これは御坂美琴のクローン、レディオノイズ10030号を殺した後、帰りにコンビニに寄ったその直後のことだ。
「ッ!」
一方通行は自身に何かされていることを、観測した。しかし、観測できているのに反射できず、あまつさえ何が起こっているかも理解できなかった。
そして、なんの抵抗もできずに視界が切り替わる。
「クソがァァァァァァ!」
切り替わった視界には、信じられないものが写っていた。
まず真夜中だったというのに昼になっている。
次に、場所がありえない
人が大勢行き交う大通り。
外観はヨーロッパのような街並み。
そして地球では見られない地を走る馬位の大きさな爬虫類が跋扈している。
一見すると日本どころか、地球ですらない光景である。
そして、大声を上げた一方通行を周りの人が何事かと見ていた。
「ちょっと君、どうしたんだね?」
騎士のような恰好をしたおっさんが、一方通行に声を掛けるが、本人はそれどころではなかった。
先ほど観測した内容を解析するのに全力を出していたのだ。
結果わかったことは一つ。
(サンプルが足りねェ)
先ほどの観測情報が、既存のどんな法則とも一致しなかったのだ。
しかしその結果、一方通行の身に空間移動が起きた以上そこに法則があるはずだと一方通行は考える。
「黙ってないで答えなさい!」
無視する一方通行に対し、騎士が肩を引き寄せ――
「ぐッ!」
――ようとした手が弾かれた。
強引に引き寄せようとした手に、反射膜が反応したのだ。
「貴様ッ!」
「あァ?」
ようやく考えがまとまり、声のする方向に振り向くと、西洋風の剣を構えた騎士と相対した。
右腕を庇っているようにも見える。
(さっきの反射かァ)
事態の推移に気づいた一方通行は――
「……は?」
――姿を消したのだった。
残ったのは剣を何もいないところに向けた騎士一人。
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一方通行が行ったのは目にもとまらぬ高速移動だ。
自身に掛かる星の自転、もしくは公転エネルギーなどのバランスをベクトル操作で崩すことにより起こる高速移動。それは騎士にも捉えることができなかった。
そしてやってきたのは薄暗い路地裏。
先のやり取りからこの世界で使われている言葉が日本語であることは理解していた。しかし、だからと言って他が同じとは限らない。一切の一般常識がない一方通行は一般常識を手に入れる必要がある。
その合間に不思議な力のサンプルが増えれば万々歳といったところだ。
「よお、兄ちゃん。
少し俺らと……べふっ!」
そして満を持して現れたチンピラ三人を出合頭にぶっ飛ばし、彼らの持ち物を漁った。
「なにしてやが……へぶっ!」
大柄なデブ男はまだ立ち上がれたようで、殴りかかってきたのでもう一度吹っ飛ばす。何しろ、放っておくと反射膜でやりすぎる恐れがある。この国の警備体制を考えて、出血痕は残さないようにするつもりだった。
ちなみにこいつらが絡んできた時点で、監視カメラの可能性は考えてない。
「質問に答えろ。
そうすりゃ命までは取らねェで置いてやる」
「「「は、はい」」」
どちらがチンピラか分かったものではなかった。
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粗方聞き終えたところで、一方通行はこの路地裏に入ってくる足音を聞いた。
金髪の少女が、チラッと一方通行達を見るが、何も言うことなく脇を通り抜けていく。座り込んでるチンピラ三人とそれを見下ろす一方通行に何も思うところはなかったらしい。
しかし、一方通行側は別だった。
「あァ?」
能力を通した観測でなくとも、すぐにわかった。
どう考えても少女の動きと速度が一致していない。
つまり、異能が関わっている動きだ。
「おィ!」
「あ?
アタシは忙しいんだ、また今度な!」
その少女は動きを止めることなく壁を蹴って建物の上へと跳んでいく。
明らかに人間離れしたその動きに、一方通行は――
「却下だァ」
「嘘だろッ!?」
――宙を移動して、隣を進んでいた。
一方通行の背中には4本の旋風が発生している。
「その動き、どうなってやがンだァ?」
「……風の加護だよ。
兄ちゃんこそ何しに来たんだ?」
「解析だな」
「は?」
一方通行は少女の肩に手を置く。
「何しやがんだよっ!」
少女の抗議を無視して一方通行は解析に入る。少女の体を補佐するように身体能力の底上げ、肉体の加速など様々な効果と、その力の出所を探っていく。
(あァ?
どォーなってんだ)
力の出所が見つからない。
出力された結果から逆算するに、この少女の中で何らかの力が動いているはずなのに。
「そォか」
「……なんか知んねーけど、終わったならどいてくんね?」
一方通行は理解した。
その力、仮にαと名付けるとすると、そのαは元の世界にない物、もしくは一度も観測したことがない、全く新しいモノなのだと。
あらゆるベクトルを操る能力。このあらゆる、というのは本人の認識に大きく左右される部分だ。なにしろ自分だけの現実、パーソナルリアリティからこそ能力は作られているのだから。
よって、一方通行は自身の認識を分解する。
既存のルールを破棄。
可能と不可能を再設定。
目の前にある条件から、異世界の現実に即したルールを再構築
その結果――
「くかきけこかかきくけききこく」
「兄ちゃん頭大丈夫かっ!?」
「くきくかァァァ!」
―― 一方通行はαの認識に成功する。
「に、にいちゃん?」
「制御領域の拡大、こりゃァ今後も世話になりそォだなァ」
「兄ちゃん、アタシちょっと逃げてるからさあ、あんま大きな声出さないでくんね?」
この世界にしかない力がαだけとは限らない。
そもそも、今回認識できた力は二つ。
αとβというべきモノだ。
改めて定義すれば、この少女の中にある力がα、そしてそれを通して外部のどこかから引き出した力がβである。
(αと同種の力が、どォやらオレの中にもあるなァ)
最初からあったのか、それともこの世界にきてできたのか。
興味深くはあったがそこを棚上げして、一方通行は次の段階に進む。
一方通行にαを扱う技量などない。
しかし、それが自らの中で渦巻いている以上、能力で操作するのは容易かった。
この少女の肉体強度、αの量、そこから算出される様々な強度を鑑みて、自身でも同じことをすれば同じように力が得られるのだと一方通行は推測した。
「なァ、その力は生まれつきか?」
「あ、ああ。
そうだぞ」
それを聞いて一方通行は決心した。
少女から手を放し、実践に移る。
αのベクトルを操作し、βへと手を伸ばし――
「ッ!?」
――あまりに非現実的な力の奔流をその身で受け止めた。
「は?
に、にいちゃんッ!」
一方通行は、爆散する。
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「ちょっと君、どうしたんだね?」
「…………あァ?」
一方通行は気づくと最初に会ったはずの騎士に話しかけられていた。
場所は最初の大通り。
「顔色が悪いが、大丈夫か?」
「わけわかンねェぞ……」
一方通行は、時間が巻き戻っていることをすぐに受け入れられなかった。