魔法科高校の一科生(補欠)   作:komekome

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9話です

勝利の余韻に浸る・・・ってより勝負の後の答え合わせ的な感じがががが

あと、服部君が役得です


余韻

 彼は倒れ伏した対戦者にも、また自身の勝利にも何の関心も示さず、その顔には勝利の余韻など微塵も感じさせなかった

 

 

「・・・達哉君、今のは―――」

 

 観衆が呆然とする中、一人愛用のCADを片付けようとしていると(倒れた服部を深雪が介抱しているのは気に食わないが)、驚きながらも合点のいかない様子の摩利が声をかけてくる。

 

「開始以前に魔法は使用していませんでしたよ?

 

 それは委員長も知っておいででしょう」

 

 図星を突かれ、声を失う摩利。

 

 彼女が聞きたかった点はまさにそれだ。

 

 開始直後に見せた達哉の異常な加速。魔法でも使わない限り有り得ないような圧倒的な速さ。

 

 確かに彼は魔法を使っていない。自分がそれを見張っていたのだから。しかし、それでもなお納得がいかない程の驚異的な速さだった。

 

「しかし、あれほどの速度を・・・」

 

 まだ、食い下がろうとする彼女に達哉は少し失望の念を隠さないが、

 

「いいや、あれは単なる肉体的な速度だ。お前もわかっているんだろう?」

 

 蓮の挑発的な言い草に思わず声を荒げそうになるが、

 

「兄は、九重八雲先生から指導を受けておりますので・・・」

 

 と、割って入った、やや控えめな声の深雪が訳を説明する。

 

「・・・九重八雲、だと?」

 

 その名前に、委員長の眉が微かに動く。

 

「九重八雲って、あの忍術使いの九重八雲の事!?」

 

 興奮したように言ったのは真由美の方だ。

 

 およそ魔法師の中で彼の名前を知らない者はいない。

 

 数少ない忍術の継承者にして現代屈指の格闘戦の名手、九重八雲の名を。

 

 現代を生きる魔法師にとって、その名声はあまりにも通り過ぎているが、本人に会った事のある魔法師は多くない。正に現代を生きる忍者そのものだった。

 

「じゃあ、今の加速・・・」

 

「大したものじゃありません。単なる基本に過ぎませんよ」

 

 唸る様に発したあずさの呟きに、水でも流すようにさらりと答える。

 

 この様なものは本当に些末なものだと言いたげに。

 

「しかし、先程の一撃は・・・」

 

 少し眉を顰めながら呟く市原に、

 

「あれは忍術ではありませんよ」

 

「えっ?そうなの

 

 単にサイオンの波を放っただけに見えたんだけど・・・」

 

 彼の答えに反応したのは市原ではなく興味津々な真由美の方だった。

 

「正解です。単に単一系のサイオンの波を作り出しただけですよ」

 

「それじゃはんぞーくんが倒れた理由がわからないんだけど・・・」

 

「錯覚です」

 

「錯覚?」

 

「魔法師はサイオンの波を光や音と同じように知覚する。

 

 それに曝された魔法師は実際に自分の体を揺さぶられたように感じる、だろ?」

 

 蓮が小悪魔っぽい笑みを浮かべながら注釈する。

 

「でも、魔法師は普段からサイオンの波には慣れてるじゃない?

 

 それなのに、立っていられないほどの波動なんてどうやって・・・」

 

「波の合成、だろ?」

 

「瀬呂くん?」

 

「振動数の異なるサイオン波を三連続で作り出し、三つの波がちょうど服部君と重なる位置で合成されるように調整して、巨大波を作り出した、そうだろ?」

 

 宿題の答え合わせでもすました子供のような蓮の得意げな解説に反して、思わず息を呑む。そんな精緻な計算をどうやって・・・。

 

「まあ、お前くらいなら容易いだろうな。

 

 流石は――――」

 

「ストップだ。それ以上言はいいすぎだ」

 

 窘められると、へいへいとぼやきながらも大人しく引き下がる蓮。

 

「でも、座標・強度・持続時間に加えて、振動数や波長まで変数化するして魔法を撃つなんて、そんなことが・・・」

 

 今度こそ言葉を失った真由美に肩を小さく竦め、

 

「多変数化は処理速度としても演算規模としても干渉強度としても評価されない項目ですからね」

 

 達哉は自嘲的にとも取れる口調で吐き捨てるように言った。

 

 ふと深雪の方に目をやると、ようやく服部が目を覚ます。

 

「大丈夫ですか?」

 

 との深雪の心配そうな声に軽く手をふり「大丈夫」と答える。

 

 尚も頭を押さえる彼に、深雪は申しなさげに、

 

「すいません、兄が大変な失礼を・・・」

 

「いえ、こちらこそ、介抱までしてもらって・・・」

 

 そう言うてようやく起き上がると、彼女に向かい襟を正し、

 

「どうやら目が曇っていたのは私の方のようだ。

 

 どうか許してほしい」

 

「いえ、私のほうこそ・・・」

 

 と互いに顔を合わせて謝りあうと、二人とも何となく笑えて来る。

 

「それじゃ、部屋に戻りましょうか?」

 

 二人の様子を見て、一件落着と思った真由美の声に促されて皆が演習室を後にする。

 

 その最中でも、服部は達哉に目を合わせようともしない。

 

 どうやら徹底的に無視する方向で行くつもりのようだが、こちらとしては一向に構わないが、何だが笑いがこみ上げてくる。

 

「やれやれ、魔法師は常に冷静であるべき、じゃねーのかね?」

 

 と人の悪い友人の声を聞きながら。

 

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