…狩る.殺す.食べる.分解して吸収し.命を使い.カスを
…お前は知っている…
…人とは.国とは.世界とは.そして宇宙とは.前にしか進まない…
…すべてのものに.停滞も.逆行も無いことを知っている…
…重力を持つものすべて.生あるものすべては.死に向かって進んでいる事実を知っている…
体格から察するに十代前半に見える少女は両手で抱えた膝に頭を押し付けていた、
…この国も.他の国も.ひとつの生あるものだ.喰うか喰われるかしか無いだろ…
{違うよ…、生きる為の狩りと、国同士の戦いはまったくの別物だよ}
…違わねーよ.人が成長をするように.国も成長を望んでる.より大きく.強くなりてーんだよ…
{それなら協力すれば良いよ、手を取り合って助け合えば良いんだ}
…お互いが平等ならな…
{平等じゃないって…言うの…}
…平等なものなんか.ひとつもねーな.それはお前が一番知っている事だ…
{あたしは…、何も望まないよ…、ただ平和であればそれでいい…}
…それが不可能だと言ってるんだよ…
{………}
…どっちみちもう手遅れだ.精々
胸の内から発せられていた声は少女をあざ笑うように言い捨て、そのまま少女の中の対話が終わる。
膝を抱えうずくまっていた少女はゆっくりと顔を上げ、
迷いを振り払うように頭を左右に振って立ち上り、部屋の中央に静かに立って
『われは問う、人は
『殺して・食べて・死を待つだけの生物か?』
『国とは・世界とは…人が争い、
『八百万の神々よ
両手を顔の前で組合せきつく目を閉じた。
「姉様、天は当に告げております」
円鏡の前で祈るように問い続けていると、会わせ鏡のように
『ツクヨミ…』
「皆、戦仕度を整えて御座います」
小高い山の
双子であろう彼女達が居るのは社の裏手で正面からは見ることが出来ない、更に周囲は人目に
大事な場所なのだから造りは
「まだ
『……』
ツクヨミに視線を送った彼女は、目を
「はぁ~…、ま~たいつもの
ツクヨミは大きなため息の後に、
『…いつものって…なーにーかーなー』
ツクヨミの物言いに対し、彼女も
「い・つ・も・の・でしょう!」
『あたしがいつも何をしてるって言うのよ!』
「…て言うか~普段は良いよ! 別に~悪いことじゃないと思うからさ~、人は何の為に生まれたのとか~、生きている意味があるのか~とかね~、で~も…バッカじゃないの~」
『おねーちゃんに向かってバカとはなんだー』
「バカだからバカって言ってんの~! あのね~戦だよ~、戦争するの~!! 分かってる~」
会話が雑であり、
『………』
彼女は組み合わせていた両手をほどきしゃがみ込むと、両手で頭を抱えた。
『…分かんないんだよー、戦争ってなにー、あたしにどうしろって言うんだよー、…わっかんないんだよーー』
「あのさ~・このおね~ちゃんヤロウ! あんたがグダグダ考えてる間にさ~、ネの国はとっくに戦の準備できてるの~! もうこの社をロックオンしてんだよ~、どうすんの~」
ゆったりと聴こえる言い回しだが、ツクヨミはかなり限界に来ている、
『ツクヨミが言ってるだけじゃん、あたしにはそんなの見えない、見えないしー分からないしー知らないしー』
頭を抱えたまま左右に首を振りつつ無責任に言う彼女の言葉は、ツクヨミの感情を
ブチッ…
「あんた~・いっぺん殺そうか~、うん・そうしよう~」
ツクヨミから表情が消える、そして無表情のまま左手に持っていた杖を自信の前へと突き出した。
「…
突き出した杖を地面へと振り下ろす、杖の先端から周囲に掛けて透明な赤い幕が広がり始める。
「…
振り下ろした杖を今度は真上へと振り上げる、すると赤い幕が金色の尾を引いて上空へと舞い上がった。
『わー・やめやめー・バカツキー! なにいきなり
頭を抱えてうずくまっていた姉は、妹の呪文詠唱が本気であることに気付き飛び上がって、
『わかったー! マジでごめんー!
両手を合わせて頭を下げる。
上目使いにそーっとツクヨミの顔を覗く。
「…
高く掲げた杖はツクヨミの頭上で円を描いていた。
『ツクヨミの見た未来視が、間違えるわけ有りまっせーーん!』
大声で自らの
呪文詠唱を止めて姉を見る妹。
姉は両手を合わせたまま
「……チッ…」
『チッて言った? いまチッて言ったよねー』
舌打ちをする妹に対しての姉の抗議であるが、
「あのね~おね~ちゃん、わたしだって戦なんてしたくないよ~、出来ることなら
『さっすがツッキー、あたしも共存共生にさんせー』
「話は最後まで聞こうね~、使者も送らずにうちをロックオンしてる相手にさ~、みんなで仲良く暮らそうよ~、と~か~い・え・な・い・よね~』
ツクヨミの顔はギリギリ笑顔ではあるが、右手に持ち替えた
パンッ!
『その手があったかー、使者おくろうよー、戦なんて止めよーってさー』
両手を目の前で
「人の話は~、ちゃんと聞け~!!」
ツクヨミは振りかざしていた杖を姉の頭めがけて振り降ろした。
『うわぁぁぁ』
「どうして
ツクヨミはとても残念そうに言う、
『なに言ってんのー? 当たったら死ぬでしょー』
「どうせ当たらないですけどね~」
姉の身体能力を熟知しているツクヨミとしては避けられることは想定内のことであり、振りかざした杖が
『ねえツッキー、どうせとか言わないでさー、使者を送ってみない? なんならあたしが行こうかー』
「バカなことを言わないで!!」
ツクヨミが怒鳴る、
『…ごめん』
ツクヨミの怒りに対して小さく謝罪する、
「使者など送っても死者になって帰るだけです」
怒ってしまったことが気まずいのか、珍しくダジャレを言ったわりには表情が暗い、
『あたしはさー、ただー殺すのもー、殺されるのも嫌だなー』
場の空気を変えるべく満面の笑顔で言う姉、
「……きれいごと…」
目を細めてつぶやく妹、
『分かってるよー、でも…撃たれるかもしれないからー、先に撃つっていうのはー、ちょっとねー』
この場にそぐわない調子で、腕組みして頭を傾げる。
「おね~ちゃん…、それは…その考え方は強者だからだよ…、弱者はやられる前にやらないとって考える…」
ツクヨミは初めて悲しげな表情を見せた。
『やだなー、ツッキーの方が全然強いじゃん、魔法は超一流だしー、頭も良いしー、可愛いしー、運動神経はー…まー置いといてー、非の打ち所がないとはツッキーのことだー」
姉として妹を
「知ってる…、わたしは努力をしているから…、誰にも負けないように頑張っているから…」
『そうだよー、ツッキーは偉いんだよー、おねーちゃんの
「おね~ちゃんは何の努力もしてないのに…、双子なのに…、どうしてこんなにも差があるの~!」
『ツク…』
「ごめん…なさい…、こんなこと言うつもりじゃ…」
『ううん、ぜんぜーんだよー、ツッキーにいーっぱい背負わせてるからー、反省しないとねー』
「じゃあ~」
『それとこれとは別問題です、戦争はマジむりー、殺し合いとかー、無いですわー』
両腕を大きく交差させ×印を作り、口を尖らせながら言う。
「これだけは言うまいと思ってたのに…、あなた今日だけで~、どんだけの命を喰らってると思ってんの~、こんの大喰らいが~」
姉の弱点を攻めるツクヨミ、
『それは言わないでー』
ガックリとうな垂れる姉、
「おね~ちゃんは肉も魚も米も大好物だよね~、もしも戦争に負けたら~、もう食べられなくなっちゃうかも~」
ジワジワと外堀から攻める妹、
『ううぅぅぅ…』
お腹を抱えて
「人は食べないと死んじゃうよね~」
『あたしの食欲がー、
「価値観を
「どうして? おね~ちゃんはヒミコなんだよ、ギの国で一番
『うん…おねーちゃんはバカだけど、自分の立場くらい分かってる、でも同じなんだよーみんなあたし達と一緒でしょー、国があって・立場があって・家族があって・家がある、守りたいものがあり・奪いたいものがある、あたしだって…欲しいものくらい…』
・・・
パンッ!
『それだー!』
「………」
『あたし達は移動できるじゃないかー、
「この期に
『んなこと言ったってー嫌なものは嫌なのー』
「曾祖父じゃ無いです、もうギの国は200年この地で生きてきました」
『そうだっけー、ごめーん・忘れてたー』
ツクヨミの周囲が白い
「十代前のご先祖が~、どのような
鬼姫は顔をブルブルと左右に降りつつ、
『あ・あったり前だのクラッカーだよー、いや・です、はい』
ツクヨミの顔色を
『おねーちゃんそこまでバカじゃないしー、えへっ』
笑いながら言う鬼姫の両手には、大きな
「ヤタノカガミを構えて言っても、説得力無いんですけど~」
ツクヨミは手を
「わたし達のご先祖様だって、安住の地を求めて
『ツク…』
鬼姫は円鏡から目だけ
「この地を逃れたところで、また別の地に住む人と戦に成るだけだよね、いい加減理解しようよ」
ツクヨミは説得というよりも
「おね~ちゃんが…、いいえヒミコ様が御
『消し去る…か、でもでもツッキー、ネの国がヤタノカガミ持ってたらさー、
「まさか~、あの魔法後進国に限ってそれは無いって~」
ケラケラと笑うツクヨミに対して、ヒミコは
『なら、ネはどうやって
ツクヨミの表情が固まる、
『ウリウリー、己を知り相手を知って百戦あやうからずー、ツッキーの決まり文句じゃなかったっけー、どやっ・なんか言うてみー』
ツクヨミは両目を閉じて
・・・
「あああああ~~~!」
ツクヨミが大声で叫んだ。
「ネのヤツ~
『へ…え…?』
ここまで読んで頂いた方に心から感謝\(__)
今後の展開としては、残酷なシーンや卑猥な表現もたぶん出てきます。
それでも読んでいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします。