアナキンは刃物で斬りかかり、彼らの生身を引き裂くことはせずに留めた。

 

それは、最愛の人の鮮血にまみれるオニールに、無粋なものを浴びせかけたくないという、そのためだけに成された瞬間的な配慮だった。

 

「左右から挟め‼ 一気に刺せ!」

 

色を成して群がってくる新手どもを、新たに発動させたフォースの衝撃で弾き飛ばす。

魔法も使わずにただ武器を振りかざすだけの者など、今の彼の敵ではない。

燃え盛る村の一画で、アナキンの周囲だけは妙な静けさに包まれつつあった。

 

だがその胸中では、オニールの在り方こそが、あるべき姿なんじゃないか?という疑問が浮かんでは消えていった。

とてもではないが、穏やかでは居られない。

 

ジャンヌ老の臨終。

フォースの目覚め。

村を襲う危機。

そして新婚の友人の悲劇。

 

畳みかけるように襲い掛かるこれらの事態の中で、アナキンはなぜオニールが意気消沈しているのかがわからなかった。

彼がかつての世界で最も強くフォースを感じたのは、あの真っ赤な視界の中で目覚め、伴侶の死を知らされた瞬間であった。

不覚にも、そして決定的に、彼は怒りの感情に身を焼き焦がされたのを覚えている。

 

そんな自分に比して、今のオニールはどうだ。

 

彼は怒ることはおろか、一言も声を発していない。

ただただ、涙と血と鼻水でその顔をぐしゃぐしゃにして最愛の人の躯を抱きしめるばかりである。

――情けない。

――お前は先週、生涯をかけてその腕の中の人を守ると誓ったはずだ。

――それがそのザマは何だ。

――起て‼ 剣を取れ‼ 見ろ、仇はそこら中に転がっているぞ‼ ジェシカの無念を晴らせ‼

 

そう。

復讐そのものは、神聖な行為だ。

ジェダイの教えには無いが、こと個人の感情としてアナキンはそう思っている。

ただ、その衝動を抑えることの高尚さを理解し、そうあろうと努めているだけだ。

 

だが今のオニールは、ただただ悲嘆に暮れている。

情けない男だと見下す自分がいる一方で、その情けないはずの背中に一種の高潔さを見出す自分もいた。

ただひたすらに悲嘆にくれる姿は、怒りをぶつけるよりも人として正しいと感じるものがあるからなのだろうか。

 

…この感情は、一体何なのか。

 

アナキンに、その答えを出す時間はなかった。

もちろんこの間、ほんの数秒のことではあるのだが、事態は目まぐるしく変化し、動けば救えたはずの命が散っていっている。

 

「こいつに構うな、 お前らは他の家を襲撃しろ。こいつはオレが相手する。」

 

そんな中で無粋な声を上げるリーダーらしき男の煩わしさに苛立ち、アナキンは思わず左手を突き出すのだった。

 

 

―――――

 

 

名をとうの前に捨てたその男は、最低限の意思疎通のために黒蠅を名乗っていた。

一瞬にして滅ぼされた祖国での従軍の記憶も、遥か遠い彼方である。

今の彼は、しがない野盗に身をやつし、同じ様な境遇にある者達と略奪を繰り返し、刹那的な生を繋いでいた。

そんな彼等に大量の金貨が差し出されたのは、つい一ヶ月前のことだ。

 

「グッドイブニーングー。元気なお兄さん達。」

「キャハハ、こいつらきったなーい。それに臭いし。よく、こんなんで生きてられるねー。」

 

その2人組は、黒蠅の目の前に突如として現れた。

いきり立つ彼に近い仲間達も、彼等のあまりの異様ぶりに手がです、罵声をあびせかけるばかりである。

 

黒蠅はそんな彼等をいさめ、手を出さないよう手で合図を送った。

仮のアジトを構えたこの本営にいるのは、腐ってもかつて共に軍人として歩んだ経験がある者ばかりである。

軍隊経験のある少数の実力者達がまとめる、力による統制が敷かれた集団。

それが彼等が今日まで命を紡いできた、生き残りの秘訣だった。

 

「見張りの者達をどうした。」

「フフフ。意外と仲間思いなのかな?ま、それらしいのが2人くらい、このテントの前にいたね。」

 

道化師の様な格好をした男が何を思い出したのか、可笑しそうに嘲りの笑みを浮かべる。そしてこれだけの殺意に囲まれながらも悠々と横のチビと顔を向けあい、耳障りな嗤い声を上げた。

 

「キサマラぁ!」

「やめろ!全員その場を動くな!これは命令だ!」

 

黒蠅は、いきり立つ配下を諌めるのに大声を出さなければならなかった。

その脳裏では、かつての部下2人の笑顔が浮かび、そして永遠に消え去った。

 

彼等、少数の野盗幹部達は常に警戒を怠らなかった。

手がける案件の大きさに比例して増えていった手下達からの離反を常に想定し、たとえ陣中であっても交代で見張りについていた。

その仲間達が音も無く無力化され、こうして不審者を眼前に迎えている。こいつらの腕は、自分達の遥か上をいく。

 

黒蠅には、これ以上の幹部の犠牲は許容できなかった。

 

 

「して、何だ。この国の冒険者ギルドにでも討伐依頼を受けたのか?。。。とても、そうは見えんが。」

「おや?意外と冷静で、少しは考えるということができるのかな?」

 

黒づくめの道化師は、振り下ろしかけた大鎌を、取り出した時と同様に音もなくピタリと止めた。

この間合いでその刃が黒蠅達の身に及ぶとも思えなかったのだが…。

その鎌が振り下ろされればどんな事になっていか。

黒蠅は想像すらしたくなかった。

 

「でも惜しかっねー、依頼をするのはボク達だよ。」

 

周囲の目が黒の道化師に釘付けになっている間に、チビの方が何処からともなく重そうな小袋を取り出し、粗末な机の上に放った。

机の上に広げられた地図の上に落下したそれは、小気味良い音を立てる。それは彼等の耳に、福音とも呼べる快感を走らせた。

 

「ちょっと出張して、とある村を襲撃して欲しいんだ。」

「…。詳しく聞かせてくれ。」

 

黒蠅の頭から、本当の意味で見張りの2人のことが消し飛んだ。

彼等はとにかく、金に飢えているのだ。軍人の矜持を捨て去り物取りに身をやつした瞬間から、彼等には眼前の利益こそが全てだ。

たとえその持ち主が数年来の仲間を殺した外道であっても、奪い取る手段が無い以上は言うことを聞くしか無い。

そこには痛痒も何も、最早感じるものは無いのであった。

 

「どうにも解せないな。辺鄙な所にあるという点を除けば、丘の上にあった前の村の方が余程厄介だ。」

「冒険者でも逗留してるのか?その規模では、自警団すら組織されていないだろ。」

 

黒蠅達は、語られる情報をもとに、意見を述べあった。その机の上に置かれた小袋にちょくちょく視線が注がれるが、大半はその下に新たに広げられた羊皮紙に向けられている。

そこには、いま聞かされたばかりの情報が書き出され、簡易な見取り図すら描かれていた。

 

議論がひと段落するのを待って、黒道化師が口を開いた。

 

「で?ヤるの?」

「この中身が本物なら、何だってやるさ。中身を確かめて良いか?」

 

おざなりな返事が返されると共に、仲間の1人がその袋を開け、総額を瞬時に声にする。

黒蠅は幹部達がその想像を上回る内容に浮かされる中、どうしても確かめるべきことがあった。

 

「最後に教えて欲しい。この村を襲えば、これを手に入れられるんだな?」

「フフフ。臆病この上無いねえ。普通の村ごときに、もしかして怖じ気づいてるの?」

 

さすがに黒蠅も神経に触ったが、彼はそれを押して声を紡いだ。

 

「違う。万一に失敗して機嫌を損ねたら、アンタが直々にオレらを殺しに来るだろ。村の金品を奪い、若い男を殺し、女を攫う。そうすればアンタは満足なんだな?」

「ホウ。ちょっとは恐れを知っているようだね。けどやり方が温い。ボクは中途半端が大嫌いなんだ。どうせやるなら、子供も老人も皆殺しにしてよ、1人残らず、ね。奴隷にするとか、変な欲はかかないことだ。」

 

まるで酒を追加注文でもするようなその言い方に、黒蠅は震え上がった。

その言葉の残酷さにではなく、予想される未来に対してだ。

おそらくその村には、確実に厄介な…何者かが潜んでいる。

自分達は、そいつへの当て馬だ。

良くて相打ち、下手すれば自分達は全滅して、手傷を負わせられるかどうかの奴が、いるんだ。

そしてこいつは、全ての結果が出てからその場に現れて、その場の全員を皆殺しにするつもりだ、

 

わかってはいたが、こいつに目をつけられた時点で運命は決まっていたのだ。

 

「***。」

 

誰からともなく本名が呼ばれ、黒蠅は仲間たちと目配せをし合った。

その一瞬で、この場の全員が認識を共有したことが伝わる。

 

どうせ奪われる命なら。。。

 

 

「やれやれ、最後の最後で変なことを考えだしたね。しょうがない、ボクの古い友達からの伝言を伝えてあげるよ。あのセブランスが、その村にいるんだって。」

 

その言葉は、雷鳴のような効果をもたらした。

 

「あーあ、最後の最後で、また借りができてしまったよ…。」

 

―――――

 

 

 

アナキンは、耳に触ったその野盗目掛けて左手を突き出し、十数メートル先にいる相手の喉笛を締め上げた。

完全にダークサイド寄りなこの技術を彼はあまり好きではなかったが、それでもこうして感情が高ぶった際には使ってしまう。このままフォースを送り込み気道を締め続ければ、それで相手はこと切れてしまうだろう。

だが彼は、それを良しとしなかった。

 

「グハッ…、ハア…。」

 

醜い呼吸音を立て、喉元を抑えるそいつからフォースを解き放つ。

そしてアナキンは、二度は言わぬとばかりの声色で口を開いた。

 

「すぐにこの村から立ち去れ。」

 

彼には、この者たちの存在が許せなかった。その怒りに任せて彼らを引き裂き、または圧殺することは造作もない。

しかしそれ以上に、この清浄な地を泥臭い足で踏みつけられることには耐えられそうになかった。

 

「フ…ザ…けるな‼」

 

だが相手はそんなアナキンの葛藤を知らずしてか、焼け付く肺に鞭を打って彼めがけて走り出す。

――学ばないヤツだ。

アナキンはそんな感想を抱くとともに僅かに左手を掲げ、フォースで彼を吹き飛ばした。

 

弾け飛んだ体が地面に叩きつけられるよりも早く、左手にさらに力を込める。

 

その動作に応えるようにして、もはや球技スポーツの球体のように扱われる人体はアナキンの手元に引き寄せられ、再び空中で静止した。

そうしてアナキンは、その憎き男の喉元を再び締め上げると共に、更に地上高く持ち上げるのだった。

 

「クッ…、ハッ…、この…バ…ケモノ…。」

 

それは異様な光景だった。

赤く燃え上げる村の中で、一人の男が地上3メートルの中空にロープもなく持ち上げられ、首を抑えて悶えている。

その不可視の力により吹き飛ばされた者達、略奪の熱に浮かされていた者達…、この村に襲撃に来たものたちは皆一様に、異様な雰囲気を感じ取って村の一画に目を向け、息を呑んだ。

そして目に飛び込んだ悪魔的な所業に、思わず立ち尽くすのであった。

 

そんな彼らの耳に、更に雷鳴のような怒鳴り声が飛び込んできた。

 

「招かれざる者ども‼ すぐさまこの村から立ち去れ! 今、すぐにだ‼」

 

それは、果たして本当に人間の声だったのだろうか。

彼らの鼓膜に響いたその怒声は、幻聴をともなって彼らの意識を震わせた。

 

誰もがそのあまりの迫力に手にした凶器を取り落とし…、中にはそうではない者がいた。

 

「***を放せ‼ この悪魔め!」

 

怯えをありありと滲ませつつも張り上げられたその声に、アナキンは空中のその男を放り出し、地面に叩き付けた。

何も自由落下をさせてやったわけではない。

物理法則を完全に無視した速度で地面に加速させ、人体の破壊される音が響き渡るのもためらわずにその上からフォースでさらなる圧迫を加える。

 

「オルテガ、スラッシュ!呆けるな、動け‼」

 

「行け行け‼」

 

仲間意識のある盗賊たちが、なけなしの気迫をもって迫りくる。

その中には、剣を取り落としたまま素手で向かってくるものすらいる。

 

アナキンはそんな彼らの様子を見て取ると、すでに虫の息となったその男への圧迫をやめ、手元にフォースを引き寄せるのだった。

 

槍、剣、斧、ナイフ、拳。

原始的な暴力の形がそのままに彼の四方から襲いかかってくるのを、静かな瞳で睨み続けた。

死角となる背後からは、鋭い風切り音が迫る。

 

そして、両手を一閃させた。

 

その瞬間、アナキンを中心とした円心上に、衝撃波が迸った。

それは彼の怒りそのものが形となって解き放たれたかの様だった。

 

「グアアア‼」

「ッヒィィイイ‼」

 

その破壊の力をもろに受けた者達は成すすべもなく後方に吹き飛ばされ、そして死体のような有様で地面に横たわるのだった。

その身体に刻まれた傷はその衝撃の大きさに比して大したことはなかったが、彼らの顔色は押しなべて真っ青で、恐怖そのものを心の中に叩きつけられたような有様であった。

 

アナキンは最早この場に彼に立ち向かおうとする者、そしてその気概すらが無いことを確認すると、先に痛めつけ、地面に横たわった男のもとに歩み寄った。

何とか仰向けに身を御したその男は、肺に穴が開いてしまっているのだろう、息をするたびに嫌な音が漏れている。

 

「お前等は、一体何なんだ?何故、この村を襲った。」

 

アナキンは、何もそいつに更なる苦痛を与えるために近寄ったわけでは無かった。

ことこの村を襲った憎悪という感情、それを最も多く抱えているこの男に、情報を抱えたまま旅立たせることを良しとしなかったのだ。

 

「…セブ…ランス…、裏切者…。」

 

――さすがにダメージを与えすぎたか。

アナキンはそう判断し、ベルトにとりつけた小袋から薬草を取り出し、その男に放った。

助けるつもりなぞ微塵も無い仕草である。

 

「…くた…ばれ…。」

 

案の定、その男は自身の身を助けるその薬草に、手を出さなかった。

アナキンの危惧は、その瞬間をもって確信に変わった。

 

こいつらは、決して略奪だけが目的にこの村を襲ったわけでは無い。

それだけが目的ならば、ダークサイドがこれほどまでに強く共鳴することは無いのだ。

セブランス?

聞きなれない名前だが、この村の誰かのことだろう。

 

いや、それ以外にこの辺鄙な、さしたる名産品すらない村を襲う理由が無い。

そしてこの村は、たいした大きさではなく全員の姓名を覚えるのに苦労はない。

そう、ただ一人を除いては。

 

アナキンが暗い感情に包まれるとともに、場違いな声がその場に響き渡った。

 

「グッドイーブニング、不思議なボウヤ。」




話が暗く、申し訳ありません!
けれど、直接的な師もなくアナキンが原作以上の力をつけるには、
こうしたディープな経験が必要なのでは、と思うのです。

どうぞ今しばらく、お付き合い下さいませ。
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