「ふむ……では、彼らに頼むとしよう」
オスマンの発言に、何人かの教師が反対する。だが、オスマンが咳払いでそれを黙らせた。
「何、安心しろ。彼らは非常に優秀な生徒じゃ。ミス・タバサはこの若さで『シュバリエ』の称号を持つ騎士だと聞いておるしの」
その言葉に、感嘆の声が上がる。
「……本当?」
キュルケもこれは知らなかったようで、驚いた顔でタバサを見た。タバサはそんなキュルケに対してこくんと小さく頷いた。
一方、知識を持たぬバロンは理解ができない。
「……なあ、シュバリエってなんだ?」
「まあ、簡単に言えば強さを表す称号よ。シュバリエは実力者と認められた者にだけ与えられる称号だから、自身の力を示すにはもってこいなの」
「へぇ……」
バロンは感心したように頷いた。
教師陣の反応を見る限りでは、少しばかり腕が立つだけで手に入る称号ではないのだろう。あの小さな少女は少なくとも並みのメイジを凌ぐ実力を持っているということになる。
オスマンは次にキュルケを見た。
「ミス・ツェルプストーは数多くの軍人を出した名門の出だ。それに、彼女自身も相当の炎の使い手と聞く」
紹介を受けたキュルケは見せつけるように髪をかき上げる。
(あいつもそんなにすごい奴だったのか……)
少なくともフーケを相手に自分の身を護ることができる程度には強いと判断されたのだろう。まともな思考回路をしていれば、教え子を生きて帰ってこれないと判断した場所に送り付けるなんてことをするはずもない。
最後に、とオスマンがルイズを見る。
「ミス・ヴァリエールはヴァリエール公爵家で……」
と、一瞬言葉を詰まらせる。ルイズがふっと頬を膨らませたが、オスマンは慌ててバロンやリュンメイを見る。
「か、彼女は使い魔を4体同時に召喚するという偉業を成し遂げた。と、同時にその使い魔は平民でありながら、ドットとは言え素手で魔法使いを倒す手練れじゃ。彼らの知識と力はフーケ討伐にきっと役立つじゃろう」
肝心のルイズは一切褒められていないのだが、本人は満足なのか胸を張っている。
「……以上を聞いたうえで、なお彼女たちよりも自分の方が遥かに腕が立つ。自分こそフーケを打ち取るにふさわしいと思う者がいるのならば今一度名乗り出よ」
今度は誰一人反対の言葉を出すものはいなかった。最も、不満げな視線は数多く浴びせられていたが。
「決まりじゃな。我々は君たちにフーケ討伐と破壊の杖奪還を命ずる」
オスマンが改まっていう。
「「「杖にかけて!」」」
ルイズ、キュルケ、タバサの三名が同時にスカートの裾をつまみ礼をする。
「では、馬車を用意しよう。ミス・ロングビル、彼女たちを手伝ってやってくれ」
「はい。すぐに」
命じられたロングビルが頭を下げる。その刹那――彼女の背筋にとてつもない悪寒が走った。
その悪寒は彼女の見据える先――盗賊フーケの潜伏先としている彼方の森からやってくるように思えた。
(……まさかね)
ロングビルは首を振り、馬車の用意に取り掛かった。