「いやあ助かったぞ、まさか『タクシー』を拾えるとは」
「…………」
「自力で帰れない事も無いんじゃが、人里の飲み屋にちと長居し過ぎたからの」
「…………」
「しかしおぬしも、随分とけったいな商売をしておるのう」
「…………」
「文明の利器たる自動車があるのは分かる。流れ着く以外に持ち込まれる事もあるしの」
「…………」
「ただ、今のおぬしの商売、どうしたって儲かるとは思えないんじゃよ」
「ここ幻想郷は妖怪に神々の天下。 人間は人里に集まって暮らしておるし、遠くに出向くような用事を持つ者は少なくとも儂は知らなんだ」
「そして力ある人間、また儂のような人ならざる者は皆身一つで空を飛べる」
「……一体どこに需要があると言うんじゃ?」
「…………」
「にも関わらず儂が千鳥足で店を出た途端、タクシー後方のドアを開けたおぬしが待ち構えていた」
「以前は気にも留めなかったが、怪しげな術を幾つも使う癖に妖気の類がまるで感じられん」
「それに何の動きも無い所を見るに、どうやらあのスキマ妖怪ですら気づいておらんようじゃな」
「…………」
「当ててやろう。 おぬしは恐らく月どころか『外』、それも空の遥か彼方よりやって来たと見た」
「………!」
「おっと、だからと言って事を構える気は無いわい」
「年だけならここの長生き連中には負けるが、儂とて知り合いに呼ばれるまでは『外』でそれなりの時間を過ごしておる。単にお前さんのような者を何度か見た覚えがあっただけじゃよ」
「今のおぬしはタクシー運転手で儂は客。 命蓮寺に着くまでの間位、愚痴の一つも聞いてもらえんかの?」
「…………」
「この星で起きる事はむかーしから訳のわからん事ばかりじゃった」
「…………」
「特に最近は全く訳が分からん。 『外』もここもな」
「ただの野良狸だった頃からずっと見てきたが、今程皆が下を向いている時代はなかったかも知れんな」
――ただ…。
「…………(カチッ)」
~♪ ~♪ ~♪
「ほう、『上を向いて歩こう』か……中々に味のある良い曲ではないか」
「……ふむ、雲一つない満点の星空に満月。 清々しい程良い眺めじゃの」
「……こうしてゆっくり見上げる機会も、あまり無かった気がするわい」
「………(パチン)」
「ほうっ、流星か! 見上げた途端にこれとは、面白い偶然もあったものじゃ」
「……」
(おぬしも、随分と味な事をしてくれるものじゃの)
――この惑星の住人は何故か、
「おっと、寺が見えてきた。 儂はそろそろ降りるとするぞ」
「ワカリマシタ」
「おぬし、以前に関わった者や場所を避けているように見えたのでな」
「…………」
「寺まで少し距離はあるが、ここからは自分で歩いていくぞ」
「おっと、これは乗車賃と……チップ代わりじゃ」
「……!」
「おぬしの好みは寺で見たから知っておるぞ、楽しませてくれた駄賃だと思ってくれ」
「それと最後にもう一つ。おぬしがどの位この星に留まっているのか、儂は知らぬ」
「だがここの中でさえ、理解が及んでいる物は少ないのではないか?」
「…………おぬし、まだ先は長いぞ」
「…………(プシュ)」
「…………(ゴクッ)」
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アオーン
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――上を向くだけで元気になれる。
構成:CMとある老人篇
タクシー:同上
流星:CMヘッドライト・テールライト篇
楽曲:上を向いて歩こう(タイトルのみ)
このくだりはどうしても欲しかったのですが、タイトルのみなら大丈夫のはず(震え声)
Q最後のは何?
A作中で満月と語られています。後は分かりますね?