死が無き者の鎮魂曲 凍結中   作:鴉紋to零

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ぶ、文章量多すぎ…………

てなわけで、上下にしました、はい

来週には下を出せるといいなぁ、といった感じです


サウザンドアイズにて《上》

「今一度名乗り直し、問おうかの。

私は″白き夜の魔王″ーー太陽と白夜の星霊・白夜叉。

おんしらが望むのは、試練への″挑戦″か?それとも対等な″決闘″か?それか、終わり無き"闘争"か?」

 

絶対なる王者の覇気が四人を圧する

 

「水平に廻る太陽と………そうか、白夜に夜叉。あの水平に廻る太陽やこの土地は、オマエを表現してるってことか」

 

驚愕と納得が織り混ざった複雑な表情を浮かべる逆廻

 

「如何にも。この白夜の湖畔と雪原。永遠に世界を薄明に照らす太陽こそ、私が持つゲーム盤の一つだ」

 

白夜叉が指揮棒を振るうように両の手を広げた

 

刹那、地平線の彼方にかる雲海が裂け、旧約聖書の一説が再現される

 

「これだけ莫大な土地が只のゲーム盤……!?」

 

亀毛兎角。というのだろうか、この光景を一言でいうなら、その言葉に尽きた

 

「如何にも。して、おんしらの返答は?"挑戦"であるならば、手慰み程度に遊んでやる。__だがしかし"決闘"を望むならば話は別。魔王として、命と誇りの限り闘おうではないか。"闘争"ならば__言うまでもないかのう」

 

「…………っ」

 

勝てない。勝てるわけがない

 

人として、恐怖のある者として、目前の相手の実力を肌で犇々と感じた

 

それでも、己が矜持を曲げるのは、些か気に入らなかった

 

故に……

 

「参った。やられたよ。降参だ、白夜叉」

 

「ふむ?それは決闘ではなく、試練を受けるという事かの?」

 

「ああ。これだけのゲーム盤を用意できるんだからな。アンタには資格がある。__いいぜ。今回は黙って試されてやるよ、魔王様」

 

()()()()()()

 

彼らが彼らなりの矜持を貫いた結果がこの言葉だった

 

上の者から見てみれば、大変面白いもので、哄笑をあげながら白夜叉は告げる

 

「く、くく…………して、他の童達のも同じか?」

 

「…………ええ。私も、試されてあげてもいいわ」

 

「右に同じ」

 

不満一杯。狩猟目前で獲物に逃げられたような顔で、二人はそう返答する

 

だが、一人だけは……

 

「私は、どちらでも」

 

返答が違った

 

「どちらでも、とな」

 

「はい」

 

そこで彼は言葉を区切る

 

「貴女が望むのなら、挑戦でも、決闘でも、闘争でも、応じましょう。私としては、どれでも構いません」

 

臆することなど元より何もないのだ

 

彼の体は死がない

 

彼の魂はここ(肉体)以外に行き場がない

 

死ぬという事柄そのものから外れた人畜無害な外道

 

それが彼だった

 

覇気がどうした、王威がどうした

 

所詮、そんなものは知れているのだと、一騎当千の彼は本能的に分かっていた

 

「ふふふ…………まあ、私の答えは後程にしておくとするかのう」

 

減少する覇気を前に、息を詰まらせていた黒ウサギが深呼吸をする

 

「も、もう!お互いもう少し相手を選んでください!階級支配者(フロアマスター)に喧嘩を売る新人と、新人の喧嘩を買う階級支配者(フロアマスター)なんて冗談にしても寒すぎます!それに白夜叉様が魔王だったのはもう何千年も前の話じゃないですか!」

 

半ギレで叫ぶように告げる黒ウサギ

 

それを聞いた逆廻は訝しんだ声色で問う

 

「何?それじゃあ元・魔王ってことか?」

 

「はてさて、どうだったかな?」

 

ケラケラと笑いながら告げられた面白くない返答を前に、彼を除いた四人は肩を落とした

 

突然、聴いたこともない咆哮が聞こえた

 

「何、今の鳴き声。初めて聞いた」

 

動物だった故か、春日部が最も強い興味を示していた

 

「ふむ……あやつか。おんしらを試すには打ってつけかもしれんの」

 

白夜叉が手招きをすると、その咆哮をあげた獣が此方に空を駆けぬけてやって来た

 

鷲の上半身を持ち、下半身は獅子という幻の獣

 

「グリフォン……嘘、本物!?」

 

予想外の事象を前に、驚きが素直に顔に出ている春日部

 

「フフン。如何にも、あやつこそ鳥の王にして獣の王。"力" "知恵" "勇気"の全てを備えた、ギフトゲームを代表する獣だ」

 

グリフォンは手招きをした主のもとへ向かうと、一礼にて礼を告げる

 

「さて、肝心の試練だがの。おんしら四人とこのグリフォンで"力" "知恵" "勇気"の何れかを比べ合い、背に跨がって湖畔を舞うことが出来ればクリア、という事にしようかの」

 

虚空より現れた羊皮紙にゲームの詳細を綴っていく白夜叉

 

『ギフトゲーム〝鷲獅子の手綱〟

 

・プレイヤー一覧

 ・逆廻十六夜

 ・久遠飛鳥

 ・春日部耀

 ・月盛琥珀

 

・クリア条件

 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う

 

・クリア条件

 〝力〟〝知恵〟〝勇気〟の何れかでグリフォンに認められる

 

・敗北条件

 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します

                            〝サウザンドアイズ〟印』

 

タイムラグなしで挙手、その動作は一切の迷いがなかった

 

「私がやる」

 

その瞳の奥に写る闘志と羨望が、彼女のやる気が満ち満ちている証だった

 

「大丈夫、問題ない」

 

三毛猫相手に、そう告げる春日部

 

「ふむ。自信があるようだが、コレは結構な難物だぞ?失敗すれば大怪我で済まんが」

 

「大丈夫。問題ない」

 

失敗など、万に一つすらありえない。歩みを進める彼女の背中はそう語っているように思えた

 

「OK、先手は譲ってやる。失敗すんなよ」

 

「気をつけてね、春日部さん」

 

「頑張ってくださいね、春日部さん」

 

「うん、頑張る」

 

皆皆から送られるエールを受けて、彼女はグリフォンに駆け寄った

 

遠方故にあまり声は聞こえなかったが、一つ大切なフレーズは聞こえた

 

「命を賭けます」

 

真っ直ぐにグリフォンの目を見て放たれた一言

 

「だ、駄目です!」

 

「春日部さん!?本気なの!?」

 

反論の声も多々あるが、それでも、彼女は止めはしない

 

「貴方は誇りを賭ける、私は命を賭ける。もし転落して生きていても私は貴方の晩御飯になります……それじゃ駄目かな?」

 

己の憧憬相手が目の前にあるというのに、何故引く必要があるのかと、言わんばかりだった

 

「双方。下がらんか。これはあの娘から切り出した試練だぞ」

 

「ああ。無粋な事はやめとけ」

 

「そんな問題ではございません!!同士にこんな分の悪いゲームをさせるわけには___」

 

「大丈夫だよ」

 

慌てふためく黒ウサギに、春日部は勝ち気な瞳で語りかける

 

気負いもなく、曇りもない、その瞳を

 

「春日部さん、勝ってきてくださいね」

 

一言だけ、そう告げた琥珀

 

誰よりも安心させてくれる言葉を聞いた春日部は

 

「うん」

 

心なしか笑いながら、グリフォンの背を撫でた

 

頭を下げたグリフォンに跨がって、手綱を握る

 

鷲獅子は翼を三度羽ばたかせたのち、ゲームが、始まった

 

雄雄と空を駆ける鷲獅子の姿に、一同見とれながらも彼女の勝利を願った

 

半分ほど回り、少しばかり苦戦していたようだが、それでも、此方に戻ってきた

 

と思った瞬間だった

 

「春日部さん!?」

 

ゴールインと同時に手綱から手が離れ、落下する春日部の姿を見た久藤が悲鳴にも似た叫び声をあげる

 

「は、離し―――」

 

まさかの展開ゆえに駆け寄ろうとした黒ウサギを止める逆廻

 

「待て!まだ終ってない!」

 

黒ウサギを引き止めながら、逆廻は琥珀のいる方を向く

 

見事な観察眼だ、だが、些か順番が悪かった

 

逆廻の視線の先には、既に琥珀はいなかった

 

音もなく、気配もなく数十メートルを一瞬で移動した彼に逆廻の背に戦慄が走った

 

琥珀は既に春日部の落下点に到着しているのだ、それでいて、受け止める体勢が整っている

 

だが、結論から言うと彼の行動は不要だったようだ

 

「なっ…………」

 

彼を除くその場にいた全員が、春日部の取った行動に驚きを隠せなかった

 

ふわり、ふわりと、階段を一段ずつ降りるように春日部は空を歩いてきた

 

その姿は、先程見た鷲獅子の疾走と酷似していた

 

「やっぱりな、お前のギフトって、他の生き物の特性を手に入れる類だったんだな」

 

春日部の着地の足音に、意識が現実に帰ってきた逆廻が軽薄そうな笑みを浮かべて問う

 

「……違う、これは友達になった証。けど、いつから知ってたの?」

 

小首を傾げて問い返す春日部

 

「ただの推測。お前、黒ウサギと出会ったときに"風上に立たれたら分かる"とか言ってたろ。

そんな芸当はただの人間には出来ない。

だから春日部のギフトは他種とコミュニケーションをとるわけじゃなく、他種のギフトを何らかの形で手に入れたんじゃないか…………と推察したんだが、それだけじゃなさそうだな。

あの速度で耐えられる生物は地球上に存在しないだろうし?」

 

逆廻の新しい玩具を見付けたかのような視線にそっぽを向く春日部

 

「お疲れさまでした、春日部さん」

 

音もなく、気配だけを感じさせながら彼は己の羽織を着せ、労いの言葉をかける

 

「ありがと、琥珀」

 

春日部は顔を少しだけ綻ばせながら、琥珀に礼を告げた

 

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