これは私の遺書です。
私は産まれながらに罪悪を抱えていました、それは例えば先祖の業であるとか因縁であるということではなくて、私自身が産まれながらに人間として劣悪であったということです。
私が求めていたものは、それ自体が私の人生としての命題であり意味でありましたが、それと同時に私の罪悪でもありました。
私が求めたものとは、日常的な心の拠り所であり、普遍的な安心感です。
私は能動的な劣等感と受動的な悪意に日々悩まされていましたが、それに張り付くようにして譲れないものがありました。
他人に尊厳を踏みにじられる、唯この一点のみが私のその譲れない部分であったのです、これは非常な矛盾です。その上、そのことが私の心を平穏からは遠ざけていったのです。
私の精神は私の人間的で変態的な欠陥を快く受け入れてくれたので、私は他人からの評価も相成り人間でいることが出来ました。
何かが何かである為と存在をしている為に必要なものは認識と定義であり、私は他人から人間であると認識され、分類として人間というカテゴリーに当て嵌まるから人間として生きて居ることが出来たのだと言う他ありません。
勘違いしないでいただきたいのですが、私は理解者を渇望していたわけでも無ければ判ったような口を叩かれたくもないのです。
言うなれば、認めて欲しかったのです。私はただ、私のみを私だと肯定して貰えたら満足でした。
けれども、平平凡凡かつ姦譎なるこの私が如何して誰かからの無類の愛を貰えるのでしょうか、勿論そんなことは最後までありませんでしたし、きっと、私のこの内なる浅ましき自己肯定は見透かされていたのだと思います。
私はもう直ぐ死ぬのでしょう、殺されたと他人からは判断されますし物理的な視点から観たらそうかも知れませんが、私が死に行く理由も原因も自殺です。確実に自殺なのです。
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白痴染みた思考を書き殴ってある紙は音を立てて丸められた。
手に馴染むペンで書かれたのだろう、少し癖のある右上りの、けれど美しい文字は所所が掠れており、内容に反して暖かみを感じさせた。
丸められた紙は炎で焼かれ、もう二度と誰の眼にも触れる事は無いのだろう。
男は、紙を灰にした張本人である男は、その片手いっぱいにもなった灰をなんの躊躇いもせずに口に含むと、ゴクン・と飲み干した。喉がヒグヒグと痙攣するように動く。
そして、何事も無かったかのように少し前までずっと続けていた書類の整理へ戻ったのだった。