「遅刻ですよ、ミス・ヴァリエール」
「す、すみません……」
猛ダッシュで教室へ向かったルイズだったが、当然のごとく授業には間に合わなかった。
「やい! ゼロのルイズ! お前、使い魔が召喚できなかったもんだから、大急ぎでその辺の平民を探してきたんだろう!」
一人の男子生徒がはやし立てると、教室が笑いの渦に包まれる。ルイズは言い返そうとするそぶりは見せるモノの、ここまでの猛ダッシュが効いて言葉がでない。
(ねえ、バロン。なんか、感じ悪くない?)
(ああ。コイツ、こんな性格だから結構苦労してんじゃねえの)
バロンが肩をすくめると、リュンメイは眉をひそめて教室を見回した。
彼らの笑いは明らかに侮蔑のそれだ。クラスのムードメーカーがやらかしたそれを笑っているようには見えない。
ルイズはミセス・シュヴルーズの一言より教室は静まるまで笑いを浴びせられ続けた挙句、遅刻の罰として錬金を命じられるハメになった。
ブーイングの嵐が起こったが、ミセス・シュヴルーズはそれを無視する。
ルイズがふんずと気合いを入れて杖を取り出すと、生徒は我先にと机の中に隠れていく。
その様子を見ていたバロンに、小さな幽霊が耳打ちをした。
『ねえ、バロン。妙だと思わない?』
(何がだ?)
自称「剣の精霊」ロキシ-。バロンにつく精霊(幽霊)であり、その正体は悲鳴洞窟で使徒シロコと差し違えた英雄である。その姿と声は、バロン以外には聞くことはできない。
どうもこの異常な事態に何の疑問も抱いてないバロンを見かねて声をかけたようだ。
『この子がいくら魔法が下手だからって、あんなにブーイングが起こるのもおかしいし、机の下に潜るのも変よ』
(そうか? 俺だってイクシアに何度もえらい目にあわされたぜ)
出てきたステーキの焼きが足りないとの理由で火炎魔法を使おうとしたところ、爆炎がテーブルとカペンシスを包んだり、店内で巨大なモンスターを召喚してしまって大騒ぎ、なんてこともあった。
『ま、流れに身を任せましょ』
と、ロキシーが姿を消すと同時にルイズが杖を振った。刹那――轟音が響き、バロンの体が衝撃で吹き飛ばされた。
ルイズの引き起こした爆発は教室のありとあらゆるモノを巻き込み、破壊する。その衝撃に驚いた使い魔が暴れ出し、教室はパニック状態に成っていた。
それを収めることができるであろうシュヴルーズは爆発をモロに食らって仰向けに倒れ、意識は無い。
リュンメイは飛散した石つぶての直撃は避けたものの爆風に煽られて転倒。
イクシアはカペンシスを盾にして無傷。
カペンシスは爆発をモロに浴びてボロボロ。げほっ。と、情けない鳴き声をあげて崩れ落ちた。
そんな悲惨な教室を見渡して、ルイズは一言。
「ちょっと、失敗したみたいね」
「どこがちょっとだ!」
教室中の生徒の思いを乗せた一言を、がれきの中から飛び出したバロンが叫んだ。