バカとテストと右脳娘   作:シュレ猫

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どうも、作者のシュレ猫です。

今回のお話では初めて雄二主観が出てきます。夏樹と明久以外の視点の方が面白くなりますので。という訳で今回は雄二、夏樹、明久の順で主観が変わっていきます。主観が変わるといってもそれぞれが結構長いパートなのでコロコロ変わるといった感じにはならないとは思います。

それでは、本編です。


第十三話:お昼御飯は死の香り

「よし、昼飯でも食いに行くぞ! 今日はラーメンとカツ丼と炒飯とカレーにすっかな」

 

 俺は勢いよく立ち上がり、明久(バカ)達を昼飯に誘う。バカは当然として秀吉やムッツリーニもテストの疲れが出ているようで、まだ立ち上がらない。俺はテストによる疲れなんてないんだが、頭を悩ませている事態があった。まあ、代表が不安な表情をしていては士気に影響があるからそんなことはおくびにも出さんが、こりゃ隊編成をしっかり考えないと次の戦争はまずいな。まったく、俺らはどんだけ運に見放されてんだよ。

 

「ん? 吉井達は食堂に行くの? だったら一緒していい?」

「ああ、島田か。別に構わないぞ」

「それじゃ、混ぜてもらうわね」

「…………(コクコク)」

 

 そこに島田がやってきて、食堂への同行を求めたが、別に何の問題もないのでそう答える。まあ、ムッツリーニがうなずいているのは下心のせいもあるんだろうな。

 

「じゃ、僕も今日は贅沢にソルトウォーターあたりを――」

「あ、あの。皆さん……」

 

 明久達が立ち上がったところで姫路が声をかけてきた。

 

「うん? あ、姫路さん。一緒に学食に行く?」

「あ、いえ。え、えっと……お昼なんですけど、その、昨日の約束の……」

 

 明久が姫路を学食に誘うが、姫路はもじもじしている。一体どうしたんだ? 俺がそう考えていると秀吉が口を開く。

 

「おお、もしやお弁当かの?」

「は、はいっ。迷惑じゃなかったらどうぞ」

 

 おお、そういや昨日、姫路が俺達全員の弁当を作ってくるって言ってたな。よく見ると姫路の卓袱台には4段に積まれた7寸(約21cm)重箱が置かれている。女子の食の細さを考えれば7人でも十分な量だろう。まあ、俺はちょっと物足りないが。

 

「迷惑なわけないでしょ? 全く、昨日約束したばっかなのに私以外全員忘れてるなんて」

 

 そう言って夏樹が近寄ってくる。ちなみに夏樹は汗をかいて暑くなったからと上着脱いで、肩に羽織っている。まあ、おそらく汗の原因は冷や汗だろうな。にしてもこいつ、本当にスタイルいいよな。上着を脱いだことでよく分かるようになった体型を一瞥していると俺の目が可笑しなものを捉えた。……なんだありゃ? 俺は目をこすって再確認するが、それでもさっきの光景は変わらない。

 

「なあ、夏樹。お前が手に持っているものはなんだ?」

「何って、お弁当箱だけど?」

「…………俺には重箱に見えるんだが」

「やだなぁ。重箱だってお弁当を入れるのに使えばお弁当箱だよ。それにひめひめもお弁当を重箱に入れて持ってきてるじゃない」

「そうだな。その理論は正しい。だが、今回弁当を作ってくるのは姫路だけのはずだろ」

「う、うむ。確かにそうじゃな」

「えっ? ひめひめの分を考えて減らすけど、私も持ってくるって言ったじゃない?」

「…………確かに言ってはいた」

 

 秀吉とムッツリーニも話に混ざってくる。こいつらも夏樹の持ち物の異常に気付いたようだ。

 

「そうです! 夏樹ちゃん。嘘をついて抜け駆けするなんて酷いです!」

「そうよ! 夏樹がそんなことするなんて思わなかったわ!」

「い、一体なんのこと?」

 

 姫路や島田まで加わって話が大きくなる。ここは俺が代表して分かりやすく質問してやるか。

 

「なあ、夏樹。姫路の分を考えて減らしたお前の分の弁当が5寸(約15cm)重で2段はおかしいだろ?」

「えっ? 減らしたから2段なんだけど……」

「夏樹はいつもこのお弁当箱だよ?」

 

 夏樹と明久の答えを聞いた俺達の間に沈黙が流れる。

 

『はあぁ!?』

 

 ありえねぇだろ? 減らして2段ってことは普段はあの重箱を3段食ってんのか。5寸の重箱で3段っていったら3人前はあるぞ。しかもそれを日常的に食ってるだと?

 

「お前ら、エイプリルフールはとっくに過ぎたぞ」

「う、うむ。そうじゃな。流石にそれだけ食べてその体型とは信じられんぞい」

「…………すぐばれる嘘は控えるべき」

「夏樹ちゃん。抜け駆けを許すのは今回だけですからね!」

「そうよ、次にこんなことしたらぼっきりとお仕置きしてやるんだから!」

「うぅ、ほんとなのにぃー」

 

 夏樹がなにか言っているが、それを無視して話を続ける。

 

「それでは、折角姫路と夏樹が作ってくれたご馳走じゃし、こんな教室ではなくて屋上にでも行くかのう」

「…………そうするべき」

「ねぇ、きのっち。なんで私のお弁当までみんなで食べることになってるの?」

 

 …………無視して話を続ける。さて、昨日がんばってくれた兵隊達に代表として少しは返さなくちゃな。

 

「そうか。それならお前らは先に行っててくれ」

「ん? 雄二はどこか行くの?」

「飲み物でも買ってくる。昨日がんばってくれた礼も兼ねてな」

「あ、それならウチも行く! 一人じゃ持ちきれないでしょ?」

 

 すると、珍しく島田が気遣いを見せてくる。さては姫路と夏樹の積極性を見て焦ったな。それで優しい女をアピールって訳か。

 

「悪いな。それじゃ頼む」

「おっけー」

 

 教室を出る前に俺は明久達に釘をさしておく。

 

「きちんと俺達の分をとっておけよ」

「大丈夫だってば。あまり遅いと分からないけどね」

「そう遅くはならないはずだ。じゃ、行ってくる」

 

 そう言って俺は島田とともに一階の売店に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋上に着いた私達はひめひめが持ってきたシートに座って、もっちーたちを待つことにした。私は肩にかけていたブレザーを脇に畳んで置いておく。

 

「あの、あんまり自信はないんですけど……」

 

 そう言ってひめひめは重箱の蓋を開けた。

 

『おおっ!』

 

 男の子3人が一斉に歓声をあげた。から揚げやエビフライや卵焼き、エビチリにおにぎりやアスパラ巻きなど、定番メニューが重箱にぎっしりと詰まっている。これは確かにおいしそうだし、歓声をあげる気持ちも理解できる。

 

「それじゃ、雄二には悪いけど、先に――」

「…………(ヒョイ)」

 

 あっきーが取るより先に動きの素早いむっつーがエビフライを掻っ攫っていった。そして、流れるように口に運び――

 

「…………(パク)」

 

バタン ガタガタガタガタ

 

 豪快に顔から倒れ、小刻みに震えだした。

 

『…………』

 

 私達3人は顔を見合わせる。

 

「わわっ、土屋君!?」

 

 ひめひめが慌てて、配ろうとしていた割り箸を取り落とした。

 

「…………(ムクリ)」

 

 むっつーが起き上がり、

 

「…………(グッ)」

 

 ひめひめに向けて親指を立てた。『凄く美味しいぞ』って伝えたいんだろうなぁ。

 

「あっ、お口に合いましたか? 良かったですっ。たくさんあるのでいっぱい食べてくださいね♪」

 

 むっつーの言いたいことが伝わったらしく、ひめひめは喜んだ。私はなんでひめひめが未だにガクガクと震えるむっつーの足に気づかないのか不思議でならない。そして、むっつーの言葉に気を良くしたひめひめは取り皿に1段の3分の2近くを取り分け、むっつーに差し出す。

 

「皆さんもよかったらどんどん食べてくださいね。夏樹ちゃんも遠慮なくどうぞ」

 

 ひめひめが私の方を見た隙を見計らってむっつーが恐怖で震える眼差しをあっきーときのっちに向ける。二人がふいっと視線を逸らすと、むっつーは少し躊躇った後、意を決したように取り皿のお弁当をかきこんだ。

 

バタン シーン

 

 今度は震えさえ起きなかった。

 

 

「ダメじゃないか、ムッツリーニぃー。食べてすぐに横になっちゃ」

(秀吉、夏樹。あれ、どう思う?)

 

 誤魔化しのために言葉の後に、ひめひめに聞こえないくらいの小さな声であっきーが聞いてくる。

 

(どう考えても演技には見えん)

(だよね。ヤバいよね)

(っていうか、むっつー生きてるの?)

(……今は気にしても仕方がないじゃろ。明久、夏樹。お主ら、身体は頑丈か?)

(正直胃袋に自信はないよ。食事の回数が少なすぎて退化してるから)

(私は逆に消化吸収能力が高すぎて危ないと思う)

 

 私達は笑顔のまま相談した。そのかいあってひめひめは私達の驚愕に気付いていない。でも、本人のためにもここは心を鬼にして指摘しないと。

 

(ならば、ここは私に任せてもらおう)

(そんな、危ないよ)

(大丈夫じゃ。ワシは存外頑丈な胃袋をしていてな。ジャガイモの芽程度なら食ってもびくともせんのじゃ)

 

 私が意を決している間に、男共は違う方向に決意を固めている。

 

(ちょっと、そんなことしなくてもひめひめに注意すれば)

(ダメだよ。それじゃ姫路さんが悲しんじゃうじゃないか!)

(うむ、流石に女子の泣き顔を見るのは忍びないからのう)

(後で知る方がもっと傷つくってば)

 

 私達が小声でもめている中で、

 

「おう、待たせたな! へー、こりゃ旨そうじゃないか。どれどれ?」

 

 もっちー登場。

 

「あっ、雄二」

 

 あっきーが止める間もなく素手で卵焼きを口に放り込み、

 

パク バタン――ガシャガシャン、ガタガタガタガタ

 

 ジュースの缶をぶちまけて倒れました。

 

「さ、坂本!? ちょっと、どうしたの!?」

 

 遅れてきたしまっちがもっちーに駆け寄る。……これは本気でヤバい! もっちーとあっきーがアイコンタクトで会話しているのを見ながら、こいつらは無視して今度こそひめひめに注意しようと決意する。

 

「あ、足が……攣ってな……」

 

 ひめひめを傷つけないようウソをつくもっちー。でも、ここで言ってあげるのが本当の優しさだと思う。

 

「あはは、ダッシュで階段の昇り降りしたからじゃないかな」

「うむ、そうじゃな」

「そうなの? 坂本ってこれ以上ないくらい鍛えられてると思うけど」

 

 事情を知らないしまっちが不思議そうな顔をする。

 

「ところで島田さん。その手をついているあたりにさ」

 

 あっきーがビニールシートに腰を下ろしているしまっちの手を指差す。

 

「ん? 何?」

「さっきまで虫の死骸があったよ」

「えぇっ!? 早く言ってよ!」

「ごめんごめん。とにかく手を洗ってきた方が良いよ」

「そうね。ちょっと行ってくる」

 

 そう言ってしまっちは席を立った。この野郎。余計なこと言わないように退場させたな。

 

「島田はなかなか食事にありつけずにおるのう」

「全くだね」

 

 ジト目の私を無視して男3人が朗らかに笑う。その一方で必死に作戦会議を行っている。だから、そんなことする前に言った方がいいって。

 

(明久、今後はお前がいけ!)

(む、無理だよ! 僕だったらきっと死んじゃう!)

(流石にさっきの姿を見ては決意が鈍る……)

(雄二がいきなよ! 姫路さんは雄二に食べてもらいたいはずだよ!)

(そうかのう? 姫路は明久に食べてもらいたそうじゃが)

(そんなことないよ! 乙女心を分かってないね!)

(いや、分かってないのはどちらかと言うとお前のことだと――)

(みんなが言わないなら私が言うよ)

 

「ひめひめ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 まずい。夏樹は結構ズバズバとものを言うから、このままじゃ姫路さんが悲しんじゃう。そう判断した僕はコーラの缶を手に取り、激しく振る。

 

「夏樹、喉乾いたでしょ? コーラ飲まない?」

「ひめひめ、この料理――っきゃ、冷た!」

 

 そう言って口を夏樹に向けて、一気にプルタブを開ける。それにより、勢いよく噴出したコーラに驚いた夏樹の言葉が止まる。よしっ、完璧だ。夏樹への対処を相談するべく2人の方を見ると、赤くなった顔を横に向けている。

 

「白昼堂々、とんでもねぇことしたな、この変態」

「う、うむ。いつかはやりおると思っておったが、まさか親友を毒牙にかけるとは」

 

 二人に失礼な言葉を受けるが、意味が分からず、もう一度夏樹の方を見てみる。今の夏樹はブレザーを脇に置いているから、ワイシャツの状態で、そこに頭からコーラを浴びたからシャツが透けて……

 

「夏樹、ごめん! わざとだけど、わざとじゃないんだ!」

 

 僕は思いっきり頭を下げる。違うんだ。コーラをかけたのはわざとだけど、シャツに関してはわざとじゃなくて。

 

 僕の言葉を受けた夏樹は視線を下に下ろし、シャツの状態を確認した。すると、夏樹の顔がどんどんと赤くなった。

 

「っ! この、変態!」

 

 その言葉とともに左頬に衝撃を受けた。あっ、ムッツリーニは姫路さんの料理を食べてKO寸前になったけど、僕は物理的にKOしそうだ。

 

「な、夏樹ちゃん、早く着替えてこないと」

 

姫路さんが夏樹の胸元にブレザーを押し付けてから、屋上の扉に向かって夏樹の背中を押す。

 

「待って! ひめひめ、せめて後2発、もっちーときのっちに見られた分だけ殴らせて!」

 

 ……普段島田さんに殴られるのは理不尽なのが多いけど、流石に今回は完全に僕が悪かったな。せめてもの救いはムッツリーニがダウンしていたことだね。夏樹にとってもムッツリーニにとっても。多分ムッツリーニが後で知ったら血の涙を流して悔しがるだろうけど、実際に見たら命が危ないもん。

 

「ダメです! 早く着替えないと見られちゃいますよ」

 

 姫路さんは夏樹の背中を押すのに夢中でこちらの方に意識を向けていない。当たり前だ。夏樹は結構力があるから体の弱い姫路さんが対抗しようと思ったら全力を出さないと。そして、姫路さんが夏樹に集中している今がチャンス。未だにそっぽを向いて油断している雄二の口の中いっぱいに弁当を押し込む。目を白黒させている雄二の顎を掴んで租借するのを手伝ってあげる。まだ2段分あるんだから、ここでダウンしてもらっては困る。姫路さんが夏樹が諦めて階段を下りていくの見送っているのを確認し、最後の段まで雄二の胃袋に押し込んだ。

 

「ふぅ、これでよし」

「お、お主存外鬼畜じゃな」

「ふぅ、ようやく夏樹ちゃんが落ち着いてくれました」

 

 姫路さんがこちらに戻ってきた。

 

「お弁当美味しかったよ。ご馳走様」

「うむ、大変良い腕じゃ」

「あ、本当に早いですね。もう食べちゃったんですか?」

「うん。特に雄二が『美味しい美味しい』って凄い勢いで。今はお腹がいっぱい過ぎて首を動かすのも辛いんだって」

 

 視界の隅で倒れている雄二は震えさえしていないので、フォローしておく。

 

「そうですかー。嬉しいですっ」

「いやいや、こちらこそありがとう。ねっ、雄二?」

 

 雄二の体をゆすって意識を取り戻させながら話しかける。

 

「う…………うぅ…………。あ、ありがとうな、姫路…………」

 

ヤバい。目が虚ろだ。

 

 その後僕たち3人は話題を逸らして世間話をした。余計なことを言って『また作ってきますね』なんてことにならないためだ。そして、ほのぼのとした時間が過ぎる。

 

「あ、そうでした」

 

 姫路さんがポン、と手を打った。

 

「ん? どうしたの?」

「実はですね、デザートもあるんです」

「ああっ! 姫路さんアレはなんだ!?」

「明久! 次は俺でもきっと死ぬ!」

 

 雄二が僕の作戦を死ぬ気で止めにかかる。くっ、反応のいいヤツめ。

 

(明久!? 俺を殺す気か!?)

(仕方がないんだよ! こんな任務は雄二にしかできない! ここは任せたぜっ)

(馬鹿を言うな! そんな少年漫画みたいな笑顔で言われてもできんもんはできん!)

(この意気地なしっ!)

(そこまで言うならお前にやらせてやる! さっきの弁当より量が少ないんだ、楽勝だろ!)

(なっ! その構えは何!? 僕をどうする気!?)

(拳をキサマの鳩尾に打ち込んだ後で存分に詰め込んでくれる! 歯を食いしばれ!)

(いやぁー! 殺人鬼――!)

 

 雄二が手を握り、あわや肉弾戦というところで、秀吉がすっと立ち上がった。

 

(……ワシがいこう)

(秀吉!? 無茶だよ、死んじゃうよ!)

(俺のことは率先して犠牲にしたよな!?)

 

 雄二が何か言っているが、気にしない。

 

(大丈夫じゃ。ワシの胃袋はかなりの強度を誇る。せいぜい消化不良程度じゃろう)

 

 その後、姫路さんはスプーンを教室に取りに行き、その隙に秀吉がデザートを食べることになった。

 

「では、この間に頂いておくとするかの」

 

 戦場に向かう戦士のように秀吉が容器を取る。僕らは秀吉に全てを託し、見守るしかない。そして、秀吉は容器を傾け、一気にかきこんだ。

 

「むぐむぐ。なんじゃ、意外と普通じゃとゴばぁっ!」

 

 また一輪、花が散った。命という名のはかない花が。

 

「……雄二」

「……なんだ?」

「……さっきは無理矢理食べさせてゴメン」

「……あの量はかなりきつかったが、わかってもらえたならいい」

 

 自称『鉄の胃袋』は白目で泡を吹いていた。

 

 その後、僕は夏樹にメールを打って、お茶を大量に買ってきてくれるように頼んだ。夏樹は姫路さんが悲しむのを気にせずにきっぱりと言おうとしたおかげで自分だけこのお弁当から逃げられたんだから、このくらいしてくれてもバチは当たらないと思う。僕はうまくお弁当を回避した夏樹が少し恨めしかった。

 

 十数分後、夏樹は大量のお茶と菓子パンが入った袋を手に屋上に戻ってきた。……なぜか婦警姿で。いや、夏樹はカッコいいから凄く似合っているし、その証拠にムッツリーニは物凄い速さでシャッターを切ってるし、秀吉と雄二でさえ見とれているけどさ。夏樹、君に一体何があったんだい?

 

「夏樹、その格好は(キッ!)――……ごめんなさい」

 

 夏樹に事情を聞こうとしたら思いっきり睨まれ、僕は反射的に謝っていた。夏樹のあんな怖い眼は初めて見た。

 

「明久に同意するのは癪だが、一体何がお前をコスプレに駆り立てたんだ?」

「う、うむ。非常に似合っておるし、魅力的だとは思うんじゃが、何も学校内でコスプレをせんでもよかろう」

「夏樹ちゃん! ずる過ぎます、そんな方法でアプローチするなんて!!」

「そうよ! 一体どれだけウチらをバカにする気!!」

 

 雄二と秀吉がコスプレについて疑問を投げかけ、姫路さんとちょっと前に戻ってきた島田さんがなんだか分からない抗議をする。

 

「次――」

 

 その言葉を受けて、夏樹は更に眼光を鋭くし、地獄の底から響いてくるような声を出した。

 

「次にこの格好について触れた人は男女問わず私と同じ苦しみを受けてもらうから」

 

 そう言って全員を睨みつける。もしも、視線にこめられた怒りで人が殺せるなら、夏樹は僕ら全員を殺せていたと思う。その視線に全員が押し黙る。……本当に着替えている間に何があったんだろう。

 




今回は夏樹のお弁当箱と姫路さんのケミカルクッキングの登場です。夏樹は背が高くてスタイルも良いですがかなり食べる子です。その理由については菓子パンを食べているときにでも判明するでしょう。

姫路さんのケミカルクッキングについては、ここハーメルンでは制裁を加えたうえでやめさせるオリ主、オリキャラが多いですが、夏樹はいろいろと抜けた点、飛び出た点はあっても一般人ですので、常識的に注意します。しかし、その程度のキャラで明久達が止められるはずもなく、このような結果となりました。一度注意しようとして邪魔されたので、夏樹は今後よっぽどのことがない限りは姫路さんに注意しません。夏樹は基本的には一度注意・対処した後は自分の尻拭いは自分でというスタンスなので。

こんな主人公なので、ハーメルンでは人気が出ないかもですが、これからも楽しんでいただけたら幸いです。
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