Re:ゼロから始まる異世界vs一方通行   作:量々

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第四話 鬼が出るか蛇が出るか

「へ、へへへははァ」

「き、君大丈夫かね?」

 

 一方通行は壊れた。

 ラインハルトは絶対者だ。

 そして、それに挑むものはいる。

 故に一方通行の存在は、目的は矛盾を起こした。

 

(いや、そんなものはとっくに……)

 

 分かっていた。

 絶対者になっても変わらないと。

 最強であろうと、絶対者であろうと、自身の理想は訪れないと。

 

 それでも絶対者を目指し続けたのは、もうそれしかなかったからだ。

 

 縋るものが、明確に欲しかった。

 曖昧な答えはいらなかった。

 とても分かりやすく、他人が到達できないモノでなければいけなかった。

 

 しかしここには達成人が、ラインハルトがいる。

 

(なら、最後に――)

 

 だから、一方通行は決意した。

 

「――オレを壊した責任は、とってもらわなきゃなァ?」

 

 ラインハルトを永久に消滅させることを。

 

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「おィ!」

「あ?

 アタシは忙しいんだ、また今度な!」

「却下だァ」

「嘘だろッ!?」

 

 家々の屋根を跳んで行く少女に宙を浮きながら並走し、すぐに生体電気を弄って気絶させた。

 

「……ぁ?」

 

 安全面など考慮していない。

 そのまま路地裏に連れ込み、一方通行はすぐさま空気を圧縮、プラズマの塊を作り出し、フェルトをその中に投げ込んだ。一瞬にしてそのほぼすべてが蒸発する。

 

「ン?」

 

 なにかが蒸発せずに落ちてくる。

 それは徽章だった。

 

(そうィや、ラインハルトがァ……)

 

 一方通行は幾度となく聞いたラインハルトの言を思い出す。

 

=======================

 

 

「僕はラインハルト。

 先ほどエミリア様の悲鳴を聞いてね、徽章を盗んだ女の子の殺害現場を見てきたんだ」

 

 

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(なるほどォ、こりゃ好都合だなァ)

 

 その辺のチンピラを脅して金と情報を手に入れようと考えていたが、エミリア様と呼ばれる高貴そうな奴に恩を売ればそれ以上のものが手に入ると思い直す。

 

 それをポッケに仕舞い込み、風の加護を使えるように魂の偽装を完了し、すぐに高速移動で大通りに出た。神(ラインハルト)が人を殺したことを察知してくる可能性を考慮したからだ。

 

 エミリアを探すため、その辺を歩いている騎士を頼ろうとした、その時だった。

 

「誰か探しているのかな?

 僕でよければ力になるよ」

「……お前は?」

「僕はラインハルト。 

 この国で騎士をやっている」

 

 恐ろしいタイミングでラインハルトと再会した。

 

=======================

 

 一方通行はポーカフェイスに努めながら、騎士に話す予定の嘘話を話した。

 

 エミリア様と呼ばれる方から徽章が盗まれる場面を目撃し、盗人である金髪少女を追って無事徽章を取り返したはいいが、エミリア様はついて来れておらず、返そうにもエミリア様の居場所が分からないと。

 ラインハルトは終始何か納得するように聞いていた。

 恐らく何らかの心当たりがあるのだろうと一方通行は徽章を見せることとする。

 

「ンで、これがその徽章だなァ」

「ッ!!」

「あァ?」

 

 徽章を見せると同時に、ラインハルトはとても驚いてた。驚愕していた。一方通行が亜光速で動いてなお、一切の動揺を見せなかったラインハルトが、自身の肉体が爆散してなお、平然としていたラインハルトが……動揺していた。

 

「君、悪いが徽章をエミリア様に返したら、僕の家に、アストレア家まで同行してほしい。

 すまないが拒否は認められない」

「…………あァ」

「ありがとう。 

 助かるよ」

 

 何がラインハルトを刺激したのか、一方通行はわからなかった。

 一方通行は徽章に目を落とす。

 眩しく光っているその徽章を見て、何を原動力にしているのかだけ気になった。

 

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「貧民街、ねェ」

 

 現在ラインハルトの提案で、一方通行は貧民街に向かっていた。

 当然、衛士や騎士を使ってエミリアを探すのだと考えていた一方通行は困惑する。

 

「ああ。

 今、エミリア様のために衛士を動かすわけにはいかないからね」

 

 向かう途中で、ラインハルトは今回の事件と徽章についての解説を始めた。

 

 曰く、ここルグニカ王国には現在王がいない。どころか王族がすべて病死。王族すらいない。早急に王を決めなければならない。しかし、建国時より王族が担ってきた神龍との盟約の更新ができない王族を打ち立てるわけにもいかなかった。

 

 そこで龍歴石と呼ばれる未来を予言する石が、予言を提示する。

 

 内容は一つ。

 

 5人の巫女候補を集めろ、である。

 

 巫女とは神龍との盟約が更新できる素養を持った女性のことを指す。

 

 この龍歴石の提示をこの中から王を出すのだと、ルグニカ王国を動かす賢人会は解釈した。 

 

 現在その5人を集めている最中だったという話だ。

 

「そこで現れたのが最後の候補者、一方通行だ」

「おィ、その話だとオレが女ってことになりゃしねェか?」

「違うのかい?」

「あんまふざけたこと抜かすなら殺すぞォ!」

 

 そのあとに自分も死ぬだろうが、と内心一方通行は続けた。

 

「うーん、君の髪って後天的に色が抜けたんだよね?」

「あァ?

 それがどうかしたのか?」

 

 一方通行の髪は白い。

 これは紫外線常時反射の弊害で後天的に色素が抜けたのだ。

 

「ルグニカ王族は赤い瞳と金色の髪の珍しい色をしている。

 そして、14年前に一人のご息女が誘拐された。

 君は名前を知らず、年齢が16だとか。

 つまり……」

「おィおィ!

 頭パーか! てめェは! 

 年齢からして微妙にあってねェし、オレの出身はこの国ですらねェ。

 ついでに脱色前の髪色は黒だ」

「仮にそうだとしても、君が巫女であることに変わりはない。

 アストレア家で保護し、王候補として王選に参加してもらう」

 

(だめだ、コイツ聞いちゃいねェ……)

 

 しかし、都合がいいことであるのは間違いない。

 王候補という立場なら加護を超える力を知る機会も増えるだろうし、ラインハルトの実力を正確に把握することもできるだろう。

 

「まァ、同行はする。

 後の話は徽章を届けてからだなァ」

「ありがとう。

 必ず君を女王にしてみせるよ!」

「……はァ」

 

 一方通行は去勢されないか心底心配になった。

 

=======================

 

 その後、日が暮れても一方通行達は貧民街にいた。

 結局盗品蔵の正確な位置がわからなかったのだ。

 

 一方通行一人なら脅すなりなんなりして聞き出すこともできただろう。

 

 しかし、ラインハルトがそんなことするはずもなく、かといって剣を持ち、白く立派な服を着るラインハルトに、貧民街の人間が盗品蔵の位置を教えるはずもない。

 

 一方通行は今日中に見つからなければエミリアが住んでいる屋敷に届けに行くという話を聞かされていた。

 

 よってもう諦めるか、と考えたその時だ。

 

「騒がしいなァ」

「向こうだね」

 

 耳では聞こえないほど小さな音を一方通行は感じ取っていた。解析するに、戦闘中のようだ。先導するラインハルトも迷いなくそこへ向かう。ラインハルトが人外な聴力を持っているか、加護で補っているかという事だろう。

 

 ラインハルトが跳ぶ。

 

 着地地点は一つの家屋。

 そこが盗品蔵である。

 

「そこまでだッ!」

 

 ラインハルトが屋根を突き破る直前、盗品蔵の中に声が響く。

 

 

 

 盗品蔵の中では、血だらけで倒れ伏すスキンヘッドで大柄なオッサンと、血を流していないまでも打撲でボロボロ銀髪の少女、エミリアが黒髪長身の女性、エルザに追い詰められていた。

 

 無力化した者達より、そこに降ってきた人間を警戒して手を止めたのはエルザとしては当然の判断だったのだろう。

 

「さあ、舞台の幕を引くとしようか!」

 

 

 

 そこから斬り合い始めたラインハルトとエルザを、一方通行は盗品蔵の屋根から冷めた目で見ていた。

 

(手加減、してやがんのかァ?)

 

 エルザは人外じみた速度で建物内を跳び回ってはいる。何も知らない者が見れば、ラインハルトを称賛するのだろう。高速ですれ違いざまに斬りつけるエルザに対し、ラインハルトは一歩も動かず、余裕をもって迎撃し続けているのだから。

 しかし、一太刀で殺され続けてきた一方通行からすれば、本気で戦っているようには見えなかった。

 

(それよりィ……)

 

 一方通行が気になってのはエミリアのやっていることだった。エミリアはスキンヘッドのおっさん、ロムの傷に手を翳し、そこから光を発していた。

 

(回復の加護かァ?)

 

 今すぐ降り立って力の流れを知りたくなったが、ここで混乱を起こすのは得策じゃないと判断する。

 

「終わったわッ! 

 騎士様!」

 

(ン?)

 

 エミリアが叫ぶと、ラインハルトが剣を構えなおす。

 剣といっても、一方通行との闘い(?)で使われた腰にさしてあるモノではなく、盗品蔵に落ちていた、なまくらだ。腰に刺してある剣は抜くべきときしか抜けないようになっているらしい。つまり、一方通行はその剣を使うに値する相手だったということだ。

 

「何を見せてくれるの?」

「アストレア家の剣戟を」

 

 そのなまくらに、何かが集まっていく。

 空気が変わったのが一方通行にも分かった。

 正確には空気中に含まれるαがラインハルトの持つなまくらに集まっていくのだ。

 

「腸狩り、エルザ・グランヒルテ」

 

 唐突に黒髪長身の女が二本の刀剣を構えて名乗りを上げる。

 

「剣聖の家系、ラインハルト・ヴァン・アストレア」

 

 当然のようにラインハルトが名乗り返す。

 一方通行は知る由もないが、これは由緒正しい決闘の作法である。

 

 そして、光り輝くなまくらが、目を開けていられないレベルで光を放ち……今振り下ろされた。

 

 

 

 

「ハッ、ご苦労なこったァ」

 

 一方通行は消し飛んだ盗品蔵の半分と、その直線状の家屋を見て呆れた。

 あんなことをせずとも、亜光速の一撃に反応したのだから、初撃で真っ二つにできただろうに。それとも腰の剣が抜けなければ身体能力が落ちるのかと邪推する。

 

(いやァ、ないな)

 

 少なくとも、一方通行の眼には手加減しているようにしか見えなかった。しかし、何も知らない相手なら真面目に戦い、切り札を使って勝利したようにも見えるだろう。ラインハルトの気遣いか、他に理由があったのか。聞くことが増えたな、と思考しつつ、自身も盗品蔵に降り立つ。

 

「わわっ!

 ……あなたは?」

 

 竜巻を背に宙を舞い降りる一方通行に警戒の眼差しを向けた。

 

「彼はエミリア様の徽章を盗人から取り返した一方通行です。

 偶然徽章が盗まれる所を目撃し、あなたを探していたようで」

「ご、ごめんなさい!

 そうとは知らず私……」

「このタイミングで降りて来たら誰だって警戒するわなァ」

「それでも、ごめんなさい。

 それと、ありがとう。 

 その徽章はとーっても大切な物なの」

「だろォな」

「あ、聞いてるんだ。

 じゃあ話は早いわね!

 何かお礼がしたいんだけど……私にできることならなんでもするから!」

「…………んじゃァ、貸し一つな」

 

 既に当初の目的である生活基盤や情報源は手に入っている。一方通行としては万一の時にエミリア様とやらから力を借りられれば、と考えたのだが。

 エミリアはそうは受け取らなかった。

 

「え?

 でも私屋敷に缶詰だから……それに!

 私は立場上一般人にタダで助けられるわけにはいかないの!

 私のためにもぜっーたい恩を返すんだから!」

 

 一方通行はとてもめんどくさそうな顔でエミリアを見る。

 それを察したラインハルトが口を出す。

 

「エミリア様。 

 今の一方通行様にとって、エミリア様に貸しを作るのは大きな意味があるのです」

「え?」

「一方通行様は決して恩を受け取らない、と言っているのではありません。

 理由は数日もすればわかるかと」

 

 一方通行はコイツも何か勘違いしてやがる、という目でラインハルトを見ていた。

 エミリアは一方通行とラインハルトを何度か目で見ると、ため息をついた。

 

「…………よくわからないけど、それが大事なことだっていうのなら納得するわ。

 でも、ぜーったい返させなさいよッ!

 これは私のためなんだからねッ!?」

「あァ」

 

 一方通行はエミリアが恐ろしい程のお人よしに見えた。

 立場は高そうで、言葉通りの意味にも受け取れるだろうに、エミリアの態度からその心情が透けて見えたのだ。

 

「では、一方通行様。

 約束ど……ッ!

 エミリア様!」

 

 瓦礫から突如現れた黒服の女、エルザがエミリアに突っ込む。

 手に持った刀剣を、躊躇なく振り下ろし――

 

「しっかり死ンどけ、化け物がァ!」

 

 ――間に割り込んだ一方通行にぶっ飛ばされた。

 

 正確に言うなら刀剣をその体で反射し、素人丸出しのパンチで顔をぶん殴ったのだ。

 しかし、その速度はエルザをして反応を許さず、頭は確実に潰れていた。

 

「すまない、まさかあれで生きているとは」

 

 ラインハルトが見誤ったのも無理はない。

 未だエルザが生きていることを考えれば、仕方がないのだ。

 

「逃げたかァ」

 

 一方通行は先ほどぶっ飛ばした方向を見る。

 頭がつぶれているはずのエルザは、捨て台詞の一つも吐かずに撤退していた。

 

 そもそも一度目のラインハルトの攻撃で確かにエルザは致命傷を負っているのだ。

 当然、一方通行が頭を潰した時も即死しているはずである。

 

 それでも生きている、否。

 蘇っているエルザがおかしいのだ。

 

(たくッ、この世界の生物は死なねェとかいわねェよなァ?)

 

「あのひと、人間じゃなかったんだ」

「人間じゃなきゃなンだってンだァ?」

「恐らく、かなりの不死性を持った亜人。

 吸血鬼あたりだろうね」

 

 ラインハルトが答えを返す。

 

「……はァ。

 ここにまともな人間はいねェのかァ」

「あなたがそれを言うのって、なんだかすごーく理不尽だと思う」

 

 エルザの刀剣を、マナも加護も使わず皮膚で弾いた一方通行を、ハーフエルフのエミリアはジトっとした目で見つめていた。

 

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