お約束の○○会です
30分後、第三演習室に彼らの姿があった。
「それでは模擬戦を始めるわけだが、二人とも準備はいいか?」
審判と務める摩利に聞かれ二人は返事を返す。
「大丈夫です」
「問題ありません」
そして、二人は最後のCADの確認に入るが、その中、あずさが目ざとく達哉の使うCADに目をつける。
「司波くんのCADって汎用型じゃないんですね」
「ええ、汎用型を使いこなすには処理能力が足りてないので」
その言葉を聞いた服部があざけりの冷笑を浮かべたが、そんなものでは達哉の感情に何の小波も立てない。
しかし、そんなことお構いなく、あずさの興味は達哉の使う拳銃型のCADに向いており、
「あれ?それって、シルバー・ホーンなんじゃないですか?」
「ええ、そうですが」
調整を続ける彼は視線を移さず、声だけで返事を返す。
「凄いですねぇ、シルバー・ホーン!!
汎用モデルのはずなのに、限定品並みのプレミア率なんですよ。
まさか、この目で見られる日が来るなんて!!」
場違いに興奮するあずさに驚きを隠せないが、今はそれ以上相手にしている暇はない。
「今は、これ以上お見せできませんが、後程、ある程度なら手に取っていただいてもいいですよ」
その申し出に、
「本当ですか!?
うわぁ~、楽しみだなぁ」
まるであどけない子供のような顔を見せる彼女に思わず苦笑するが、このやりとりは相手である服部からも見えていた。
その様子にますます苛立ちを募らせていくのがわかる。
「中条、もういいか?」
摩利に促され、思わず我に返ったあずさが、ちょこんと身をすくめて後ろに下がる。
その小動物のような姿は見ようによっては微笑ましいものなのだろう。何故、真由美があーちゃんなどと呼ぶのかその理由の一端が見えたような気がする。
「それでは、ルールを説明するが・・・」
摩利が幾つかの細かいルールを告げる中、服部の頭では次のようなことを考えていた。
恐らく、自分とあの補欠では処理能力に差がありすぎて勝負にならないだろう。単一系移動魔法で壁にでも叩き付ければ勝負はつく。
今さらながら分かりきった勝負。
目に見えたつまらないものをわざわざ買ってしまった。
これから共に仕事をする生徒会の肉親を傷つけることはあまり好ましいことではないと今更後悔するが、仕方ない。
人間には生まれ持った分というものがあり、それを世間知らずに思い知らせてやるのが一科生の義務だろう。
二科崩れの補欠が生徒会に入るなどという不遜は放っておけば必ず害になる。
ここは力の差を見せて瞬殺し、その惨めな姿をさらさせてやることこそが、生徒会のためになるというものだ。
彼は風紀委員長の説明を聞き終えると、開始線へと立つ。
また、対戦する補欠生徒も開始線にある。
一瞬、流れる静寂。
「始め!!」
審判の合図とともに試合が開始された。
彼の意識が手元のCADに向かったその瞬間、
「何!?」
目の前に達哉の姿があった。
思わず悲鳴に近い声を上げた彼は、慌てて魔法の座標を修正する。
しかし、彼の意識はそこまでだった。
演習室の壁にたたきつけられ、そのまま意識を失う。
その光景を間近で見ていた審判の摩利やほかの生徒会役員たちも呆然とした顔をしていた。
「先輩」
達哉の声に促されて、ようやく彼女も勝ち名乗りを上げる。
「・・・勝者、司波達哉」
まさしく服部が行おうとしていた秒殺劇。それが単なる補欠である達哉によってなされたのだ。
彼は倒れ伏した対戦者にも、また自身の勝利にも何の関心も示さず、その顔には勝利の余韻など微塵も感じさせなかった