スキル:
・軍事知識 ・ーーー ・召喚能力(解除済み)
・基礎能力向上(ロック)
最近「そういえば」とふと思い出したのだが、この世界に転生する前に俺は神を自称するイカれたロリっ子から能力を授かったはずだ。
確か5才で召喚能力がどうとか。それも前世の世界の武器を出せる。
オタクとしては触ってみたい武器なんて星の数ほど浮かんで来るが、いきなりアサルトライフルなんて召喚するとアマンダに見つかった時に説明できない。
そうなると必然的に召喚できる武器は20世紀初頭以前の物に限定されるが、逆に2080年の武器は召喚できたりするのだろうか?
考えれば考えるほど疑問は尽きないが…
「そもそもどうやって召喚するんだ?」
とりあえず隠しやすく、バレても言い訳しやすいようにと小型の拳銃を召喚することにした。
最初はリベレーターなども考えたが、ぱっと見で銃とわかってしまうため、ここは一旦時代は関係無くIdeal Concealを試してみる。
(銃をイメージして…来い!)
銃を握る形にしていた右手がわずかに光り、ズシっと質量のある物体が現れた。
「マジか…。」
俺の右手に握られているのは間違いなくIdeal Concealだ。
折りたたみ式の小型拳銃で、折り畳み式の割りに少しサイズが大きいが、この銃の1番の特徴は、折り畳むとスマホにしか見えないという所だ。
これならもし見つかっても銃とは思われない。
…が、さすがに怖いので家の裏に埋めてきた。
「とりあえずは成功か…。しかし5歳児に銃を召喚させるなんてどういう脳みそしてるんだ…。」
まあ前世で大学生だった俺は、実質27歳のオッサン一歩手前も良いとこなのだが、異世界での5年間がいろいろとフラッシュバックして羞恥心がやばいので考えるのを辞めた。
「ルーク?居るかー?」
「やっべ!」
アマンダの帰宅に驚いた俺は銃を埋めた部分を踏み固めてアマンダの元へ急いだ。
「そろそろ決まったか?」
そうだ昨日の話だ。「何か教えて欲しい事は無いか。」という話だった。
銃を召喚できた喜びが強くて後回しになっていたが、答えはもう決まっている。
「アマンダ…俺、アマンダの狩りに付いて行ってみたい。」
「そうか…。」
なんとなく予想はしていたのか否定はされなかったが、それ以上は考えてなかったらしく、アマンダは少し頭を抱える。
「いいか、狩猟ってのは魔物や動物と命を駆け引きすることなんだ。
だから…なんて言うんだろうな…。」
「ダメなら良いんだ。もう少し大きくなるまで待つよ。」
「そうじゃない、そうじゃないんだが…。
…どうしてお前はそんなに聞き分けが良いんだ…。」
アマンダはまた少し考え込んだ後、意を決したようにしゃがんで俺と目線を合わせる。
「ルーク…私はな、昔は軍隊に居たんだ。戦争にも行った。酷いことをたくさんやってきたし、友だちが酷い死に方をしたのも数えきれないほど見た。
戦争が終わって国が貧しくなって、軍隊を辞める事になった私は仕事を探したが、どれもうまく行かなくてな…。
気づいたら私は自警団っていう武器をいっぱい持った人たちと一緒に警察が来てくれないところで悪い人たちと戦うようになった。
そこでも私はルークにとても言えないほどたくさん酷いことをしてきた。
私の手はな…もう血塗れなんだ。
そしてやっとこの村に落ち着いたのに、戦う以外の事を知らなかった私は傭兵しかやる事が無かった。」
「アマンダ…」
「いいか、ルーク。
それでも狩りの仕方は教えよう。戦いの技術も教えてやるつもりだ。
それはこれくらいしか私がお前に遺してあげられるモノが無いからだ。
だがこれだけは覚えていてくれ。
この世界には戦うことでしか生きられない人間がいる。
戦いにしか生きる意味を見出せなかった人間がいる。
でもな…、戦いしか知らない人間にだけは絶対になるな。
躊躇いもなく返り血を浴びて、血溜まりの中を平気な顔で踊り狂うような人間にだけは絶対になるな。
そんな人間は必ず地獄へ堕ちる。人並みの幸せなんて一生訪れない。」
「でもそれじゃあアマンダは…」
「私は地獄に居たところを救われたんだ。お前にな…。」
アマンダは俺を優しく抱擁し、俺から隠れるように袖で顔を拭うと、スッと立ち上がると、何か肩の荷が降りたかのように肩を回す。
「それじゃあまずは簡単なところから行くか。」
アマンダは自室からライフルと短刀を持ってくると、俺の手を取って家を出た。両親の出稼ぎとエリスの寮生活で無人になってしまったセルブリット家の前を通り過ぎ、小麦畑の間を抜ける。
すれ違う馬車の行商人と挨拶を交わし、山脈の国境警備から戻ってきた兵士に手を振った。
平和ないつも通りの村の風景。
しかしアマンダの表情は晴れない。
行商人とすれ違えば俺の手をぎゅっと握り、兵士とすれ違えば俯いて銃の負い紐を握りしめる。
今のアマンダはまるで村中に見えないガラスが敷き詰められ、その中を傷だらけになりながら歩いているようだった。
「そろそろだな。」
村を出て森に近づくに連れてアマンダの緊張は解れ、身体の力が抜けていくのが手に取るようにわかった。
俺は「狩りに付いて行きたい」と言った事を少し後悔した。
それはアマンダが今も苦しんでいる姿を見るのが嫌だったからなのか、彼女の苦しみを背負う覚悟が無いからなのか、自分でもわからない。
「この辺で始めよう。」
せっかくのアマンダの話もまったく頭に入ってこなかった。
「どうした?疲れたか?」
アマンダも俺の様子を察してか心配するが、俺は首を横に振り、同時に邪念も振り払う。
「そうか。よし、まず狩りの基本は自然を理解する事だ。
見る、聞く、触る、舐める、嗅ぐ。五感の全てを使ってこの”場“を理解しろ。
ここは動物や魔物にとっての庭であり、狩場だ。
私が獲物を狙うように、この森の誰かも私を狙っている。」
アマンダが指し示した森の奥は見通せない暗闇に覆われている。
本能的に恐怖を感じ、感覚が研ぎ澄まされる。
「足跡は無いか?枝は折れてないか?折れていたらどの高さの枝が折れていた?糞は無いか?木の幹に爪痕は無いか?」
地面には消えかかった靴の跡が残り、アマンダの肩あたりの高さの枝が鋭い何かで切り落とされている。糞は見当たらず、木の幹には爪痕も無い。
明らかに動物の痕跡ではないようだ。
「ここはアマンダがよく通るのか?」
「どうしてそう思う?」
「靴の跡が1人分、少し消えかかってるから少なくとも今日じゃないけど、最後にアマンダが狩りに行った日から雨は降ってないからそれほど古いわけでもないはず。
木の枝がアマンダの背丈くらいで切り落とされてる。頻繁に通らないなら折る必要も無いし、邪魔なら折っても良いところだけど、わざわざ切ったっていう事は、それすら煩わしく感じる…つまり獲物を担いだ帰り道にも使ってる場所なんじゃないか?」
「良いぞ、その調子だ。」
「あとは…」
周囲の臭いに血の臭いが混じっている気がする…。
臭いを辿った俺は、葉に着いた血の跡を見つけた。
「手負いの動物が危険を犯して人里に出て来るようには思えないからこれはおそらく死んだ動物を担いで移動した時に着いた血かな。」
アマンダはおもむろに俺の頭を撫でる。
「よく出来たな。正解だ。」
俺の尻尾はふりふりと揺れ、なんと不便な身体だと俺は唇を噛むが、ふと視線をズラすとアマンダの尻尾は俺以上の速さで揺れていた。
当の本人は気づいていないようだが。
「今回は人間の残した痕跡だから分かりやすかったが、山に入ったら視界は悪いし、臭いも変わってくる。痕跡はもっと見つけづらくなるし、自分の痕跡を残さないようにもしないといけない。
まあ時間はある。ゆっくりと教えてやるさ。」