魔法科高校の一科生(補欠)   作:komekome

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三話です


予兆

 深雪の答辞は思った通り素晴らしいものだった。

 

 やや内容に不満があったものの、みな一様に喝采を送っていた。

 

 それを見届けて、達哉はクラス分けののカードを受け取りホームルームへ向かう。

 

 そこで、彼は異様な視線にさらされるのだった。

 

 

 辺りからの視線が痛々しい。

 

 彼に向けられる、嘲り、侮り、誹り。

 

 安っぽい優越感と、それから派生する侮蔑がクラスに蔓延する。

 

 そう、周りの連中はウィードではない。

 

 選ばれたるブルーム達だったのだから。

 

 

 達哉が配されたのは1-A。一科生のクラスだ。

 

 周りの連中の胸の印章がこれ見よがしにと見えてくる。

 

 そして、自分の胸を見る度に出るため息。

 

 この印章一つに一科と二科という身分を決定づける力があるのだが、彼の胸には一科であるという証が刻まれていない。

 

 並みの高校生ならそれだけで滅入ってしまいそうなものだが、あいにく彼にはそのような感情は発生しない。

 

 同級生から飛んでくる、ウィード、二科生、出来損ない・・・

 

 多くの罵倒を聞き流しながら、目を閉じて物思いに耽る。(しかし、その罵声には彼の美貌に対する憧憬がその多くを占めてるのだが)

 

 

「人気者だな、劣等生?」

 

 癇に障りそうなセリフを堂々と投げつけてくるソプラノの少年。

 

「お互い様だろ、落ちこぼれ?」

 

 彼はそう返すが、返された少年も、違いない、と笑っている。

 

 彼、瀬呂 蓮も1-Aに配属されていた。

 

 同じ紋無しが自分以外に一人いると思うだけで幾分気分が和らぐ。

 

「そんなっ!?達哉さんは劣等生なんかじゃありません!!」

 

「過ぎた謙遜は嫌味になる」

 

 先ほど知り合ったほのかと雫が、彼に慌てて慰めの言葉を言う。

 

 そういえば、二人とも自分と同じクラスになった時、随分喜んでいた風に見えたが、その理由は彼には分らなかった。

 

 励ましの言葉をかけてくれた二人の頭をぽんぽんと撫でると、二人はとりあえず納得したようだ。

 

 彼はふと、クラスの中を見渡す。 その中でも一際大きい人だかりがある。

 

 中心にいるのは深雪。(当たり前といえば当たり前だが)

 

 大勢の人に囲まれて称賛される彼女を見て、達哉は微笑ましい気持ちになるも、どこか寂しげな風が心に吹く。

 

 ふと、彼女の取り巻きの一人の少年がこちらに向かい、達哉を正面から見据える。

 

 気が強くて、傲慢そうに見える少年。

 

「おい」

 

 彼は面倒くさそうに達哉に声をかける。

 

「・・・なんだ」

 

「なんで、お前」

 

「『二科生ごときが一科のクラスにいるんだ』、か?」

 

 蓮に指摘されたブルームの同級生は思わず声を上げる。

 

「なんだ、図星か」

 

 クスクス笑う美貌の少年の前の顔を赤くして反論しようとするが、

 

「・・・そんなこと言うんですね」

 

「さいてー」

 

 ほのかと雫に追い打ちを受けて、ますます立つ瀬を失う。

 

「・・・よほど、俺のことが目障りなんだろうな」

 

 達哉はそういうと、席を立ちクラスの外へと出ていく。

 

「あ、待ってくださいっ」

 

 その後をぱたぱたと追うほのか達だった。

 

 

 

 翌日も、似たようなことがあった。

 

 食堂で昼食を四人で取ろうとしていた時のことだ。

 

 食堂、といっても流石、未来のエリートを育成するための機関だ。

 

 まるで瀟洒なホテルを思わせる気品と厳かさ。

 

 まだ未熟な若者たちの喧騒がそれなりにあるものの、普通の高校などとは比べ物ににならないくらいに落ち着いた雰囲気である。

 

 そのなか、深雪を中心とした集団が現れる。

 

 「…おい」

 

 彼らの目の前に現れたのは、昨日と同じプライドの高さが表情にまで現れている少年。

 

 なんだ?、と顔を向けさえせずに答える達哉。

 

 「何でそんなところにいるんだ」

 

 そのセリフを聞いて彼は失笑せざるを得なかった。

 

 ここは食堂だ。となれば食事を取りに来たに決まっている。

 

 となれば彼の発言の意図は明らかだ。

 

 ブルーム崩れの補欠には似つかわしくない。即刻たちされ、ということだろう。

 

 「…へえ、随分な度胸だな、お前」

 

 若干の苛立ちを込めた視線を少年にぶつける蓮。

 

 椅子を蹴って立ち上がった少女のように華奢な少年が、明らかに体格差の少年に向かい僅かばかりの怒気を放つ。

 

 それに彼は思わずたじろぎ、怯えを顔に映すが、それ以上の無様を晒すことはなかった。

 

 この小競り合いが衆人の注目を集めている。

 

 そうなれば自分たちの不利は免れない。

 

 ブルームとウィード。

 

 どちらがこの場にふさわしくない一目瞭然だった。

 

 達哉たちに向けられる嘲笑。

 

「ウィードのくせに・・・」「なんだよ二科が・・・」「早く行けよ、うっとおしい・・・」

 

 嘲り誹り詰り、自分たち以外のものを排除しようとするくだらない感情。

 

 それを感じた達哉はあきらめてこの場を立ち去ることにした。

 

 その時、深雪が何かを言っていたようだが、それが彼の耳に届くのには少しばかり喧噪が大きくなりすぎていた。

 

 そして、ついに事件は起こった。

 

 

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