大丈夫です。書くのをやめた訳ではありません。ただちょっと忙しくて、、、スミマセンでした。
久しぶりに続きができたわけですが、書き方を忘れてしまいかなり不安です。違和感があるかも知れませんが、頑張って書いたのでどうか読んでください。
異なる物体同士が衝突して、金属音ともまた違った甲高い音がとある夜の工業地帯で鳴り響く。続けて人の身の丈を軽く越す大きな煙りが上る。しかし、それ程までの規模を起こせる可燃物も無ければ砂塵や埃もそこには無かった。それも広い工業地帯のわずかな一角でそれは起こった。間違いなく異常な後継であったが、それを目撃した人間は誰一人としていなかった。勿論、当事者を除いてだが。
立ちこめる煙りの中から人影が投げ出される。その正体は、背中まで届く蒼い髪の少女。少女はまるで車に撥ねられたかの様に飛ばされていき、離れた先の壁へ衝突し、そこで少女は力無くその場に倒れ込んだ。
そして、同じ煙りの中で人影がもう一つ。しかし影の形こそ人のものであったが、煙りの中に隠れたその正体は人間ではないだろう。言い変えるなら人型に近い何か。それを証明するように煙りの壁は薄れていく。
影が動き、ガシャリ、ガシャリと鉄かなにかがが砂利と擦れたる音が同じ歩調でなる。しかし不意に吹いた風で煙りが掻き乱れると直ぐにその音は止まった。
乱れた煙りがしだいに薄れていき、隠れていたその正体が現れる。オレンジ色に光る大きな複眼。車か何かのスクラップを無造作に貼り付けたような装飾の左右非対称の体。頭部の形は何かのエンジンのように見える。薄暗く見えにくいが色合いは紫と銀。無骨な姿だが、誰が見てもその姿からは攻撃的な意図が受け取れるだろう。その姿からロボットという言葉がそれには似合う。
その正体は魔進チェイサー。しかし、その名を知る人間は誰一人いない。
『敵対行為を確認──』
チェイサーはそっと右手に纏った武器を構えた。蜘蛛の形を模した近接武装、ファングスパイディ。そしてそれに連結され一体となっているもう一つの武器、ブレイクガンナーの銃口を空の手で押した。
[execution・Full break──spider]
ファングスパイディの先端にエネルギーが紫電を散らしながら充填されていく。そして得物を向けた先にいるのは今も力無く倒れている少女の姿。
チェイサーはブレイクガンナーのトリガーに指をかけ、
『敵対対象を排除する』
一つの迷いなく、トリガーを引いた。トリガーが引かれると放電を散らしていた紫電が得物の刃先で一度球体状に収縮し、小規模の炸裂。そして一直線のレーザーとなって放たれた。
獲物を貫く筈のレーザーだったが、予期せぬ介入が彼の元へ駆けつけた。
「やめてくださいっ!!」
放ったと同時の後ろからの声で反応が遅れてしまう。
小柄な少女が声を荒らげてチェイサーの腕にしがみついた。今まで後ろにいた正体も名も知らない少女だ。そして彼女は全身を使ってしがみついた腕を大きく揺すぶった。
『何をするッ!』
狙いを失ったレーザーはグンッと角度が下がり雑に地面へ激突。そこで止まることはなく、そのままガリガリと地面を削りながら建物と衝突。そこで大きな爆発を起こした。爆風と煙幕が立ちこんで、蒼い髪の少女はそれの中に隠れてしまう。巻き起こった爆風は凄まじいもので、その勢いは辺りに散った破片を運びチェイサーと少女の元まで及んだ。
「つ、翼さ──」
『離せッ!』
チェイサーが腕を力任せに振るってしがみついていた少女を振り払った。強引に引き剥がされた少女の足はもつれ、バランスを崩しその場に尻餅をついた。
「いっつ……」
反射的に目を瞑り短い悲鳴をあげる。そして次に目を開けたとき、チェイサーの持つ武器が目の前に突きつけられていた。
「っ!?」
ファングスパイディの2本の切っ先が目の視点と重なった。悪寒が走りだして視線はそれにクギ付けになる。
『何故邪魔をした……?』
チェイサーは少女を見下ろし言葉を放つ。その言葉の圧力は、誰が相手であっても恐怖感を植えつけられる筈のものだったであろう。しかし、彼の視線にいる少女は少し違っていた。
「だっ……て……」
『……む?』
「だって……!」
拳をグッと握りしめて少女が立ち上がる。一歩前に踏み出す。向けられた武器を避けて、よりチェイサーに近づいた。握った拳を胸元に押し込んで、大きく息を吸った。
「人を傷つけちゃダメなんです! その人だけじゃなくて自分も傷つくし、痛いし辛いから、嫌だし辛いから……痛い、から……だから……だから──」
まるで散らばった物を手当り次第に拾って投げつけているようだった。言葉は繋がっておらずバラバラでしっかり話せていない。それでも少女はやめようとしなかった。大きく息を吸ってグッと力を込めて、更に言葉を続けた。
「だから、守らなきゃいけないんですッ!!」
これまで並べた単語はどれもバラバラだったから、これも意図して口にした言葉ではなかったのかもしれない。しかし、そうであったとしてもだ。少女が伝えたかった思いがその一つだったのなら、この言葉が出たのはきっと偶然ではない。
『マ、モ、ル……』
──何ヲ?
『誰ヲ……』
──誰を?
『ニンゲンヲ……』
脳裏に電流が走った。引っ掻くような、ノイズのような音。
──違う
『ソウダ……』
──違う
次第に音は大きくなって、周りの音は掻き消された。
『俺は……俺の使命は』
──チガウ
『ニンゲン、を……』
──チ、ガ
『……人間を守る、こと』
──
ノイズが止まった。
掻き消された音が再び流れ始め、チェイサーの目の前には少女が対峙していた。そして自身の腕が少女へ向いていることに気づいた。
『俺は……!』
人間に刃を向けていた。
『俺はなんて、ことを……!』
すぐさまブレイクガンナーからバイラルコアを引き抜いて武装を解除。装備されていたファングスパイディは逆再生されるように形を変えながら背中へ収納される。
『済まなかった』
今度は空いた手を少女へ差し出す。何のことは無い。この状況でどんな言葉を出せば良いか分からず、それで手を差し出してしまったのだ。
「ぁ………」
だが、チェイサーが手を差し出すと少女は後ろに下がってしまった。差し伸ばす手が止まる。
『……当然の結果か』
「ぇ、あ……ぇっと──」
弁解する言葉が無い。目の前にあるもの。これが全てだ。過ぎ去ってしまったことに彼はどうすることも出来なかった。守るべき対象へ自ら刃を向けてしまった。決してあってはならない事実が重くのしかかる。しかし、そんな彼のことを無視するかのように状況は変化していく。
突然、辺りが騒がしくなった。
『……時間のようだ』
多くの車両がこちらへ向かってくる音を聞き取る。もうこれ以上はいられない。そう判断したチェイサーはバットバイラルコアを手に取った。
そして、少女と向き合う。
『済まなかった』
バットバイラルコアをブレイクガンナーへ差し込む。
[Tune・chaser──bat]
背中からコウモリの羽を模した金属の翼が生やされる。その一瞬だけ、チェイサーの瞳が一層強く光った。
『だが、俺を許す必要は無い』
「え、えっと……あの」
少女に困惑の表情が浮かび上がる。この状況ではそうもなるだろう。守る筈がその逆、かえって危険な目に遭わせてしまった。どうして自分はと考えるほど、その謎は深まっていく。
『俺には何も出来なかった。だが、あとは人間が救助をしてくれる。俺は必要ない』
故にこう考えた。人間なら、どうしたのかと。
『……理解、不能だ』
多くの塵を巻き上げて、チェイサーは空の暗闇に消えた。
もっと長く書きたかなったのですが、先に上手く進めずここで終わらせることにしました。
今日まで音信不通が続いたわけですが、特に書き貯めもしていませんので続きは今まで通り不定期です。
今後のためにも戦闘面の描写について勉強したいと思います。
今年もよろしくお願いします。