今週は祝日があるので、その時に続きが投稿できればと考えているところです。
あの日、ツヴァイウィングのコンサートに行った日。友達と一緒に行くはずだったけど事情で来れなくなって、しかたなく私一人でいくことになった。初めてのコンサートだったけど、翼さんと奏さんの歌は素敵で、胸がドキドキして目を話せなかった。
けど、それはあっという間に終わってしまった。
突然ホールの床が爆発して、誰かがノイズが出たと悲鳴を上げた。みんなパニックになって逃げた。ノイズは空から、地面からやってきて沢山の人を灰にしてしまった。
何が起きたのか、その時の私は分からなかった。
気がついた時には、翼さんと奏さんが不思議な姿になってノイズと戦っていた。二人はその時も歌っていた。逃げなきゃ行けないのに二人のことを見入ってしまった。
それがいけなかったんだと思う。突然足もとが崩れ落ちて、足を痛めてしまった。逃げろと叫ばれて、ここから離れなきゃと思って頑張ったけど、ダメだった。
何が体に当たって、赤いものと一緒に舞って、何も分からなくなった。死んじゃうのかなって。
「生きるのを諦めるな!」
奏さんの声が聞こえてきて、そこからは覚えていない。
目が覚めたら時、知らない天井を最初に見た。病院にいるって気づくまでけっこうかかった。
私は生きていた。
あれから二年がたって、私立リディアン音楽院に未来と一緒に進学。今日はその入学式。
「そういえば、あの日夢見たっけ?」
ふと、思い出した。
「えーっと、たしか夕焼けで……」
眉間にシワを寄せて、腕を組んで思い出す。うーん、と悩む声が口からもれる。
「あ、そう! 夕焼けの空!」
だんだんと思い出してきた。確か下に街があって、その上の空に自分が浮かんでいた。
「それでー、えっと……声が聞こえてきて、あれ? 聞こえたっけ?」
分からなくなってきた。そもそもの話、そんな二年も前の夢なんて思い出せる訳が無い。そんな昔見た夢を覚えられるなら、今彼女は成績なんてものに頭を悩ましていない。
渋い顔を作って、うーんと唸る。
「ヒビキー! 早くいくよー、時間見てるー?」
「うん?」
声が聞こえて、我に返る。外から聞こえた。未来の声だ。時間と聞こえたので、壁にある時計に目をやった。
「時間……? あっ!?」
時計の針は八時を回っていた。昔見た夢なんかに時間を割いている場合じゃなかった。
「いっけない!」
足元に置いてあったカバンを持って玄関へ駆け出す。途中、足元が滑って転びそうになった。
「さすがに初日の入学式に遅刻はまずいってぇ!?」
朝日の差すとあるマンションで立花 響の叫び声が木霊した。
◆
背の高い建物が立ち並ぶ大都会。そびえ立つビルの中でも周りと比べ、それなりの高さをもったビルの屋上にチェイスはいた。
上から見おろして街中を歩く人間達を見ていた。強いビル風がチェイスを襲うが、彼はびくともしない。
「あれから二年か」
チェイスのいる場所。そこからコンサートホール が見えた。気がついた時、彼はあそこにいた。異形を初めて見て、少女を救ったあの日からもう二年の時が過ぎた。破壊されていたコンサートホールは修復され、度々開かれるイベントでたくさんの人を集めていた。
「時間の流れと言うのは不思議だな」
あの日起こった事件で多くの人間の命が失われ、多くの人間達は悲しみに打ちひしがれていた。当然今もそれは続いているが、 当初と比べてだいぶ少なくなっていた。
「ノイズ、奴らは何故人間を襲う?」
あの日から今日に至るまで、チェイスはできる限り多くの情報を集めた。自分のこと以外何も知らない彼にはありとあらゆる情報が必要だった。今でもそれは続けている。
集めている情報の中でも重要視しているのは異形の事。その正体はノイズ、人類の脅威とされている特異災害というらしい。場所を選ばず出現し、人間のみを襲う害悪な存在。有効な対抗手段は無いらしく、自然消滅するまで耐えるしかない。
(足りない。もっと多くの情報が必要か……)
二年前にノイズと対峙して以降、奴らと出会ったことがなかった。ノイズが発生すれば避難警報が流れるのだが、それさえ流れていない。警報がなる前に発見出来ればと、三つのバイラルコアの内二つを捜索に使っているが成果は上げられていない。数が少な過ぎる。
「ノイズが現れないに越したことはないのだが」
ノイズが二年の間、発生していない。それ自体は良いことなのだが、そこにチェイスは違和感を抱いていた。
「考えすぎだろうか」
ノイズは特異災害。事前に発生を予想することはできない。だが、規模や形に違いはあれど、あり方は地震や台風と同じだ。それが二年もの間、本当に一度も起きていないのだろうか。
「キリがないな」
憶測では話にならない。確かな確信とそれを証明する事実が欠けている。何か有力な手掛かりのようなものがあれば少しは変わるのだが。
「手掛かり、か」
視点を遠くの方へ向ける。そこには海があって、近くにはあのコンサートホールもあった。
◆
海に日が沈み初め、夕暮れ時になる。夕日に照らされてコンサートホールが朱色に染まる。一度開かれれば沢山の人を呼び込み喜びの歓声に溢れるその場所も、人が訪れなければただの物静かな無人の建物に変わる。
「こうやって踏み入るのはこれが初めてだな」
そこに一つの人影があった。チェイスだ。
あの日以降、彼がここに訪れたことは一度もなかった。コンサートが行われているのを遠くから見たことはあったが、こうして間近で見るのは初めてだった。
「二年前、ここがあんなことになっていたとは思えんな」
破壊されていた面影はそこには無く、あるのは綺麗に整備されたコンサートホールだった。本当にあの時の姿は見る影も無い。
「ここならと思ったのだがな……」
彼の目的は有力になる情報の収集。ここへ足を運んだのもそれが理由だった。しかし、修復され元の状態に戻ったこのコンサートホールには二年前に起きたノイズ発生事故の痕跡すら見られなかった。
「これ以上は無駄か」
何も得られない場所に留まる必要は無い。引き返そうとした時だった。
「──誰だ?」
誰かに見られている感覚。
振り返り、ブレイクガンナーをガンモードにして構える。が、そこには何も無かった。
「………」
ブレイクガンナーを構えた姿勢のまま、暫く周りを索敵するが何も起きなかった。警戒は解かないままで、ブレイクガンナーを下げる。
(確かに俺は今何者かに見られていた……)
確かに何者かがそこにいた。確信があった。気のせいなんてことはチェイスに限って有り得ない。
しかし。
(……だが、なんだ? 何が違う)
それはチェイスの知るものとは何かが違っていた。人のものとは違う何が別の類いのもの。例えるなら、カメラに視られているような。だが、本当にカメラならこんなことにはならない。
得体の知れない存在に警戒を配っている時だった。そこへ一つのバイラルコアがチェイスの元へ飛んできた。まるでキャッチボールの感覚でそれをキャッチする。
「まさか」
遅れてバイラルコアから送られた情報が届くのと、街中に避難警報が流れたのは同じタイミングだった。
「ノイズか……!」
二年振りにノイズが現れたことを知るとブレイクガンナーを握る手に力を込めた。
◆
チェイスとバイラルコアがやり取りをしている最中を離れた場所から除く影があった。
『……』
その影は、チェイスが魔進チェイサーとなり空へ消えて行くのを確認すると静かにその場から消えていった。
次で戦闘をする予定です。
不定期更新ですが、遅くならないように努力します。
感想とかお待ちしております。