宇宙人ジョーンズ︰幻想郷調査延長記録   作:もっちい

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宇宙人ジョーンズ:農民(どてら装備)


滞在記録:農村その8  後編

 

 

 ――この惑星の住人は、時に利益すら度外視した「感情」に振り回される。

 

 

 

※ ※ ※穣子の部屋※ ※ ※

 

 

『ウオーーーーーーーッ!!!』

 

「っ、今のは!」

 

「ま、まさかジョーンズさんが屋根から!?」

 

「なんてこった!(モグモグ、ゴクリ)」

 

 

「(ガラッ)ねえジョーンズさん大丈夫(ゴオオオオオオオ)…うっ!!」

 

「穣子様、下がって! 吹雪が強すぎる!」

 

「こりゃひでえ、あっしの視力でも山が見えやしねえ」

 

「とにかく、これ以上戸を開けてるのは危険だ。一旦閉めよう(ガラガラ、ピシャン)」

 

「待って! 私が探しに行く!」

 

「無茶です、風が強くて立ってるのさえ難しいのに!」

 

「(ガラッ)あっ! 二人共見えました! ジョーンズさんが向こうまで飛んで行ってる!」

 

「何、見えないけど吹き飛ばされてるって事!?」

 

「きりもみしてるんで間違いねえ! …あっ、雲の中に」

 

「畜生、俺も飛べれば……!」

 

「私なら飛べるけど、これじゃ正直50mも行かないうちに氷漬けになる自信があるわね」

 

「んー! んー!(ピョンピョン)」

 

「心配なのは分かるわ姉さん。 でも今の私達にはどうにも出来ないの」

 

「ほら、目から光線を出せるジョーンズさんの事だ、きっと飛んで帰って来まさあ」

 

「俺はちょっと楽観は出来ないけどな……ん?」

 

「だから穣子様も、あっし達と一旦中に戻りま……ん?」

 

「「姉さん?」」 

 

「って何だ?」「何ですかい?」

 

「……あ」

 

 

 

 ――この惑星の言葉で、「意地を張る」と呼ぶようだ。

 

 

 

「へえ! お饅頭がいきなりお嬢さんになった!!」

 

「何だこりゃ……今まで、化けてたって事なのか?」

 

「えっとね、これはね、あのその」

 

「……穣子、もう良いの」

 

「ね、姉さん」

 

「元々は私の我儘です。 ……今まで騙して、ごめんなさい(スタスタ)」

 

「待って下せえ! あなた様はもしかしなくても、秋祭りの時の静葉様ですかい!?」

 

「ええ。そして穣子と違って、あなた達人間には役立たずの神様でもあります」

 

「…ちょっと、姉さん」

 

「事実よ。穣子は豊穣の力で信仰を得られるけど、私は精々葉っぱ一枚一枚に色を塗っていくだけ」

 

「ようやく紅葉景色が出来ても、見せようと思った穣子は人間達と一緒に田畑仕事」

 

「ねえ穣子、以前あなたは私の紅葉を羨ましい、なんて言ってましたね」

 

「姉さん……」

 

「何が紅葉の神ですか。みてくればかり着飾っても、誰も見てくれないのに」

 

「穣子まで離れちゃったら……!」

 

 

 

――これはまた、難儀な生態もあったものだ。

 

 

 

「それは違うぞ、静葉様」

 

「えっ?」

 

「俺もこの村でそれなりに農家やってるが、毎年の紅葉は結構楽しみにしてるんだ」

 

「稲刈りを始める前の田は稲穂が出来てるだろ? 傍にしばらく座って山を見てるとな」

 

「……風で揺れる稲穂と、遠くの山の紅葉が凄く美しいんだ」

 

「そうそう! それに静葉様、紅葉が落ちた後だってあっし達の役に立ってるんでさ!」

 

「落ちた……後?」

 

「腐葉土、って奴でさ。 落ち葉を集めて埋めておくと、これが凄く良い肥料になりまっせ」

 

「ひ、肥料……」

 

「なあお前、もう少しマシな言い方は無かったのか?」

 

「いや、だって実益が全く無い、なんて言われたもんで」

 

「…それでも、穣子は豊かさと稔りの象徴、私は寂しさと終焉の象徴」

 

「私は元々、人里に居るべきでは無いんです。 なのに、可笑しいですよね」

 

「……私自身が、寂しいと思っちゃうなんて」

 

「何だ、要するにそういう事か」

 

「…え?」

 

「そうそう。 寂しいって言ってくれないと、難解過ぎてあっしらには分からんです」

 

「なあ静葉様、さっきあなたは自分を寂しさと終焉の象徴、なんて言いましたね」

 

「でも秋が終われば冬が来る。そして春になって夏が来て……その次は何が来るんです?」

 

「あ……!」

 

「終わりが来るって事は、また何か始まるって事だ。俺達農家はずっと繰り返してきた」

 

「その通りでっせ! あっしの言った腐葉土だって、それが次の紅葉と豊穣になるんでさ」

 

「まー、つまりあれだ。 ……お二人が揃って初めて、ちゃんとした秋が来るんだ」

 

「だから、別に変な生き物に化けなくても、ここに居て良いんじゃないか?」

 

「……!!」

 

「なに、どうせ村長も首を横には振らないさ」

 

「それに、この村にも華が足りなかったと「一言余計だ」痛っ!!」

 

「あら、それだと私に華が無いみたいじゃない。これでも少しは気にしてるのよ?」

 

「へえ穣子様、すんません。 見てくれだけだって言うもんでつい」

 

「……ふふ、ありがとうございます」

 

 

 

 ――ただ…。

 

 

 

「フォッフォッフォッ、話は聞かせてもらいましたぞ」

 

「あら、村長さんじゃない」

 

「村長さん! 前回と登場セリフ同じな村長さんじゃないですかい!」

 

「お前も一言多いんじゃ阿呆! ……さて、話を戻そうかの」

 

「静葉様だったかの? 秋の祭りでは挨拶も出来なかったが、見事な舞いでござった」

 

「あ、ありがとう…ございます」

 

「村長さん、姉さんは結構人見知りするのよ? 元々人と関わる事なんて無かったもの」

 

「おや、これは失礼」

 

「それにしても村長、よくこんな吹雪の中を通って来れましたね」

 

「吹雪? ああ、それならさっき止んだ所じゃよ」

 

「何だって?(ガラッ)うわ、本当だ」

 

「……あっ! 皆山の方を見て下せえ! ジョーンズさんが!」

 

 

 

 ――この惑星にはもう一つ、

 

 

 

「へえ、実は飛べるんじゃないかと思ってたが、平泳ぎとはな」

 

「…やっぱりあの方、只の人間ではなかったのですね」

 

「へえ。目から光線なんて出してたけど、やっぱり飛べるのね」

 

「ほう、これで村の皆が揃った訳じゃな。 さ、始めるとしようかの」

 

「あら、もうそろそろ夜になるってのに何を始めるの?」

 

「静葉様の歓迎会じゃよ。 なーに村の者達を呼んで準備は出来ておる」

 

「…やけに手が早いのね」

 

「悪事に限らず噂千里を走ると言うてな。 村の中なら尚更じゃよ」

 

「少なくとも穣子様が饅頭、いや静葉様を抱えて来た時点で察しはついておったわ」

 

「では静葉様も来て下され。 あなた様が望むなら、儂らはいつでも歓迎しますからの」

 

「はい……!」

 

 

 

 ――雨降って地固まる、という言葉もある。

 

 

 




数日掛かり、駆け足なのに冗長、見切り発車の最悪コンボです……。

そして申し訳ありません。次回、最終回です。
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