ゼロの使い魔~スラップアップパーティー~   作:あららどろ

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7話

「あれか? フーケの隠れ家」

 

 しばらく森を歩いていると、森の開けた場所に一軒の廃屋が見えた。ロングビル曰く、あそこの中にフーケがいるらしい。

 木陰に身を隠しながらゆっくりと廃墟に近付く。これ以上は身を隠す障害物が無くなったというところで、イクシアがカペンシスの肩を叩いた。

 

「なに?」

「カペンシス、行きなさい」

「ええっ!? 僕ぅ!?」

 

 大声を上げたカペンシスの口を、ルイズ、キュルケ、タバサ、イクシアの4人が叩きつける勢いで抑える。

 

「「「「静かにして!」」」」

 

 哀れカペンシスは乗算された少女たちの平手をくらい、唇をたらこのように腫らしてあおむけに倒れた。ぐるぐると目を回すその顔はどこか幸せそうだ。

 

 そんなカペンシスに同情と呆れの混ざった視線を向けた後、バロンは背にした大剣をいつでも抜けるように構えた。

 

「さて、行くぞ……」

 

 それに合わせるようにリュンメイの気配が変わる。視線は目の前の小屋から微塵も動かさないが、張り詰めた神経は360度全てに注意を向けている。僅かな隙もない。たとえどんな予測不可能な場所から魔法が飛んできたとしても、この女は僅かな殺気を感じ取り、かわしてしまうだろう。

 バロンもそうだ。

 

 それに気が付いたのはそれなりに修羅場をくぐってきたロングビルとタバサだけだった。

 

 

 ロングビルの顔が僅かにゆがむ。

 

(チッ……こいつら、伊達におとぎ話の世界で生きてないね)

 

 イクシアという尖った耳の「マカイジン」は、その幼い見た目通りにまだまだ未熟なところがあるが、それでもロクな戦いを知らない学園の生徒たちと比べたら断然厄介だ。

 シュバリエの称号を持つとされるタバサも軽視できない。

 特別危険視する必要が無いのはヴァリエールとツェルプストー……ルイズとキュルケ。それにカペンシスだ。

 ルイズは言わずもがな。魔法もロクに使えないメイジなどおそるるに足らないし、キュルケだってその炎魔法そのものは強力かもしれないが、いくら魔法が強力でも使うものが戦闘慣れしていなければ宝の持ち腐れだ。いざとなれば慌ててまともに戦えないだろう。

 カペンシスはよくわからないが、石に足を引っかけて鼻血を出すわ、10分そこそこ歩いただけで弱音を吐くわでダメなところしか見えてこない。

 腰に携えた銃らしきマジックアイテムが気になるが、どれだけ優れたマジックアイテムだろうが使う者が素人では脅威にはなり得ない。

 

 短い間ではあったがあのカペンシスという男は少女に殴られただけで気絶する上に殺意がむき出しの攻撃に気が付く素振りすら見せない。素人同然だということは明白だ。

 

(とは言ったものの……厄介そうな奴が3人……これは楽じゃないかもね……判断ミスかな)

 

 ロングビルが誰にも聞こえないように愚痴を漏らす。

 それとほぼ同時に、イクシアが「小屋の偵察は任せて」と提案した。

 

「何するのよ?」

 ルイズが聞くと、イクシアは得意げに頭の小帽子を指さした。

 

「お願い、プロヘン」

『プロヘン!』

 イクシアの呼びかけに答えるように、小帽子が意識を持っているように飛び跳ねる。

 

「なにそれ!?」

 ルイズが小さく声を上げる。キュルケとタバサも物珍しそうにそれを見る。

 よく見ると小帽子が飛んでいるのではない。帽子の中に、雪だるまの頭部のような球体が隠れていたのだ。

 

「プロヘン、小屋の様子を見てきて」

『プロヘン!』

 

 水の精霊、プロヘンは元気よく返事をすると、イクシアの頭から飛び降りてぴょんぴょんボールのようにはねながら小屋へ向かっていく。

 

 その後姿を見てキュルケが感嘆の声を上げる。

 

「驚いた。今の精霊?」

「うん。プロヘンっていうの。私の友達」

 

 タバサも興味深そうにイクシアの話を伺っている。そうこうしているうちにプロヘンが小屋に到着し、窓の縁に体を乗せてそっと廃屋の中を伺う。

 

『プロヘン!』

「中、誰もいないって。でも、なんかあったみたい」

「破壊の杖?」

「それはわかんないけど……」

 

「誰もいないんだな」

「ちょっと、まだ罠があるかも……」

 それを聞くと、バロンが一気に廃屋へ近づく。ルイズの静止も聞かず、扉をぶち破る勢いで廃屋に飛び込むと、廃屋の隅々まで注意を巡らせる。

 いつどこから襲撃されても対応できるように注意しながら、テーブルの上に無造作に置かれている大人ほどの大きさのある巨大な箱を手にする。

 

「おーい、あったぞ、破壊の杖!」

 バロンの言葉を聞いて、ルイズ、キュルケ、タバサ、リュンメイ、イクシアの順で廃屋に入る。それを見ていたロングビルが作戦開始だと言わんばかりに姿を消そうとすると……

 

「二人きりですね。麗しきミス・ロングビル……」

 どこで手に入れたのか。みずみずしいバラを手にしたカペンシスが目をキラキラさせてロングビルの前に現れた。

 

「あ、すみません……私はその……周囲の警戒に……」

「どこに盗賊がいるかわからない森で貴女のような可憐な花が1人では危険ですよ。この天界の騎士たるカペンシスが護衛いたしましょう」

「あ、その、大丈夫ですので……」

「遠慮なさらずに。大丈夫。どんな危険なモンスターでもこのカペンシスにかかればちょちょいのちょいですよ」

 

 後年、フーケは語る。フーケとして行動できない以前にロングビルはこのカペンシスという男に心底殺意を抱いたと。

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