勇者代理は現代兵器とともに   作:Bishop1911

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第2章 転生者
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数カ月後

 

辺りには雪が積もるようになり、アルコ村にも冬が来た。

俺はこの数カ月で短剣やナイフの使い方がそれなりに上達し、毎日のようにアマンダと模擬戦をするようになり、アマンダとの訓練は次のステップに移った。

 

「今日からは銃を触るぞ。」

 

実は俺の召喚能力を使えばいくらでもここに並べられるだなんて口が裂けても言えないため、とりあえず黙って説明を聞くが、尻尾はしっかり振れている。

 

「この銃は98型騎兵小銃、私が軍に居た頃に使われていた小銃だ。」

 

アマンダが持ち上げて俺の近くで見せてくれたその銃は前世のテレビや映画でよく見たことのある銃によく似ていた。

俺が引き取られた頃からアマンダがよく使っていたため、あんまりまじまじと意識して見た事は無かったが、ストックの形やボルトの形状、銃口付近の特徴的な形状とクリーニングロッドはよく似ている。

 

「使う弾は7.92×57mm弾で装弾数は本来5発だが、こいつは改造して8発まで入るようにしてある。」

 

たしかに弾倉の下部に追加で部品が取り付けられているが、それを除けば見た目どころか使う弾までどう見てもKar98kだ。

というか、本来の装弾数が5発ならもうそれはKar98kだ。

 

「ここが照星、こっちは照門だ。銃はこの2点を重ねて狙う。

この時、姿勢と肩付けをしっかりしていないと反動で銃を落とすから気をつけるんだ。」

 

アマンダは紙箱を開けて弾を取り出すと、ボルトを引いて銃に1発弾を入れ、耳をぺたんと倒す。俺もそれを真似て耳を倒したのを確認すると、アマンダは庭の端に並べた丸太を狙って引き金を引いた。

 

ズダァンッ

 

鼓膜を叩くような音圧と同時にアマンダの太ももほどの大きさの丸太が弾けて木片を飛び散らせる。

アマンダはボルトを引いて薬莢を吐き出させると、そのまま俺に銃を渡して俺の背後から姿勢を取るための補助に回る。

 

「やっぱりまだ身体が小さいな…。」

 

Kar98kの全長は110cm、対する俺の身長はそれより20cmくらい高いからおよそ130cm。日本人の6歳児の平均身長は130cmもあるわけないから平均よりは高いはずだが、それでも今の身長で撃つには長い銃だ。

前世で子どもが銃を撃つと言えば、アメリカでは拳銃弾やもっと小さい口径の弾を撃つライフルで練習させるのが主流だが、そもそもこの時代、前世でいうところの20世紀前半に子どもの練習用に使われた銃なんて俺は知らない。仮に今ここでネットが使えたとしても調べるのに手こずるだろう。

知っている銃で使えそうな物と言えば、22LR弾を使うAR-7のような銃が見た目的にもこの世界で使えるギリギリのラインだと思うが…

 

ピカッ

 

「え…?」

 

「どうした!?」

 

俺の手が閃光のように光ったかと思うと、俺の手にはAR-7が現れていた。

 

(やっちまった…!)

 

アマンダは豆鉄砲を喰らったような顔で俺を見ている。

俺はどう言い訳しようかとひたすら思考を巡らせるが、何も思いつかない。いや、そもそも目の前で銃を召喚してしまった以上、言い逃れのしようがない。

 

「ルーク…それは銃か?」

 

「そうだよ、アマンダ…。今からこの銃を地面に置くから落ち着いて話を聞いて欲しい。」

 

俺はひとまずあらぬ誤解を招かないよう、左手で絶対に引き金に触れないようAR-7の銃身を握って静かに地面に置くと、両手を挙げて銃から離れる。

 

「説明…してくれるんだろう?なら私の前でそんな格好をするな。」

 

俺は無言で頷くと、アマンダに促されるままに家の中へ戻った。

 

 

テーブルを挟んで向かい合ったアマンダと俺の間にはAR-7が置かれ、まるで刑事ドラマの尋問風景のような雰囲気に包まれる。

 

「……。」

「……。」

 

お互い無言の状態が無限とも思えるほど続くが、唯一刑事ドラマと違うのは俺が黙秘権を行使しておるわけでは無く、アマンダは「何をどう聞けば良いか」、俺は「どこからどこまで説明すれば良いか」を考え、探り合っているということだろう。

まず最初に口を開いたのはアマンダだった。

 

「ルーク、単刀直入に聞く。この銃はどうやって手に入れた?」

 

ここで召喚能力について言及すると必然的に神の存在に触れる事になる。

そしてこの銃はこんな見た目だが開発されたのは1959年、つまりこの世界にギリギリ存在しない可能性の方が高い。

 

(もし…、もしも俺が転生者であることを話したらアマンダは俺のことをどう思うだろうか?まったく想像がつかない…。殺されるだろうか?教会に突き出される?)

 

俺はテーブルの木目からアマンダの目に視線を移すと、アマンダは無言で俺の目を真っ直ぐ見つめている。その瞳には俺が危惧していた異物を見るような感情は無かった。

彼女の瞳を見て、俺は決心した。

 

(全部話そう。アマンダを騙すような事は今すぐやめるべきだ。)

 

俺は一度深呼吸して口を開く。

 

「アマンダ、この銃の事について話す前にまず俺のことについて話すよ。」

 

アマンダには予想外の切り出しだったようで、首を傾げる。

 

「俺はこの世界の人間じゃ無いんだ。

もちろんこの世界で生まれたことに間違いはないんだけど、この魂は別の世界から来たんだ。」

 

「…黒魔術の類いか…?」

 

「違う。俺はこの世界ととてもよく似た別の世界の人間なんだ。

その世界でその…幼馴染を庇って殺されて、気付いたら神の前に居た。

神はどうやらこの世界に送る人間を探していたようだったんだが…手違いで俺が来てしまったんだ。

そこで俺は自分の世界の武器を召喚する能力を与えられた。」

 

「…そうか。」

 

アマンダはテーブルに肘をついて頭を抱える。

 

「にわかに信じがたいが…。」

 

アマンダはテーブルの上に置かれたAR-7を手に取り、各部を触る。

 

「こんな銃は見たことが無い。

この世界にもありそうな銃ではあるが…」

 

理解できないながらも動かぬ証拠を突きつけられた以上は信じざるを得ないのだろう。アマンダは目頭を抑えて少し考える。

 

「私以外の人間の前でこの力を使った事は?」

 

以前召喚してIdeal Concealの事が脳裏をよぎる。

 

「…まだ無いよ。」

 

「本当は?」

 

アマンダはその青い瞳で俺の心理を見透かすように視線を逸らさない。

やはりダメだ。ここで嘘を重ねるのは悪手だろう。

 

「…家の裏に拳銃が1丁埋めてある。」

 

「他は?」

 

「…それで全部。」

 

「よし、そのまま隠し続けるんだ。少し待っててくれ。」

 

アマンダは書斎へ向かうと、一冊の手帳を持って来た。

手帳には何枚も写真が挟まれており、どの写真にもアマンダが写っている。

 

「私が軍に居た頃の写真だ。」

 

写真の中のアマンダは髪が短く、銃剣の付いたサブマシンガンとサーベルを携え、同じ獣人と笑っている。

 

「こういう銃はお前の世界にもあったか?」

 

「…?あったけど…?」

 

「お前の力の使い方について、いくつかルールを決めよう。」

 

そう言うとアマンダは他にも何枚か写真を取り出す。

写真は様々で、森林や草原、砂漠にツヴェルグ帝国のどこかの街…どの場所で撮った写真のアマンダも必ず銃を持っている。

 

「この写真に写っている見た目の銃だけだ。それ意外は使うな。」

 

「わかった。」

 

「もうひとつ、銃を召喚した時は必ず私に言うんだ。

お前がどんなに賢くて力を持っていたとしてもまだ子どもだ。

力には責任が付き纏う。

お前が責任を果たせるようになるまでは私がお前を守る。いいな?」

 

「うん。」

 

「よし…良い子だ。」

 

アマンダは頷いた俺の頭を抱き寄せると、頭を撫でながらテーブルの上のAR-7を手に取った。

 

「せっかく召喚したんだ。これで射撃の続きをやろう。」

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