ゼロの使い魔~スラップアップパーティー~   作:あららどろ

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6話

「…………これだけ?」

 カペンシスは、差し出された食事を受け取って、子犬のような目でルイズを見つめた。

 渡された食事は、固いパンとお湯のような薄いスープ。

 

 イクシアはテーブルの上に置かれた豪勢な料理を恨めしそうににらんでいる。

 

「あんたたちの所為で昼食に遅れたんだから、バツよバツ!」

 内心申し訳なく思いながらもそれを表に出さないルイズ。それでも、罰という口実ができただけマシだと少しだけ安堵していた。

 

「……まあ、しゃーねーか。メイジの貴族様は平民と同じ席で食うのを嫌うだろうしな」

「えーっ! あたしメイジだよ! あたしあっちで食べる!」

「あ~っ! ずるいぞ、イクシア、抜け駆けすんなよ!」

 

 イクシアのメイジ発言は、殆どの生徒が食事にありつこうとした平民がとっさについた嘘と思っているようで反応すら見せない。

 それでも、何人かの生徒がこちらを振り向いた。そしてその生徒たちは一様に顔色を悪くして慌てて目をそらした。

 それはイクシアの耳の形にあった。

 

 とんがった耳。それはこの世界の人間が恐れるエルフの象徴だ。

 

 ルイズも初めてイクシアを見た時はその耳の形に驚いたが、聞いてみれば「マカイジン」というエルフとは全く別の種族らしい。

 

 しかし、そのことを知っているのは自分だけ。日頃自分を馬鹿にする生徒たちを少しでも驚かせてやろうとルイズは意図的に秘密にしているのである。

 

 まだその効果を試したことはなかったが(さっきは後ろにずっといたのでキュルケも気づかなかった)、この様子なら効果は期待できそうだ。

 

 

 ルイズが一人で笑みを浮かべていると、やや離れた席で少女の怒鳴り声が響いた。続いて笑い声がドッと広がる。

 

 何事かとルイズたちがそちらに首をやる。が、ギャラリーが邪魔をして様子を伺うことができない。ルイズは席を立つと、騒ぎの輪へと向かっていった。バロンとリュンメイ、イクシアがそれに続く。

 1人残されたカペンシスは、好機とばかりにテーブルの上の貴族用の料理にかぶりついた。

 

 

 生徒達の輪の中心には、ワインを浴びた金髪の少年と跪いて必死に許しを乞うメイドが1人。

 

「本当に愚かなメイドだな! 平民に知恵なんて期待していなかったが、まさか貴族に話を合わせる機転すら持ち合わせていないとは!」

「申し訳ありません! 申し訳ありません!」

 

 ルイズは、金髪の少年――ギーシュを見て、「どうせ二股がバレてメイドに八つ当たりしてるってとこね」と心の中で呆れた。

 

「いいかい? 僕は「この瓶は僕の物ではない」と言ったんだ! その瓶を見たうえで! ならば、何か事情があるんだと察し、後でこっそりと返しにくるものだろう! それを君は愚かにもまるで僕が気づいていないのではないのかと……!!」

「すみません! すみません!!」

「おかげで2人の少女が傷ついた! どう責任を取るつもりだ!」

「すみません! すみません!」

 

 ギーシュの怒りに対し、少女はただひたすら頭を下げていた。その様子を遠巻きに見ていたバロンも、ようやく話の流れが掴めてきた。

 

 どうも、この金髪の少年が二股がばれたのをこのメイドの所為に仕立て上げているらしい。

 

「どこにでもいるもんだな。こういう奴は。なあ、リュンメイ? あれ? おい、どこいった?」

 呆れたバロンが隣にいたはずのリュンメイに同意を求めた時、思わずバロンは冷や汗を垂らした。

 

「お、おい、待て、リュンメイ! お前、落ち着け……!」

 

 バロンの静止を聞かず、リュンメイは人波をかき分けてその中心へずかずかと歩いていく。ハイパーアーマーを纏っているかのように、一切ひるまず。足音を鳴らして、ゆっくりと。

 

 さて、もしもルイズがここで右後方へ少しでも視線をやっていたのなら、彼女はこれから起こる事態をあらかじめ予測コトができたのかもしれない。

 

 だが、たとえこの場の全員がリュンメイの怒りに気付いていなかったとしても、誰も彼女を止めることはできなかっただろう。

 

 ギーシュの取り巻き達が、このメイドにどのような罰を与えるかと盛り上がり、シエスタが恐怖で言葉もまともに聞けぬようになった、その時だ。

 生徒達の輪を潜り抜けてきた1人の女性がギーシュの前に立ったかと思うと、平手がギーシュの頬を貫いた。

 

 

 スパアアアアアアアン。と、風船を割るような音が響いてギーシュの体が宙を舞う。

 数秒遅れて、ギーシュがテーブルの上に落ちた。

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