断罪の姫と正義の剣   作:Vaan

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chapterⅡです。
よろしくお願いします。


ChapterⅡ

────あれから一週間が経った。

 

学校に登校し、授業を受け、昼御飯を食べて、友達と喋って、また授業を受けて、終わって下校して……─────その毎日毎日の繰り返し。

 

当たり前の日常だ。

まあ、不満があるでもなく、楽しくないわけでもない。

勉強や運動は好きではないし、授業も居眠りすることが多いが、それなりに生活は充実している。

 

今日も朝早くに、この町にある学校にちゃんと登校する。

 

俺が住む、この町の名は「天橋(あまばし)市」。

熊本県にある町で、人口は約6万人。戦後に完成された田舎町で、都会の建物と比べれば、住宅街や田圃ばかりである。

その割に遊園地や展望台、大きなゲームセンターなど娯楽も万全であり、そこそこ住みやすい町の部類だろう。

 

しかし、この町はともかくとして、周りの町では何故か連続殺人が起きてたりと、少々厄介事があったりする。

 

オカルト的な噂もあり、割と物騒ではあるので、精々住まずに遊びに出入りする程度が丁度良いかもしれない。

 

 

「───よう。今日も眠そうだな」

 

ふと、声を掛けてきたのは小湊龍雅。俺の親友。

 

二人とも別ではあるが、学校近くのアパートを一人暮らしで借りていて、登校時間が被ると偶に鉢合わせすることがある。

 

「おう、早いな今日。

いつもぎりぎりまで寝てるのに」

 

「薊より不真面目だからな、俺は」

 

「よく言うよ…」

 

俺達は互いに両親はいなく、既に他界している。

俺は元々諏訪原というところに住んでいたのだが、10年前にそこで両親は交通事故で死んでしまった。

それからというもの、親戚の家から家へと転々と盥回し。

いろいろあって今に至るわけだ。

 

龍雅のことに関しては正直よく知らない。

彼の両親が既に亡くなっていることは知っているが、詳しくは聞いていない。

元々聞く気はないし、俺自身のことも話していない。

龍雅が言いたい時に言い、聞きたい時に聞けばいいだろうと思う。

 

 

「それじゃあ、俺こっちだから」

 

いつもの通学路を二人で歩き、俺達の通う「蕗之ヶ丘(ふきのがおか)高等学校」へと到着する。

 

「ああ、またな」

 

靴箱にて靴を履き替え、各々の教室へと向かった。

 

残念ながら龍雅とは別のクラス。

学校内で合うのは、稀に移動教室なんかで鉢合わせぐらいとなる。

それ以外だったら、昼御飯の時に屋上で一緒に食べてるぐらいだろうか。

 

「……そういや薊。疲れた顔してっけど、お前ちゃんと寝てる?」

 

「あ…ああ、ちょっと寝付けなくて……」

 

実は最近、疲れが溜まる一方で全く取れていない。

いつも通りの生活を送っているはずだが、体の調子が一日中悪く、ストレスが溜まっているのか、ちょっとしたことでイライラしてしまう。

 

「ふーん…。ま、なんかあった時は俺に言えよ」

 

顔に出ている程に疲れていたとなると、今後どうにかする必要がある。

心配されるというのはどうも苦手だし、特に龍雅に心配は掛けたくない。

 

「ありがとう。でも大丈夫だから、心配しないでいい」

 

手を軽く振った俺は、足早に自分の教室へと向かった。

 

何故こんなことになっているのか。

理由はいくら考えても分からなかった。

特別何かをやっている訳でもなく、何かにストレスを感じている訳でもない。

病院に行って相談とかもしてみたものの原因は分からず。

精神安定剤みたいな薬を処方されたり、カウンセリングに適当なことを言われたり、散々だった。

身体の異変の元凶を知ることが出来れば対処もできるはずだが………。

 

思い当たることと言えば、やはりあの時の──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────朝のHRにて。

 

「ほら席に着けー。始めるぞー」

 

先生の声により、クラスの皆が一斉に自分の席へと着き始める。

椅子と床が擦れる音が、暫く辺り一面に鳴り響く。

その音がある程度静まった所で、先生がよく通る声で皆にあることを伝えた。

 

「実は今日皆に紹介しなきゃならなくてな。うちに転入生だ」

 

先生の言葉に教室中が再びざわつく。

確かに皆のリアクションも理解できた。

 

この中途半端な時期に転入生というのはまず珍しい。

そもそも、この学校に転校してくる生徒自体余りないことではある。

まあ、珍しいだけではなく、半分くらいはどんな人なんだろうという期待の騒がしさだろうが…。

 

「それじゃあ、入ってきてくれ」

 

先生の合図から教室の前の扉がスライドし、学校指定の制服を着た少女が姿を現した。

 

「初めまして」

 

少女は前に立つと、そう言ってニコッと笑いお辞儀をする。

 

まあ、なんて言えばいいのだろうか。

とても綺麗で可愛い女の子だ。

第一印象はそんな感じ。

 

一色(イッシキ)(アオイ)です。これからよろしくお願いします」

 

髪は黒髪でストレートに背の辺りまで伸び艶やかで、顔も小顔で肌も白い。

身長は女性の平均身長ぐらいだろうか。

スカートから見える足はとても長く細く、程良く締まっている。

体つきも日本人とは思えないようなプロポーションで、彼女を見たクラス中がさらにざわついた。

実際、俺自身も好みこそあるだろうが、この地域でここまで美しい女性を見たことがない。

 

「それじゃあ一色は窓側の一番後ろに着いてくれ……藤真の隣だな」

 

実は何となくは分かっていた。

俺の隣には過去にはなかった、一つ空席の机と椅子があった。

その時点で転校生が来るのかもという予想と、俺の隣へと指定されるだろうとは思っていたのだ。

 

先生から言われ一色葵という少女は俺の隣の席へとやってくる。

 

「えっと…藤真君って先生が言ってたよね」

 

椅子に座った彼女は隣の俺へと声を掛けてきた。

 

「これから席が隣同士、よろしくね」

 

「あ、ああ…よろしく」

 

クラス中に見せたような笑顔を俺へと向けた。

この美しい微笑みを見せつけられ、実際悪い気はしないものだ。

どこかこそばゆく感じるものがある。

 

が、何故だろう。

彼女はを見ていると、必要以上に既視感を覚える気がした。

 

 

────時は経ち、昼休み。

俺はいつものように、屋上で待っている龍雅の元へと向かおうと思っていた。

 

しかし、今日はそれを引き留める者が現れることとなった。

 

「藤真君。ちょっとお願いがあるんだけど……」

 

今日転校してきたばかりの女子生徒、一色葵。

その彼女だった。

 

「昼休みと放課後を通して、学校中を見回ろうと思ってて……。

だから良かったら、藤真君に学内を案内してほしいんだけど……駄目かな?」

 

転校生からのお誘い。

正直、何故俺なんだろうと思わざるをえなかった。

彼女は休み時間ごとにいろんな人間に囲まれ、質問攻めにされていた。

その中で気の合う同級生もいたかもしれない。

 

なのにだ。

彼女は昼休みに入ったと同時に、彼女の周りに集まってきた人混みを掻き分け、俺の元へとやって来てこの台詞。

 

クラス中から浴びせられるいろんな念を含んだ視線が、俺へと突き刺さる。

 

「べ、別にいいけど……」

 

断る選択肢もあったわけだが、俺の性格上の問題もありどうも断り辛い。

それに一刻も早く、皆の注目の的から離れたかった。

先程からひそひそと、俺達のことを勘繰るような言葉が聞こえてきていた。

 

「ありがとう。それじゃあ早速行こ」

 

まあ、少し遅れることにはなるが、この転校生も誘って後で龍雅の所へ行くことにしよう。

あいつも可愛い女の子が見たいだろうし、恐らく彼女も断らないはずだ。

 

そうして、俺は一色葵を連れて学校を案内することとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───あー?転校生の案内?

お前そんなことしてたのか」

 

ある程度ではあるが学校中を案内した俺は、残った時間で彼女を誘い昼食を摂ることにした。

少し空気が肌寒い、殺風景な屋上へと辿り着くと、そこには設置されているベンチで一人、購買で買ったパンとジュースを貪る龍雅の姿があった。

 

待たされたと少々怒っている龍雅を宥め、転校生を彼に紹介することにした。

 

「まあ悪かったよ。

とりあえず一緒に連れてきたから、いいか?」

 

「ここまで来ておいて、駄目だとか言う訳にはいかないだろ。

いいから呼べよ。昼休み終っちまうぞ」

 

「ありがとう。おーい、一色さん」

 

俺の声に反応し、階段から屋上に出ることができる扉の陰から一色が姿を現した。

 

「お、美人」

 

こいつは可愛い子を見ると、大体こんな反応をする。

俺も可愛い子は好きではあるし無理もないが……。

ぶっちゃけ、この一色さんは割と好みである。

 

「初めまして、一色です。

あなたが藤真君の友達の……」

 

「小湊だ。よろしく…………ん?」

 

挨拶を交わす二人であったが、不意に龍雅が妙な反応を見せた。

 

「…?私の顔に何か付いてますか?」

 

「……いや、何でもない」

 

何でもない、とパンを頬張るのを再開し、龍雅はそっぽを向き態度で示す。

だが、彼の行動は、俺にとっては違和感極まりない。

 

普段の彼ならば、可愛い女の子が目の前にいると、質問攻めを開始するのだ。

毎回それをひっぺがすのが大変であるが、今回はそれがない。

 

彼の趣味に合わなかったのだろうか。

喜んでもらえると思ったが……。

 

「…あ、ごめん。お昼食べる前に、ちょっとトイレに行ってくるね」

 

「ああ、いってらっしゃい」

 

彼の態度はとりあえず気にせず、御飯を食べようとした時、ふと彼女は思い出したかのようにそう言うと、場を去っていった。

 

そして、彼女が見えなくなって暫く。

 

「…おい、薊。

あの女とは、あんまり関わらない方が良いかもしれねえ」

 

彼はそう言った。

理由は解らないが、龍雅の顔から察するに本気で言っていることは分かった。

 

「は…?どうしたんだよ急に……。

可愛い子を目の前にしてらしくないと思ったら……」

 

「あの女、ただの腹黒じゃねえ。

やたらと上から人間観察してやがった。

それに…そもそもあいつ、人間か?」

 

「おいおい……。冗談よせよ…。

間違いなく良い女の子だと俺は思うけど……」

 

急に何を言い出すかと思えば、厨二病を発症し過ぎて手遅れなのかと思ったが、彼の顔は至って真剣。

とても冗談を言っているようには見受けられない。

 

「薊が言うなら確かに良い奴なんだろう。

そのお前の目利きを疑うわけじゃない。

でも何か裏の顔があって、変なこと考えてやがるのは覚えとけ」

まあ多分だがなと、再び龍雅はパンを食べ始めた。

 

龍雅がこんなことを言うこと自体珍しくはあるが、ただ何か企んでるかもしれないという理由で、彼が忠告するのもまた珍しい。

殺されるとかそんな大事になるわけでもないだろうし、腹黒いぐらいで騒ぎ立てることでもない。

 

俺は龍雅の言葉を頭の片隅に置き、この場は聞き流すことにしてしまったのだった。

 

 

 

 

 

「…………勘のいい人」

 

そんな彼らを一色葵は階段の踊り場。丁度死角になるところで見ていた。

 

彼女は壁にもたれかかると天を仰ぐ。

 

「藤真君、か……」

 

その表情はどことなく悲愴漂う表情だった。

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