ゼロの使い魔~スラップアップパーティー~   作:あららどろ

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4話

 ルイズ、キュルケ、タバサ、バロン、カペンシス、リュンメイ、イクシアの7人は、ミス・ロングビルが手綱を握る馬車に揺られながらフーケの隠れ家と思しき場所へと向かっていた。

 

「フーケかぁ……確か、ゴーレムを使う土の魔法使いだっけ?」

 カペンシスが腕を組んでうーんと唸った。

 

「ゴーレムかぁ。天城にいっぱいいたよね」

 ふと、イクシアが思い出したように言う。天城とは、ウェストコーストにそびえ立つ謎の巨大建造物。文字通り、天を貫き天界まで届く魔法の塔だ。アラド大陸と天界を繋ぐ唯一の道であったが1000年前、暴龍王バカルによって占拠、封鎖されたことで天界とアラド大陸の交流は無くなってしまった。

 

「あましろ、って何?」

 天城はつい最近、グランプロリスの大火災で姿隠しの魔法陣が解除されるまでその姿を隠していた。しかしながら、アラド大陸に住むものは伝承で幾度となくその名を聞くため、知らない者はほぼいない。

 だが、ハルケギニアに住むルイズらにとっては聞いたことのないものだ。

「ん、ああ。ルイズたちは知らないのか。アラド大陸にある、天まで届く巨大な建造物さ」

「アラド大陸にはそんなものがあるのですか?」

 ミス・ロングビルが信じられないと首を振った。

 

 ルイズにはバロンたちが別の次元からやってきたことを説明しているが、他の人はオスマンとコルベールを覗き皆、バロンたちはアラド大陸という遥か彼方の大陸から召喚されたとしている。

 夢物語のような異国の話に、キュルケやロングビルだけでなく、タバサまでもが興味深々だ。

 

「ああ。ミドルオーシャンっていう空の海まで続いていてな。その上には空の上の国、天界があるらしい」

「……それ、本当?」

 キュルケが半信半疑に聞く。

「本当だよ! ちなみに、天界って僕の故郷ね。僕、天界から来たんだぜ」

「ん、ああ。そう言えばお前、そうだったな」

「おいおい、忘れるなよ。このハンサムな顔とスレンダーな肉体が天界人の証さ」

 

 カペンシスが長い足を見せびらかすように伸ばした。天界人はアラド人と比べて力に劣るが、背が高く、そして高い身体能力を持つのが特徴だ。カペンシスもまた、天界人の例に漏れず高い身長と身体能力を持っている。

 

 驚いたのはルイズたちだ。彼らにしてみれば天界人とは天使や神様を表す言葉である。とくに、カペンシスを殴ったルイズは顔を青くしてぶるぶる震えている。

 

「あ、あんた天使様だったの!? ど、どうしよう! 殴っちゃった……お、お許しください……」

「そりゃ僕は天使のように可憐で美しいけど……僕ら天界人にも天使や神様って概念はあったから、やっぱり僕らは違うんじゃないかな」

「き、聞いたことないですわね。そんな話……本当ですか?」

 オスマンの秘書という立場故に本来表に出てこないような資料を読む機会があったロングビルですらもその存在は知らない。それもそのはず、次元そのものが違うのだから当然と言えば当然なのだが。

 

「空の海かぁ。空が青いのは空に海があるからっていう説が唱えられていたけど、それって本当だったのね」

 キュルケがタバサに言う。タバサは軽く頷くと、バロンたちに視線を戻した。

 

「あんたら、天城に登ったことがあるって言ってたけど、どんなのだったの?」

 ルイズが聞くとバロンがうーんと唸る。

 

「いや、確かに幻想的な城だったが……あんまりいい思い出はねえな。鎧だけの騎士やら、竜人やら……人を石の人形に変えて操るモンスターに、さっき言ったゴーレムとか。とにかく、モンスターが大量にいたぜ」

「キリさんが言うには、龍王バカルがあの城を占拠するために放った生命体たちらしいけど……たくさんいたよね。強かったし」

 イクシアがふと呟くと、またもやルイズたちが声を上げた。

 

「りゅ、龍王!? あ、あんたらも龍王と戦ったことあるわけ?」

 恐る恐るルイズが聞く。龍王。詳しくは知らないが響きからしてドラゴンの王だろう。と、するならばその強さは計り知れない。もしもその龍王と倒したというならば、その実力は伝説に出てくる勇者様そのものだ。メイジの力を見るには、その使い魔の力を見ろと言うし、もしも勇者を召喚したとなればルイズもそれ相応の評価を受けるはずだ。

 

 期待に胸を膨らませ、目をきらきらさせたルイズだったが、残念なことにバロンは首を振った。

 

「いや。バカルとは戦ってないな。そもそも、俺たちが産まれるよりずっと前に倒されたはずだし」

「ふーん、そ、そう……」

 

 少しばかりがっかりしたが、それでも彼らの言うことが事実ならばこの4人はかなり強力な幻獣や魔獣の討伐経験が豊富な戦士だ。特に、ゴーレムの討伐という実績はゴーレムを使う対フーケに置いてかなり心強い。

 

「でも、ゴーレムの討伐経験があるなんて心強いわね。フーケもゴーレムを使うんでしょ?」

 ルイズと同じ感想を抱いたのか、キュルケが口にした。しかしながら、その言い方はまだ半信半疑と言ったところだ。

 

「……それで、その天城にはどんなゴーレムがいたのですか?」

 ロングビルも同じような疑問を抱いたのだろう。やや小さな声量で聞いた。

 

「ん、ああ。まあ、色々だな。4、5メートルの石のゴーレムが一番多かったが、厄介だったのは黄金のゴーレムだな」

「黄金のゴーレム!?」

 

 またもルイズが叫ぶ。驚いたのはゴーレムを作りあげることができる量の黄金を集めたことに対してだ。

「さ、流石龍王。お金持ちなのね……」

 

「でも、まあ、納得はできたわね。ただの平民かと思ったら、魔獣退治の達人の集まりだったなんて」

 

 キュルケがリュンメイを見て言うと、リュンメイは軽く笑みを返した。

 

「それもあるけど……私が彼に勝てたのはあの手の魔法を使うメイジとの対戦経験があったのが1番の理由ね。言っちゃ悪いけど、私が戦ったことのあるメイジの中では彼が一番弱かったし」

 

「メイジと戦ったことあるって……」

「はあ。驚いた。魔物退治の達人の上にメイジ殺しなんて。思った以上に頼りになりそうね」

 

 そう言って、キュルケは正面に座るバロンに妖しい視線を送った。バロンは、その視線の意味に気付かず笑い返す。

 

 ルイズたちがバロンたちの夢のような話に様々な反応を見せる中、ロングビルただ1人が複雑な面持ちでそれを聞いていた。




アラド最大の謎は天城の読み方だと思う。
公式の配信だと「てんじょう」読み。
多くの端末で一発変換できる読みは「あまぎ」。
アニメでは「あましろ」と呼んでいました。
ちなみに僕は「てんじょう」読み。発音は天井と全く同じです。
今回はアニメに合わせて「あましろ」読みにしました。

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