それではどうぞ。
日が沈み夜になった空を魔進チェイサーとなったチェイスが飛んでいた。金属で出来た翼をはためかせ、ノイズの元へと急ぐ。
遠くの山中で爆発音が鳴り、炎と煙が舞い上がった。
「自衛隊か!」
ノイズが発生した場合、自衛隊(特異対策起動部)が出撃しその進行を防ぐまたは遅らせるために交戦する。だが、有効な対抗策が無いため付け焼刃に過ぎない。
「あと少し、耐えてくれ」
翼を大きくはためかせて、現場への到着を更に急いだ。
◆
山中にある村の中で、ノイズと自衛隊が交戦を繰り広げていた。しかしそれは一方的なもので、自衛隊が扱う銃火器による攻撃はほぼ無力なものだった。銃の弾丸、ミサイルはノイズの体をすり抜けてその後ろで爆発を起こす。
「ク、来るなああああ!?」
前衛の兵士が悲鳴を上げて灰になった。それに続いて、二人、三人とノイズの接触を許し灰になっていく。
「後退!」
絶えず攻撃を続ける中で1人の男が指揮を執る。無線を利用して全体へ指示を出す。彼等の目的は時間稼ぎだった。仲間が減ってしまえがそれが厳しくなる。
「クソッ!」
銃を連射する。今、自分らに出来ることはこれしかなかった。だが、残りの残弾も乏しかった。
弾が切れて弾倉を交換しようとした時、足元から何か生えてきた。ノイズだった。
「あ……」
声なんて出なかった。走馬灯なんてものも出ない。ただ死ぬとだけその時分かった。
ノイズが男に触れようとした時、紫の閃光がノイズを貫いた。
「へ……?」
風穴を開けられたノイズは灰になり始めていた。何が起きたのか分からないまま、上を見上げた。
上空から何かが降ってきて、着地と共に灰になりかけていたノイズを踏み潰した。
『間に合わなかったか』
それは人型だった。何かを1人で呟いて、こちらを見てきた。
声が出ず、ただ目の前の人型を恐ろしいと直感的に思った。
『ここから去れ。邪魔だ』
それだけを言うと人型は背を向けて、ノイズの方へ向かっていった。
◆
チェイサーの前に広がるノイズの大軍は二年前に初めて会った時よりも遥かに多かった。100はいるだろうノイズは今も進行を続けている。
山状に盛られた灰がいくつもあった。その正体は言うまでもなく、ノイズの害悪性が改めて再確認された。
「許さん」
[gun]
ブレイクガンナーをガンモードにして光弾を連射する。風穴を開けられたノイズが次々と灰になって崩れ落ちる。だが、数が多いためそれだけでは早期に決着がつきそうにない。
「来い!」
左手をかざすとその手の中に一つのバイラルコアが飛び込んでくる。蛇の形が彫られたバイラルコアだ。
チェイサーはそれをブレイクガンナーにセットする。
[Tune・chaser──cobra]
チェイサーの背中から機械の翼が現れ、紫の光を帯びながら腕の方へ移動してブレイクガンナーと合体する。すると先端部分から蛇の形を模した鞭が伸びてきた。
武装チェイサーコブラ。装備、テイルウィッパー。
「フンッ!」
テイルウィッパーを薙ぎ払う。その勢いでテイルウィッパーの鞭の部分が更に伸び、沢山のノイズを巻き込む。巻き込まれたノイズは横に引き裂かれ、半身が宙を舞いながら散っていった。
「ここから先へ行けると思うな」
テイルウィッパーを引き戻して、ブレイクガンナーの銃口を手に押し当てた。
[execution・full break──cobra]
ブレイクガンナーと一体になっていたテイルウィッパーが分離。チェイサーの頭上を円を描くように浮遊し始める。
「──やれ」
チェイサーが命令すると、浮遊していたテイルウィッパーがノイズへ襲いかかる。全身を鞭として暴れ、喰らいつき、蹴散らして、薙ぎ払う。野性の獣さながらの獰猛な動き。これが、武装チェイサーコブラのなせる技である。
[gun]
追撃をするようにガンモードにしたブレイクガンナーでノイズを攻撃する。
機械の蛇に引き裂かれ、紫の光弾に撃ち抜かれ、ノイズの大軍は蹂躙されたか如く打ちのめされた。
「終いだ」
最後の一体をブレイクガンナーで撃ち抜き、発生したノイズ全てを灰にした。
役目を終えたテイルウィッパーはチェイサーの元へ戻り、淡い光と共に背中へ収納された。
後ろを振り向く。
「何故、逃げなかった? 邪魔だと言った筈だ」
チェイサーの見る先にはまだ自衛隊が残っていた。その誰もが手にある武器を下ろし、視線を彼へと向けていた。自分らが戦っていたノイズが倒されたのに誰一人として口を開かなかった。
彼らの目には共通するある感情が宿っていた。その正体はチェイサーも知っているもの。
「恐怖か……」
目の前にいる存在、チェイサーに対し皆恐怖を抱いていた。突然空から降ってきて、誰も想像しない力でノイズを殲滅した。そんな正体不明な人型を前にして、歓喜の声を上げられる方がどうかしている。
「……お前達の攻撃で火災が発生している。早く消化を──」
チェイサーの上から大きな影が指した。振り返ると、10mを超える巨大なノイズが彼らを見下ろしていた。
「何ッ!?」
それだけでは無い。倒したのと同サイズのノイズも先ほどよりも少ないが再び発生している。
そのノイズが形状を変化。自らを弾丸のようにしてチェイサーを襲う。今まで見たことのない、ノイズによる攻撃だった。
「奴ら、攻撃手段を持っていたのか!」
ブレイクガンナーを構え、飛来するノイズを撃ち落とす。ノイズの勢いは止まらない。次から次へとノイズは弾丸の如く襲ってくる。後ろには、未だに自衛隊がいた。早速、彼には避ける選択肢がなかった。
「クッ……」
失態だった。バイラルコアを再びセットする隙がない。この状況は不利だ。
そこへ、巨大なノイズが追い討ちをかける。その腕を横に振るいチェイサーを薙ぎ払おうとする。今まで避けることが出来なかった彼はどうする事も出来ず、まともに食らう。
「グァアアア!?」
巨大なノイズに、退けられる。木々をなぎ倒しながら吹き飛ばされ、何本目か分からない木に衝突してやっとその勢いが収まった。
チェイサーの装甲にダメージが入り、火花が散る。
「グゥ……ッ」
だが、そこはロイミュード。ダメージは受けても痛みは無い。早期復帰とまでは行かないが、膝を突きながらも立ち上がってブレイクガンナーを構えた。
まだ巨大な方を含め、ノイズは残っている。ここで止めるわけにはいかない。
「……やってくれたな」
巨大なノイズをに睨みつけ、バイラルコアをブレイクガンナーにセットしようとしたが、突然やって来たヘリコプターを見てその手を止めてしまう。
メディア関係の物かと思ったが、何かが違った。
すると──
『──天羽々斬』
歌が辺りに響き渡り、ヘリから光が降下してきた。その光はゆっくりとノイズの目の前まで降下していくと、途中で光が収まる。そして、完全に光が消えると同時に中から青い髪の少女が現れた。
「……何だあいつは?」
ヘリはノイズから距離を取って浮遊している。どうやらこちらを監視しているらしい。チェイサーはヘリから降りてきた少女を見る。背中まで届く青い髪と体にピッタリと張りついた衣装。部分部分に機械的な装飾と手には一太刀の刀が握られていた。
まさかそれで戦うつもりでいるのか。ノイズに通常攻撃は無力。無駄死にするだけだ。
「そこを離れろ……俺が相手をする」
チェイサーの声は少女に届いたのか、彼女は彼の方を一瞥してノイズに剣を構えた。
『──去りなさい。無想に猛る炎』
少女が歌を歌う。
ノイズの大軍に突撃。当然周りをノイズが囲う。だが、彼女は恐れなかった。その場で逆立ちをして足を開く。足からブレードのような武器が展開され、片手を軸に回転。周囲のノイズを切り裂いた。
『──嗚呼絆に、全てを賭した閃光の剣よ』
次に上へ跳躍。上からノイズを見下ろすと、後ろからいくつもの剣が出現。それらが弾丸のように放たれ、大型ノイズを除いた全てのノイズを掃討する。
『──四の五の言わずに否、世の飛沫と果てよ』
残るは大型ノイズ一体。
勢いを付けてもう一度跳躍。更に高く飛び、大型ノイズの上を行く。太刀を両手で握り上段に掲げると太刀の形状が変わり大剣に変形、葵い雷をまとう。そのまま勢いよく振り下ろし斬撃を飛ばす。ノイズは両断されその場に崩れ落ちた。
「まさか人間がノイズを倒すとはな……」
ノイズの大軍をたった1人で。それも圧倒的な力で殲滅し、あっという間に終わってしまった。それ故にチェイサーは目の前の少女を警戒した。
「しかし、ノイズに対抗策があるなど……」
そんなこと2年の間、聞いたことなんてなかった。
ノイズを全て倒すと少女は振り返って、チェイサーを見た。こちらへ歩んでくる。その手には太刀の形に戻った武器を持っていた。彼女もまた、目の前のチェイサーを警戒していた。そして、その目には若干の敵意もある。
「貴方が……やっと姿を見せましたね」
「なんの話だ?」
チェイサーの元へ来て、少女が初めに言ったことはそれだった。彼からすれば意味のわからない話だが、どうやら相手は自分のことを知っているらしい。
「大人しく投降して下さい。そうすれば手荒な真似はしません」
戦闘のとこが上手く書けなくて苦戦。これからの課題となりそうです。
次はいつになるは未定ですが、遅くならないようがんばります。
追記 10月12日に誤字修正を行いました。報告して下さった読者さんありがとうございます。