死神と9人の女神   作:獄華

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一刻、一刻と危機が迫る沼津。
今回は悲劇への序章です。


第5話 惨劇への序曲

……アメリカ

「そうか。あいつは逃げたのか」

 

「申し訳ございません、何分場所が場所ですからなぁ。」

 

佇む豪邸の一室、タキシードを着た老人の前に金髪の少年が椅子に深く腰を預けて興味深くその話を聞いていた。

少年が属する組織の大切な実験対象が数日程前に収監されていた研究所から脱走したようなのだ。

そして、何よりその研究所の場所は……

 

「うむ、あそこは異国の地。いくら同志とは言えすぐ救援に行けるわけじゃない。しかも『かの国』では手の平サイズの子供が使うようなハンドガンの所持すら許されて無いと言う」

 

「大規模なテロ災害や不足の内乱等にはどうやって耐えるつもりなのでしょうな?ジャパンは?」

 

「さぁな、ま、それを収束出来るだけの自身と技術があるんじゃ無いか。しかし今回はそう上手くも行かなかったようだが……」

 

彼の目の前のテーブルに、複数の新聞や写真等が散りばめられている、沼津市内の警察署の暴動、発生からまだ8時間程しか経過してないが、海外もこの暴動について大々的に報じた。

 

「どう思うね?グルード。奴(実験対象)を収監してた研究所の場所は日本の太平洋沖の本土からあまり離れていない島らしい……して、今回の暴動が起きたのは奴が脱走してから間もなくだ」

 

「奴が関与していると?」

 

「あぁ、だとすれば……コイツが暴れてたのも頷ける」

 

少年はテーブルの一枚の写真を指差した。

「こ、これは!?……」

 

執事のグルードは思わず声を失った、無理もないだろう。撮られたその写真に写っていたのは

 

「……クリムゾン・ヘッド」

 

「18年前の悪夢が再来したか」

 

少年が産声をあげた年、アメリカの1つの町でとある悲劇が起こった

『アンブレラ事件』

 

巨大製薬企業アンブレラが裏でt-ウィルスを用いた非人道的な実験が公になったと同時にラクーンシティが地図上から姿を消すことになった。

犠牲者は数えきれない……今も尚、ラクーンからの脱出者には大きな傷を残している歴史的な大事件だ。

 

「レ、レイモンド様!至急、手をお打ちにならなくては!……このままでは当時と同じように我々の行為が公に出てしまいます!」

 

怯えるグルードを見てレイモンドは顔色一つ変えずに、大丈夫だ、と言い張る。

 

「最初は驚いたが、女神は俺達の味方のようだ。」

 

「と、言うと?」

 

「この静岡の沼津にも我が同胞が居るのだ。発足したその年に既に市民には感染症の予防と言い張りt-ウィルスの抗体を接種させている。……無論、老人も赤子も例外なくな」

 

「おぉ……そうだったのですか」

 

「それだけじゃない。他の地域から越してきたり通勤する者や転勤してきた者達にもその日の内に接種させると言う徹底ぶりだ」

 

「実力者が仕切っているわけですな……」

 

「あんな大惨事にはもうするわけには行かないからな、問題は現在混乱状態にある沼津市にこの沼津市民以外の人間達が足を踏み入れると言うところだが……グルード。至急沼津の同胞達に連絡を取りこのクリムゾン・ヘッドがどうなったのか確認を取ってくれ」

 

「承知致しました」

 

 

……

…………

………………

……………………

 

「はぁ……はぁ、はぁ……」

 

千歌は梨子と曜に身体を支えられながら教室へは向かわず保健室に来ていた。

 

「千歌ちゃん!もう大丈夫だからね!」

 

曜はベッドに横たわる千歌を必死に励ます。

 

(昨日、私が立ち直れてあの新たな悲劇にも耐えられたのは千歌ちゃんのおかげ……だから今度は私が支える!)

 

「まだ早いから、保健室の先生は居ないわね……曜ちゃん、私おしぼりを濡らしてくるね」

 

「うん!ありがとう!梨子ちゃん!」

 

ガラガラ、バタン

 

(こんな時でも梨子ちゃんはしっかりしてる……私も何か少しでも千歌ちゃんを安心させれるような事をしなきゃ)

 

「よ、曜ちゃん……」

 

「千歌ちゃん!」

「赤く……光った。怖い……」

 

「光った?……何が、一体何が赤く光ったの!?」

「人の目がね……赤く光ったの……信号機の、赤信号みたいに……」

 

「充血して、赤く見えたって事?」

 

千歌は首を横に振る

 

「違う、もう充血とか、少し赤くなったとかの話じゃないの……遠目に見てもはっきりと分かる程に赤かったの……」

 

怯えかたからして、千歌が嘘を付いてるようにはとても見えなかった。

 

「千歌ちゃん、浦ノ星には皆が居るんだから怖がらなくて大丈夫だよ。あんな大惨事が有ったんだから怖い事に敏感になるのは仕方が無い事だよ」

 

「曜ちゃん……ありがとね」

 

「あ!少し元気が戻って来たんじゃない?」

 

「ふふ、 50%ぐらいかな?」

 

「じゃあ今日中に100%にしなきゃね!待って皆を呼んで来るよ!」

 

「あ、曜ちゃ~ん!」

 

ガラガラ、バタン

 

「行っちゃった……けど勇気が出たよ……ありがとね」

 

千歌は見間違いだと自分に言い聞かせた。

 

 

……

…………

………………

……………………

 

 

「あー……やべぇな……」

 

竜一は自転車を走らせ、通勤していた。

しかし事故により渋滞が発生してしまい彼は足止めを食らっていた。

火災も発生してるようで黒い煙がもくもくと空に昇っていく。

 

「どうする?店長に電話するか……」

 

その時老人が話掛けてきた。

 

「君、すまぬが浦ノ星女学院はどこに有るか分かるかね?」

 

「あ、浦ノ星ならこっから……ちょうど今事故が起きてるこの道を真っ直ぐ3キロ程行けば着きますが」

 

老人はありがとうと頭を下げ道なりに真っ直ぐ歩いて行く。

 

「え?あの!危険ですから迂回した方が……」

 

「その必要は無い」

 

「何を言ってんだよ!あんた!死ぬ気か!?」

 

竜一の抑制の言葉等物ともせず老人は歩みを止めない。

 

「イカれてやがるぜ……」

 

竜一は振り切るように別な道に足を進めた。

 





次回、沼津、崩壊す。
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