コルベールは表にこそ出さないものの、内心頭を抱えていた。
使い魔召喚の儀。自分の力と特性に見合う使い魔を召喚し、メイジとしての1つの進む道を決めると言っても過言ではない大事な儀式だ。
2年生のほぼ全員が使い魔の召喚に成功した中でただ1人、いまだ召喚に至っていない生徒がいた。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが13度目の召喚を試みる。
12度の召喚、全て小規模な爆発で終わった。最初は地面を穴だらけにするかとはやし立てていた生徒たちも今ではすっかり関心をなくし、自分たちが召喚した使い魔とコミュニケーションをとったり、自室に戻ったり。
今ではこの広場に残っている人間は、コルベールとルイズ。そして、物好きな数人の生徒だけになってしまっていた。
(さて、止めるべきか……否か)
成功する兆しはいまだに見えない。しかし、彼女に召喚をあきらめろというのはあまりに酷な話だ。使い魔の召喚は2年生に進級するために必須。召喚を諦めろというのは、即ち進級を諦めろということ。それを言うことなど、コルベールにはできそうもなかった。
彼女の頑張りは知っている。術を使えないからこそ、学は人並以上の努力をし、それ相応の成績を修めている。そんな彼女に落第の宣言をすることは、教師として心が痛む。
(彼女には日を改めて召喚を行ってもらうことに……ん?)
ふと、コルベールは上空を見た。
彼方の空に亀裂が走っていた。ここ最近、ハルケギニアのあちこちで目撃されるようになった次元の裂け目と呼ばれる現象だ。その裂け目から、何かが落ちた。
――刹那。果てしない恐怖がコルベールの全身を駆け巡った。嫌な予感どころではない。確信。地獄のような悲劇と惨劇。災厄がそれを運んでやってきたという奇妙な確信。
あの裂け目から何が落ちたのか早急に調べる必要がある。そう思った次の瞬間、ひときわ大きな爆発があたりを包んだ。大量の砂埃が舞い、全員の視界を奪う。
「何事だ!?」
嫌な予感がコルベールの脳裏をよぎる。あの恐怖が現実になるのではないか。あの恐怖の根源がこの爆発の中心にいるのではないかという思い。
だが、コルベールの予感は外れることとなった。
「こ、これが私の使い魔……?」
ルイズが呆然と呟いた。
――ルイズの召喚魔法の爆発によってできたクレーターの中心に奇妙な格好をした4人組が倒れていた。
彼らの召喚がこの国にどんな運命をもたらすのは。まだ、誰も知らない。