死が無き者の鎮魂曲 凍結中   作:鴉紋to零

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……受験生は辛いよ、です…………バタリ


彼の言葉

石造り特有の足音が響く

 

その足音は先程入った四人のもの

 

時よりジャリっと軸足に力を入れながら歩みを進める四人

 

唐突に、光が視界を埋め尽くした

 

太陽の光にそっくりで、それでいて何処か違いを感じるような光

 

目を細めながら彼らは箱庭へと入った

 

「………本当だ。外から見たときは箱庭の内側なんて見えなかったのに」

 

猫が鳴いた後、その鳴き声に返事をするように感嘆の声をもらした春日部

 

(猫と会話が出来るのでしょうか……?)

 

彼は内心不思議に思いながら、今は一応聞かなかったことにする

 

彼からすれば、特に驚くようなことではない

 

何人かそのような異能……この世界においては恩恵(ギフト)と呼ばれる力の所有者は幾人か見てきたからだ

 

「箱庭を覆う天幕は内側に入ると不可視になるんですよ。そもそもあの巨大な天幕は太陽の光を直接受けられない種族のために設置されていますから」

 

ジンが心なしか得意気にそう告げる

 

その告げ事に興味を持ったのは久遠だった

 

「それはなんとも気になる話ね。この都市には吸血鬼でもすんでいるのかしら」

 

まさかいるまいという内心が犇々と伝わるような声色で挑戦的にジンに告げる

 

「え、居ますけど」

 

「………。そう」

 

予想以上にあっさりと間違えた故か、気が抜けたような雰囲気で生返事を返す

 

ここでまた猫が鳴く

 

「うん、そうだね」

 

このやり取りで彼は先程の予想を確信に変えた

 

「あら、何か言った?」

 

感動していたのだろうか、先程より微量に大きい声で返事をしたために久遠に問われる春日部

 

「…………。別に」

 

冷たいという印象を受ける声で淡々と返答をする

 

そんな中、彼はというと……

 

「はい!!おねーさん美人だからこれやるよ!!」

 

「え、えっと……」

 

「いいからいいから!!もらっとけ!!」

 

何故かコロッケを貰っていた

 

始まりは至って簡単なことなのだ

 

この地、箱庭は彼からすれば未知の物が沢山ある未明の地

 

落ち着いた見た目に反して好奇心の強い彼は三人を見失わない程度に距離を取りながら出ている屋台を覗いていた

 

その時、ふと手に取った試食を美味しそうに食べたせいか、上記のようになってしまったのである

 

「そ、それじゃあ……いただきます」

 

ここで更に断るのも無粋だろうと思った彼はそのまま出来立てのコロッケを頬張った

 

肉の味が馬鈴薯ととても相まっていて美味しい

 

店先の暖簾の下で彼はとても美味しそうに食べていた

 

それ故に、か…………

 

やはり売り子のいる店は売れるのかというか………

 

彼にコロッケを渡した肉屋は大繁盛していた

 

やはり、美人の客引き効果は凄まじいようだ

 

彼は一言お礼を伝えようかと思ったが、忙しそうなので止めておいた

 

(さて、そろそろ行きましょうか…………)

 

彼はそのとき、一つのミスをしていた

 

そう、ゆっくり食べ過ぎたのだ

 

新天地で迷子になることは彼にしてみればよくあることなので平時なら気にしないのだが、今回は案内人がいる

 

早歩きで色々な店を見て回り、三人がいないか探す

 

以外にも、三人は早く見つかった

 

というもの、騒動を起こしていたから、だが

 

「お、お言葉ですがレデ「黙りなさい!」」

 

久遠の叫び声を聞き付け、早歩きだった足が更に早く動く

 

心なしか嫌な予感を胸に秘め、彼は地を駆けた

 

「私の話はまだ終わってないわ。貴方からはまだまだ聞き出さなければいけないことがあるのだもの。貴方はそこに座って私の質問に答え続けなさい!」

 

ヒステリックにも聞こえる久遠の叫び声

 

「お、お客さん!当店で揉め事は控えてくださ」

 

そんなやり取りを制止するがために猫族の店員さんが間に入ろうとした時だった

 

「えっと、騒いでるようですが、何か問題でも起きたのですか?」

 

テラスに入るために備え付けの小さな階段を登りながら彼はそう告げた

 

これを好機と見たのか、久遠は更に続ける

 

「ちょうどいいわ。猫の店員さんと琥珀さんも第三者として聞いて欲しいの。多分、面白いことが聞けるはずよ」

 

自信有りげな顔で久遠は話始める

 

「貴方はこの地域のコミュニティに″両者合意″で勝負を挑み、そして、勝利したと言っていたわ。

だけど、私が聞いたギフトゲームの内容は少し違うの。

コミュニティのゲームとは″主催者″とそれに挑戦する者が様々チップをかけて行う物のはず。

……ねえ、ジン君。コミュニティその物をチップにゲームに参加することはそうそうあることなの?」

 

多分、これは確認であろう。己の理解とこの世界(箱庭)の常識との擦り合わせ

 

「や、やむを得ない場合なら希に。

しかし、これはコミュニティの存続を賭けたかなりのレアケースです」

 

そして無論、擦り合わせということはその解答が間違えっている訳もなく

 

一方は頷き、もう一方は同意の言葉で返す

 

「そうよね。訪れたばかりの私達でさえそれくらいわかるもの。

そのコミュニティ同士の戦いに強制力を持つからこそ″主催者権限″を持つ者は魔王として恐れられているはず。

その特権を持たない貴方がどうして強制的にコミュニティを賭けあうような大勝負を続けられるのかしら。()()()()()()()()

 

口調は決してキツいものではない

 

命令しているわけでもなく、拷問しているわけでもない

 

だが、いや、それ故に嫌々ながらも言葉を紡ぐガルドの姿は異常だった

 

「強制させる方法は様々だ。一番簡単なのは、相手のコミュニティの女子供をさらって脅迫すること。これに同時ない場合は後回しにして、徐々に他のコミュニティを取り込んだあと、ゲームに乗らざるを得ない状況に圧迫していった」

 

額には青筋を浮かべ、意思としては口を必死につぐもうとしているのにガルドの口からはすらすらと言葉が流れ出た

 

「まあ、そんなところでしょう。

貴方のような小者らしい堅実な手です。

けどそんな違法で吸収した組織が貴方の下で従順に働いてくれるのかしら?」

 

夢にも思わないけどと確信しているような様子で、実際には確信している内容を告げる

 

「各コミュニティから、数人ずつ子供を人質に取ってある」

 

その時、久遠の眉がピクリと跳ねる

 

同時に、周囲から浴びせる嫌悪感も強くなった

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

「……そう。ますます外道ね。それで、その子供達は何処に幽閉されているの?」

 

「もう殺した」

 

その場の空気が凍る

 

動いているのは機械的に情報を吐き出しているガルドと……

 

「……ここから先はあまり気持ちの良いものではないですよ?」

 

瞬時にガルドの隣に移動して、ガルドの口を優しく、そして半ば強制的に閉じさせている彼だけだった

 

「…………でも、聞くわ。口を開けさせて、琥珀さん」

 

思考すること、数秒

 

久遠の決断は早かった

 

だが、彼は心情を見抜いていた

 

(………使命感から来るもの、ですかね)

 

そう、これは只の使命感

 

この様子だと覚悟は出来ていないだろう

 

覚悟が出来ていないと言うことは多分、耐えられまい

 

この刹那の内に覚悟が出来るものの方が少ないのは分かっているが、久遠もその例に漏れなかったようだ

 

「分かりました。ですが、手荒な真似だけはしないでくださいよ?」

 

そう言うと、彼は手を退けた

 

そして続くのは悪魔の戯れ事

 

「初めてガキ共を連れてきた日、泣き声が頭にきて思わず殺した。それ以降は自重しようと思ったが、父が恋しい母が愛しいと泣くのでやっぱりイライラして殺した。それ以降は連れてきたガキは全部まとめてその日のうちに始末することにした。けど、身内のコミュニティの人間を殺せば組織に亀裂が入る。始末したガキの遺体は証拠が残らないように腹心の部下が食」

 

「黙れ!!」

 

彼の予想通り、久遠は全てを聞ききることが出来なかった

 

彼は軽く溜めていた息を吐いた

 

「素晴らしいわ。ここまで絵にかいたような外道とはそうそうであえなくてよ。流石は人外魔境の箱庭の世界といったところかしら………ねえジン君?」

 

芝居がかった動作でジンに確認を取る久遠

 

その芝居の中で、久遠はアイコンタクトで彼に謝罪する

 

「彼のような悪党は箱庭でもそうそういません」

 

寧ろ、そんなにいれば録な事にならないと言わんばかりの様だった

 

「そう?それはそれで残念。ーーーーーところで、今の証言で箱庭の法がこの外道を裁くことは出来るかしら?」

 

内心の憤慨を隠すように、そして同時に、この未知を楽しんでいるような顔でジンに話しかける

 

「厳しいです。吸収したコミュニティから人質をとったり、身内の仲間を殺すのは勿論違法ですが………裁かれるまでに彼が箱庭の外に逃げ出してしまえば、それまでです」

 

多分、ジンは半ば諦めているのだろう

 

前例を知っているが故に、抜け道を知っているが故に、不可能だと断ずる

 

「そう。なら仕方ないわ」

 

辺りに響くフィンガースナップ

 

お姫様の魔法が解けるように、ガルドの拘束が外される

 

「こ………この小娘がァァァァァァ!!」

 

怒りと共に本性を顕にするガルド

 

口が裂け、服は弾け、毛並みが変わる

 

人によく似た顔付きから、獣とも悪魔とも呼べる獣面へ変化していく

 

「テメェ、どういうつもりかしらねぇが……俺の上に誰がいるか話かってんだろうなぁ!?第六六六外門を守る魔王が俺の後見人だぞ!!俺に喧嘩を売るってことはその魔王にも喧嘩を売るってことだ!その意味が__」

 

()()()()()。私の話はまだ__」

 

「いいえ、ここで終わりです」

 

場の空気を凍り付かせる、琥珀の一声

 

彼の行った動作は普通に一声告げただけ、しかし、彼特有の威厳が、この場を静寂に包んだ

 

「私は途中からしか聞いていないので多くは言えませんが、とりあえず……」

 

そこで一拍、間が置かれる

 

「ガルドさん、怒りを直ぐに暴力へと変換してはなりません。屈辱的なのは分かります、しかし、その様に暴力で訴え続けるといつか破局します。なので、控えなさい」

 

ガルドの目を見て、彼の性質が悪だろうと善だろうと関係なく告げる

 

悔い改めるべき事を、己の行いの軽率さを

 

そして……

 

「次に久遠さん。貴女は己をもっと大切にしなさい。今の行いは運が悪ければ死んでしまっていたところですよ」

 

ガルドと同じように目を見て、そう告げる

 

「でも、琥珀。ガルドは……」

 

少し機嫌が悪そうな態度で春日部は琥珀に意見する

 

「外道なのでしょう?分かっています。ですが、それ故に塵屑の如く滅べと?悪は正義の御旗のもとで粛清されろと?私はそうは思いません」

 

目を閉じて、一つ、深呼吸する

 

「正義は正義の御旗の元でならば、どんな所業でも赦される。というわけではないでしょう?それと同様です。悪だからと言って、決して生き物(兄弟)であることを忘れてはなりません。何をしても許されるなど、有り得ないのですから」

 

彼はそう締め括ると、静かに席についた

 

「ガルドさん。厚かましい事ではありますが、参考までに自首を進めておきます。少しでも、貴方の罪が軽くなるように、ね」

 

顔を綻ばせながら、彼はそう告げた

 

彼の言葉を聞いたガルドは、小さく頷くと静かに席を立ち、去っていった

 

己の行いの重さを知ったガルドの背に言葉をかけるものはいなかった

 

はてさて、彼はというと……

 

「えっと……とりあえず…………私が来るまでの事の顛末を教えてくれませんか?」

 

少しばかり、天然だった




ぬがぁぁ……宿題がァ、テストがァ、数学がァ……何故私を襲うのだァァ…………

琥珀「まあ、鴉紋は時間と反比例して成績が落ちる人ですからね…………」

ぬぐぅぁ……!!

はい。今回も遅れた理由は勉強です

受験生は忙しいのです。特に出来ない人の場合は、ね…………

次も遅いかも……というか、確実に遅くなるのですが、お気に入り登録や、評価など、宜しくお願いします!!
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