理力の導き   作:アウトウォーズ

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どうぞよろしくお願いいたします。


緩やかな時間の終わり 中編

「グッドイーブニング、不思議なボウヤ。」

 

人の神経を逆なでするためにあるような発声器官から飛び出したその言葉は、予想以上に癇に障るものだった。

そして…、その声と共に現れた黒い道化師が引き連れているその人物を見て、彼は奥歯を噛み砕きそうになる。

 

ジャンヌ老。

 

アナキン・スカイウォーカーはその瞬間、かろうじてダークサイドに転落するのを強大な意思の力で抑えつけている状態だった。

その上でなお、冷静に声を絞り出せたことは前世の彼の激情家ぶりからすると、奇跡に近いものがあった。

 

「彼女を離せ。」

 

「フフフ、なかなかいい度胸してるね、キミ。これでも内輪じゃあ、死神として恐れられているんだよ?」

 

死神、ときたか…。

アナキンはその台詞にひっかかるものを覚え、事態をよく観察する冷静さを取り戻すことができた。

 

まずジャンヌ老だか、特に外傷がある訳でも無く、フォースに乱れも無い。こんな状況ではあり得ないほど、平常心を保っている。

 

問題はこの、小綺麗な道化師ヤロウだ。

ただ者でないのは、一目瞭然。

前世ですら、ここまでオメデタイ仮面と衣装で固めた人間は、そうそういなかった。そして漏れ出る異様な雰囲気と、隙の無さ。

近いところで挙げるならばあの、娘婿を捉えた賞金稼ぎが一番近いだろうか。フォースをもってしても何を考えているかを全く掴ませず、油断ならないクソ野郎ということだ。

 

いや、違うな。

と、アナキンは所見に訂正を加える。

思考を探れないのではない。そのものが無いのだ。

機械兵士。

アナキンは、前世の大戦でうんざりするほど叩き切った、あの華奢なフレームを思い浮かべた。全く、違う世界に来てまで同種に相対することになるとは。随分と立派になったみたいで、何よりじゃないか。

 

「で、我が師を連れて一体何の用だ。」

「フフ、それはボクではなく、このご老人に聞くべきだろうねぇ。」

 

その言葉に促されるようにして、ジャンヌ老が一歩前へ進み出た。

アナキンは、まとわり付くような嫌悪感に襲われた。どうやらこのデスマスク野郎は、暫くの間、ジャンヌ老と会話をさせるつもりらしい。

体よくこちらを利用するつもりなのが見え見えだ。

 

この臭い立つ様な厭らしさには、覚えがあった。

 

「務めは果したようだの、アナキン。」

「勿論ですよ、マスター。ところでお隣の方は、まさかとは思いますがお知り合いなんてことは。。。」

「さすがに初対面じゃよ。しかし、そこに横たわる者達とは、並々ならぬ縁がある。ワシの負った業の一つじゃ。」

 

そう語る彼女の顔には、かつてそのファーストネームを尋ね、沈黙を保ったときと同様に深い影が落ちていた。

墓場まで持っていこうと思っていた物事の清算が、臨終の場にして迫ってきたことは想像に難くない。

 

アナキンは既に虫の息となり呻き声をあげる、盗賊達を見渡した。

モチロンその視界の端に自称死神様を捉えることは忘れずに、である。

 

「この者たちが何か?どう見ても小汚い盗っ人でしょう。人違いですよ。」

「...そう言うだろうと思ったよ、アナキン。お主は優しいな。どうか、何も聞かずにこの場を立ち去ってくれんか。お主とは綺麗な形で別れを告げたい。」

 

そうか。

この時になってようやく、アナキンは気付かされた。

彼が、過去と決別する為に身近な者との死別を理想的な形で迎えようとしたのと同じく、彼女も望ましい形で別れを告げる相手を、求めていたのだ。彼女自身の負った業が故に。

 

それがどれ程に罪深いものなのかは、想像に難くない。

何せこの盗賊たちが向けている憎悪は全て。。。

 

「では、今すぐこのピエロもどきも含めて片付けますよ。加えて救援を呼んで来ますから、少し待ってもらえませんか。こいつらに同情の余地なんざありませんどんな事情があれ、こんなこと許される訳が無い。」

 

アナキンの背後では、今も尚、オニールが物言わぬジェシカを抱きしめて声なき嗚咽を漏らしている。

そう、ジャンヌとこの盗っ人どもにどんな因縁があれ、こんなことが許されて良いはずが無い。

 

「そうじゃよ、アナキン。そうじゃろうて。ワシがこやつらと向き合い、この村に逃げ込むことさえ無ければ今の惨状も、お主の怒りも無かったハズなのだ。それは、どんな事情があろうと許されることでは無い。」

「…私の知ったことではないですよ。」

 

アナキンは昂ぶる感情を抑え切れず…それが嘗ての過ちと同じ道を示していると気づきつつも、否定することができなかった。

 

「落ち延びて罪を償うことの、何が悪いのです。貴女がこの村にどれ程尽くしたかは、納税記録からして明らかだ。それを、こいつらは踏みにじった。貴女に恨みがあるとしても、周りを巻き込む道理は無い。こいつらに、同情の余地は無い。」

 

「お主は正しいよ、アナキン。その道を突き進む強さもある。じゃからこそ、この先は手出し無用に願おう。どう転ぼうとも負け犬同士の沙汰じゃ。お主が背負う必要は無い。」

 

ジャンヌ老はボソリとそう告げると、アナキンがこれ以上無く痛めつけた盗賊のもとに屈み込み、回復呪文をかけ始めた。

その結果がもたらす事態は火を見るより明らかであるのだが、ジャンヌ老はアナキンが静止を求める前に言葉を紡いだ。

 

「少し、昔の話をしようか。お主がこの村に現れるよりも、少し前のことじゃ。」

 

ジャンヌ老――その名をセブランス、ジャンヌといった――は、亡きアルキード王国にて宮廷魔術師を務めていた。

永らく王家に仕え既に一線を退いてはいたが、王女ソアラの教育係としてその忠誠を果たしていた。

そんなある日のことだった。

若く聡明な王女が出奔し、消息を絶ったのだ。

ジャンヌをはじめとして急遽捜索隊が組まれ、やっとのことで掴んだ居場所とその事実に、彼女は怒り狂った。

 

彼女は常々、ソアラに言っていた。

王族たる者の役目について。

衆愚政治を克服する先鋒として起ったアルキード王家は、無私の賢人たれ、と。事あるごとに言い聞かせていた。

その重責から身体を壊したアルキード王の背中を指差し、あれが正しい王の道だと言い切った。民草の税でもたらされる最上級の生活は、何よりもその重大な仕事を成すためにもたらされている。あの男はその責務を果たせず、あろうことか病を患った。それは反省すべきことである。

しかしそれは同時に誇るべきことであり、決して自分可愛さに責務を投げ出さなかった証左である、と説いた。

父の後に続けと、ジャンヌは自信をもってソアラの背中を押したのだ。彼女には、王として凡人だった父には無い、温かなカリスマがある、と確信していたからだ。

 

だがそれはまだ、父の庇護のもとに育てられた温いものでしか無い。

それでは足りない。

彼女自身のちからで国政と向き合い、自分の決断によってこの国に住む民全ての命運を導いてこそ、彼女はその真価を発揮する。

その時こそ彼女の持つ輝きは、周囲を照らす灯火から国全体を照らす太陽となり、民に安寧をもたらすであろう。

だからこそ、あと5年。

ジャンヌはその生涯を終えるまでに心を鬼にし、ソアラを導くと決めていた。

それが、床に伏しがちになる王を支え切れなかった、自分の王家への最後の忠誠になるだろう、と思っていたのだ。

 

 

そんな、最高の王に導きたいとすら願った彼女が、何もかもを投げ捨てて男と駆け落ちした。

その時の、全てに裏切られたドス黒い怒りを、ジャンヌは未だに忘れない。

彼女は騎士たる息子達の静止すらその身ひとつで振りほどき、ソアラ王女の頬を叩いた。あらん限りの罵詈雑言を浴びせ、仕舞いには涙すらした。

そしてその隣に立つ、男を睨みつけた。

怒り狂い正常な判断力を無くした彼女には、その男が魔物にすら見えた。

 

底知れぬ力を感じさせる彼に、どこかで本能的な恐怖を覚えていたのかもしれない。

しかし失意のドン底に突き落とされた彼女には、恐れるものが無かった。そしてこう叫んだ。

 

お前には分かるまい、若僧。その身ひとつで万難を排し、ワシには想像もつかぬ事を成し遂げていま、一角の幸せを手に入れたお前には、決してわからないだろう。

彼女は、お前だけの光では無かったのだ!

この国全てを照らす、それだけの器量を持った太陽ともなるべき存在だった!だか、それが一時とはいえ民から目を逸らし、あろうことか自分の幸せのために走ってしまった。

 

この事実の重さが、わかるか。

いや、超常の力を持つキサマに、わからぬハズが無い。お前ほどの者がその力を、自分自身のために使って良い道理は無いだろう?

ソアラとて、同じ事だ。

彼女の優しさは、決して刹那的な恋に身を焦がすために使われてはならなかった。どれだけ時間がかかろうと、常に正しく愛を育むべきだった。

だが、それすら許さぬ程にお前の存在は眩しいものだったのだろう。

ハッキリ言おう。

ソアラにとって、いやこの国にとって、オマエは悪魔だ。

 

 

そう言い残すと、ジャンヌは宮廷魔導師のマントを焼き捨て、その場を去った。

彼女にはもう、わからなくなっていたのだ。

あの男の何がソアラをそれ程までに引きつけ、ただの娘にしてしまったのか。彼女の気質は間違いなく高貴なもので、決して盲目的な恋に突き動かされる事は無いと思っていた。

だが、もう全ては終わってしまった。

私欲に走った王は、必ず同じことをする。国民か家族かの選択を迫られた時にどうするかを、ソアラは既に示してしまったのだ。そして必ず同じ決断を迫られる時が訪れる。

そんな未来を、ジャンヌは見るつもりは無かった。

ひょっとすると彼女のそうした確信を粉砕するくらいの輝きが、あの男にはあったのかもしれない。

しかし、彼女は疲れてしまったのだ。

 

 

その後、風の噂に聞いた。

その時のジャンヌの言葉をもってしてその男は人の皮を被った悪魔とされ、処刑されることになったと。

ジャンヌは甚だ嫌気がさし、人知れぬ山中に篭ることに決めた。

その時、国境沿いにまで彼女に追い縋った者たちがいた。

名を、ベルゼフ、ブラックと言った。黒蠅とかいう、とんでも無い徒名をつけられていたので記憶に残っている。

曰く、ソアラの捜索隊として同行していた兵士の1人であったらしい。

今は国境警備に回されているとのことだった。

当時の関係者を首都から遠ざける目的が、明け透けだ。

 

そんな彼の真剣な眼差しは、今でも覚えている。

貴女は正しかった、と彼は言った。あの男バランは、まさしく我々の及ばぬ所に位置する傑物であると。

初見でそれを看破してのけたジャンヌ老にだからこそ、今力を貸して欲しいと。今私達の祖国は、とてつも無い間違いを犯そうとしている。

確かに、ソアラ王女は彼のために道を誤った。

しかしそれすら寄り道と言えるほどの器が、バランにはある。彼は間違いなく逸材だ。決して失ってはなら無い人物なのだ。

だからお願いだ、どうかいま来た道を引き返し、誤ちを重ねようとするこの国に、冷静さを取り戻して欲しい。

 

その申し出を、ジャンヌ老は冷めた態度で聞いていた。

事もあろうに、宮廷魔導師のローブを焼き捨てた自分に縋ろうとする輩がいるとは思わなかったからだ。

ましてやその傑物とやらに掛けられている容疑の発端は、自分が言い放った一言である。

よりにもよってそんな自分を頼るとは、この国も遂にお終いだな、と。この時、彼女は嘗てなら、決して向けなかったであろう冷めた目を、憂国の士に向けていた。

そして自身の敗北感を思わず、口に出してしまった。

 

一端の兵隊さんじゃ無理だよ、と。

 

いま少し、心に余裕があったなら。

自分の感情的な一言を取りだたし、人様を本気で悪魔扱いする姦臣がいなければ。

その時のジャンヌ老とて、一介の兵士がここまで憂う祖国を、誇りに思うことが出来たのだろうか。そして共に踵を返し、逸れた歩みを正しに行けたのだろうか。

いやせめて、せめてまだ国として残るものがあってくれたなら。

 

「その後の経過は、お主も知るところじゃろうて。最早、ワシの祖国は無い。地図上からでは無く、本当の意味で消滅してしまったのじゃ…。ワシの家族も、王家も、誰一人として残ってはいない。あの時引き返していれば、少しは違う結果になったのかの?」

 

アナキンは、言葉を失っていた。

覚悟はしていたハズだったが、ジャンヌ老の口から語られるそれは、想像の遥か上を行った。

いや、何もジャンヌの身分が予想より高かったとか、そういう事では無い。

これ程までに正しくあろうとした女性がその一生をかけて貫き、夢破れて巡ったことの因果に、その重さに、アナキンは足元から崩れ落ちそうになっていたのだ。

――待て、待ってくれ。

貴女は何も悪く無いじゃないか。

自分の信念と相入れない相手と袂を分かつのは、当然では無いのか。相手に迎合する事の無い、いっそ高貴な行いですらある筈だ。

それが罪だと言うならば。

一体、何をもって人は高潔でいられるのか。

 

そんなアナキンの葛藤を他所に、ジャンヌ老の手元から光が消えた。

回復呪文の詠唱が終わったのだ。

 

「起きろ、曹長。」

 

ジャンヌ老のその呼びかけは、アナキンに初めて迎えたこの世界での朝を思い出させた。

だが既に瀕死の状態にあったその野盗は、瞼を開くことすら困難な有様である。

その喉が震え、何かを口に出そうとするが声にはならず、ヒューヒューとした嫌な音が漏れるのみである。

 

「起きろと言っている!ここまで来て、ワシに言うべきことすら無いのか、この阿呆が!起きてみせろ!」

 

雷鳴の様な怒声が響き渡った。

その一声には正しくフォースが込められており、ジャンヌ老がその残り僅かな生命力を絞り出して、あろう事か村を襲ったその盗賊に活力を与えていた。

そしてまさに、奇跡と言っていい現象が起きた。

 

「う…。」

 

その男、アルキード国境警備隊で小隊長を務めていたベルゼフは、最後の気力を振り絞って声をだした。

そして何たることか。その右手は握れる凶器が無いとわかるや否や、ジャンヌ老の首もとに手をかけたではないか。

 

「…裏切者…。最も肝心な時に祖国を見限った…、この、大罪人め…。」

 

「よせ!」

 

勢い良く声を飛ばしたのはアナキンでは無く、ジャンヌ老であった。枯れ枝の様な首を男の太い腕で締め上げられているのにもかかわらず、である。

その声色もさることながら、フォースもとても臨終の身とは思えないほどに膨れ上がっている。――そう、かのアナキン・スカイウォーカーが思わず身動きを封じられてしまうほどに、である。

彼は前世でも、これほどの奇跡を目の前にしたことは無かった。

 

「た、民から目を背けるなと吐いた口で、真っ先に王家を見限りやがって…。返せ!オレの、オレ達の信頼を、ある筈だった未来を…。オレ達の祖国を…返せ!」

 

「アナキン、抑えろ…。ここで…出しゃばることは禁ずる…。これでいい…、これで良いんだ…。」

 

――こんな馬鹿なことがあるか。

全く嚙み合っていない瀕死の野盗と老婆の声を耳にしながら、アナキンはそれでも動くことが出来なかった。

突如として平和な村に乗り込み、破壊と虐殺をまき散らしておいて、終いには憂国の士を気取る小物。

そんなとるに足らない存在に命の灯を消されようとしている、そしてそれを望んでいる恩師。

そして、この吐き気を催す茶番を仕掛けた最下級の下種。

 

さも可笑しそうにクスクスと嗤い声を上げているが、ことここに至っては嫌味にすら聞こえなかった。

 

「あ~。やっぱり、全てがうまくはまってくれるのは気持ちが良いねえ。いやぁ、人間の脆さは傑作だよ。」

 

そしてアナキンの目の前で今、一つの命が消えた。

高潔さを捨て、堕ち切ったその先でかつての気高さにすがろうとした惨めな男が、その生涯に幕を閉じたのだ。弱きを虐げることで命を繋いできたその後世には、相応しい死に方という他無い。

アナキンにとっては心底、どうでも良い話だ。

この、年老いた老人ひとり手掛けることの出来なかった惨めな野盗は、彼の溜飲こそ下げ、その精神になんの影響も与えなかった。

 

彼が気にしていることは、ただ一つだった。

 

「…この道化師の言うことは気にするな、アナキン…。王宮にはこの10倍は陰惨な人間が闊歩していた…。全てはワシの業が招いたことぞ。コヤツは関係ない。」

 

そう、遂にジャンヌ老はその命を終えようとしている。

さすがに限界が訪れたのだ。

 

「アナキン、最後に頼む。この、強大な力に弱き存在が意味を持たなくなる時代は、簡単に人を狂わせる。それまで信じていたものを疑い、自分を裏切り生きていくことになる。そんな人間を、一人でも多く救ってやって欲しい…。」

 

「…はい、マスター。」

 

アナキンはこれまで、目の前で繰り広げられる因果の終着点に圧倒されていた。

しかし決して、何もできなかった訳ではなかった。

そう、彼は必死に自分の心を押し殺し、周囲の流れに委ねることのみに集中していたのだ。

何故ならば。

ジャンヌ老がこの臨終の場で強大なフォースを発揮したことからもわかるように、アナキンにとっての悲劇が周囲にとってもそうなるとは限らない、ということに思い至ったからだ。

 

この事態は徹頭徹尾、ジャンヌ老とあの惨めな男との希薄な関わりが生んだものだ。お互いにとっては相手の顔すら最早、人生の暗部を象徴する記号でしかなかっただろう。破滅願望にも近い互いの魂の叫びが、道化師の誘導を通して引き合わされた結果であろう。

そしてそれは、双方にとって確かな救いとなったのだ。

 

アナキンの恩師が彼に望んだのは穏やかな別離であり、その人生のたった一つの大きな過ちへの懲罰では無かった。

それをもたらす者が、人生の最後に意図せず現れたのだ。

ならばその存在がいかに卑しく、唾棄すべきものであったとしても、アナキンに両者の邂逅を邪魔する権利は無かった。

 

アナキンは最早、私心を殺して両者の好きにさせるしかなかった。

だがそれももう、終わりを迎えようとしている。

 

「最後に、教えてください。私は…、貴女にとって救いとなれたのでしょうか。」

 

「何を下らぬことを。救いをもたらす者が救いそのものである道理はなかろう?お主に静かに見取ってもらえることが、この老婆には最高の幸せであったよ。…ではまたな、アナキン。」

 

それっきりだった。

この世界に生れ落ちてからはや4年の歳月が経ち、その間確かに毎日を共にしたジャンヌ老との別れは、格式も何もないそんな言葉で終わってしまった。

――こんな筈ではない。

そんなありきたりな悔恨すら、今のアナキンの胸中には無かった。

ただ着実に、その身を凍てつかせるような暗い感情が身を包むばかりである。

 

そうしてどれほどの時が経ったことか。

 

彼は今、まさしくその胸を切り裂かんばかりに荒れ狂う静かな冷たい怒りを、一瞬にして解き放った。

 




ああああ、なかなか前に進みません。
遅筆な上に展開もスローだとは…。

精進します。

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