魔法科高校の一科生(補欠)   作:komekome

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13話目です
話が詰まってきました・・・


勧誘

 15分後、深雪を生徒会室に送り届けた達哉は、一応、約束したカフェへと向かう。

 

 その入り口には達哉を待つ紗耶香の姿があった。

 

 出来れば帰っていてほしいと思っていたが、そんな事、顔に出さずに暇を持て余している彼女に声をかける。

 

「あ、来てくれたんだ」

 

 と、ごく普通の反応。

 

「中で待っていてもらって構わなかったのですが」

 

「でも、私から誘ったんだし。それに、行き違いになったらなんだしね」

 

 と答える彼女。彼女は達哉が自分を探せなかったら、と考えたのだろうが、そんな事はとんだ杞憂である。

 

 彼女の姿は良く目立ったからだ。

 

 そのような彼女と二人で話をするという事は、またよからぬ話が立つ気がしないでもない。

 

 友人や上司たちの意地の悪い顔を浮かべながら、紗耶香に促されてある席に座る。

 

「それじゃ、何か飲み物買ってくるね。達哉君は何がいいかな?」

 

 コーヒーを、と頼むと、彼女は調子よさげにポニーテールを振りながら飲み物を買いに向かう。

 

 その間に、彼女が自分を誘った理由を改めて考えてみる。第一にはつまらない部活の勧誘。しかし、相手は壬生という、ある噂を持つ生徒だ。その噂の目的のために自分に声をかけたのかも知れない。

 

「おまたせっ。これでいいのかな?」

 

 彼女は達哉にアイスコーヒーを、自分には少し赤みがかったジュースをトレイにのせて運んでくる。

 

 それをそれぞれに配ると、改めて彼の向かいに座り、居住まいを直す。

 

「えっと、それじゃ、改めて自己紹介ね。

 

 2年E組、剣道部主将の壬生紗耶香です」

 

「1年A組の司波達哉です」

 

 最も、補欠ですがね、と自嘲気味に付け足した。

 

「そこは気にする必要がないんじゃない?」

 

 と慰めるような彼女だが、

 

「いえ、そういうわけにはいかないようです。

 

 この制服は烙印のようなものだ」

 

 彼は自分の印章のない胸を見て寂しげに嗤う。

 

 それに対しては曖昧な態度でお茶を濁す紗耶香であったが、話がわき道にそれていることに、本筋に戻そうとする。

 

「じゃ、じゃあ、改めて、先日はどうもありがとうございました」

 

 先日の事―――剣道部乱入事件についてのことだろう。

 

「達哉君がうまい事言ってくれたおかげで大した処分にならなかったし、本当に感謝しています」

 

「いえ、あれは仕事でやったことですから」

 

 と素っ気なく答える。

 

「でも、魔法クラブと揉めたんだもの。もっと大きな処分になっても不思議じゃなかったし、本当にありがとうってみんなも思ってる」

 

 そうですか、と答える達哉。

 

「まあ、今回の事はあたしも悪かったけどね。

 

 でも、ほかの風紀だったらどんなことのなってたか分からないもん」

 

「そうなんですか?」

 

 彼女はうん、と答えると眉を顰め、

 

「これまで結構あるのよ、こういう事で大騒ぎになること。

 

 そういう時に風紀がしゃしゃり出てきて、ややっこしくしてから後は知らんぷり。

 

 正直、たまったもんじゃないわよ、風紀の点数稼ぎのために」

 

 そう風紀委員を非難する彼女であるが、

 

「自分も、一応風紀だったんですがね」

 

 と冷ややかな達哉の突っ込み。

 

「でも、もう辞めたんでしょ。だったらいいじゃない」

 

 あっけらかんという彼女に、最初のイメージとずれがあるな、と彼は思った。

 

「ちょっと、話は変わるんだけど」

 

「何でしょう」

 

「達哉君、剣道部に入ってみない?」

 

「お断りします」

 

 達哉は彼女の勧めに対し、あまりにもあっさりと拒否した。

 

「そう?でも楽しいと思うけど」

 

 彼女はそれを軽く流し、さらに誘いをかける。

 

 その態度に彼は呆れつつ、極めて抑制の利いた声で静かに問うた。

 

「逆に俺が聞きたいです。何故、俺を誘われるんです?

 

 俺が身につけている技は徒手格闘を中心とした技術だ。先輩のいう剣道とは相いれないと言うことは、先輩ほどの腕前なら理解できるはずですが?」

 

 その反論に対しても彼女はほとんど態度を変えず、

 

「そうかな?

 

 確かに剣道と徒手格闘は違うかもしれないけど、一度経験してみるのも悪くないんじゃない?」

 

 にこやかに、暇になったストローで息を吹いて遊びながら言う。

 

 そのしつこさに彼は目まいを感じそうになるが、それは態度に出さない。

 

「逆にお伺いしますが、自分を勧誘するメリットはなんなんです?

 

 それは自分が生徒会の人間だからということですか?」

 

 核心を突いた言葉。これで彼女も黙るだろう。そう達哉は考えた。

 

 が、

 

「そうよねー。達哉君は生徒会の仕事もあるもんね。

 

 だからさ、ちょっと覗いてみるってところから始めてみない?」

 

 ほとんど彼の意見に耳を貸さない紗耶香。いい加減、声を荒げたくなる衝動を抑えつつ、彼はさらに踏み込んだ意見を投げつける。

 

「先輩は確か、非魔法課外活動をまとめて部活連とは違う組織を立ち上げられましたよね?」

 

「そうだけど?」

 

「その組織のために、生徒会に所属している自分をとりこもうとお考えなのですか?」

 

「んー、そんなつもりはないけど?」

 

「なら、何故自分を執拗に勧誘するのです?」

 

「こんなのしつこいうちに入らないと思うけど?」

 

 あくまでアルカイックスマイルを崩さないままの紗耶香。その神経の太さに呆れつつも、さらに彼は切り込む。

 

「何故、非魔法科課外活動を扇動して騒動を起こそうとするのですか?」

 

「騒動なんか起こしてないよ?」

 

「その活動自体が学校の方針に逆らうものでしょう。

 

 この学校は魔法技術が優先して評価される。そのことを先輩は理解されていますか?」

 

「理解してるよ、十分」

 

 理解していればそんな行動に移らないだろうと達哉は思った。どうやら、彼女は自分のやっていることの重大さをほとんど理解していない。

 

 その口調や態度と同様、どうやら考え方も相当軽いようだと今さらながら彼は感じ、それを見抜けなかった不徳に思わず口端が歪む。

 

 どうしたの?と自分の顔を大きな瞳であどけなく覗き込んでくる彼女。

 

「いえ、大した事はありませんよ。

 

 自分は先輩の事を単なる可愛いアイドルとばかり思っていたので」

 

 自分の思い違いに思わず笑ってしまったが、彼女はいまいちピンと来ていない様子。

 

「で、先輩は非魔法クラブをまとめてどうするおつもりなんですか?」

 

 そこで彼女は少し考えを巡らせ、

 

「そうね、あたしたちの考えをまとめて学校側に伝えていくつもりよ」

 

 その迷いのない表情に、彼はもはや何の興味もしめさなかった。

 

「それで、先輩は学校側に意見を伝えてどうなさるおつもりなんですか?」

 

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