――この惑星の住人は、時に利益すら度外視した「感情」に振り回される。
※ ※ ※穣子の部屋※ ※ ※
『ウオーーーーーーーッ!!!』
「っ、今のは!」
「ま、まさかジョーンズさんが屋根から!?」
「なんてこった!(モグモグ、ゴクリ)」
「(ガラッ)ねえジョーンズさん大丈夫(ゴオオオオオオオ)…うっ!!」
「穣子様、下がって! 吹雪が強すぎる!」
「こりゃひでえ、あっしの視力でも山が見えやしねえ」
「とにかく、これ以上戸を開けてるのは危険だ。一旦閉めよう(ガラガラ、ピシャン)」
「待って! 私が探しに行く!」
「無茶です、風が強くて立ってるのさえ難しいのに!」
「(ガラッ)あっ! 二人共見えました! ジョーンズさんが向こうまで飛んで行ってる!」
「何、見えないけど吹き飛ばされてるって事!?」
「きりもみしてるんで間違いねえ! …あっ、雲の中に」
「畜生、俺も飛べれば……!」
「私なら飛べるけど、これじゃ正直50mも行かないうちに氷漬けになる自信があるわね」
「んー! んー!(ピョンピョン)」
「心配なのは分かるわ姉さん。 でも今の私達にはどうにも出来ないの」
「ほら、目から光線を出せるジョーンズさんの事だ、きっと飛んで帰って来まさあ」
「俺はちょっと楽観は出来ないけどな……ん?」
「だから穣子様も、あっし達と一旦中に戻りま……ん?」
「「姉さん?」」
「って何だ?」「何ですかい?」
「……あ」
――この惑星の言葉で、「意地を張る」と呼ぶようだ。
「へえ! お饅頭がいきなりお嬢さんになった!!」
「何だこりゃ……今まで、化けてたって事なのか?」
「えっとね、これはね、あのその」
「……穣子、もう良いの」
「ね、姉さん」
「元々は私の我儘です。 ……今まで騙して、ごめんなさい(スタスタ)」
「待って下せえ! あなた様はもしかしなくても、秋祭りの時の静葉様ですかい!?」
「ええ。そして穣子と違って、あなた達人間には役立たずの神様でもあります」
「…ちょっと、姉さん」
「事実よ。穣子は豊穣の力で信仰を得られるけど、私は精々葉っぱ一枚一枚に色を塗っていくだけ」
「ようやく紅葉景色が出来ても、見せようと思った穣子は人間達と一緒に田畑仕事」
「ねえ穣子、以前あなたは私の紅葉を羨ましい、なんて言ってましたね」
「姉さん……」
「何が紅葉の神ですか。みてくればかり着飾っても、誰も見てくれないのに」
「穣子まで離れちゃったら……!」
――これはまた、難儀な生態もあったものだ。
「それは違うぞ、静葉様」
「えっ?」
「俺もこの村でそれなりに農家やってるが、毎年の紅葉は結構楽しみにしてるんだ」
「稲刈りを始める前の田は稲穂が出来てるだろ? 傍にしばらく座って山を見てるとな」
「……風で揺れる稲穂と、遠くの山の紅葉が凄く美しいんだ」
「そうそう! それに静葉様、紅葉が落ちた後だってあっし達の役に立ってるんでさ!」
「落ちた……後?」
「腐葉土、って奴でさ。 落ち葉を集めて埋めておくと、これが凄く良い肥料になりまっせ」
「ひ、肥料……」
「なあお前、もう少しマシな言い方は無かったのか?」
「いや、だって実益が全く無い、なんて言われたもんで」
「…それでも、穣子は豊かさと稔りの象徴、私は寂しさと終焉の象徴」
「私は元々、人里に居るべきでは無いんです。 なのに、可笑しいですよね」
「……私自身が、寂しいと思っちゃうなんて」
「何だ、要するにそういう事か」
「…え?」
「そうそう。 寂しいって言ってくれないと、難解過ぎてあっしらには分からんです」
「なあ静葉様、さっきあなたは自分を寂しさと終焉の象徴、なんて言いましたね」
「でも秋が終われば冬が来る。そして春になって夏が来て……その次は何が来るんです?」
「あ……!」
「終わりが来るって事は、また何か始まるって事だ。俺達農家はずっと繰り返してきた」
「その通りでっせ! あっしの言った腐葉土だって、それが次の紅葉と豊穣になるんでさ」
「まー、つまりあれだ。 ……お二人が揃って初めて、ちゃんとした秋が来るんだ」
「だから、別に変な生き物に化けなくても、ここに居て良いんじゃないか?」
「……!!」
「なに、どうせ村長も首を横には振らないさ」
「それに、この村にも華が足りなかったと「一言余計だ」痛っ!!」
「あら、それだと私に華が無いみたいじゃない。これでも少しは気にしてるのよ?」
「へえ穣子様、すんません。 見てくれだけだって言うもんでつい」
「……ふふ、ありがとうございます」
――ただ…。
「フォッフォッフォッ、話は聞かせてもらいましたぞ」
「あら、村長さんじゃない」
「村長さん! 前回と登場セリフ同じな村長さんじゃないですかい!」
「お前も一言多いんじゃ阿呆! ……さて、話を戻そうかの」
「静葉様だったかの? 秋の祭りでは挨拶も出来なかったが、見事な舞いでござった」
「あ、ありがとう…ございます」
「村長さん、姉さんは結構人見知りするのよ? 元々人と関わる事なんて無かったもの」
「おや、これは失礼」
「それにしても村長、よくこんな吹雪の中を通って来れましたね」
「吹雪? ああ、それならさっき止んだ所じゃよ」
「何だって?(ガラッ)うわ、本当だ」
「……あっ! 皆山の方を見て下せえ! ジョーンズさんが!」
――この惑星にはもう一つ、
「へえ、実は飛べるんじゃないかと思ってたが、平泳ぎとはな」
「…やっぱりあの方、只の人間ではなかったのですね」
「へえ。目から光線なんて出してたけど、やっぱり飛べるのね」
「ほう、これで村の皆が揃った訳じゃな。 さ、始めるとしようかの」
「あら、もうそろそろ夜になるってのに何を始めるの?」
「静葉様の歓迎会じゃよ。 なーに村の者達を呼んで準備は出来ておる」
「…やけに手が早いのね」
「悪事に限らず噂千里を走ると言うてな。 村の中なら尚更じゃよ」
「少なくとも穣子様が饅頭、いや静葉様を抱えて来た時点で察しはついておったわ」
「では静葉様も来て下され。 あなた様が望むなら、儂らはいつでも歓迎しますからの」
「はい……!」
――雨降って地固まる、という言葉もある。
数日掛かり、駆け足なのに冗長、見切り発車の最悪コンボです……。
そして申し訳ありません。次回、最終回です。