猫いっぱいにゃふにゃふ話。
性描写なし。
ボク、オトモアイルーのリンだニャ。
旦那さんのセンセイの武器、狐鎚ツキヲイザナイのレベルアップの為、ボクらの旦那さんは今日も狩りに出掛けているのニャ。
「今日は渓流にジンオウガが出て、足湯の番台ニャンが困ってたから丁度良かったニャア」
「何かナルガクルガも行くとか言ってたから、また帰りが遅いのニャ」
「モンニャン隊も帰ってくるのにニャー、暇だニャ」
井戸端会議をしているのは、旦那さん達二人のオトモアイルーニャ。
ずっと旦那さんと一緒にいるボク、アイルー柄の青い眼のリン。
珍しい淡い緑色のシマシマ柄、のんびり屋の回復担当ハクサイ。
旦那さんのセンセイのオトモ、ファイトの黒メラのネルとアシスト上手な真っ白シルビア。
ボクらは留守番仲間として、集会所で旦那さん達を介して知り合い仲良くなったニャ。
旦那さんの家でずっとキッチンアイルーとして働いていたボクは若干先輩なので、ベルナ村に越してきてから色々と皆に教えてあげているのニャ。
「うちの旦那さん、とことん大型モンスターの依頼が無かったから、イャンクックとか鳥竜達しか狩ってなくて…シアさんには苦労かけるニャア…」
「いーのニャ、うちの旦那さんはノンストップで駆け上がり過ぎたのニャ。村の皆の依頼も受けないと、この先大変ニャし」
シルビアが独特の間延びした口調で謝り、ハクサイがびしっと旦那さんをこき下ろす。最近定番のやり取りニャ。
「しかし、大型モンスター狩りになってからオトモさせてくれニャいニャー。最近やっと作ってもらった武器がサビちゃうニャ」
どんぐりメイルのネルが言えば、ウルクステッキとウルク装備のフード耳を振り振りシルビアも溜息をつく。
「『頭の向きがブレる』って一言で却下されたしニャア…」
「そうニャ! 普段2匹連れて行く癖に『不確定要素はシアだけで充分』とか言っちゃってニャー!」
2匹がヒートアップしてきたのに、旦那さんとお揃いの白疾風装備のハクサイが少し考えて、ニヤリと悪そうな顔をしたニャ。
「よし、ニャンターするのニャ!」
ー
ーー
ーーー
渓流、夜。
満天の月の下、雷狼竜ジンオウガが断末魔の雄叫びを上げた。
「お前さんの頭は高えんだよッ!」
ちょっと試しに使ってみたエリアルスタイルで、ベルダーハンマー(レベル5まで強化済みの相棒)でぱっかぱっかスタンプしたり頭を殴って乗って、シアの麻痺属性片手剣 デスパライズが2回仕事しそうなくらいで足を引き摺るジンオウガ。
うーむ、やはり狩猟経験のあるモンスターは安定して立ち回れるな。ベルダー装備まだまだ現役。
「捕獲?」
「いや、これなら討伐だな、すぐ倒れるだろ」
エリチェン際に追い縋ろうとするシアにそう返すと、一呼吸ついて回復薬を飲む。
「もう一回麻痺くりゃ仕留めたんだがなぁ」
「むー! 下位クエストの個体に何言うの、大体そこまでやれたら相棒の火力の問題だよー?」
「あぁん?」
「そこまで腕が落ちてる訳ない、と私は信じてるんですけど」
悪戯っぽく口の端が上がった笑みを浮かべ、小娘が抜かしてくれた。
「まあ間違いではない」
シアが取り出した砥石を照れ隠しに奪い取って使うと、わーちょっと! ばかぁ!とすぐに余裕の笑みが崩れる。カンタン。
さて、タイミング悪くペイントが切れてしまい、怒りも解け弱ったジンオウガの気配は薄くなる。弱ったら巣に帰るはずだが…
ひとまず巣を目指し、シアを伴いエリアを移動する。
「ウルにぃ、次の防具何作る?」
「あー、あんまモンスター素材はねぇな」
こんな事を、昔やりとりした気がする。おれが言い出す方だったけどな。
重い防具は嫌いと抜かすシアにゲンコツくれて、腕が伴うまで樹海のナルガクルガに放り出した事もあったなー。
本当に、昔の話だ。
……ちっとばかし、真面目にやるかな。
エリアを変え、渓流らしい水の流れるエリアに足を踏み入れる。
この先が飛竜の巣ではあるが…
遅れて着いてきたシアが辺りを見回し、元きた道と近い獣道の前まで歩いて行く。
ぼう、と輝く何かが光りながら現れる。
おれはシアの名前を叫びながら飛び出していた。
「きゃあっ…!」
「ぐっ、」
一体何処に潜んでいたやら、ジンオウガが丁度エリアに飛び込んできた。やはりあれは、纏った雷球だったか。
突き飛ばしたつもりが庇い切れず、シアの砕いた爪が目立つジンオウガの腕が彼女の肩を打つ。
おれもベルダー装備の肩布が弾け飛び、そこそこ丈夫な筈の頭の巻布が千切れ解けてしまった。咄嗟にかなぐり捨てたそれはジンオウガの視界を塞いだようで、おれ達が体勢を立て直すには十分時間を稼いでくれた。
ベルダーターバンだった布を振り落とし、ジンオウガが怒り状態に移行して幾度目かの咆哮を上げる。
「その吠え、もう一度…断末魔にしてやらぁあああ!」
溜めたベルダーハンマーのアッパーが、まともにジンオウガの頭に命中。
泡を食った形で、頭に血が上ったのか即座に頭突きをかまされる。攻撃自体は避けたものの、伸びっぱなしで括っただけのおれの髪が解けて散った。
すかさず叩きつけ、叩きつけ。その間も雷球が舞い、肩まであった髪が束で焼き切られる感触がするが、構わず殴り続けた。
漸く、パリパリと周囲を浮いていた電気も静かになり、ジンオウガ自体も倒れ伏した。
……ったく、手間かけさせんじゃねーよ。
「大丈夫か?」
「ウルにぃこそ…装備、ボロボロだよ…!」
へたり込んでいたシアは確かに、強く打った衝撃こそあったものの、怪我としては打ち身だけのようで。白疾風の二つ名を冠するナルガクルガの防具だけある、というところか…
庇わなくてよか…いや、んな事はねーけども。
「にぃ…」
ああ?と返事をする前に、やっぱりシアが抱き着いてきた。ちょっと肩がいてえ。
「髪、切れちゃった…」
「散切り頭だなー、まあ邪魔だったし良いさ」
毛先とかは整えなきゃダメだろうけどな、まあ。
しかしまあ、久々に涼しいねえ。
首元に刃を当てられているような、薄氷の上を歩くような。
命のやり取りをしている事を、思い出した。
おれ達はーー狩人だ。
ー
ーー
ーーー
「ニャハー! ジンオウガだニャ!」
「死んでるニャア…もしかして、あの受付嬢さんクエスト間違ったニャア?」
「ムーファのぬいぐるみ!とか言いながら大興奮だったニャ、有り得なくはないニャ」
ボクらは渓流のアオアシラを懲らしめて、ついでにハチミツなんかも頂いてこようと4匹でロイヤルハニーの納品クエストを受注したんニャが、、、
パニックになるネル、考えこむシルビア、溜息をつきながら剥ぎ取りをするちゃっかり者ハクサイ。
ぶんどりスキルは剥ぎ取りにも使えるのニャね…でもきっとルール違反ニャ、ハクサイ。
「どうするのニャア? リタイアするのも何か腑に落ちないニャア」
「ニャー…まあ、アオアシラの討伐クエストではニャいし、このままロイヤルハニーを納品しちゃうニャ」
報告はその時ニャ…と続けてエリアを出ると、人影が見えたニャ。
旦那さんとロアルドロスのたてがみをぼっこぼこにする時よく訪れるエリア7の湖面に一人が座り、一人がその後ろに膝立ちにって…ハニャ?
「旦那さんとセンセイニャ」
ハクサイが息を潜めて呟き、またもパニックを起こしかけるネルをシルビアが押しとどめる。危なかったのニャ。
「何もこんなトコでやらんでも…」
「焦げた髪してるせんせーは持った覚えありませんから!」
あのジンオウガはきっと二人が狩ったヤツなんだニャ…やっぱりボクらのクエストは受付嬢さんのミスってやつかニャ。
しかし、何をしてるんニャろ?
「首まで剥ぎ取らないでくれますか…」
「人聞きの悪い事言わないでくれる!?」
「狩りより怖えよ…」
「ウルにぃ…もう、焦げた髪のかっこ悪いの、嫌って言ってるでしょ……」
剥ぎ取りニャイフかニャ、小さい刃物で旦那さんが、旦那さんのセンセイの髪を削ぐように切っていたのニャ。
二人の会話を盗み聞きするに、ジンオウガに焦がされたらしいニャ。
「あの二人は、番いにならニャイのかニャー…」
ぽつりと零すネル。まあ、最近の旦那さんを見てればそう言いたくもなるだろうニャ…
「うちの旦那さん、お父さんがハンターだったのニャ」
ボクはちょっとだけ、ボクと旦那さん…シアちゃんの秘密を独り言で呟く事にしたニャ。
ーーお伽話じゃ、よくある話。
狩りで名を馳せた父を持って、貴族に重用されて、何不自由なく暮らしていた娘が、顔も見た事のない婚約者と結婚させられそうになって。
返事を先延ばしにしたら、父に古龍討伐の依頼が舞い込んで。
撃退こそしたものの、凍傷で手当が遅れ、脚を無くした父は引退を余儀なくされ…間を置かずして病に伏せて、すぐに亡くなってしまった。
「女の子が12の歳の話ニャ」
丁度、好奇心旺盛な娘は父に着いて、比較的安全な古代林へ行ってはゼンマイを採ったり、リモセトスに果実を齧らせては驚かせて横取りしたり、それはお転婆だった。
父が亡くなり、目に見えて意気消沈した娘に、しつこく貴族が言い寄る。優秀なハンターの娘にかける情けではない、後ろ盾を失くしなす術の無い娘を飼い殺しにしようと躍起な様だった。
見かねた父の知己が進言したものの、彼もハンター稼業を営んでいたお陰で、遙か北の雪国へ轟竜の警戒という名目で追い払われてしまった。
「女の子は16になる前の日、家を飛び出したのニャ。結婚…番いになれる歳になったら、何をされるか分からニャい。雪国のハンターさんを頼って、逃げ出した先で色々な仕事をしてみたけど、性に合わなかったみたいだニャ。まさかお父様と同じハンターになるとは思わなかったニャ」
あの胸糞悪いニヤケ顔の貴族、今頃何してるんニャろ。一度引っ掻いてやれば良かったニャー。
「あれ? お母さんは…」
「いないのニャ。ボクがキッチンアイルーとして雇われた頃には、亡くなっていたニャね」
だから、ボクはずっと見て来たのニャ。
初めましてで、ボクを撫でて喉を触ってゴロゴロさせて喜んでた日。
お父様がクシャルダオラに発った日。
風は凪いだのに、シアちゃんの涙が止まらなかった、お葬式の日。
ずっと二人で計画してきて、とうとうお屋敷から抜けだした日。
シアちゃんにご飯を作りながら、初めてのクエストに送り出した日。
イャンクックを初めて狩れた日は、こっそり持ち出してきた怪鳥のカワ焼きが美味しかったのニャ。
「だから、シアちゃ…旦那さんは男の人が苦手なのニャ。慣れたのが女の子扱いしないウルさんと、エルドさんニャし、嫌ではないけどニャ…」
「分かりますニャア、うちの旦那さんが、もっと優しかったらニャア…」
シルビアのせいじゃないニャ、肩を落とさないでニャ…
……まあ、ボクはシアちゃんが笑っててくれたら満足なんだけどニャ。
ー
ーー
ーーー
首筋が少し寒い。
そりゃあ剥ぎ取りナイフじゃ、限界があるわな…
「何よ、私は似合ってると思いますけど」
「いやーでも、もうナイフ仕舞って下さい後ろだけで十分です」
「むー! 良いもん!」
シアが鏡代わりにしようとしていた水面を、屈んで覗き込む。襟足が大分短くなり、纏めて前髪も削がれそうだったが全力でお断りした。ちょっと目元に掛かる前髪は、このままでいーや。
左側で髪を括っていたせいか少し此方だけ長いが、他ならぬシアの所業である、許してやろう。
「髪の毛払うから、まだ立たないで」
「ん」
シアとは身長が頭一つ半くらい違うので、たまに素直に言う事を聞いてやる。おれが無駄にでかいとシアは言うが、背が高いと色々便利なんだ、大型モンスターの頭も多少届きやすいし、小娘の頭押さえつけたり旋毛グリグリしたりとかに。
掌で簡単に、破れたベルダー装備の肩布で覆った首元を払い、シアは布を除ける。項に入り込んだ髪が無いか払いながら確認しているようだ。
「んッ……」
微かな、指よりも柔らかい感触…どうやら、悪戯娘がいるらしい。
おれが手を伸ばそうとすると、耳元でシアが囁く。
「ウルにぃ、あんまり私を
「「ニャーっ!!」」
「コラ、押すニャッて!」
「やっちゃったニャア…」
バサバサ、ドサッ。とアイルーがエリア端から2匹転げて来て、その後ろにこれまた2匹覗いている。
「リンちゃん、ハクサイ…な、何してんのあんた達…!」
「ネルが押すから見つかっちゃったニャ!」
「ハワワワ、ゴメンナサイニャーっ!」
猫達はモドリ玉でも使ったのかって位に素早くエリアから消えて行った。
何だったんだ、おい。帰ったら覚えてろよ?
「ま、はい。続きは?」
促したが、シアは困った顔で赤面し失語してしまう。
たまに、こうなんだよな。恥ずかしがり屋なんだか何なんだか。
「ほれ、帰んぞ」
破れた肩布をひょいと肩に掛け、歩き出すと白疾風のポニーテールがすぐに半歩後から着いてくる。
「月が、綺麗だね」
振り向くと、夜空を見上げたシアが微笑んでいた。
口付けるのは止めにする。
…優しく可愛がるのは、どうも苦手だ。
...end.
「申し訳ありません、ベルナの受付嬢さんが…ムーファちゃんのぬいぐるみを…!」
「お陰で旦那さんにハンバーグ工場送りにされたニャ!」
「30回連続でネンチャク草の栽培ニャア! シルビアの白毛がベッタベタでペイントしたみたいになっちゃったニャア…」
「ほんとにごめんなさいー!」
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